とある無力の幻想郷~紅魔館の佐天さん~   作:王・オブ・王

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28,開幕は鳥と蟲

 パチュリー様曰く、いや魔理沙さんからの言葉らしいんだけど……曰く『女は度胸』らしい。

 なんとなく言ってた意味が今ならわかる気がする。

 まさか私が突然こんなことをさせられるとは思ってもみなかった。

 何の練習もなしに、なんの訓練も教えもなしに……。

 

「なんで私はバイクに乗ってるんですかねぇ?」

 

 そこそこ大きめのバイクに私は上体をほぼ横にして乗っていた。

 森の中を走りながら私は大きくため息をつかざるをえない。

 

「乗れてるんだからいいじゃない?」

 

 私の横を飛ぶ咲夜さんがそう言う。

 まぁ乗って数分で慣れてしまった私も大概だなとは思うけど、向こうでやったらもれなく犯罪だなとか思い出す。

 無免許だけどどうにかなるもんだね、人とかも少ないし道も広いし。

 まぁ飛べないんだからしかたもないんだけど……。

 とりあえず私はアクセル全開でレミリア様の『人里の方が怪しいわね』を信じて人里への道を行く。

 

「―――止まりなさい涙子!」

 

 そんな声に驚いて私はバイクを止めた。咲夜さんの目を見て私はそのバイクから降りる。

 なんだか不穏な空気を肌で感じてから、私は衣装を軽く整えた。

 衣装と言っても戦闘しやすいようにって小悪魔さん(天使)が見繕ってくれた服。

 白いワイシャツに黒いベスト、その上からジャケットを羽織って下はデニム生地のホットパンツに黒いオーバーニーソ、ロングブーツ。

 柵川の制服やメイド服より断然動きやすい服装。

 

「まったく今日は厄日だわ!」

 

 そう言って降りてきたのは鳥の羽をもった女の子。

 夜雀、と咲夜さんが横でつぶやくのを聞いて私はオープンフィンガーの手袋の裾を引っ張りしっかりと手にフィットさせる。

 その女の子とは別に、新しく現れる女の子。

 緑色の髪と二本の触覚を持った女の子はため息交じりに私たちを見据える。

 

「今日は人間のお客が多いみたいだよミスチー」

 

「またぁ!? 今日で三人目よ勘弁して! こうなったら先制よリグル!」

 

 ミスチーと呼ばれた少女が私と咲夜さんを睨む。

 それに頷いたリグルっていう女の子まで私たちを睨んだ。

 これは間違いなく戦闘になる予感!

 咲夜さんはどこからともなくナイフを取り出し私は静かに拳を構える。

 

「行くわよ!」

 

「虫をなめるなよ人間!」

 

「舐めたくもないけどね!」

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 涙子と咲夜、リグルとミスティア(ミスチー)に開始の合図はいらなかった。

 いや、戦場ともなれば開始の合図なんて自分で察するものだ。

 圧倒的にスピードが高いの咲夜が夜雀ことミスティアの方を相手にする。

 それを察した涙子はは余った蛍ことリグルを相手にすることにした。

 リグルは涙子が近づいてこようとするのがわかるとカラフルな弾幕を放つ。

 

「面倒なっ!」

 

 涙子はその弾幕の雨を慣れた様子でかいくぐる。

 伊達に博麗の巫女や普通の魔法使い、それに紅魔の妹の遊び相手をしているわけではないというわけだ。

 弾幕を体を翻したり跳んだりしながら避けていく涙子は案外あっけなくリグルを至近距離まで追い詰めた。

 リグルが後方に下がろうとするも涙子の拳のほうが早く、まっすぐリグルの腹に直撃。

 軽く飛んだリグルが地面スレスレにて体勢を整える。

 

「ごほっ、今日は人間離れした人間ばっかだなぁ」

 

 咳き込みながらそうつぶやくリグルだったが涙子にそれは聞こえてなどいない。

 彼女は軽く拳を空に振るうと再び動き出す。

 そしてまたしてもリグルはカラフルな弾幕を張った。

 

「甘い甘い! 弾幕ごっこは遠距離戦だけじゃないよ!」

 

 飛んで弾幕の中を潜り抜けると、リグルの背後に涙子は着地した。

 即座に背後を向く涙子だがその視界にリグルは移ってはいない。

 意表をつかれて少しばかり呆けそうになるが、すぐに意識を戦場へと戻す。

 

「なにをよそ見してるんだっての!」

 

 声の下方向をみると、自分と同じく跳んでいたリグル。

 確かにリグルは涙子と違って“飛べる”だろうが、今リグルは“跳んで”いたのだ。

 重力と自分の力によってリグルは佐天へと向かって行く。足を向けて落ちてくるリグルを見ながら佐天は回避を選ぼうとした。

 だが……。

 

「ひっ!?」

 

 周囲を囲む無数の“虫たち”に佐天は思考を停止させられた。

 それ故にリグルの高速で落下してくる蹴りは佐天へと直撃する。

 

「リグルキィィィィック!!」

 

 吹き飛ぶ佐天は二メートルほど飛んでから地面にぶつかり停止した。

 綺麗なフォームで着地したリグルは軽く両手で体を叩く。

 そんなリグルの視線の先の佐天は、起き上ろうとするもかなりのダメージに咳き込む。

 

「(っ……まさかこんなにっ、ダメージがキツイっ)」

 

 この弾幕ごっこ(物理)の状況、自分が圧倒的に不利。

 だがそのルール上死ぬような攻撃はされない。ならば多少の無茶は効くと、涙子はその顔に笑みを浮かべて起き上る。

 両手を地面についてそのまま立ち上がると、黙って拳を構えた。

 

「もう食べないから帰ってくれないかなぁ、巫女とか魔法使いとか辻斬りとか勘弁してほしいんだよね」

 

 二人ほど聞き覚えのある言葉が聞こえていたが、涙子はここでこの弾幕ごっこをやめるわけにはいかない。

 自分のデビュー戦であるのだ。意地でも勝って咲夜を安心させてやりたいという気もした。

 だからこそ涙子は両目を鋭く細めた。

 

「私の蹴りを食らってよく立ち上がったけどここまでだよ!」

 

 リグルはポケットから一枚の札を取り出す。

 そう、スペルカードルールと呼ばれるこの弾幕ごっこの神髄はここにあった。

 

「蠢符「リトルバグ」!!」

 

 スペルカード宣言。

 つまり今までの弾幕とは格が違う技が来ると言うこと。それが接近技なのか弾幕なのか、知るすべは涙子にはない。

 リグルの周囲を巡る白い弾幕、小さな弾幕は横と前から襲ってきた。

 涙子は舌打ちをしてからその弾幕の弾道をすべて見極める。

 今後の戦いのことを考えればこんなところで体力消耗というのも御免こうむりたい。

 

「ふぅ、仕方ないね……」

 

 涙子はつぶやいてからジャケットの中に手を入れる。

 そこから出したサバイバルナイフを右手に持ち、左手に小さなバタフライナイフを持つ。

 紅魔館の美鈴とも、咲夜とも、ましてやスカーレット姉妹や魔法使いたちともまったく違う戦い方。

 彼女が紅魔館で生み出した彼女の戦い方、それがナイフと近接とのハイブリットであり、まったく誰もしらない戦う形。

 

 涙子の真横に迫る弾幕、それが当たる寸前涙子は頭を下げて避けると同時に走り出す。

 姿勢を下げて走る涙子の前方から迫る弾を涙子は軽くジャンプして避けると次々と弾を避けながらリグルへと詰め寄る。

 それが彼女のアクロバティックな戦い方。

 数か月前までは誰がこの少女がここまでになると予測できただろうか?

 いや、これも才能の一つだ。

 

「蠢符「リトルバ―――」

 

 スペルカード宣言をするより、佐天涙子がリグル・ナイトバグに接近する方が早かった。

 リグルが動揺していて宣言が遅れたというのもあるが、それでもこの緊迫の状況下における佐天涙子の能力の上昇率の異常性。

 彼女のナイフはリグルの腹部を切り裂いた。

 切れた服、腹を押さえるリグル。

 

「ぐっ……血が、でてない?」 

 

 痛みは確かにあったにもかかわらず血も出ない。

 涙子はすでに少し離れていた。

 両手にナイフを持ちながら彼女は口を開く。

 

「家の魔法使いさん特製のバトルナイフ……魔法によって加工されてる。つまり服も切れるしダメージもあるけど死なないし怪我もないってこと、ある種の拷問とも言ってたけどそれも使い方次第ってとこ、見せてあげるよ!」

 

 そういうと同時に涙子が動き出した。

 リグルはその『蟲を操る程度の能力』にて自分の周囲に蟲の盾を作った。

 先ほどの反応からして蟲は苦手とふんだのだろうけれど、今の佐天涙子にそれも無駄だ。

 周囲に張った虫の盾の右部分が切り裂かれると同時に右腕に鋭い痛みが奔った。

 これでは意味もないと蟲の盾を解いて回避に専念しようとするが、周囲を見渡しても涙子は見当たらない。

 

「どこだ!」

 

「ここだっ!」

 

 上を見れば、落ちてくる涙子が見えた。

 気づいた直後に切り裂かれるリグル、落ちてくる時に肩を切られる。やはり怪我はない。

 涙子はその手にあるナイフをすぐに持ち替えて逆手持ちにすると両腕を振る。

 二撃の斬撃、しかしやはり怪我も出血もない。

 すぐに涙子は背後に飛んだ。

 

「……これ以上やる?」

 

 リグルは片膝をついて、その顔に強がりの笑みを浮かべた。

 

「勘弁かな、さすがにこれ以上は分が悪いし……」

 

 そういって涙子の背後を見るリグルに合わせて涙子も背後を見た。

 そこに立っているのは咲夜で、その腕の中にはミスティア・ローレライがいる。

 まるでアニメのように目を回しているミスティアを見て、佐天はバタフライナイフを軽く振って刃をしまうとサバイバルナイフ共々ジャケットの中にしまう。

 リグルはミスティアを咲夜から受け取りおぶるとため息をついて背を向ける。

 

「なんで今日は、ミスチーじゃないけどほんと厄日だっていうの……そもそもミスチーが喧嘩なんて売らなきゃ」

 

 その愚痴が涙子たちに聞こえていたのかどうかはともかくとしても、戦うことをしなくても良いのは確かだったようだ。

 盛大なため息をつくリグルを背に、涙子は再びバイクにまたがった。

 咲夜もすぐに飛ぶ。

 バイクを走らせる前に咲夜に聞きたいことがあった。

 

「ところで、結構時間かかりました?」

 

「そうでもないけれど、あの程度の相手はすぐに倒せないとね?」

 

 まだまだ課題点というところだろう。

 ため息ついでにもう一度、彼女は今さっきのことを思い出してみた。

 咲夜はともかく、自分は蟲が苦手なのだ。

 あまりにも恐ろしすぎる、でもこの程度のことで驚くぐらいできないと涙子は自らの女子力()をどこかに無くしてしまうと思った。

 蟲でビビるぐらいが丁度良いのだ。

 咲夜のようになりふり構わずになりたくないなと、頭のどこかで考える。

 

「今失礼なこと考えなかった」

 

「うぇへっ!? ま、まさかぁっ!!」

 

 そう言ってことさら否定してみせ、動揺するなと心の中で連呼する涙子だったが、咲夜の視線に緊張してハンドルをおかしな方向にきりそうになる。

 おそらく咲夜の方は感づいてはいるのだろうけれど、危なっかしい涙子の運転が心配になって睨むのをやめた。

 まったく、と思う咲夜。

 別に佐天涙子という少女の方ではなく、レミリア・スカーレットというわが主にだ。

 このバイクを主が持っていると知ったのも数日前、というより紅魔館の大事な貯金を使ってあの“香霖堂”から買ってきたらしい。

 どうやら自分の留守中にわざわざ片腕しかない美鈴に運転させて自分は後ろに乗って帰ってきたらしいけれど、なぜ自分が今まで見つけられなかったか―――それは間違いなくパチュリーの仕業だろう。どうせ透視の魔法みたいな便利なものを使ったに間違いない。

 数日前に見たとき、まさか今日という日に突然涙子に見せて突然乗せるなんて言った時はなにをトチ狂ったのかと思った。可愛い主のことである、タイミングを逃したと考えるのが妥当だろう。

 そしてさらにわけがわからなかったのはその場で名前を付ける議論になったということだ。そのせいで一旦場所を変えて大広間に集まって近年稀にする『紅魔館大家族会議』が始まった。

 

 

 

 時は遡ること数時間前……。

 紅魔館の大広間にて、レミリアをはじめとする紅魔館の幹部である面々と妖精メイドたちが集まる。

 ちなみに今では佐天涙子もすっかり幹部であった。

 まぁなにはともあれその幹部たちがあつまっていたのだ。

 ただ“佐天涙子のバイク”の名前を決めるためだけに、あの悪魔の姉妹も夜遅くまで起きていて片方はわざわざ起こし、あの動かない大図書館もわざわざ動き、寝すぎる門番は起きていて……。

 

「まず私の案だったが……」

 

 レミリアがテーブルの下からフリップボードを出した。

 

「『スカーレット号~疾走する紅魔~』これでどう!?」

 

(センスが一ミリも感じられませんわお嬢様! だいたい“~~”っていらないんじゃなくて!?)

 

 思いっきりツッコミたかったが咲夜はこらえた。

 

「センスが一ミリも感じられませんよ! だいたい“~~”ってなんですか!」

 

 似たようなツッコミを入れた涙子に咲夜は少しシンパシーを感じた。

 不服そうな顔をした悪魔の姉の方は本人に否定されたせいかおとなしくボードを下げる。

 次に出したのは最近動くようになった気がしないでもない大図書館。

 

「本当にだめねレミィは、私はこれよ『サイレント賢者の石フレア』!」

 

(あぁ、月火水木金土日……って)

 

「月火水木金土日……ってやかましい! もっとカッコい名前ないんですか!」

 

 パチュリーは『えっ、カッコよくないの?』と少しばかり、否かなり世間から外れた名前に疑問を抱く。

 ため息に包まれる大広間だが、一番ため息をつきたいのは自分である自信があった咲夜。

 それでもなお我慢できる彼女の器の大きさというか我慢強さは幻想郷トップクラスであろう。

 その次に出したのは美鈴、自信満々の顔だ。

 

「佐天さんのことをまったく考えてないですね二人とも、これは佐天さんのバイクなんです。佐天さんが乗って名乗るに恥じない名前を出すべきでしょう」

 

(良いこと言うわね美鈴!!)

 

「これです! 『ホイール・オブ・佐天号』!」

 

(前言撤回よ美鈴!!)

 

「なんだか惜しい! てか自分の名前つけたくないです!」

 

「こんなこともあろうかともう一品『666(オーメン)・ウロボロス・佐天号!』」

 

「私の話聞いてないよ!?」

 

 ツッコミ疲れたのか肩で息をしながら座ってしまった涙子に咲夜は心の中で合掌した。

 しかし咲夜自身ここまでツッコミを入れない自分をほめてあげたいと思う。

 明日はレミリアにニンニクスープを出すことで気持ちを押さえようと決める。

 とりあえず次はフランドールのようだと咲夜は腹筋に力を込めた。下手をすれば崩壊もまぬがれないだろう。

 

「次は私だね!」

 

 夜中に目を覚ましてもなお楽しそうなフランドール・スカーレットがボードを晒す。

 

「『†紅 蓮(スカーレット チェイン)† ~迸る紅~』っていうのはどうかしら!?」

 

「ぶふぉっ!?」

 

 思わず吹き出してしまう咲夜だが時間を止めてギリギリセーフ。

 皆が止まっている空間でただ一人だけ腹を抱えて地面にうずくまった。

 まずい、このままでは自分がキュッとされてしまうと考えた咲夜は自らに強烈な腹パンを打ち込んで冷静さを取り戻すと時間の経過を元に戻した。

 

「てかその“†”と“~~”はどうやって読むの!? 姉妹そろって同じことをやる!? ていうか普通にカッコ良い名前ないんですかぁっ!?」

 

 さすがに涙子も自らの愛機になるであろう子にそのような名前をつけたくはなかった。

 痛いを通り越してもう字面でしかわけがわからなくなっている。

 なんだかまともな名前はないものかと模索する紅魔館のメンバー。正直これ以上は時間の無駄だとは思う咲夜だったがそれよりもこの大喜利の行く末を見てみたいという好奇心のほうが強い。

 けれどそれも時間の問題。

 スッ―――と手を挙げたのは涙子の紅魔館での良心こと小悪魔だった。

 

「じゃあ、悪魔の館のよしみってことで、少しあれかもしれませんが『フェンリル』というのはどうでしょう?」

 

 そんな名前を聞くとレミリアとフランからは『地味』と、美鈴からは『佐天という名前が入っていない』と、パチュリーからは『五行を入れたい』と色々と注文が入る。

 咲夜はそんな中自分なりに名前を考えようとしていたが面々の名前が頭の中をよぎり時間を止めて笑いを止めるので精一杯だ。

 

「なるほど、小悪魔さんはやっぱり良い名前出してくれますね~」

 

 先ほどのツッコミラッシュのときと比べるとおとなしく頷く涙子に紅魔館の面々は美鈴以外不服そうな顔をした。

 それに気づいてか少しばかり冷や汗を流す小悪魔。

 

「どうしてそんな名前にしようと思ったのかしら? 私たちはそれぞれ由来もあっての名前よ、カッコいいなんて理由だけじゃないでしょうねぇ?」

 

 なんでそんなに怒っているのか、とも思う小悪魔だがおとなしくレミリアの言葉に従うことにした。

 理由を述べるために少しだけ自分のペースを取り戻そうと咳払い。

 咲夜は先ほどから少しも喋らない、否喋れない。

 

「やはり早く走る獣ということでフェンリルというのもあるんですが、別名の訳が『悪評高き狼』と言いまして紅魔館のメイドである涙子さんの“足”にはぴったりかなと、それにかの上顎は天にも届くと言われた狼の名前をというのも」

 

 さらに次々と答えていく小悪魔に、最初は不服そうだった紅魔館の面々は徐々に納得した顔になっていく。

 これぞ悪魔の話術、人々を惑わすかの種族の話術……だったらよかったのだが今回はただ紅魔館のヒトがチョロイだけである。

 涙子は小悪魔の言葉に何度もうなずいて、結果そのバイクの名前は『フェンリル』となった。

 ちなみに佐天涙子曰く『チルノに乗せたらなんか似合う気がする』である。

 

 

 

 現在に至る経緯の一部はこれである。

 つまり、巫女や魔法使いに遅れてこの二人が異変解決に当たりだしたのはバイクの命名が大きな原因でだ。

 そもそも涙子が飛べないというのも原因の一つではあるのだが、普通の人間は飛べない。

 佐天涙子の常識はおかしくない。

 

「そろそろ、人里が見えてき―――あれ?」

 

 涙子の声に咲夜は頷く。

 バイクに乗った涙子と咲夜は人里へと入るのだった。

 事故が起きないようにゆっくりとバイクを走らせる涙子と合わせて飛ぶ咲夜。

 だが何かがおかしい。いや、間違いなくおかしいのだ。

 普段人里がある場所に人里がない。

 

 そんな時一つの影が二人の前に現れる。

 

「お前たち!」

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「お前たち!」

 

 そんな声に私、佐天涙子と咲夜さんは止まる。

 いやぁ聞きなれた声だけど……。

 咲夜さんはナイフを構えるけれどそれも杞憂だと思う。

 

「って佐天と紅魔館のメイドか?」

 

「その通りですよ慧音先生、それよりもこれはなんですか?」

 

 私はバイクこと『フェンリル』から降りることなくそう聞く。

 慧音さんは私のまたがっているそれを見てから訝しげな顔をして咲夜さんを一目見る。

 その後私の方を向いて頷いた。

 

「いや、今宵の異変が気になってな……満月が出ないし月も動かない。人里を守るために一時的に消しているというわけだ」

 

 いやいや、『一時的に消している』じゃないっすよ先生。

 常識からずいぶんぶっ飛んだ学園生活を送ってるって自負してたつもりの佐天さんも驚愕です。

 でもあまり驚かないでいられる自分に一番びっくりしながら私は『そうですか』と返す。

 横の咲夜さんを見れば何も言わずに頷く。

 

「えっと慧音さん」

 

「今宵の異変の犯人なら……たぶんあっちだ。心当たりがないでもない」

 

 人里の方ってことしかわからなかったから慧音さんに会えたのはずいぶん幸運だったと思う。

 とりあえず私は人がいないともわかったことだしとハンドルを握って慧音先生の方に視線をやった。

 初見ということもあって少しばかり興味深そうに私のフェンリルを見る慧音さん。

 

「今度じっくり見せに来ますよ」

 

「ほ、本当か、楽しみにしておく」

 

 そう言って何度か頷く慧音さん。

 私はアクセル全開で慧音さんが指さした方向へと走り出す。

 咲夜さんは時を止めたのかいつのまにやら私の後ろに座っている。

 無免許、挙句に二人乗り、今日はじめてのバイクで私ったらだいぶやらかしてるよね。

 

 改めて私は幻想郷で『常識』は通用しないんだなと思わされるのだった。

 

 そしてこの夜―――私は真の非常識を知ることとなる。

 

 

 

 

 

 

 




あとがき↓  ※あまり物語の余韻を壊したくない方などは見ない方が良いです。















言いたいことはわかる! まぁ戦闘が呆気なさ過ぎたというのは確かにわかるでござるよ。
しかし、今回こんぐらいにしなくては次回からの戦闘で互角にもならないので佐天さん強めになっているでござるよ。やはり弾幕ごっこ(物理)は最高でござるな。
さて、次回の相手は誰になるのか!?

そういえばバイクを出したのは佐天さんが一人でも動けるようにって感じでござるな。
これも伏線の一つなんてことを拙者はつぶやいてみたり。
では、次回もお楽しみいただければまさに僥倖!


そういえば超電磁砲の二期も終了!
できればあそこも書きたいのでござるがあいにく時系列が……。
とりあえず頑張る所存にて候!
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