謎の至高Xオルタ   作:えっちゃんの羊羹

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一応モモンガ様視点になるので転生やTSっぽい部分はあまりないと思います。


後書きを少し変えました。


一章
1話 プロローグ


 2126年、一大ブームを巻き起こした仮想現実体感型オンラインゲーム「ユグドラシル」の歴史が幕を閉じる。

 

 モモンガとしてプレイしていた自分は前々から休日を取っていたため、朝からユグドラシルにログインして自分の属するギルド「アインズ・ウール・ゴウン」の本拠地ナザリック地下大墳墓にいた。

 かつてランキング9位にまで上り詰めたこのギルドも、残っているプレイヤーは自分を含め僅か5人。そのうちの1人で今まで引退せずにプレイしていたギルメンからは、忙しいから夜中までログインできないだろうと言われていた。

 しかし、それでもギルドに居たのは、事前に連絡しておいた他のメンバーの中に戻ってきてくれる人がいるかもしれなかったからだ。事実、ギルドに未だ所属しているプレイヤーは、3人とも僅かな時間であったが戻ってきてくれた。3人目のスライムの最強種である古き漆黒の粘体(エルダー・ブラック・ウーズ)のヘロヘロさんがログアウトしてサービス終了まで残り1時間を切った頃、引退しなかった最後の1人がやっとログインした。

 

「モモンガさん、こんばんは。ギリギリですが来れました」

 女性の声、ただしボイスチェンジャーを通した無機質で画一的な声が聞こえる。

「こんばんはオルタさん。惜しかったですね、ついさっきまでヘロヘロさんがインしていたんですが」

「入れ違いですか。ちょっと残念です」

 

 謎のヒロインXオルタ、これがオルタと呼ばれた少女の名前だ。先程までいたスライムや骸骨の怪物である自分とは違い、一見するとただの人にしか見えないが、その実態は霊体系種族の上位種、英霊に属する立派な異形種である。

 

「そういえば、残っていた他の2人も今日来てくれたんですよ。オルタさんによろしくっていていました」

「そう、ですか。本当に惜しいことをしました。せめて半休でも取れてればもっと早く来れたのですが、残業スッポかすのが精一杯で……」

「お疲れ様です。キツイかもしれませんがサービス最終日ですし残り時間はここでゆっくりしていきませんか?」

 

 一息に捲し立てていてどうにかして引き止めたいという気持ちが隠しきれていないことは自分でも理解できた。

 

「そうですね。折角なんでそこの杖持って玉座の間まで行きませんか?有終の美っていう感じで盛大に終わりましょう」

「いいですね。じゃあ、NPCも連れて行きましょう。派手になりますね」

 

 道中にNPCを確認しながら、たわいない話をするうちに玉座の間に辿り着く。一抹の寂しさと引退したギルメンの置き土産に対する警戒とともに扉を開ける。現れたのは圧倒的なクオリティで作り込まれた広大な空間。自然と会話は途絶え2人分の溜息が漏れる。NPCを引き連れた2人は、奥へと進みながらどちらからともなく声に出す。

 

「すごい」

「はい、圧倒的です」

 

 そのまま進み玉座の目前にたどり着き、NPCに目をやりXオルタがいう。

 

「アルベドですね。タブラさんが作った設定がやばいNPCの筆頭です。せっかくですし見ておきませんか?」

「そうですね。タブラさん、設定魔でしたから面白い設定しているんでしょうね」

 

 言われるがままにコンソールを開き設定を開く。

 

「ながっ!!」

「全部読んでいる時間はなさそうですね」

「タブラさん設定魔でしたから。一通り見て終わりますか」

 

 そう言いながらそう言いながら一気にスクロールして最後の一文を見る。

 

『モモンガを愛している。』

 

 目が点になる。

 

「『モモンガを愛している。』どうですか? 設定組む時にタブラさんと話し合って決めたんです。候補としては『ちなみにビッチである。』というのもあったんですが、こっちの方が面白くなりそうだったのでこうなりました」

 

 ギクリとして隣を見る。

 

「な、何てことしているんですか!」

「でも面白くないですか?」

 

 こいつ笑ってやがる。表情は動かないが自分にはわかる。

 

「だったら『Xオルタを愛している。』でも『タブラを愛している。』でもよくないですか?」

「文字数の問題で全角十文字にしたかったらしいです。なので、名前が全角4文字で収まるギルメンのだれかってことになって、嫁に出すならモモンガさんになりました。それに自分たちのことを愛しているとか恥ずかしくて書くわけがないじゃないですか。ペロロンさんですらそこまではしませんよ」

 

 もう言い返す気力もない。

 ふと時間を見ると残り5分を切っている。NPCを待機させ跪くよう指示すると、隣から声がかかる。

 

「残り五分切りましたね……。改めて一言、今までずっとありがとうございました。本当に楽しかったです」

「……オルタさん……」

 

 言葉が続かない。

 

 終わってしまう。

 

 そう考えてどうにか声を絞り出す。

 

「……ありがとうございます。俺も、本当に楽しかったです」

 

 残り10秒ほどのカウントダウン。静かに目を閉じ数える。

 

 23:59:49、50、51……58、59

 

 時計に合わせユグドラシルの終わりを迎えて

 

 0:00:00、1、2、3

 

 目を開ける。変わらずユグドラシルの玉座の間だ。

 

「どういうことだ?」

 

  0時はすぎたはずだ。時計が間違っているはずがない。混乱しつつ周囲を見る。隣には最後まで一緒にいた友人がいるが顔を上げたまま全く動いていない。自分だけログアウトし損ねたのだろうか。

 

「オルタさん! Xオルタさん!」

 

 慌てて肩をゆすり呼びかける。

 

「ひゃうっ!」

 

 悲鳴が上がる。痛みをこらえるように肩を抑えている。申し訳ないという気持ちとともに、一人ではないという安心感が自分を落ち着かせてくれた。彼女はこちらを見ながら口をパクパクとさせている。

 ……口が動いている?ありえないが今はそのようなことを考えるよりも対策を考えなければ。

 

「いきなりすいませんオルタさん。異常事態です」

「あぁ、はい……」

 

 か細い声ではあるがはっきりとした答えが返ってくる。先ほどの反応ではもっと戸惑っていると思っていたが、予想以上に落ち着いているようだ。

 

「サーバーダウンが延期になったんでしょうか?」

「いや……何か違う気がします」

 

 容量の得ない会話を続けながらGMコールや強制終了を試すがうまくいかない。本格的にまずい状況になったと焦る。

 

「どういうことだ!」

 

 この場にいるものでは答えられるものがいるはずのない戸惑いで、思わず怒鳴り散らしてしまう。

 しかし、返答があった。

 

「どうかなさいましたか?モモンガ様?謎のヒロインXオルタ様?」

 

 聞いたことのないきれいな声。発生源を探し、すぐに見つける。先ほどまで跪いていたNPC、アルベドのものだった。

 

「何か問題がございましたか、モモンガ様?……失礼いたします」

 

 アルベドが立ち上がり玉座に歩み寄って来る。NPCが自発的に行動し会話をしようとしている。その状況を認識して思考回路がショートしていた。隣のXオルタも相変わらず動いていないようだ。いや、少し揺れていると思いきやいきなりアルベドに向かって歩き、こけた。

 

「謎のヒロインXオルタ様!」

 

 長すぎる名前を言いながらアルベドが受け止める。名前を呼びきれていないが、支えるのは間に合ったようだ。次の瞬間にはXオルタの顔がアルベドの胸に埋まっていた。

 自分も男だ。目の前のたわわが大きく歪めば目を奪われる。美女のたわわに美少女の頭が埋もれている。ペロロンチーノあたりが見たら大喜びするだろう。

 

「ふわぁ……あんっ……」

 

 しばらくしてアルベドが何かを堪えるような声を上げた。Xオルタがアルベドの胸を揉んでいる。

 一瞬で頭に血がのぼって興奮し、すぐに落ち着く。

 

「何やっているんですか!」

 

 同時にXオルタの後頭部にチョップを落とした。

 

 

 ◇◆◇

 

 

「ごめんなさい」

 

 茶番を経て落ち着いたところでXオルタの謝罪を聞きながら先ほどまでのことを振り返る。

 まず、ユグドラシルが終わったのにログアウトしないバグが起こった。キャラクターに表情があらわれるようになった。さらにアルベドが自我を持ち動き出したようだ。どう考えても単純なバグではない。まとめてみると益々訳がわからなくなる。

 

「全くです。明らかな異常事態で何ふざけているんですか。GMコールも強制終了もできないんですよ……。うわぁ……、言っていて絶望してきた」

「まことに面目ございません」

 

 内容とは裏腹に他人事のような軽い調子の中身のない声で話している自分たちに呆れ、目を泳がす。眼下には不安そうにこちらを見ているNPC達がいる。声をかけるのは不安だが放っておくことはできないだろう。近くにいるアルベドに下がるよう手で命じ、執事とメイドに呼びかける。

 

「セバス!メイド達よ!」

『はっ!』

 

 綺麗に重なった声が響く。

 

「玉座の下まで」

『畏まりました』

 

 7人のNPCは命じた通り玉座の下まで来て膝をつく。これでおそらくここにいる他のNPCにもアルベドと同様のことが起きているのだろうと確認できた。

 

「おぉ、凄いですね。こんなマクロ組んでないはずなのに。というかこんなことできるはずがないのに」

 

 隣のXオルタが言う。相変わらず感情のこもらない中身のない声だ。

 

「オルタさんまず何をする必要があるか考えましょう。今何が起こっているのか調べないと」

「確かにそうですね。まずは情報収集からですね。状況確認と他の人の捜索といったところですか?」

「じゃあ……」

 

 会社の重役のように偉そうな演技をして声に出来る限りの威厳を込めNPCに命令を下していく。

 セバスにはプレアデスの1人とともに周辺の調査を、残りのプレアデスには9階層の警備を命じた。

 最後にアルベドに命令を下そうとすると、隣でXオルタがまたアルベドとベタベタしていた。イラつきながら声をかける。

 

「オルタさん、こんな時に何やっているんですか」

「R_18の制限のチェックと脈拍の確認していました。さっきのようにセクハラしてもGMからの警告も垢BAN無いです。そしてアルベドにも私にもちゃんと脈拍がありました。しっかり生きてます。モモンガさんもどうです?」

「えっ?」

 

 白々しいことを。

 自分が詰問していたはずが突然の無茶振りである。アルベドの方を見ると目を輝かせながら見つめ返して来た。

 

「モモンガ様が望むなら如何様にでも。どうぞ、お好きにしてください」

 

 残念ながら逃げられそうにない。アルベドがグッと胸を張る。となりを見ると諸悪の根源が満足そうにしている。もはやどうしようもないと覚悟を決めた。

 

「……アルベドよ、手を出せ」

 

 ゆっくりと手を伸ばす。当たり前だがいきなり胸をもむわけがない。そこまでする度胸は自分にはないのだ。脈を測ろうとアルベドの手に触れた。

 

「……っ」

 

 痛みを堪えるような顔をする。すぐに手を離し何が起こったのか考えて、答えに気がついた。

 

「すまないな。負の接触を解除することを忘れていた」

 

 どのように解除するのかは自然と理解できていた。先ほどXオルタの肩に触れたときもダメージがあったのだろうか。申し訳ない気持ちを押しつぶしながらすぐに解除して再び手を取った。

 目の前で破瓜の痛みなどとのたまっているのは無視して脈を探す。見つけた。確かにトクン、トクン、と脈打っているのがわかる。ここに来て初めて真に理解した。NPC達は生きているのだ。

 続いて自分の手首を見るが、骨だ。脈などあるわけがない。アンデッドのオーバーロードは死を超越した存在だ。自分は死体で目の前のアルベドは生きている。Xオルタの顔にも血が通っているように見えた。

 

 急に途方もない考えが浮かぶ。

 

「オルタさん、もし仮想現実が現実になったっていったら笑いますか?」

「いいえ、それが正しいと思います」

 

 賛同してくれたXオルタを見て安心する。1人でこんなことになっていたらどんな醜態をさらしていたことか。隣に友人がいることに一息ついた時だった。

 

「ところでモモンガさんはアルベドの胸は揉まないんですか?」

 

 前言撤回、1人ならこんなセクハラには遭わなかったはずだ。

 

 




やってしまった……

誤字脱字は気を付けたつもりですがもしあったらすいません。
感想をくれたらうれしいです。

後おまけ、無視しても問題ないです

謎のヒロインXオルタのステータス(改訂)

種族職業などにオリ設定が入ってます。

役職:至高の42人。

住居:ナザリック地下大墳墓第九階層にある自室

属性:中立~悪―[カルマ値:-100]

種族レベル合計30
ゴースト:10lv
幻霊:10lv
英霊:10lv

職業レベル合計70
ソードマスター:10lv
ケンセイ:10lv
ギャラクシーナイト:10lv(設定の都合であの銀河的名作の時代騎士の名前を使えなかったのでこんなことになってます。イメージああいうやつにしておいてください)

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