異世界転生系艦これです。
流行りに便乗したわけじゃ…ナイヨ?
一人の青年が、異世界で提督に成長するまでの物語
(予定)

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-注意-
このお話は「冒険企画局」様が提供されている
「艦これRPG出撃ノ書」に収録されているキャンペーンシナリオを
独自にアレンジしたものとなっております。

アレンジがお嫌いな方は、ブラウザバックをお願いします。

今回は「異世界転生」に挑戦しました、どうぞ。


艦これすとーりー

異世界に行ってみたい…と思ったことはありますか?

誰しも、退屈な日常という貝殻を割り、大海原へ漕ぎ出し、大好きなあの娘、あの景色に会いに行きたいと…そして、大冒険の非日常を目指すのだ。

……そう夢想して青春を過ごすのだろう。

 

かくいう僕もその一人、だが僕の場合、少し特殊だ(自分で言うのはアレですが)。

そう、僕の目指す水平線、その先の果てに待っているのは…

 

かつての軍艦の名を受け継いだ、少女たちなのだから…。

 

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「今、逢いに行きます…」

「いや、何言ってんだお前は」

 

青い空、白い雲、そして見渡す限りの澄み切った大海原。

大学の夏休みを利用しあるツアーに参加している青年二人は、白亜の海に浮かぶ客船で感慨深げに胸中を呟いた。

 

「いやぁ、ついにここまで来てしまいましたなぁ」

「そうだな」

「高いツアー代に小遣いはたいて来たかいがあるってものですよ、見てこの綺麗な海!」

「…人って興奮すると饒舌になるって本当なんだな。」

「そりゃ滑舌もよくなりますよ!」

 

一人の青年は、これから起こるであろうイベントに対し、並々ならぬ期待を寄せていた。

彼―「色崎拓斗」は、友人の「海野」と共に、とある船を見るために遠路はるばるこの”台湾海峡”に来ていた。

正確には見るというより"観る"だろうか。

何せ沈んだ軍艦にダイビングで会いに行こうとしているのだから。

 

「この日のためにダイビングライセンスも取得したし!正に準備万端っと。」

「よくそこまでできるよなぁ、お前。」

 

そう言われると、拓斗はおもむろに海軍の軍帽を取り出し被る。

 

「艦これの提督としては、このイベントは外せませんからね。」

「提督、ねぇ」

 

彼は、大人気ブラウザゲーム「艦隊これくしょん」通称”艦これ”のプレイヤーである。

艦これは、かつて存在した第二世界大戦中の軍艦をモチーフにした少女たちを育成するシミュレーションゲーム。

様々な逸話からのキャラの解釈が人気の理由の一つとなっている。

拓斗もまた、個性豊かな少女たちに魅了された”提督(プレイヤー)”であった。

 

「このツアー…提督と行く艦娘巡礼船旅ツアー略して、”艦たび”。応募した甲斐がありました。」

「そうか」

「なぜなら、僕の大好きな艦娘にもうすぐ会えるのだから!イエス!!」

 

拓斗はまるで有頂天、正に山の頂に辿り着いた勢いで友人に語りつくす。

 

「金剛だっけ?お前の好きなの。」

「そうですとも!そもそも金剛は栄えある帝国海軍の誇ったあの金剛型の一番艦、当時の最先端の技術を誇った英国のヴィッカーズ社に受注した超弩級戦艦ですから当時の人たちにも広く親しまれて軍歌(キャラソン)まで作られてさらに…」

「わかったから、落ち着け」

 

叩き売りのような早口を海野は諫めた。

 

「しかし、お前に言われたから、どんなものかと思ったが」

 

ふと、海野は目の前の海を見つめ、呟く。

 

「こうやって昔を思うっていうのも、いいもんだな。」

「でしょ!?さすが海野くんは物の捉え方が違います!」

 

拓斗は興奮冷めやらぬという風に話を続ける。

 

「この静かで穏やかな海で、己の意地と誇りをかけた戦いが繰り広げられていたのですよ! それを思うだけで、僕はもう、胸いっぱいってかんじで!!」

 

彼は所謂軍事オタク、というわけでなく艦これをプレイしていくうちにそれなりに知識が身についた一般的な”にわかオタク”である。そのため彼にとって過去の戦いの記録とは、ギリシャ神話のような英雄譚に近かった。

 

「あぁ、こうしていると、山本長官や多聞丸殿のような雄大な男の気持ちになれますね! なんていうか、それだけで戦場にいるような…」

「あのさぁ」

 

言って、海野は拓斗を睨みつける。

 

「お前、言いたいことはわかるけど、もう少し限度をわきまえろよ?」

「え…?」

「確かに、昔に浸れるって言ったのは俺だが、お前の場合全然意味違うだろ?」

 

まるで子供に言い聞かせるように海野は続けた。

 

「俺も、詳しいことは解らないけど、でもこの海で、この平和な海で

 何千何万っていう命が失われたんだろ?」

「…」

「あんまりさ、そういうの軽々しく言わないほうがいいぜ?お前が

 やってるのはゲームかも知れないが…俺たちの世界の戦いは、ゲームじゃない。」

「あ…」

「当時の人にも、暮らしがあって、そこに生きていた…だったら

 それを蔑ろにするのはよくないだろ。」

 

海野は、虚しさを秘めた瞳で、かつての戦場を見つめていた。

 

「昔の人たちが戦っていたから…生きるために必死になったから今の日本は立ち上がることができたんじゃないのか?」

 

第二次大戦の終戦直後、日本はボロボロだった、最早国としての体裁も保てなくなっているほどだった。

彼の言う通り、そんな日本が今の状態になれたのも、人々の生きる意志あったれば、であるだろう。

 

「だ、だから僕は大戦当時の気持ちに浸れるようにと…」

「そうか?…ま、だったらいいけどな。」

 

すまん、言い過ぎたと海野は視線を外さないまま謝罪した。

拓斗は、正直なところ彼の言わんとしていることが分からなかった。

 

(海野は艦これ好きじゃないのかなぁ…?)

 

拓斗がまるで的外れなことを思っていると、突然船員が近づいてきて

 

「すみません、速やかに船内にお戻りくださいますか?」

「え?」

「何かあったんですか?」

 

二人が船員に尋ねる。

 

「いえ、これから大時化になりそうで…先ほどまで晴れていたのですが。」

 

言うなり、風が顔に強くかかってきているのを感じた。

 

「…拓斗、戻るぞ」

「う、うん」

 

その時

 

 

 ぐらぁ

 

 

「ぅうお!?」

 

船が大きく揺れ、船員が素っ頓狂な声を上げる。

大時化の予兆か、波がおおきく揺れていた。

 

「もうきやがった!」

「拓斗!」

「わ、わかっ…!!」

 

拓斗がふと振り返った、その視線の先に

 

「う”あ”あ”ぁぁぁ…」

 

小学生くらいの子供が、甲板にしがみつき今にも海に落ちそうだった。

 

「っ…!」

「!拓斗!!おい!!!」

「君、掴まって!」

 

子供に駆け寄り、手を差し伸べ安全な場所まで誘導する拓斗。

 

「海野君!お願い!!」

「バカ野郎!!無茶を…」

 

海野が言い切る前に、拓斗は彼に子供を託す。

そして、自分もそちらに移動しようとした…瞬間

 

 

ぐらぁ!!

 

 

「!うわっ」

 

ズンッという擬音と共に拓斗は、突き放されるように宙に浮き、そのまま海に落下していった。

 

「拓斗ーーー!!!」

 

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―――夢を、見ていた。

海の、水底に沈む夢。

永遠に這い上がれない。

永久に戻れない。

永い時間、一瞬のような時を過ごす。

 

そんな折、僕は人魚を見た。

慈愛に満ちた目で僕を見つめ

もう大丈夫、と言いたげに僕を抱きかかえ

僕を水上へ引き戻してくれる、光。

でも、あぁ、そんな、バカな。

こんな時も僕は、なんて暢気なんだろう。

彼女は、僕の…―――

 

 

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「……ト…!」

 

ん…?

なんだ…?

僕は、何を…??

 

「テ…ク!…きて…」

 

この声…は……!?

 

 

「テートク!」

「!!?」

 

 

がばっ

 

 

拓斗が目を覚ました場所。

そこは彼が見たことない場所だった。

 

「…へ?」

 

そこは、おおよそ数十年は使われていないであろう、古びた部屋だった。

埃だらけの部屋。

ボロボロのカーテン。

自分が寝ていたのは、木箱のベッドだった。

そして、目の前には…

 

「O--h!!やっと目を開けてくれましタ!!」

「え…え”!?」

 

両手を合わせ、自分の目覚めを喜んでくれているこの女性は…

拓斗が誰よりも知っている人物だった。

 

「こ、金剛ーーぅ!!?」

「Hai! 貴方の金剛デースよ、テートク♥」

 

何と、二次元(ゲーム)の人物である金剛が、さも最初からいたかのようにその場に在る。

言葉も、容姿も、何より存在感そのものも拓斗が知る金剛その人だった。

 

「え…コスプレイヤーじゃなくて?」

「?」

 

何のことか分からず、首を傾げる金剛。

 

(か、かわいい…じゃなくて!?)

 

「そ、そうだ僕は!」

 

ようやく、自分の置かれた状況を思い出した拓斗。

 

「僕は船から…ということはここはあの世!?」

「ちがいマース!ここは鎮守府予定地デース!」

「………はい?」

 

意味が分からず思わず聞き返す拓斗。

 

(と、とにかく冷静にならなくては!)

 

「…と、言うと?」

 

拓斗は金剛から情報を聞き出そうとする。

 

「実はワタシ、フリーの艦娘で各地を転々としていましテー」

「ほうほう」

「無人島に通りかかり、一休みしヨー!と寄ってみたら…」

「ふむふむ」

「海岸にかわいらs…ゴホン!男の子が打ち上げられているから助けましテー」

「なるほど」

「で、テートクと、ここに鎮守府をたてヨーと」

「はぁー……」

 

・・・

 

「いや意味が分からないイイィィ!!??」

 

当たり前に取り乱す拓斗。

 

「まずテートクって提督?僕が!?」

「YES!」

「た、確かに艦これで提督やってたけど、いきなり!?」

「OH!ケーケンシャでしたか?なら話がスピーディーデース!!」

「待って、ちょっと話を聞いてくれませんか金剛さん!!?」

「NOデース!ワタシは決心しましタ!」

 

金剛は言うなり仁王立ちで居直り、拓斗提督を指差し高らかに宣言した。

 

「ワタシはテートクと一緒に鎮守府を立ち上げマース!だから…」

「え…」

「テートク!大人しくここで艦娘を指揮してくだサーイ!!」

「ええええええええええぇぇぇ!?」

 

それはまるで、恋する乙女の宣戦布告。

果たしてここはどういう場所なのか、わからないが…。

 

―それでも、青年の夢想は、突然叶えられたのである。

 

だがそれは、青年にとって

長い、永い、航海の序章に過ぎなかった…。




続き?無きにしも非ず。


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