22,おかえり
ふと、私は眼を覚ました。
そこは見慣れた天井で、私はデジャヴを感じながら起き上がってベッドから起き上がろうとした瞬間、私は固まった。
私のベッドの隣りで、上半身をベッドに預けた状態で寝ているのは、小悪魔さん。
まぁこの館でまともな治療技術持ってるのなんて咲夜さんと小悪魔さんぐらいなもので……。
「っていうか私、紅魔館に帰ってきたんだった!?」
ついつい大声を出してしまった私、そして私の声によって小悪魔さんが起きる。
「はっ! 起きたんですか涙子さん!?」
そう言った直後、小悪魔さんは部屋から駆け出て行った。
これは大騒動の予感。
まぁ、嬉しくないわけじゃないけど。
「起きたのね涙子!」
そう言って入ってきたのはフランだった。
私を気絶させた張本人ことフランは再び私に飛びついてくるけれど、今度はうまく受け止めることに成功。
ベッドで状態を起こしてる私の上に乗って嬉しそうに笑っている。
次に入ってきたのは咲夜さんだった。いや、入ってきたというより私の視覚では突如現れたように見えるんだけど。
「涙子、元気だったかしら?」
「はい、ナイフの投擲役にたちましたよ」
「なら良かったわ」
そう言って静かに笑みを浮かべる咲夜さん。
ドタドタと音がして、現れるのはレミリア様を肩車している美鈴さん。
お茶会でもしてたのかな? あっ―――。
入ってくるとき扉の枠にレミリア様が頭ぶつけた。
「うー」
久しぶりの再開でさっそくカリスマがブレイクされているレミリア様を、美鈴さんはおろして私の方を見る。
私にくれた腕は相変わらず無い。
気にしないなんてことはできない、また私は他人に迷惑をかけてしまったから。
頭を押さえていたレミリア様が立ち上がって私の方を見た。
レミリア様は左目に眼帯をしていた。
「どこ行ってたのかしら、涙子?」
「そんなふうに言わないでもいいんじゃないですか、いなくなってからずいぶん心配してたのに」
「うっさい、この馬鹿門番!」
なんだか懐かしいこの環境。
ん、また音がするから、今度は図書館の……でもこんな走ってるってことはパチュリーさんじゃない?
小悪魔さんかな?
扉が開けば、そこには紫色の動かない図書館って―――。
「パチュリーさん!?」
「か、帰って、ハァッ……来たってっ、ゲホゴホゲホゲホッ!!?」
「ぱ、パチュリーさぁぁんっ!?」
今にも倒れそうなパチュリーさんを駆けつけた小悪魔さんがなんとかしようとする。
なんだか相変わらず騒がしいというかなんというか……。でもこうあるからこそ、私は上条さんへの罪も少しの間だけ忘れられる。
ホント、こうやってふとした瞬間に思い出しちゃうと少しだけ落ち込みそうになるけど、それがバレたらみんな心配する。
「まったく、佐天が帰ってきたと思ったらもうこんな大騒ぎとはね」
久しぶりの声がした。
レミリアさまたちが家族だとしたら、この声の主は初春と同じぐらい大事な親友だ。
開かれた窓の縁に両足で立ち腕を組む少女。
彼女は僅かな冷気を漂わせながらその場で笑みを浮かべる。
「吸血鬼としてはもっとえれがんとに振舞うものじゃないレミィ?」
「うるさいわね馬鹿妖精」
「馬鹿じゃなく天才だって言ってるでしょ、フッ」
見ていれば天才に見えないこともないけどその本当の姿は……ただの馬鹿。
彼女は軽く跳んで床に足をつける。
「チルノ、久しぶり」
私は親友ことチルノにそう言って笑みを向けた。
彼女も私に笑いかけてくれる。だから私はやらずにいられなかった。
迷わず私は手を伸ばして、そのスカートをまくり上げる。
―――今日は白に水玉、実に妥当。
「っ!!?」
チルノはすぐに顔を真っ赤にしてスカートを押さえ後ろに下がる。
「なななっ、なにやってんのよ佐天!」
怒るチルノだが私はベッドの上で笑うのみ。
あぁ、いきなり動いたから体が痛くて痛くて……。
でもたぶんこの痛みは、フランが私の腰の骨をガッガッと殴ってるからだと思う。マジで痛い。
てかなんで殴られてるのさ私っ。
「佐天、帰ってきて早々この暴挙とは許さないわよ!」
「チルノみたいに可愛い子に許されなくても怖くないよ」
そう言うと、チルノは怒った表情を緩めてからそっぽを向いてしまった。
「じゃあ佐天さん、私が怒ります」
それはめちゃくちゃ怖いです。
「だ、大ちゃん」
チルノと同じように窓から入ってきたのは大妖精の大ちゃん。
すっごい表情で私を見ている。
いやもう怒ってるとかそういう次元じゃなく、ただただ恐怖を感じるこれは、なんでしょうか?
咲夜さんや美鈴さん、小悪魔さんはおろかパチュリーさんとレミリア様も大ちゃんの気迫に負けて何も言えずにいる。
「(私の)チルノちゃんにナニしてるんですか佐天さん?」
「えっとね、その……チルノだし良いかなって」
「チルノちゃんだから(性的なこと)しても良いんですか!? 見損ないましたよォっ!」
恐ろしい形相で迫る大ちゃん、一体私にどうしろというのか……。
しかしスカートめくりをやめるということは私に死ねと言うのと同義、あまりにもっ、あまりにもそれは酷な頼みっ!
でも、大ちゃんの恐怖と比べればだいぶましかも……。
遅れて入ってきたルーミアちゃんが、私を見て困った顔をすると大ちゃんへと近づく。
「大ちゃん、そのへんで―――」
声をかけたルーミアちゃん、それが不味かった。
この状態の大ちゃんは言わばデューク東郷、それに等しいなにか、不用意に近づけば……狩られる。
大ちゃんは今まで見たことのないような動きで回転して手に出した“弾幕として使うはず”のクナイをルーミアちゃんのこめかみに突き刺してそのまま回転力を失うことなく私の方をもう一度見る。
「
倒れるルーミアちゃん、たぶん流れ的にはそのうちメカになって帰ってくるはず。
まぁ当面の問題として私にハイライトのない目で迫ってる大ちゃん、この子をどうにかするのが問題。
やばい、大ちゃんのプレッシャーで紅魔館とレミリア様のカリスマがヤバイ。
「大ちゃん、も、もう良いよ」
現状にチルノもやばさを感じたのか大ちゃんを押さえるようにするけれど、大ちゃんは凄い勢いでチルノの方を向く。
「良いの!? 本当に良いの!? 私チルノちゃんのためなら佐天さん殺せるよ!」
友達が遠くに行ってしまいました。そして友達に殺せる発言されたのは始めてです。
「だ、大丈夫だから大ちゃん」
「そう、そっか」
大ちゃんから発せられる威圧感が無くなり、全員が安堵のため息をつく。
力量がどうとかいう問題じゃなく、ただ単純に大ちゃんの威圧感は恐ろしく、もはや全生物のDNAに働きかけてくるほどの恐怖に違いない。うん、そうだ。
さもなくばレミリア様たちがビビるわけがない。
落ち着いたことで、レミリア様が軽く咳払いをする。
「なにはともあれ、とりあえず佐天が帰ってきたので宴会でも開きましょう!」
そう言って後に『わーい!』と喜ぶ美鈴さんやチルノちゃん。
まぁ私はまだ体の調子が完全に回復してるわけじゃないし、やっぱりダルイからあまりはしゃがないようにしよう。
でも、いざ宴会場に言ったらはしゃいじゃいそう。
倒れているルーミアちゃんを見ればこめかみの血で『犯人は腹黒妖精』と書いてある。
下手に詮索するとこちらの命もやばくなるので見てないことにした。
「宴会を開くんじゃ久しぶりに霊夢さんや魔理沙さんに会えますね!」
私がそう言うと全員笑顔を浮かべてくれる。
「じゃあ、宴会の準備はしておくからゆっくり休みなさい」
レミリア様がそれを言うと安心したのか、みんなが順番頷く。
「あと涙子、おかえり」
そう言ったレミリア様、それを機にみんなから“おかえり”という言葉を送られる。
一通り言うと、みんなが病み上がりの私に気を使って部屋を出ていく。
パチュリーさんと咲夜さんが出て、美鈴さんとフランが出て、レミリア様とチルノと大ちゃんが出て行った。
そして部屋に残ったのは私と意識不明のルーミアちゃんと、小悪魔さんの三人。
「大丈夫ですか?」
小悪魔さんの言葉に私は内心ドキッとしたけれど、仮面を付けて私は笑みを浮かべる。
「何がですか?」
「いえ、大丈夫ならこれで失礼します」
出ていく小悪魔さん、私は黙っていることしかできずにいた。
今の言葉で自分の心の中にある負の感情、闇を認識してしまってまたその罪が頭の中に溢れる。
私は『結局』とか『私のせいで』とかそんな並の言葉ばかりが頭の中を一杯にしてく。
やだっ、思い出しちゃダメだっ、紅魔館でこんな姿を見せたらみんなが私を心配しちゃうっ。
少しでもこの苦痛を紛らわしたくて、私は地面に倒れてるルーミアちゃんをベッドの上に上げて、その小さな体を抱きしめて目を瞑る。
他人のぬくもりがあるというだけで気持ちがだいぶ変わってくるのがわかる。
その安堵に、私はすぐに意識を失ってしまった。
あとがき↓ ※あまり物語の余韻を壊したくない方などは見ない方が良いです。
帰宅回! 新章プロローグということもあり短めにしてみたでござる!
今回もコミカル全面な感じでござる。まぁ次回もコメディー半分と行きたいでござるなぁ。
とりあえずルーミアはこんな感じでござるが、拙者かなり好きであるよ!
そして、次回は宴会となるでござるが……まだ東方本編にも禁書超電磁本編にも絡まないことになるでござる。
オリジナルだらけでござるが楽しんでいただければまさに僥倖で候!!