コスプレして酒を飲んでいたら大変な事になりました。   作:マイケル

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3話

「大変なんです、ジョニー様!!」

 

ピンク髪の少女マインを店員にして数日目の朝。

店先でロドニーが肉団子のように転がり込んできた。

とりあえず、水を飲ませて部屋の奥で話を聞く。

 

「では、報告いたしやす」

 

ロドニーの話によると、クリードと呼ばれる男が仲間になるナジェンダさんを襲撃したらしい。

滅茶苦茶壮大な話をしているが翻訳するとこうだ。

どこかの団体に所属していた、ナジェンダさんと言う女性が、団体を抜けて俺達の同好会に入会した。

 

ロドニーの話では帝国の将軍の一人という設定らしい。

自分の国の事だけど経済以外は正直どうでもいいと思っているので本当なのか設定なのかは不明だ。

 

まあ、コスプレ同好会であるクロノスに入りたいという事なので中二設定だと思って聞いておこう。

 

そして、同じ団体に所属していた思われるクリードさんが抜けるんじゃねぇとブチキレて配下を連れてナジェンダさん一行を襲撃。

まるで脱退リンチのようだ。

ナジェンダさんは元暴走族なのかな?

 

俺は昔の経歴は気にしないけど、同好会に面倒を持ち込まれるのは困る。

 

「それで…ナジェンダさん達は現在どうなっているんだ?」

 

「それが…まだ、連絡が取れていませんので何とも……」

 

ふむ……女性が襲われているのに何もしないのも忍びないが……。

族を抜けるのは大変だろうけど頑張って貰おう。

 

「本人たちに任せる」

 

「そんな!帝具が取られてもいいんですかい!?」

 

帝具?ああ、俺のハーディスと同じコスプレアイテムみたいな物ね。

つまりあれか?団体で作ったアイテムをナジェンダさんが借パクしたのか?

それはクリードさんもキレるよ。

さっさと団体かクリードさんに返した方がいい。

 

円満退団は社会人コスプレイヤーの基本だ。

俺が自分の考えをロドニーに伝えようとするとエスデスが現れ、ロドニーを蹴る。

初めて会った時から成長した彼女は俺の予想通り、男たちを夢中にさせる美女になった。

 

「ぶひッ!?」

 

「黙れ豚。そんなのは元居た場所を上手く抜け出せなかったヤツの落ち度だ。

私や店長が介入して私達の情報をくれてやる必要はまるでない」

 

そして、SからドSにも成長していた。

気に入った相手には優しいのだが、それ以外だとどうも厳しいのだ。

どこで教育をまちがったのだろうか?

 

転がるロドニーを出来の悪い家畜を見るような瞳で見下ろすエスデス。

彼女は床に転がるロドニーに歩み寄り、股間を踏んでグリグリし始めた。

その姿はまさに夜の女王様だ。おいおい、俺の家で特殊なプレイは止めてくれないか?

 

「生きて合流する事が出来なければ、クロノスに入る価値はない。

店長が言っているのはそういう事だ。

まあ、噂に聞くクリードから無事に生還する事が出来る実力なら、高い確率でナンバーズ入りだな」

 

「はひぃぃいいい!!分かりましたぁぁああぁぁああん!!」

 

「おい、クソ豚。貴様にはいろいろと心構えという物を叩きこんでやるから覚悟しておけ」

 

「ひぃぃぃぃいいいいいい!!」

 

……。

 

仕事しよ。

 

汚い豚の悲鳴を聞かないように耳を塞いで部屋を出た俺は、自分の戦場であるキッチンへと向かうのであった。

 

☆☆☆

 

ロドニーがジョニーにナジェンダの件について報告をしている頃。

ナジェンダは合流したクロノスのメンバーに回収された。

 

しかし、回収されたナジェンダの損傷は激しく、右目と腕を失い生死の境をさまよう事となった。

現在も意識が戻らないナジェンダ。

 

彼女が生死をさまよっている頃、一人の恋する少年の命を懸けた挑戦が始まっていた。

 

帝都より南に存在するクロノスの本拠地にある研究施設。

そこには、大臣の命令によって毒ガスの研究やおぞましい拷問につかう毒薬の研究を強要され、帝国の未来に絶望してクロノスに入った優秀な研究者達が革命の為に必要な兵器やけが人を癒す薬、帝具の研究をしている。

 

その研究室にて、少年ラバックは愛する人を守る力を得る為に帝具の適合試験を受ける事にしたのだ。

 

「ラバック君。本当にいいのかね?帝具は未知数の超兵器だ。

拒絶反応が起これば取り返しのつかないケガをする可能性もある。

構成員が命をかけて盗んだ『千変万化クローステール』。

構成員が何人か試したが、拒絶反応が出て全員ケガをし、ひどい者は指が切断された」

 

「ええ、ナジェンダさんにどこまでもついて行って守るのが俺の使命ですから。

…それに、目を覚ましたナジェンダさんの為に部下の俺が功績を上げておけば、ナジェンダさんの評価にもつながるでしょ?」

 

「ラバック君…」

 

帝具を前に緊張することなく己の覚悟を示す少年に感動を覚える職員たち。

しかし、一人の女性研究員によってこの空気は消えてしまう。

 

「だったら、女湯を覗くの止めてもらえませんか?」

 

「それはそれ!!これはこれ!!美女達の美しい姿を見るのは男の本能なので止められません、止まりません!!」

 

恋する少年は重度の変態であった。

既に二回ほど女子風呂を覗いていたのだ。

その話を聞いた職員の少年を見る目は変わった。

 

「では変態。これをグローブの様に嵌めなさい。

ああ、拒絶反応が出たらすぐに外しなさい、指が切れるから」

 

「はい…え?今変態って呼ばなかった?」

 

先ほどまで優しかった研究員の態度は冷たい物になりゴミを見る目で少年を見ていた。

帝具を受け取った変態は研究員の態度に困惑するが、躊躇する事無く自身の手に帝具を嵌める。

 

「……っち、どうやら適合したみたいだね。

…おめでとう」

 

帝具を嵌めて拒否反応が出なかった事に舌打ちした研究員(妻子持ち)はクズを見る目で変態を見つめ、舌打ちをした後、言いづらそうに祝福の言葉を棒読みで送った。

 

「え?今舌打ちしなかった?ねぇ?しかもその、めっちゃ棒読みの賛辞はなに?」

 

「さて、研究員諸君。不本意ながらこの変態が適合者となってしまった。

誰かナンバーズの推薦書を書いてくれないか?

勿論女性以外でだ。

女性に記入させたらセクハラになりかねん」

 

「おい!さっきから失礼すぎやしないか!?なんで俺の推薦状を書いたらセクハラになるんだよ!!」

 

「黙りなさい喋るわいせつ物。

それよりも大変不本意ながら貴方に帝具の説明とクロノナンバーズについて説明します。

一度しか言わないのでよく聞いてください。

質問はロドニーさん辺りに適当にしてください」

 

「雑ッ!!俺の扱いかなり雑ッ!!アンタらドS過ぎるだろ!!」

 

南の本拠地が出来てから、エスデスは喫茶店の休みと有給を駆使して定期的に視察に来る。

その際、研究員であろうと体力がなくてはいかんとそこそこ厳しい訓練が行われる。

訓練に参加することで体力と強い精神力を付けた研究員達であったが、訓練中のドSな罵倒で少し染まってしまったのだ。

故に、普段は優しいし、移民や難民だろうと差別しない彼らでも変態と悪しき帝国貴族や大臣の事になるとドSが滲み出てきてしまうようだった。

 

「っち、なら推薦状は僕が書いておきますよ。

確か……ふにゃチンファックだったか?」

 

「ちげぇよ!!文字数から何もかも違うよ!!小さなツとクしか合ってねえよ!!」

 

「わかった裸バックだな」

 

「そうだけど……。なんだろう、凄く悪意を感じるんだけど……」

 

「ほら裸バック!説明するからしっかりと聞きなさい」

 

東方の文字に詳しい研究員により、少年ラバックは推薦状に無駄に達筆な文字で裸バックと記入され、ジョニーの元に送られる事となった。

裸バックが説明を受けているクロノス内ではカースト二位に位置するクロノナンバーズ。

ナンバーズに入るには総督であるジョニーが定めた条件を満たした者でなければ入る事が出来ない。

 

帝具持ちである事。

 

そして、例外として一騎当千の力を持つ人間のみ、メンバーに加入される。

この加入条件が正式に決まった時、クロノスには帝具はなかった。

故にエスデスは己を鍛えぬいて、例外の条件を満たす事にした。

喫茶店で働いている時も重りを体に巻き付けて体力を向上させ、店が閉まっている時は、ジョニーに教わった感謝の突きなどのありえない特訓方法で技の稽古をするなどして超人の壁を登りつつある。

故に彼女は帝具持ちではないが、自他共に認めるクロノス最強戦力の一人である称号、ナンバーズとして正式に君臨しているのだ。

 

勿論、ジョニーは帝具をおとぎ話やコスプレグッズとして認識しているので、そんなアイテムを持っていたらモブ構成員じゃないよね。

な感じでナンバーズ加入の条件とし、アイテムなくても強い奴いたりすると胸熱だよね!!みたいなノリで一騎当千を付け足したのだった。

 

 

 

 

 




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