謎の至高Xオルタ   作:えっちゃんの羊羹

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13話です。
感想、評価、お気に入りありがとうございます。

ランキングがちょっとの間すごいことになってた。

後、今朝活動報告に前回の内容について覚書みたいなネタバレがあります。
すぐ消すつもりですが気になったら見てください。
消しました。


13話 衣食

 アルベドは浮かれていた。

 今朝目にしたモモンガの執務室を訪れた時の出来事が原因だ。

 

 

 

 1時間前、モモンガは肩から上が肉で覆われていてその部分だけ見れば人間のようにも見えた。普段通りの美しい顔を見れない事に微かに残念に思ったが、食事を行う姿に驚愕する。

 

「モ、モモンガ様、その御姿は……」

「ん、ああ、これだな。オルタさんが用意してくれたものでな。私にも食事を可能にしてくれるのだ。今まで食欲とは無縁だったのだがナザリックの料理はうまいな。いつまでも食べられそうだ」

 

 いつも以上に饒舌なモモンガに驚き、続く言葉はさらに驚かされた。

 

「そこでだな、守護者の皆と昼食を一緒に取りたいと思ってな。今日の昼、時間を取れないか?その場でこれからの事について話したいこともあるのだ」

「はい!かしこまりました。モモンガ様」

 

 アルベドの羽がパタパタと小さく羽ばたく。喜びが隠しきれていない。

 

「そ、そんなに嬉しいか?私達はお前達を家族の様なものと思っている。だから一緒に食事を取りたいと思うのは当たり前だと思っていたのだが……」

 

 アルベドの中で様々なことが繋がり始める。一昨日モモンガから直接受け取ったリング、昨夜Xオルタに下賜されたアイテム、そして今のモモンガの言葉、おもに「一緒に」「これからについて」「話したいこと」「家族」。

 もはやナザリック最高と称されるアルベドの爛れた頭脳が示す解はただ1つだった。

 

「当然にございます。このナザリックで至高のお方々と食事を共にできると聞き喜ばないものはいません」

 

 押し倒したい気持ちを堪え、努めて冷静に答える。今ではない。最高の結果を出すのは今夜、このあと待ち構える最高の出来事、婚約発表の式典を完璧に済ませてからのことと心に決めた。

 なお、この予想と期待が打ち砕かれるのは僅か数時間後だった。

 

 

 ◇◆◇

 

 

 昼、第九階層にある食堂にナザリックに属するNPCのほぼ全てが集まっていた。この場にいないものはニグレドやヴィクティム、プレイアデスの末妹、図書館のアンデッド達、後は五大最悪と称されたもの達くらいだろうか。アルベドに先導されたモモンガとXオルタが最奥に位置する長机の中央に座る。アルベドはその隣に立つ。普段より華美で豪華な服を着ていて目が潤んでいる様にも見える。

 

「モモンガ様、まずは皆にお言葉をお願い致します」

 

 モモンガのみが立ち上がり、演説を始めた。

 

「まずはこれだけの物がこの場に集まってくれた事に感謝しよう。そして、私達から皆に伝えなくてはならないことがある」

 

 隣に立つアルベドの顔に赤味がさす。最前列に位置するシャルティアの顔が何かを察したのか白くなる。

 純白の豪華な服を着たアルベドと、人のマスクを被っている為普段のローブではなくダブルの礼服を纏ったモモンガが2人だけ並んで立っている。

 隣にいるはずのXオルタは少し離れて座ったまま2人の方向を見ている様だった。

 

「今後のナザリックの方針が決まった。私たちはアインズ・ウール・ゴウンの仲間達をこの場に再び連れ戻す。彼等に会い、説得し、戻ってきてもらう。多くの難題が我等を遮るだろう。しかし、必ずやり遂げてみせよう」

 

 アルベドの顔から血の気が引いた。眼前の守護者を含むNPC達の顔に歓喜の表情が宿る。しかし、声をあげるものはまだ居ない。モモンガの話がまだ終わっていないとわかっているからだ。

 

「その為の方針として私達は1つの決意をした。このナザリック地下大墳墓というものを国という形にする。我等の様にこの地に訪れたものが最初に耳にする名がアインズ・ウール・ゴウンであるように。そして、今この世界の何処かに仲間達がいるのならその下にこの名がそこまで届くように」

 

 モモンガの話が終わる。隣のアルベドは完全に固まっている。普段のモモンガの顔よりも白磁の顔という言葉が似合うかもしれないくらい血の気が引いて白くなっていた。しかし、表情が崩れないのはさすがというべきなのだろう。一方、他の守護者達は歓喜に包まれていた。

 

『アインズ・ウール・ゴウン、万歳!』

『ナザリック地下大墳墓、万歳!』

『モモンガ様、万歳!』

『Xオルタ様、万歳!』

 

 口々に声に出す。中には自身の創造主の名をあげるもの達もいる。

 

「さて、話はこれで終わりだ。これからは食事の時間だ。それぞれ存分に楽しんで欲しい」

 

 そのまま席に着くモモンガを追ってアルベドは席に着いた。しかし、相当気落ちしているのか手が動いていない。

 あまりにも哀れな姿をさらしている美女に対して救いの手を差し出せるものはこの場にはただ1人しかいなかった。

 

「お疲れ様、モモンガさん。アルベドも、ね。準備ありがとう。で、モモンガさんーー」

 

 労う時の気の抜けた声に反して続く言葉は固く重い。

 

「今回はアルベドが頑張ってくれたんだから報いてあげてください、ね」

 

 そのまま席を移動してXオルタは2人と距離を取り、給仕として控えているメイドと話し始めた。

 狼の前に放り投げられた子豚、モモンガは自身の状況をそう判断した。今の自分は表情が動く。普段のポーカーフェイス(骨)は通用しない。支配者らしく顔を隠せるポーズでアルベドに問いかける。

 

「そ、そうだな。アルベドよ、今回はご苦労だった。そ、それでだな、何か褒美を与えたいと思ってな。何か、欲しい物はあるか?」

「で、ではモモンガ様の御寵愛を頂ければ……」

「却下だ。そういうことではない。も、もっと健全な事をな……つまりそういう事だ」

 

 意味をなしていない言葉でごまかす。助けを求めて周りを見回すも、頼りになりそうな守護者達は仕掛け人によって隔離されている。Xオルタの頭で顔の下半分が隠れたデミウルゴスのキラキラした視線が癪だった。

 

 アルベドは頭脳を過去最大級に回転させる。どのようにすればモモンガの寵愛を受けられるのか。

 周囲の状況がモモンガの決定に影響を与える事はない。今回は自分がプロデュースした完璧な食事会で婚約発表まで繋げる事が出来るチャンスだったしそうなると思っていた。そのための雰囲気づくりに最大限手を尽くしたのだから今以上に場の空気を整える事は今後出来ることではないだろう。

 ならば、モモンガに己から来てもらうしかない。

 

「では、改めて。私は裁縫を趣味にしており、衣装などを作ることもあります」

「ほう、趣味を持つのはいいことだな」

「なので、お暇な時で宜しいので私が用意した衣装をお召しになっていただけないでしょうか?」

 

 モモンガは転移直前に見たアルベドの設定を思い出しながら答えた。確か家事全般に秀でているはずだ。

 

「なるほど、せっかくだから着てもらいたいということか。良かろう。満足のいくものが出来たら私に声をかけると良い」

 

 望み通りの答えを得たアルベドは内心ガッツポーズをした。その衣装の中にXオルタから下賜された「大切なアレ」を紛れ込ませる。モモンガに「大切なアレ」があればこちらのものだ。サキュバスとしての自身の力を示す未来を思い浮かべて満足気にアルベドは答えた。

 

「はい、畏まりました。モモンガ様にふさわしいものが出来るよう手を尽くします」

「しかし、着るのは私でいいのか?お前のような華やかな者の服の方が見栄えがいいと思うんだが……」

「いえ、モモンガ様にこそ着て頂きたいのです」

「そ、そういうものなのか。なら、頑張ってくれ」

 

 アルベドの計画を遮るものはもうない。

 後はモモンガに着せる様々な服の中に例のスーツを混ぜておけばいい。仮面によって無いはずの食欲が僅かでも出ているのなら、スーツに寄って生じるだろう獣慾こそ最後の鍵になる。

 そこから先はアルベドの腕の見せ所だ。そして、当然の如く失敗するつもりなどかけらもなかった。

 

 

 ◇◆◇

 

 

 その夜、アルベドはモモンガの部屋に数着の服を持っていった。うち1つは例の「大切なアレ」と合わせてあり、その存在を意識せずに着れるようになっている。アルベドが思うにこれ以上ない完璧な計画だった。

 

 なお、完璧な計画を立てたからといって上手くいくとは限らない。具体的にはモモンガの理性が想定以上に強靭だった。モモンガは「大切なアレ」による装着後の下半身から湧き上がってきた僅かな違和感から即座にファッションショーを中止、夜の密会を切り上げようとした。

 

「な、なぁ、アルベドよ。今夜はこの辺りまでにしないか?」

「な、何故ですか?ここからが良いところですのに……」

「いや、少しな、今までの疲れが出てきたようでな。お前も私が疲れている時に嫌々やっていては嫌だろ」

 

 急な終了に焦りつつアルベドはこの場に置いての敗北を悟る。しかし、この警戒は僅かといえど自身の策が功を奏したということだろう。

 このまま繰り返しいつしかモモンガの中にアルベドに対する獣慾を蓄積させる。いずれ、その欲望をぶちまけてくる時が来るだろう。

 

「嫌がるなどとんでもない事にございます。しかし、モモンガ様がお疲れならばそれは何より優先するべき事。直ちに切り上げますのでごゆっくりおやすみくださいませ」

 

 そのままアルベドは衣裳をまとめ、モモンガの部屋を出る。最後に哀れそうな表情で一言付け加えた。

 

「あ、あのモモンガ様、もしよろしければまたいつか私の用意した服をお召しになっていただけないでしょうか……」

「あぁ、いいとも。余裕ができたらまた来るといい。待っているぞ」

「ありがとうございます!」

 

 僅かな敗北感、それを超える未来への希望を得たアルベドは弾むような足取りで自室に戻る。

 

「あぁ、モモンガさまぁ」

 

 モモンガはアルベドが部屋を出てから感じるはずのない寒気を感じ背骨をぶるりと震わせた。

 




隠語をいくらかわかりやすいように改訂

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