とある無力の幻想郷~紅魔館の佐天さん~   作:王・オブ・王

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43、神ならぬ身にて

 あれから私たちは春上さんが検査を受けている研究所へとやってきた。

 私が差し入れたジュースにも手を付けることがないあたり、初春ったら相当怒ってるんだろうなとは思う。

 結構、メンタルにダメージを受けるけど今更そんなこと言っても仕方ないよねぇ。

 

 テレスティーナさんから『春上さんの検査中』という話を受けると共に、私たち四人は大きな部屋へと連れてこられた。

 ソファに座る白井さんと初春をよそに、私と御坂さんがかざってある人形やらを見る。

 

「なんか、研究所っぽくないですね……って」

 

 御坂さんは人形に心を躍らせてるみたいだけど、まぁ良いでしょう。

 とりあえず目的は話を聞くことだからね。

 

「女がてらに災害救助なんてやっていると、こういう純粋なものが好きって意外に思われるのよねー」

 

 ……アイェェ!?

 

「テレスティーナさんの趣味ですか!?」

「そっ」

 

 ニコッっと笑って言うテレスティーナさんに驚きながらも、私は笑顔でうなずくことにした。

 驚きはするけど悪い趣味ってわけじゃないしね……少なからすレミリア様よりは全然良いです、はい。

 

 とりあえず、御坂さんもソファに座って、私は立って話を聞くことにした。

 白井さんが立とうと言うけれど、初春の隣ってのも初春が今は嫌そうなんだよね……さすが、頑固というかなんというか、ともかく私は立って話を聞くことにして、テレスティーナさんのことを見る。

 

「さて、改めまして、先進救助隊付属研究所所長のテレスティーナです」

 

 ん?

 

「所長!?」

 

 驚いた声を上げる御坂さん。

 

「そう言えば白井さん以外は名前は聞いてなかったわね」

 

 ニコッと笑うテレスティーナさんに、御坂さんがまず口を開いた。

 

「あっ、御坂美琴です」

「もしかして常盤台の!? こんなところであのレールガンに会えるなんて、光栄だわ」

「あ、いえ」

 

 そろそろ慣れましょうよ御坂さん、それなりの人なんですからぁ。

 次にとりあえず私が自己紹介することにした。

 

「佐天涙子です、柵川中学ってとこなんですけど」

「へぇ、御坂さんのお友達ってことは貴女も相当な能力者なのかしら?」

「いえ、私はレベル0ですよ」

「そうなの、私てっきり……ごめんなさい」

 

 いや、謝られる方が私的にはって感じなんですけど……まぁ良いか。

 

「よろしくお願いします」

 

 軽く礼をすると、ちょっと驚いた表情をした後にテレスティーナさんも笑顔で軽く会釈。

 そして最後に初春なのだけれど……。

 

風紀委員(ジャッジメント)177支部の初春飾利です!」

「あら、じゃあ白井さんと一緒ね」

「あの、春上さんは干渉者じゃ、犯人じゃないですよね!?」

 

 がっつき過ぎだって初春。

 

「試してみる?」

「へ?」

「貴女、好きな色は?」

「……しいて言えば黄色ですけど」

「手を出して」

 

 テレスティーナさんはポケットから丸いチョコがたくさん入っている筒を出して、数度振る。

 初春が手を出すと、テレスティーナさんが一つ初春の手にチョコを落とす。

 その色は黄色。

 

「あら、幸先良いわね」

 

 ……は?

 

 

 

 私たちはテレスティーナさんと共に研究所の部屋へとやってきた。

 ガラスの向こうに見える春上さんに、初春が名前を呼ぶけど……まぁ、聞こえないよね。

 テレスティーナさんが結果を確認しているけれど、初春はそんなのを待つのさえそわそわしている。

 

「安心して、彼女は干渉者じゃないわ」

 

 そんな言葉に安心するみんな、もちろん私もだけどね。

 

「確かに彼女はレベル2のテレパス、しかも受信専門ね、発信はできない」

「でもバンクに登録されたデータでは特定波長下においてはレベル以上の能力を―――」

「佐天さん、まだそんなことを!」

 

 私に怒っている初春だけれど、白井さんが気になってそうだし……今回はこの佐天さんがこうする必要があるってもんですよ。

 

「調べてみる限り、どうやら相手が限られるということみたいねその相手だけは、距離や障害物の有無に関わらず、確実に捉えることができる。どちらにせよ彼女にAIM拡散力場への干渉なんて不可能」

「ほら!ほらぁ!」

「初春、別に佐天さんは」

「じゃあ、誰が干渉者なんだろ?」

 

 そう、それだよね。

 気づけば、春上さんは先に病室へ行ったらしく、私たちは揃って春上さんがいる病室へと向かった。

 それにしてもなんだか、違和感を感じるんだよね……。

 

 

 

 私たちが病室へと行くと、春上さんが居た。

 寝かけていたであろう春上さんが起きると、初春がすぐに声をかける。

 

「私、また……」

「大丈夫ですよ、なにも心配しなくていいですから」

 

 春上さんが胸元を気にしてから、驚いた表情をした。

 

「はい、大事なものなんですよね?」

 

 初春が春上さんに渡したそれは、写真を入れるシャトルのようなものだ。っていうかシャトルかな、あれは?

 

「うん、友達との思い出なの」

「友達って探しているって?」

 

 御坂さんと初春がいる側の反対に私と白井さんが居て、ベッドには春上さんで、その上の春上さんがそのシャトルを抱きながら微笑む。

 優しそうに、大事な何かを思うように……それを見てるとそろそろ私もしっかりしないとな。

 

「声が聞こえるの」

「声?」

「うん」

 

 テレパスか……。

 

「たまにだけど、でもそれを聞いてるとぼぉっとしちゃって……」

「じゃあ、あの時もですの?」

「中になにか入ってるんですか?」

 

 初春の質問に、春上さんがうなずいてシャトルを開ける。

 みんなでそれを覗き込むと、私と御坂さんの二人だけが理解して顔をしかめることになった。

 でも黙っていることにする。

 

「枝先絆理ちゃんって言うの」

「その子っ、あの時の……」

 

 えぇ、言っちゃいます?

 

「絆理ちゃんを知ってるの?」

 

 まぁ、ここは御坂さんだけ知っているということで……。

 

「あのね、私もね……置き去り(チャイルドエラー)なの」

 

 寂しそうに、春上さんは笑った。

 

「私と絆理ちゃんは同じチャイルドエラーの施設に居たの……私、人見知りで友達もいなくて……でも、絆理ちゃんとだけは仲良くなれたの。精神感応(テレパシー)でお話ししてくれてたの、けど、別の施設に移されて……それっきり」

 

 それからあそこに移されたとしたら、もう救いようの無い話だ。

 

「でも、最近になって聞こえるの……“助けて”って“とっても苦しい”って……でも、どこにいるのか、どうしてそんなに苦しいのか、わからないの……助けてあげたいのに、私……なにもできないの……」

「大丈夫ですよ!」

 

 涙ぐむ春上さんに、初春が言う。

 

「お友達はきっと見つかります。いえ、私が見つけてみせます! なんてったって、風紀委員(ジャッジメント)ですから!」

「初春さんっ……」

 

 すでに泣いている春上さんに笑顔で頷く。

 さすが初春だね。

 そう、それでいいよ……。

 

「ですから、安心してください」

 

 笑みを浮かべる初春に、安心している春上さん。

 

「初春さん、ありがとうなの」

「検査で疲れてませんか? 少し休んだ方が……」

「大丈夫なの」

 

 それから数分間、二人は仲睦まじく話していたけど、私は部屋の外に聞き耳を立てることにした。

 先に出ていた二人がテレスティーナさんを話をしている。

 

「木原、まさか木原幻生?」

 

 確か、木原って言えば木山先生の記憶で出てたおじいさんだよね……私、良く覚えてた!

 テレスティーナさんの話を聞けば、木原幻生というおじいさんはずいぶんその手の人たちには有名で、相当なマッドサイエンティストだったらしい。

 どうやらその実験が原因にあるなら、その被害者が鑑賞者である可能性があるっていうのがテレスティーナさんの見解。

 

「どういうことですの?」

「その子たちが暴走能力者になってるってこと」

「え、でもあの子たちは今でも眠り続けてるって……」

「意識が無いまま能力が暴走しているとしたら?」

 

 そんなこと、あるんですか……?

 

「意図的な干渉ではなく、無意識のうちにポルターガイストを起こしていると?」

「可能性はあるわ、その子たちは今どうしているの?」

「事件後アンチスキルが捜索したんですけれど、発見には至っていませんの」

 

 なるほどねぇ。

 

「じゃあ探し出すのが先決ね……今日のラッキーカラーはピンク」

 

 なんかじゃらじゃら音してるけど、これさっきのチョコ?

 

「幸先良いわね」

 

 またですかぁ……。

 

 

 

 帰りの電車内で、みんなで座りながら木山先生の話を御坂さんがしていく。

 それについて黙って聞いている初春だけれど、私は言うしかないでしょう。

 

「初春、木山先生の生徒たちのこと調べてくれる?」

「佐天さん……次は春上さんの友達を疑うんですか……?」

 

 私は顔には決して出さないけれど、私と同じく春上さんに原因の一端があると思っていた白井さんが顔をしかめた。

 

「初春、あんたいい加減にしなよ!」

 

 つい、大きな声を出しちゃってもんで……まったく冷静さが足りないななんて、私はおとなしく座って黙っていることにした。

 これに関しては初春が自分の意思で調べてもらわないといけないしさ……。

 はぁ、まだまだだなぁ。

 

 

 

 そして夜、晩御飯を作って私は紫さんと食べる。

 なんだか引きずっちゃっててどうしようもないんだよなぁ。

 

「どうかしたの?」

「いやー初春とちょっと喧嘩みたいな感じに」

「貴女たちが?」

 

 ちょっと驚いた様子の紫さんだけれど、数日しか見てない紫さんでもわかるぐらい私と初春は友達をやってたんだろうなぁとは思う。

 それにしても、今回ばかりは私が悪いからなぁ……でも白井さんと初春が喧嘩するよりはマシかな。

 私自身間違ったことをしてるつもりは無いんだけど、それでも友達としてはって感じだよねぇ。

 

「……そういうこともあるわよ、友達なんだから」

 

 紫さん?

 

「なによ、意外そうな顔して……私だってそういうこともあるもの、それに貴女がそんな顔してるのはあまり好きじゃないし」

 

 デレた!?

 

「いつもの能天気な顔の方が良いわ」

「そうですかぁ」

 

 ダメだったみたいです、なんとか心を開いてくれればなぁとは思うんですけど……。

 まぁ、ともかく仲直りが先決だよねぇ。

 

「ありがとうございます、八雲さん」

「……紫で、良いわよ別に」

 

 フイッ、とよそを向く紫さん、不覚にもこの佐天さんはときめきかけた。

 いやはや、なんと言えば良いんでしょうねぇ……。

 一応自分に私はノンケだと言い聞かせるとしよう、うん!

 

 

 

 翌日、私は風紀委員(ジャッジメント)177支部の前に来てから、やはり帰ることにした。

 さすがにこの状況で顔を出せるほど私も厚顔無恥じゃないし、初春とは顔を合わせ辛いってもんだし。

 でもそんなときに御坂さんと遭遇して、私たち二人は公園のベンチへと移動して飲み物を飲む。

 

「顔、出し辛くて……」

「そうだね、私たちギクシャクしちゃってるもんね。枝先さん、見つけないとね……春上さんのためにも、初春さんのためにも……私たちのためにも」

 

 ニコッと笑って言う御坂さんを見ると、適わないなと思う。

 御坂さんに電話がかかってきて、すぐに私たちは場所を移動することになった。

 いつものカフェに移動することになっちゃって、とりあえず冷たいジェラードの一気飲みは良くないって私は頭のキーンを味わいながら思った。

 

 

 それから、私たちが向かった先で待っていたテレスティーナさん。

 その人にとんでもないことを聞かされた。

 御坂さんが勢いよくテーブルを叩き大きな声を出す。

 

「木山春生が保釈!?」

「えぇ、例の実験に関して話を聞こうと拘置所に行ったの……そしたら……」

「あれだけのことをやっておいて、保釈が認められるんですか!?」

「そうみたいね」

 

 なんだ、なにが起きてる? ともかく私は何をすればいい? 一つ、木山先生へとメールを差し出す。

 とりあえずそれだけでも二人と別れた後にやっておく必要がある。

 それと、何かを探し出さなきゃいけない。

 木山先生が釈放へと至る理由……。

 

「子供たちへと辿る糸が切れたわね」

 

 いや、まだだ……。

 

「木山先生は子供たちを助けるためにあの事件を起こしたのに……利用なんて……」

「おかしくないでしょう、学生の能力への憧れさえも利用したような女よ?」

 

 それはおかしい、だからこそありえないと私は思った。

 だって学生たちのその憧れさえも利用せざるをえないほど子供たちを思っているのに、なんの理由があって助けたい子供たちを利用してポルターガイストなんて起こす?

 だからこそ私は、テレスティーナさんのすべてを信用することはしないと思った。

 この人は、木山先生を知ってるわけじゃない、すべてを信用することはできない。

 

「ごめんなさい、私は仕事に戻るわ」

「お時間おかけして申し訳ありません、吉報を待っています」

「えぇ、えっと……」

「佐天涙子です」

「あぁ、佐天さん、それに御坂さん」

 

 テレスティーナさんが去ってから、私も御坂さんと別れることにした。

 

 

 

 夕方に、私はとあるマンションの前に立っている。

 待ち人ありってところですかね、まぁその待っていた人もたった今来たわけなんですが……。

 銀髪をなびかせながらシスター服で走ってくる少女を私は受け止める。

 

「るいこ~!」

「はいインデックス、久しぶりー」

「最近、るいこの家に行けてないんだよ!」

「ごめんね、とりあえず……久しぶりです上条さん」

 

 私はインデックスより遅れてやってきた高校生に挨拶をした。

 

「久しぶりだな佐天さん!」

 

 うん、久しぶりだった。

 

「インデックスの時はありがとうな」

「いえ、それほどでも」

 

 そういえば事件のことはある程度教えてもらったんだっけ?

 まぁなにはともあれ今日は小萌先生の家に呼ばれているから、三人で向かった。

 こうしていると前を思い出すなぁ、一度も三人でこんな風に歩けたことは無かったけど……それでも思い出すのはきっとこうして歩くのを夢見てたからだ。

 

 三人で楽しく歩く、それが一番なんだけれど……やっぱり昔の上条さんと今の上条さんは違うって思ってしまう。

 そこももちろん前みたいに引きずってはいないつもりなんだけど、それは感じる。

 

「小萌先生~」

「はいはい、いらっしゃいです」

 

 アパートの一室から出てきた小萌先生は、笑顔で私たちを迎えてくれた。

 今日はお食事会だからね、しょうがないよねー。

 

「あ、インデックス俺のぶんが!」

「とーまが食べないのかと思ったんだよ!」

「食うに決まってんだろ!」

「あはは、上条さん早く食べないと」

「佐天さん早いな!?」

「慣れが必要ですよ上条ちゃーん」

 

 そんな言い合いをしている間に、上条さんのコロッケがまた無くなる。

 

「あぁもう、不幸だー!」

 

 なんか懐かしいなー。

 ホクホクした気分のまま私はホクホクのコロッケを食べる。

 なんだか紫さんには申し訳ないなー、晩御飯は作ってきたけどなんか、悪いなって。

 そのうち上条さんやインデックスにも紫さんを紹介したいなーなんて……。

 

 結局、その後私がまた軽く食事を作って上条さんとインデックスと小萌先生に振る舞った。

 さすがに修行されつくしたこの身が編み出す食事はみんなの舌にも十分合ったらしい。

 その後、余った分をパックに詰めて上条さんは持って帰るという話で、私たちは小萌先生の家から出た。

 

「送ってかなくても平気か?」

「大丈夫ですよ、相変わらず上条さんは優しいですねー」

「とーまは病み上がりなんだから自分の心配するんだよ!」

「そんな上条さんに噛みついてくるのは誰ですかねぇ?」

 

 なんだかそんなノリに私はお腹を抱えて笑ってしまう。

 こうしているとなにも問題なんて抱えていないかのように思ってしまうのは、なんでだろう……。

 私は上条さんたちと別れると自宅へ向かう。

 

「さて、帰って紫さんと軽く話して……ん?」

 

 ポケットの電話が鳴ったことに気づいて、私は舌打ちをした。

 メールの差出人は木山先生……そして内容は……。

 

『助けて』

 

 ただ、その一言だけだった。

 

 

 

 その後にすぐに追加のメールが来て、指定された病院へと入ると、同じく指定された部屋へと走って入った。

 そこは大きな部屋で、なにかが“あった”ということだけがわかる。

 なにかしらの機械があったはずなのにそれが無い。

 そして壁に背中をつけて三角座りしているのは木山先生だった。

 

「木山先生……」

 

 私は近づいてから腰を下ろして木山先生の顔を覗き込む。

 

「私はっ……私はぁっ……」

 

 木山先生が私の胸に飛び込み、私は地面に座り込んでしまうけれど、それでも私の胸で泣いている木山先生を払いのけるようなことは私にはできない。

 ちょっと離れたところから私たちを見ているカエル顔のお医者さんは、残念そうに眼を伏せてから別の部屋へと言ってしまった。

 まったく、どういうことなんだろうか……?

 

 それから、泣き止んだ木山先生は、私の胸の中で話をはじめた。

 ことの始まりは木原幻生、彼が『神ならぬ身にて天上の意思に辿り着くもの(LEVEL6)』というものを生み出そうとしたことが始まり、そして彼が見つけた“能力体結晶”というもの、それを投与する実験体として木山先生の生徒さんたちが選ばれ、数年の時を眠り続けたまま生きている。

 カエル顔のお医者さんは、子供たちを延命させていたそうだ、医者として……保釈された理由もお医者さんの口添えらしい。

 

 目覚めさせる直前まで、木山先生は辿り着いた。

 それでもまだ彼女と子供たちは救われることはなく、木山幻生のさらなる改造により能力体結晶は子供たちを眠りながら暴走能力者へと仕立てあげ、子供たちを起こすことは可能なのに完全に起こせばポルターガイストを引き起こすような体質へとしてした。

 

 プログラムを作成しているにも関わらず、必要な『ファーストサンプル』と呼ばれる最初の実験者の能力体結晶が見つからない。

 それさえ見つかればすべてうまくいくはずなのに……。

 そしてそれを見つけようと研究所に行ったとき。

 

「御坂さんと会ったぁっ!?」

「あぁ、そして私と共に彼女はここに来た……彼女は私に『ファーストサンプルが見つからなかったら?』と聞いた、しかし私は、諦めるわけにはいかなかったッ!」

 

 えぇ、だと思います。そうでなければ木山先生がレベルアッパー事件を起こした理由がありません。

 覚醒させて大規模ポルターガイストが起ころうとも、木山先生は助けたかった……。

 そんな時、テレスティーナさんがやってきたらしい。

 

 彼女は引き渡しを求めて、木山先生は断った。

 それでも、テレスティーナさんは子供たちを起こせると自信を持って言ったらしい。

 木山先生がテレスティーナさんを止めようとしたとき、そんな木山先生を止めたのは御坂さんだったらしい。

 うん、それが正解なんだよ……御坂さんなら、それが正解なんだけど……。

 

 私は、木山先生に協力しただろう。

 

 御坂さんが、春上さんが枝先さんの声を聞いた話をしてから、木山先生は諦めてしまったらしい。

 

「私はっ、あの子たちを救いたくてっ、救えるのは私だけだって言っても……レールガンは、彼女は救えてないって、そうなんだッ、私はなにも救えてなぃっ」

 

 泣いている木山先生、私も結局は上条さんを救えなかった側の人間だからこそ、私は木山先生に共感した。

 そんな木山先生をギュッと抱きしめて私はその頭を撫でることしかできない。

 そして、結局テレスティーナさんによって子供たちは運び出されてしまった。

 

 私に、今の木山先生のなんの力になれる? 何を助けられる? 木山先生は私に『助けて』と言ったんだ。

 きっと私を巻き込ませないようにと、連絡を私にしなかったはずの木山先生が、私に助けを求めた。

 そのぐらい、木山先生は参っているんだ。

 

 私になにができる?

 いや、きっとなにもできない……木山先生になにかしてあげられるのは現状、テレスティーナさんだけだ。

 だからこそ私ができるのは、木山さんを抱きしめてあげること、ぐらいなんだ。

 




あとがき↓  ※あまり物語の余韻を壊したくない方などは見ない方が良いです。















勢い余って連日更新しちまったぜ、キングでござる
まぁなにはともあれ、更新が早いのは良いことでございますよな、うん!
また沢山の感想ありがとうございました、活力になるで候!
ポルターガイスト編も良いところまで来ましたからな、また次回をお楽しみいただければまさに僥倖!
そして感想もいただければ僥倖にて候!

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