とある無力の幻想郷~紅魔館の佐天さん~   作:王・オブ・王

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31,似ているようで違うもの

 佐天涙子と鈴仙・優曇華院・イナバが対峙する。お互い動くことなくただ眼を合わせているが、先に痺れを切らして動いたのは鈴仙の方だった。走り出すと共に両手を涙子に向けて、その手は銃の形を作っている。瞬間、その両手の人差し指から放たれる弾丸のような弾幕に涙子は舌打ちをして横に転がる。

 銃弾が自分の居た場所に突き刺さるが、弾幕勝負で使うものなのだから致命的な殺傷性はないだろうが、負けるわけにいかないのだから当たるわけにもいかない。

 

「ハッ、さっそくだもんね!」

 

 涙子は笑ってサバイバルナイフを右手で逆手持ちし、投擲用ナイフを一本左手で持つとすぐに鈴仙へと走る。鈴仙は鈴仙で涙子への不意打ちを失敗したことに舌打ちをして今度は下がりながら両手で銃弾を放つ。

 だが涙子とてバカではない。ナイフを見ずに取り出す程度なんでもなく、そして取り出すのに眼を使わないということは鈴仙の方に眼を向けていて、その指先を見ているのだから射線上ぐらい読める。

 

「おっと!」

「避けないでよね!」

「それは無理、ぃっ!?」

 

 地を蹴ると同時に体をひねって鈴仙から放たれる銃弾を避けていくも、やはり解放せずして鈴仙に勝つのは無理というものだ。だが切り札たるアレをそう簡単に使ってしまっていいのだろうかという気もして、その葛藤のうちに涙子は動こうと思った。一度考えるのをやめて左手のナイフを投擲する。

 

「わっ!?」

 

 鈴仙は驚いて体を後ろに逸らしナイフを避ける。だが涙子はその隙を見てすぐに走り出し、サバイバルナイフを至近距離で振るうが、鈴仙は素早く上体を起こして後ろに下がった。

 

「おっと!」

「避けんなっての!」

「無理に決まってるでしょ、ぉ!?」

 

 先ほどと同じようなやり取りをして、空いている左手でナイフをさらに投擲する。そのナイフが鈴仙の肩を掠めて、もちろん殺傷能力をパチュリーの魔法で消してあるので痺れるような痛みが伝わるはずなの……だが?

 鈴仙は苦痛に顔をしかめることもなく、笑みを浮かべて人差し指を涙子へと向ける。

 

「バーン♪」

 

 涙子は指の先から逃げるために、すぐ体を横へと逸らすが……弾丸が通ることはない。

 

「な、んで?」

 

 そうつぶやいた時にはもう遅い。背後から銃弾が涙子の背中へと直撃する。

 

「が……っ!?」

 

 倒れそうになりながらもなんとか両足でこらえて、地を蹴って鈴仙から距離を取ると自分が先ほど居た場所

背後を見る。しかしそこに誰かがいるわけなんてなかった。

 

「本当に、貴女一人?」

「当然……せっかく一対一になったのに水を差させるなんてするわけないって」

 

 笑みを浮かべてそういう鈴仙に、嘘を言っているような気配はない。もしかしたらものすごい嘘が上手なウサギなのかもしれないがそれでも違うとなんとなく涙子にはわかった。ならば話は簡単だ、視線上の鈴仙と違う場所から来た攻撃の正体は十中八九“程度の能力”と考えて良い、だとしたら自分はまずその攻撃の正体をさぐるとこからはじめなければならないのだが、まずは様子見。

 あと十一本のバタフライナイフから三本を左手の指に挟み、腰を落とす。

 鈴仙の両手が涙子へと向けられ、そこから銃弾が飛び出した。

 

「ッ!」

 

 走りだす涙子は不規則に向きを変更しながら、しかし確実に鈴仙へと近づいていく。

 

「こいつぅっ!」

「そこっ!」

 

 涙子が左手のナイフを一本投げる。それでも鈴仙は横に転がって軽々避けて涙子へと指を向け、撃つ。再び放たれた銃弾を軽く体を逸らして避けた涙子はさらにその鈴仙に左手のナイフをもう一本投げた。そのナイフを避けようとする鈴仙だったがさらにもう一本ナイフは投げられ、一本目を避けた鈴仙の片足を掠る。しかし反応はやはり無く、そのまま再び銃口(指先)が涙子へと向けられる。

 その射線上から避けた涙子、そして十分な回避距離だが地面を蹴って上に跳ぶ。

 

「やっぱり!」

 

 銃弾は涙子の背後から飛ぶ、だが飛んできた砲口を見てもなにも見えないことを思えば……。

 着地した涙子は鈴仙を見て笑みを浮かべる。

 

「幻覚、かな?」

「……すご、さっそく見破るとは思っても無かった」

 

 そう言うと鈴仙も笑みを浮かべて軽く拍手をして見せた。涙子も少しばかり気を緩める。

 

「そう、その通り幻術だよ! いつかけたのかって? そりゃ最初から、目が合った時からさ!」

 

 鈴仙は赤い瞳を輝かせて、満月をバックに笑う。

 

「戦いが始まった時から、貴女はもう狂ってたんだよ!」

 

 狂っていた? と佐天は軽く疑問をぶつけてみる。

 

「狂気を操る程度の能力。モノの波長を操って狂わせる能力」

 

 なんとなくだが理解できた。つまりは幻術、つまるところはそうだろう、だがそれより涙子にとって幸運だったのはカマをかけて鈴仙が事実をあっさり口にしてくれたことだ。涙子は内心のところ“透視能力”か“幻術能力”か“空間能力”のいずれかだと思っていた。だからこそ運試しに出たのだがこうもあっさり話してくれたことは幸運以外のなにものでもない。

 だが問題はここからだ……。

 

「でも、それを知ったところで私を倒せるかな?」

 

 そういうと鈴仙は笑って二人になる。いや、正確には片方が姿を現したか、それともまた偽物を作ったか……。

 なら自分がこの状況を打破する方法は一つしかなかった。

 左手を前に突き出して右手で腕を押さえる。

 

「妖魔結界! 血呪封印、解除!」

 

 涙子の左手から溢れ出る紅の妖気。

 

「“龍”解放!」

 

 その言葉と共に涙子の体中から溢れ出る力は間違いなく妖怪のものだ。雰囲気が変わった涙子にわずかに動揺する鈴仙だが、すぐに我に返って二人の鈴仙が銃口(指先)を涙子に向ける。だがそれも妖怪の力を持った涙子には無駄なことだ。

 眼を瞑る涙子が思い出すのは美鈴との修行。庭で妖精メイドたちにも手伝ってもらった修行を思い出す。

 

『涙子、気を使う程度の能力は上げられないけど、気を掴む能力なら教えて上げれる』

 

 美鈴の言葉を思い出し、ジッとする。

 

『気を掴むには集中力が必要なの。まぁ“私みたいな妖怪”の方が気を掴むのって楽なんだけど、無理じゃない』

 

 考えるのではなく、感じる。早い話がそういう感覚で良いらしく、当時の涙子にはわからなかったが今ならわかっていた。殺気や敵意を感じるのとあまり変わりは無い、ただそれ以上に微妙な気配のようなものを掴む……。

 ―――前の二体はやっぱり偽物、なら本物は……そこだっ!

 涙子は振り向くと同時に投擲用ナイフを三本さらに取り出すと同時に投げる。

 

「っ!?」

 

 そこに感じる気配は間違いなく鈴仙のもので、ナイフが当たったのかどうかはわからないが涙子は走ってその気配を逃さずに蹴りを入れる。

 

「なっ!」

 

 手ごたえはあるが、どこに当たったかなんてわかるはずもないので打ち所が悪くないのを信じて涙子はさらにそのまま足を振り切って鈴仙を地面に転がす。さすがに幻覚を作り続ける、つまりは波長を狂わせ続けることもできなくなったのか、涙子の周囲にいる鈴仙の幻影は消えた。

 涙子は姿を現した鈴仙をそのオッドアイで捉える。右手のサバイバルナイフを軽く回転させる。

 

「さて、そろそろ降参しない?」

「……いつも、姫様のわがままに付き合わされてっ」

「……あるある、なんか知らないうちに付き合わされたりね」

 

 固法や黒子を思い出しながら何度も深々と頷く涙子、なんとなく似通った雰囲気を感じた。

 

「てゐの悪戯にいつの間にか付き合わされていつの間にか師匠に怒られてて」

「あぁ~、なるほどねぇ」

 

 少し違うが、涙子にもなんとなく理解できた。とばっちりをくっているという、貧乏くじを引いているということがわかった。だからこそ同情を感じざるをえないのだが今はお互い敵同士、それでもお互いがお互いに謎のシンパシーを感じて少しばかり感情移入してしまう。そして感情移入したからこそ、ここでお互い退くわけにはいかないとわかる。

 

「でも今回は、私も私のために“騙さなきゃ”ならない!」

 

 笑みを浮かべながらも、必死さが浮かぶ鈴仙の表情。なんとなく涙子は自分自身を重ねた。

 

「狂えぇっ!」

 

 鈴仙の赤い瞳が輝き、涙子の周囲に鈴仙が先ほどとは桁違いの数現れる。総計するなら二十人は超えているだろう。涙子もさすがに動揺を隠せずにいたが、すぐに眼を瞑り気を掴もうとする。

 

「赤眼「望見円月(ルナティックブラスト)」ォッ!」

 

 さすがに気を掴む暇なんて無かった。涙子はすぐに叫びを上げられた方を見るがそちらから攻撃が飛んでくることはなく、振り向いた時には赤いレーザーが自分を飲み込んだ。

 レーザーが消えた時には涙子は大きなダメージを受けて、地面に膝をついていた。だがこの戦い、一瞬のスキが命取りであった。鈴仙が放った銃弾、それを妖怪の動体視力をもってしてサバイバルナイフで切り裂く。数発を素早く切り裂いてそのまま立ち上がり、走る。だが鈴仙は“笑って”いた。それに僅かに何か嫌な予感を感じるも、涙子には今、迫るしかないのだ。だからこそさらに銃弾を斬る速度と迫る速度を上げるが、銃弾にサバイバルナイフが当たった瞬間、嫌な音がした。

 

「えっ」

 

 銃弾が、爆発を起こす。それにやられた涙子は爆発と共に吹き飛んで地面に転がった。アリスのように突然の豹変に驚いてくれればもう少しやりようはあったのだが、さすがに相性が悪く、油断もしてくれやしない。

 

「これでっ……」

 

 大の字で倒れている涙子を見て、勝ったと思った鈴仙だったが……涙子がそのまま勢いよく起き上る。まだ続くのかと、さらに赤い眼を輝かせて周囲に分身を作り上げた。起き上った涙子が前髪を軽く掻き上げて紅の瞳を輝かせる。

 

「妖魔結界、血呪封印―――解除」

 

 鈴仙たちが一斉に指を向けるが、どれが本物かはすでにわからない。

 

「“鬼”―――解放!」

 

 

 

 飛んでいる咲夜の眼が、わずかに細められた。それに気づいたバイク(フェンリル)に乗っているチルノが少し不思議そうにする。

 

「どうしたの?」

「涙子、大丈夫かしら……」

 

 そう言った咲夜を見て笑いながら前方を見るチルノ。

 

「大丈夫に決まってるでしょ、さいきょーの親友をあまり舐めないことね」

「なっ、そんなこと言ったら家族を心配するのは当然でしょう」

 

 そんなやりとりをしている二人を見て、呆れたという風に霊夢はため息をつく。まったく異変中にのんきなものだと思うが、よくよく考えれば自分や紫も大差ないと頷く。そして飛んでいる視界の先にようやく、黒幕が潜んでいそうな居場所を見つけた。

 

「永遠亭?」

 

 つぶやく霊夢と咲夜の二人。そして紫が扇子で口元を隠しながらその屋敷を見ていると、チルノがバイク(フェンリル)から降りて永遠亭の入り口を見つめる。その入り口にいるのは少女であり、チルノと同じ歳ぐらいの兎の耳を持った少女はチルノを見て口元に笑みを浮かべた。

 チルノも笑みを浮かべる。

 

「あたいはここで弾幕勝負ってわけね、さて咲夜、霊夢、紫……“アイツ”らは任せたわよ」

「はいはい、じゃあ行きましょうか霊夢」

「な、あんた援護しなくていいの?」

「だってさいきょーのチルノがここは行けって言ってるんだから良いじゃない」

 

 そういうと、紫がスキマを開いてその少女の背後に同じようなスキマを開く。その中に入る三人が少女の背後から出て永遠亭へと入って言った。スキマが閉じると同時に、チルノの背中の六枚の氷の羽が少し大きくなり、冷気がチルノの周囲を漂う。

 夏の日にも関わらず、寒気を感じた少女は耳を震わせる。

 

「寒い寒い、いつものチルノじゃないみたい」

「悪いわねてゐ、いつもみたいに構ってらんないのよ」

「……いつも遊ばれてるだけのくせに」

「なっ、付き合ってやってんのよ!」

 

 クールな表情だったチルノだが、てゐと呼ばれた少女に挑発されたことによりムキになって言い返す。

 

「ゴホン……でも遊んでやれないのはホントだから、さっさと片付ける、わよ!」

 

 今度こそしっかりと決めて、チルノは自分の左右に氷の塊を出現させて……射出する。

 

「チルノなんかが、調子に乗り過ぎなんじゃな~い?」

 

 ケラケラ笑いながら、てゐは軽く横に跳んで氷塊を避けた。だがチルノだって弾幕勝負のベテランであり、さらに弾幕勝負の負け戦のプロである。

 さらに避けられた場所にも氷の弾幕を放つが、それらを呆気なく避けてき、このてゐと言う少女は正真正銘の因幡の素兎であり、幻想郷でのかなりの古参だ。そしてこの少女はとんでもなく―――。

 

「さて、そろそろやろっかな、今だ! 全員撃てー!」

 

 ―――腹黒い。

 チルノの周囲から大量の弾幕が放たれた。別に弾幕勝負に一対一というルールも無い。ならば当然こういうこともルール違反ではない、ならばこれは正当か? いや、正当だろうけれど、古参の妖怪としては間違っているだろう。

 チルノは舌打ちをして上空へと舞い上がり月を背中に自らに迫る弾幕をなんとか避けた。だがそれでも相手は上空のチルノに弾幕を放ち、チルノは弾幕が放たれる場所をしっかりと確認して氷塊をいくつも作りだす。

 

「雹符「ヘイルストーム」!」

 

 スペルカードの名を叫ぶと同時に、チルノが大きな氷塊と共に小さな氷塊を大量に地に落とす。やはり鈴仙やアリスのスペルカードと比べればずいぶん甘い弾幕だが格下を倒すにはあまりにも十分……しかし兎たちが格下とも限らず、それ以前にチルノの格下なんて異変に関わっていることがあまりにも少ない。チルノは弾幕を放ちながらも相手から放たれる弾幕を避けていく。

 

「チィッ!」

「私を誰だと思ってんのかなチルノ?」

 

 声は背後からした。弾幕で視界が隠れている挙句に集中しててゐのことを見られなかったことが裏目に出て、いやそもそもチルノの視界を塞ぐことがもともとのてゐの作戦だったのかもしれない。どちらにせよチルノの背後にはてゐが居て、そのてゐはチルノの背後から弾幕を放ちそのまま落とす。

 

「がっ!?」

 

 落ちていくチルノは空中で体勢を整え下に落ちる。地面に膝をつきながらもなんとか起き上ろうとしたが、行動が遅い。チルノが顔を上げると掌が目の前にあり、それはすでに目の前にてゐがいるということを悟らせる。

 

「ッ!」

 

 動こうとしてももう遅い。弾幕が放たれると共に吹き飛んだチルノが地面を転がりうつ伏せのまま倒れる。

 少女のような容姿にも関わらず、黒い笑みを浮かべてチルノを笑うてゐ。

 

「私の大事な幼女に、なにしてくれてるんですかねぇ?」

 

 どこからか、そんな言葉が聞こえてきた。てゐの笑いが止まり、同時に周囲の兎たちがてゐの背後にドサドサと一斉に落ちる。なぜこんなことになっているのか、なんて考える必要も無くこんなことをやったのは間違いなく今のロリコンである。

 てゐがチルノの方を見ると、チルノの前に一人の妖怪。

 

「おやおや、幼女だらけ……撮り放題、これは滾りますね」

 

 黒い髪の女が、そこには居た。

 

「清く正しい射命丸文、幼女(チルノ)さんのピンチに推参いたしました」

 

 ロリコンの変態とはとても思えないとびっきりの笑顔を浮かべ、そこには烏天狗が立っていた。

 

 

 

 

 




あとがき↓  ※あまり物語の余韻を壊したくない方などは見ない方が良いです。















更新できるうちにしておこうと、どうも王と書いてキングでございます!
さてさて、前書でも言わせていただいたように、活動報告お読みになってくだされば助かります!
今回の戦い、少し短かったかな? と思うも正直鈴仙との戦いは置いといて拙者としては早くのんびりとした絡みを佐天さんと鈴仙にさせたい……。
さっさと異変を終わらせるために頑張りますよ!

では、次回もお楽しみいただければまさに僥倖!
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