とある無力の幻想郷~紅魔館の佐天さん~   作:王・オブ・王

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53,無能力と第四位

 御坂さんを追ってとある研究所へとやってきた私、佐天涙子。

 そして御坂さんと戦っていた金髪の少女との戦いに乱入して、二人でその少女に圧勝したかと思われた瞬間、私たちの前に新たに現れたのは二人の女性だった。

 茶髪の女性は笑いながら、私たちを視界に入れる。

 金髪の少女が嬉しそうにしている表情を見れば、現状でその女性が少女の味方だということは簡単にわかった。

 

 だからこそ、この状況で私たちはどういう選択肢を取るのか……。

 

 なんて考えている内に、御坂さんが近くの鉄の塊を電撃を使って飛ばす。

 まぁしょうがないね、なんだか知らないけど御坂さんはこの事件にかかわってる敵すべてに異常なまでの憎しみを向けているようだから……だったら私は、とりあえずサポートをしよう。

 どこかの誰かが『あくまでも自分の仕事をこなす』なら私は『友達のためなら犯罪も犯す』とでもしましょうか……いや、時と場合にもよるか、それでも御坂さんがやろうとしていることが、支えるべきだと思えるなら私は名誉なんて捨てても良いと思っている。

 

 だけれど、投げられた鉄の塊は女性の前で消滅した。

 

 そう、消滅。

 

「さて、どんな能力なんだか」

 

 ため息をついて私は周囲を確認する。

 出口はやっぱりない。女性にフレンダと呼ばれた先ほどの少女が閉めきっていたし当然だとは思うけど、出口なんてその気になれば作ってもらえるしー。

 女性は余裕のある表情で笑う。

 

「で、あんたたちが噂のインベーダーね」

 

 ―――私までセットにされちゃったかー。

 

 女性が笑いながら、両腕に緑色の光を宿し、それを撃ち放つ。

 私と御坂さんは驚きながらもその攻撃を避ける。

 御坂さんは電気を使って壁に張り付き、私は跳んで壁に隠れて顔を少しだけ出す。

 

 ―――なに!? 新手のゲッタービームかなにか!? ゲッター線がやばい! それともコジマですか!?

 

 御坂さんが、壁に張り付いたまま電撃で今の攻撃によって生まれた残骸を飛ばすけれど、女性の目の前でまた消滅する。

 ならば数だと、御坂さんはさらに多くの残骸を飛ばした。

 女性は手を動かして緑色の光で円を作るとそれにぶつかった残骸が消滅。

 

「なるほど、さすがに……」

 

 つぶやいて能力を見極めようと思う私だけれど、どうにもつかめない。

 

「なるほど、器用なマネするわね。壁に張り付いて逃げようとするなんて……まるで蜘蛛みたい」

 

 じゃあ私はバッタですかね、嫌だなーそのあだ名。

 まぁ私の方は眼中にないようなのでおとなしくしてるに限るね、はははっ。

 女性は笑うと、背後にいる黒髪の女性になにかタブレット的なものを渡した。

 この状況でそんなものを渡すってことは、それが普通のものじゃないのは確かなわけで、つまり私は今すぐ逃げ出したいわけですよ。

 

「ごめん、助けてあげらんないかも!」

「重々承知ですよ!」

 

 ―――てかなんであたしもこんなとこ来ちゃったかなぁ。まさかこんなに激しいことになるとは……。

 

 

 

 そして戦闘は始まる。

 壁を走る御坂さんをビームで打つ女性だけれど、それらを避けながら御坂さんは女性に電撃を放つ。

 その電撃を女性がビームを撃つ緑色の球で逸らす。

 

「なるほど、電撃は曲げられて鉄ぐらいなら消滅させられる……これ私じゃ無理そうかなぁ」

 

 苦笑しながら、私は御坂さんと女性の戦闘を見ている。

 すると、物陰に隠れていた黒髪の女性が物陰から出て頭上を跳ぶ御坂さんの方を向いた。

 目を見開いているその女性を見れば、なにかヤバいことになるってのは間違いないんだろうとは思う。

 

 御坂さんが壁の機器に触れてそれを爆破して煙を起こす。

 良い目くらましにはなるだろうと、私は走って御坂さんへと近づく。

 御坂さんはすでに電撃で壁に穴を開いており、二人でその穴から飛び出すと道を走る。

 

「佐天さん、これはマズイ!」

「わかります! あぁもうこれじゃ事情も聞けないよぉ、御坂さん一旦わかれましょう。合流地点とかありますか!?」

「走っていけばそれなりに大きいところにつけるとは思うんだけどぉ……とりあえず逃げるか広い場所に行くかね!」

 

「了解です、とりあえずご武運を!」

「てか佐天さんはなるべく逃げてよね!」

 

 私と御坂さんが立ち止まってそういうと、なんだか嫌な予感がした。

 理由なんてないけれど、私は御坂さんと共に倒れこむ。

 直後、私たちの頭の位置に先ほどの女性のビームが通った。

 

「なんで、ランダム迂回して移動してるのに!?」

「透視か何かかもしれません!」

 

 直後、御坂さんが私の腰に腕を回すと電気を使って壁へと引き寄せる。

 二人で壁についた瞬間、寝ていた場所にビームが突き刺さった。

 

「いやぁ、冗談キツイですね、あの能力と透視は……」

「とりあえず、えっと……着いてきて!」

「了解です!」

 

 ビームの嵐もとりあえず止んだのでもう一度の攻撃が来るまで私たちは走りだす。

 二人で走っていても、明らかに速度であれば私の方が上で……なんて思っててもしかたないってわけよ、結局……あぁ、感染ってるし!

 とりあえず走っていると、御坂さんが眼を鋭くした。

 

「くる!」

「えぇい!」

 

 私が転がって地面に這いつくばって、御坂さんが電気で天井にはりつくと私たちの間にビームが通る。

 すぐにビームの第二射がきかねないことを思うと、とてもじゃないけれどじっとはしていられないと走り出す私と御坂さん。

 

「次を右!」

「はい!」

 

 私は右に曲がってその道を真っ直ぐ走る。

 背後から、金髪の少女ことフレンダがしかけた導火線が燃える音がして振り返ると、御坂さんが爆風で吹き飛ばされて私の横に転がってきた。

 横を走る導火線の先、私たちの前には人形。

 

「ッ!」

 

 私はさっき影でこそこそと拾っていたナイフを投擲して人形を導火線の通り道から落とす。

 導火線についた火が走っていくがこれで問題もない。

 

「佐天さん!」

 

 その声で私は御坂さんの手を思い切り引いて私の方に引き寄せると後ろに飛び退いて御坂さんが倒れていた場所に通るビームの被害を免れる。

 間違いない、さっきから意識はしていたけどやっぱりそうだ。

 

「どういう能力かはわかりませんが、どうやら相手は御坂さんの位置しかわからないみたいですね!」

「え、どうして?」

「さっきから攻撃は御坂さんにしかしていません、私は取るに足らないと思っているのかなんなのか、まぁともかく二手に分かれますか、足を引っ張ってもしかたないですし」

 

 御坂さんが悩むような表情をするが、もたもたしていてもしかたないし私は御坂さんの手を引いて走る。

 

「わかったわ佐天さん、ここより下の私の目的地手前に大きな部屋のようなものがあったの、そこで落ち合いましょう。佐天さんのおかげでだいぶ疲労を少なくできた気もするし」

「そう言ってもらえて光栄ですよ。では、たぶん私の方が遅いので!」

「えぇ、じゃあまた!」

 

 御坂さんはそういうと横の穴を上がっていく。

 私じゃ降りたら落下して死亡って感じの場所だけれど、別れたことにこそ意味がある。

 少しジッとしていてもビームが飛んでくることがないのがその証拠だろう。

 

「さて、行きますか!」

 

 私は足のポーチ二つを外すと地下に向けて走り出した。

 

 

 

 そして結局、私が御坂さんと合流できたのは色々とはじまってから……まぁつまり、合流地点に着いた途端ビームが私の方に飛んできたわけですよ。

 なんとか避けたものの、流れ弾だったわけで戦闘中の御坂さんとビームの女の人はまったく私に気づくこともなく……つまり御坂さんは電波で周囲を警戒することもできないほどなのだろうと理解して、私は戦闘を見る。

 私が参加しても足を引っ張らないかどうかなんだけれど、これならなんとかなるかもしれない。

 

「おぉぉ待たせしました御坂さん!」

「佐天さん!?」

「あ゛ぁ゛!?」

 

 ガラ悪! とか思いながら私は走っていく。

 女の人が御坂さんにビームを放ち、御坂さんがなんとかと言った様子でそれを防ぐとすかさず私へとビームを放つ。

 霊夢さんや魔理沙さん、さらに言えばフランまで相手にしてる私にとってその攻撃はかなり避けやすい類のものだ。

 向かってくるビームの高さやらを確認して走りながら体勢を低くして避ける。

 

「なっ!」

 

 驚く女性だけれど、すぐに第二、第三打を打ってきた。

 けれど、私は軽く跳んでそれを空中で避けながらすぐに体勢を立て直す。

 だけれど女性が笑った瞬間、私はさすがに走るのを止める。

 

 ―――マズイ、なんだかわかんないけど!

 

 瞬間、再びビームが放たれたのを私は体を逸らして避けた。

 けれど先ほどまでと違ってビームが通りすぎた瞬間に消えることもなくそのまま私の方へと曲がろうとする。

 

「厄介な!」

 

 私は内ポケットのナイフを一本だけ投げた。

 そのナイフに驚いた女性が正面に御坂さんとの戦いでやったようなビームでの盾を出す。

 そこが抜け穴、私を見失った瞬間に私は走る。

 

「ジャリが調子に乗ってんじゃねぇぞ!」

 

 そう叫びながら、女性がビームの盾を消す。

 だけど目の前には私が映る。さすがに驚いたのか行動が遅れているのでその間にその腹部に肘を打ち込む。

 中国拳法風な動きは太極拳のもの……まぁつまりは美鈴さんから伝授してもらった技だ。

 

「ガァッ!」

 

 だけれど、気絶させるまでにはいかなかった。

 活歩にて一瞬で近づき肘で打つこの技は、妖怪の力を解放させなくても十分なダメージがあるはずだ。にも関わらず私の一撃で女性は倒れることはない。

 つまり、生半可な鍛え方はしていないってことだ。

 

「んな攻撃で気絶するほど軟な鍛え方してねぇんだよォ!」

 

 女性は私に拳を振るってきた。

 けれど、そんな直線的な攻撃で直撃を受けることもなく、私はその拳を腕でなんとか逸らす。

 次に蹴りが飛んでくるので私はそれを受けるようにして同時に地を蹴り跳ねると女性から距離を取る。

 そしてそこで、私は後悔した。

 

「なんで距離取ったかなぁ」

 

 緑色の光が女性の周囲に集まっていた瞬間、フレンダの爆弾が女性の頭を打った。

 女性が倒れたのを確認すると、私は御坂さんの方を見る。

 御坂さんは笑みを浮かべて私に親指を立てた手を向けた。

 

「御坂さんらしからぬ攻撃ですねー」

 

 私は笑いながら言って女性に近づき、気絶しているか確かめる。

 間違いなく気絶しているので、私はそんな女性をそのままにして御坂さんの方へと向かう。

 フラフラの御坂さんを見れば数日間で同じようなことを繰り返していたのは明白だった。

 

「大丈夫ですか?」

「うん、でもさすが佐天さんね……あの戦い方は私にはできないわ」

「あはは、されたら困ります」

 

 せっかくの無能力者なりの戦い方なのにね。

 

「とりあえず、私はこの人見てますんで目的をどうぞ」

「でも良いの佐天さん?」

「御坂さんは間違ったことしてないんでしょう?」

 

 そう聞くと、御坂さんは頷いて『ありがとう』と言うと走って去って行った。

 私はとりあえず歩いたり走ったり跳ねたりしすぎていい加減疲れてきたので座る。

 どうせなら女の人を縛っておきたいんだけど、縛るものもないしね。

 

「さて、結局なんなんだろうここ?」

「知りてぇのはあたしの方だけどなぁ?」

 

 ―――ッ!!?

 

 私は両手両足のバネを全力で使って跳ねる。

 地面に足をついた瞬間、起き上がっていた女の人が緑色の光をうかばせているのを見て、全力で跳ぶ。

 なんとか数発は避けて、地面に足を付けると走って女性から距離を取る。

 同じ戦法が二度聞くとも思えないからこそ、私はもう逃げに徹することにした。

 

「もぉ! なんなんですかぁ!」

「人の腹蹴っておいて言えるセリフじゃねぇだろうがこのガキィ! 今からテメェにはやられた分一兆倍返ししてやんだからよォ!」

 

 バシバシビームが飛んでくるけれど、私は壁際を走って時たま壁を蹴ったりしながら避ける。

 そうしていると、私の視界に御坂さんが映った。

 

「な、もう起きたの!?」

「目的達成したなら逃げますよ御坂さん!」

 

 私は滑り込んで御坂さんの足を払うとそのまま倒れた御坂さんと共にビームを避ける。

 それと同時に私は御坂さんの足と首の後ろに腕を回してお姫様抱っこみたいにして立ち上がると壁を蹴って女の人の攻撃を避けた。

 空中で避けようのない私にビームを飛ばそうとする女の人だけれど、御坂さんの機転が働く。

 御坂さんは電磁の力で自分を壁の方へと引き寄せて攻撃を避ける。

 

「このまま逃げますよ!」

「お願い佐天さん!」

 

 私は走りながらどこへ行けばいいのかと考える。

 

「もぉ、勘弁してくださいよ!」

「ケツ巻くって逃げやがって、第三位の名が泣くぞォ!」

 

 飛んでくるビームを御坂さんが電磁で私ごと引っ張り上げてパイプの上に誘導すると私が跳んで、二人でなんとか攻撃を回避し続けるけど、あきらかにあちらの女の人の攻撃力がヤバい。

 

「佐天さん、お願い私の誘導通りの場所へ向かってくれる?」

「了解しました!」

 

 ここのことを把握してるであろう御坂さんにここはナビを任せることにした。

 電磁を使って私を引き上げると、着地すると同時に私は全速力で走る。

 でも女の人は逃げる私たちを追いながらビームを放ってきた。

 

「おーおー本当に手詰まりか? 蜘蛛とバッタじゃなくてゴキブリだったのかぁ、テメェは!?」

 

 口が悪い、悪すぎる!

 

「それならそれらしくビシッと……あ?」

 

 突然、電話がかかってきたらしく女の人は電話を取るけど、片手間に私たちに攻撃をしかけてくる。

 私たちはと言うともうだいぶ消耗している私と御坂さんの二人、正直避けるので精一杯で油断してる隙に倒すなんてこともできやしない。

 なら、全力で逃げるのみ!

 

 御坂さんの電磁でパイプの上に着地すると、すぐに全身のバネを使って跳ぶ。

 前方の壁がビームで爆破されたのを確認すると、そこから跳び出して大きく開いた場所に通った太いパイプを走る。

 けれど、上空に投げられたシリコンは……?

 

「避けて佐天さん、拡散よ!」

「なる、ほどォ!!」

 

 私は足場のパイプを蹴って跳ぶと下にある鉄の橋に飛び降りる。

 けど、そこは一本道だ。

 飛び降りてきた女の人を見て、私はつい舌打ちをしてしまう。

 

「御坂さん、合図したら電気を」

 

 私はボソッと作戦内容を耳元でつぶやくと同時にナイフを投げると同時に手すりを蹴って女性の背後に跳ぶ。

 さらに放たれるビームをなんとか体を逸らして避けるも、もうこれ以上ナイフを無駄にするのも経済的に無理。

 投げたナイフも溶かされたし。

 

「パリィパリィパリィってか、笑わせんじゃねぇぞクソガキィ!」

 

 女性が御坂さんにビームを放つと、御坂さんはそれを防ぐ。

 私の方にもビームが飛んでくるけど私は防御手段なんてないから避けることしかできない。

 

「お子様の喧嘩程度でこの街の闇をどうにかできると思ってんのかァッ!」

 

 この街の闇―――浮かんでくるのはテレスティーナの顔だ。

 

「ほらほらほら、もっとあたしを楽しませてみせろ!」

「御坂さん!」

 

 私が叫ぶと、御坂さんが笑みを浮かべて片手を下に向けて、電撃を放つ。

 瞬間、鉄橋に張り巡らされたフレンダのツールが火花を放って鉄橋を切り裂く。

 それがどういうことを意味するか……早い話が、落とし穴って奴だ。

 

「お子様の遊びも捨てたもんじゃないでしょ、おばさん」

 

 悪い顔してるなぁ御坂さん……って私の目の前の足場が崩れるけど、やっぱり私も私で問題ありだね。

 

「佐天さん!?」

 

 落ちていく女の人を見て自然と体が動いて私は女の人の腕を掴むとそのまま力任せに引っ張って抱き寄せる。

 空中にて女の人を担ぎ、それで瓦礫を足場に跳ぼうと思ったけど思いのほかうまくいかずに。

 

「あちゃー」

「佐天さん捕まって!」

 

 御坂さんがワイヤーを飛ばすけれど私の腕の中にいる女の人がそのワイヤーに向かってビームを放つ。

 私の顔ごと焼き切るつもりだったのか、私は顔を逸らしてなければ今頃現代アート風味の面白オブジェになっていたことでしょう、はい。

 まぁなにはともあれ、落ちるわけですよ。

 

「ふざけんな離せこのクソガキ!」

「ちょっ、空中で暴れ、やば!」

「チィィッ!」

 

 女性が床に向かって先ほどのビームを高出力で放ってなんとか落下速度をゆるめるも、地面へ落下することは変わりない。

 背中に走った衝撃によって呼吸が困難になりながらも、私はなんとか叫ぶ。

 

「御坂さん!私は平気なんでまた明日にでも!」

「佐天さん今そっちに!」

「大丈夫ですからお互い別々に逃げましょう!」

「わかったわ、出たら必ずメール頂戴ね!」

 

 そういうと、上の方にいるであろう御坂さんが走る音が聞こえた。

 

「くそっ!逃がしたかっ!」

 

 私の腕の中にいた女性が上体を起こして私に馬乗り状態になる。

 こりゃ、今回こそは死んじゃったかな?

 なんて思いながら呼吸を整えていると、女性が舌打ちをした。

 

「テメェらは常盤台の学生だよな?」

 

 私は違うけど、とりあえず同意して倒れたまま頷く。

 

「そもそもお前らはなにが目的で……?」

「し、知りませんよ……私だってあの人がなにしてるのか気にって来て、わけわかってないんですから」

「あぁ?」

 

 女の人の手が私の首を絞めようとする。

 

「パチこいてんじゃねぇぞガキ、テメェなんざ一瞬で焼き尽くすのもわけねぇんだ」

「ッ……ほ、本当ですよ。私はあの人の事情を知りません」

 

 女の人が私を見下ろす。正直すごい怖いけど、ここで怯えてもしようがない。

 

「嘘じゃねぇみてぇだな……クハッ」

 

 なぜか、笑いだす女の人。

 

「マジか、本気か、馬鹿だろ! テメェ事情も知れないのにダチのためだからってんなことに付き合った挙句、アタシを助けて死ぬってか!? アハハハハッ!」

 

 なんか知らないけど楽しそうなので見逃してもらえるかな?

 

「死ね」

 

 ですよねー。

 

 私に放たれたビームを顔を逸らしてなんとか避ける。

 

「……これで、テメェは死んだんだ」

「へ?」

「癇に障るし、癪だけどテメェがあたしを助けようとしたダメージで死んだとか笑えねぇからな……あの女ならともかく、テメェがだ! このあたしに見舞ってくれたクソガキ! レベル5でもねぇのにこのあたしにチョコザイなことしやがって……あたしは今、みょーに気になってることがあるからそっちに行くけど……」

 

 女の人の顔が近づいてきて、吐息も感じるような近さになる。

 

「次に仕事を邪魔しやがったら、ぶち殺すかんな?」

「は、はい……」

 

 私が頷くと、女の人はニコッと効果音がしそうなほどの笑みを浮かべて立ち上がると踵を返して私を踏み越えていく。

 若干痛かったけど、そこまで後を引く痛みじゃないし大丈夫だとは思うんだよ。

 まぁ痛いけどね?

 

「じゃあね~」

 

 機嫌が良さげなような良さげじゃないような雰囲気のまま女性が去っていく。

 そしてそんな女性の背後に一個だけ緑色の球体が―――って!!?

 

「ぬぉっ!?」

 

 私がなんとか体を転がらせてその攻撃を避けると、女性は私の方に顔を一度向けるとおかしそうに笑いながら去っていく。

 あぁもう体中が痛いのにぃっ!

 でも、助かったのは運が良かったとしか言いようがないよね、ほんと。

 

 とりあえず……。

 

「帰りますか……」

 

 無事だった“頑丈さが売り”の携帯端末にて御坂さんに『無事に帰った』とウソのメールを送って私は歩き出す。

 ともかく、携帯端末だけじゃなく私も無事だったことに感謝して今日は帰ろうと思う。

 

 ―――あー、早く寝たい。

 

 

 

 

 




あとがき↓  ※あまり物語の余韻を壊したくない方などは見ない方が良いです。















さてさて、すみませんっしたぁぁ!
いや、本当に更新がまさかここまで遅れるとは……っていうかこんな言葉も聞き飽きたかもしれませんな、いやはや本当に申し訳ない、この小説を楽しみにしてくださっている方がいるからこそ申し訳ない!
妹達編も残すところあと二日!もうすぐですな!(もうすぐとは言ってない)
では、次回もお楽しみいただければまさに僥倖!

PS
みなさま、毎度感想ありがとうございます!
お気に入りは1800を超え、さらに感想も555<ファイズ>を突破、これからも頑張っていきますので応援お願いしますで候!

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