謎の至高Xオルタ   作:えっちゃんの羊羹

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23話です。

感想ありがとうございます。

ようやくこれで二巻が終わったって言える……かも

後関係ないけどぶくぶく茶釜とぐだぐだ茶器集めって似てる気がした。




23話 人間

 翌朝、ニニャは1人で組合に向かった。もうそろそろエックス達が組合に来てオークなどの討伐報酬を受け取る頃だが仲間達はひっそりと宿で眠っているはずだ。ニニャにはやらなければならない事があったので他のメンバーを眠らせて1人で組合に向かったのだ。

 

 朦朧とした思考を回転させ組合の扉を開いた。そこは既にそれなりの人数の冒険者で賑わっていて普段とは違う緊張した空気をはらんでいた。

 聞こえて来る話は高揚と僅かな失望をニニャに与える。しかし、今その話に意識を割く余裕はない。周囲から目的の少女を見つけて足早に向かった。そしてXオルタの目の前まで来てニニャの意識は一気に白く塗りつぶされた。

 

 ニニャのカバンに入っている黒い珠、死の宝珠にとって人間とは傀儡でしかなく、その感情は宝珠の与えるものとなる。宝珠は今まで使っていた人間が使えなくなったため他の傀儡を探す必要があった。

 先日まで操っていたカジット・バダンテールは優秀な傀儡だったが最高のものではなかった。今操っている少女も将来性はあるが先に目をつけた相手には劣る。

 優秀な筈のカジットが己の力を十全に使いなお勝ちの目の方が少ない女戦士を一方的に蹂躙する若い魔法詠唱者は次の傀儡として魅力的すぎたのだ。端的に言うと浮き足立っていた。だから仕方なかったのだ。声を掛けられるまで相手がそれと気がつかなかったのはどうしようもないことだった。

 傀儡に声を掛けてきたそれの体表に張り付くように存在する歪な生命反応とその奥から醸し出される濃厚な死の気配は明らかに己の全てを捧げるべき相手であることを示していた。その存在による衝撃は洗脳しようとしていた少女の事など記憶から消しさり、死の宝珠が偉大なる死の王に仕える事しか考えられないようにした。

 

 

 ◇◆◇

 

 

 モモンガが漆黒の剣のメンバーからオーガの討伐報酬を受け取りに来ると組合は共同墓地でのアンデッドの大量発生についての話で持ちきりだった。

 どうも昨日の夕方に突然ゾンビの大群が発生したらしい。知性のあるものはいないようで今はまだ封じ込めに成功しているがいつ強力なアンデッドが発生するかわからない状況だ。急な話なので組合もまだ対抗策は組まれていない。受付で漆黒の剣を待ちながらモモンガは呟いた。

 

「私の実力を示すのには絶好の好機だな」

 

 モモンガにとってこの事件は自身の力を昨夜のような奇妙な形ではなく明確に示すチャンスだった。

 本来ゾンビなどといった下級アンデッドは特殊な場合を除き討伐後に組合に報告する事で報酬をもらうものとなっている。なので、組合にはゾンビ討伐クエストなどと言うものは用意していない。それは今から共同墓地に行ってゾンビを討伐することは階級によるクエスト受注制限に引っかからないということになる。

 つまり、銅級冒険者でも勝手に共同墓地に行ってゾンビを狩ってきていいわけだ。

 そこまで確認した上でモモンガは呟いたわけだが説明していた受付嬢のイシュペンには狂人の戯言に聞こえたらしい。吐き捨てるように言う言葉には明らかに呆れが混じっている。

 

「墓地の入り口は完全に封鎖されているのでは今は入れませんけどね」

「入口から入らなければいいのだろ? 簡単な事じゃないか」

「はい、そうですか。頑張ってくださいねー。では次の方来てくださーい」

 

 棒読みの応援と自分の後ろにいた冒険者のバカにした様な表情に対し内心で「後で驚かせてやる」と決意しながらモモンガは組合の隅で待つXオルタに向かっていった。

 

「私は墓地に向かう。エックスはここで漆黒の剣のメンバーを待ってオーガの討伐報酬を受け取っておいて欲しい」

「了解……あれ?」

 

 Xオルタが示した方向にはニニャが1人でふらつきながら歩いていた。モモンガは何故リーダーであるペテルではなく1番若いニニャが来たのか訝しむ。

 

「ニニャか、他の3人はどうしたんだ?」

 

 濁った目がモモンガの方を向く。それと同時にニニャの口が微かな声にならない言葉を紡ぎ始める。

 

「……死の……王……アンデッドの――」

 

 即座に反応したXオルタの念動力によりニニャの呼吸が止まった。そのまま気を失い倒れこむがモモンガの鎧によって受け止められる。周囲は朝からの騒ぎと同一視されているのか話の内容に対して不審に思われている様子はなかった。むしろ突然倒れたニニャに心配そうな視線が集まりはじめていた。

 居心地の悪さとニニャを置いてはいけない状況がモモンガとXオルタに次の行動を決めさせた。

 

「とりあえず……宿に運ぶか」

 

 宿に着いたモモンガは困惑を露わにしてXオルタに話しかける。ナーベラルも主人達の抱える問題が難題である事がわかっている様で組合を出てから一言も口を聞いていなかった。

 

「あれって俺がアンデッドだってバレていましたよね」

「はい、多分」

 

 何故、秘密がバレたのかを明らかにしなければならない。気がついたのがニニャだけのようだが他の漆黒の剣のメンバーも調べる必要がある。鎧を脱いだモモンガは警戒心を露わにしながら言った。

 

「とりあえず彼はナザリックに連れて行って何が起きたのか調べましょう。ここでは調べることもできない」

「じゃあ、私が連れて行きますね。モモンガさんは先に墓地の方に行ってください。あれだけ大口叩いているので何もしなかったら笑い物になりそう、です」

 

 その言葉に受付嬢の言葉と他の冒険者の表情を思い出してモモンガは苦虫を噛み潰した様な顔で応じる。

 

「くっ……そう、ですね。じゃあ、彼のことはオルタさんに任せます。何かわかったらすぐにメッセージを送ってください。後、シャドウデーモンに他の3人を見張らせて起きますので彼らのこともお願いします」

「了解、です。モモンガさんもくれぐれも気をつけて」

 

 そう言ってニニャを背負おうとしたXオルタは一瞬戸惑った様なそぶりを見せ横抱きにしてモモンガの開いたゲートを潜ってナザリックに戻る。

 

 

 ◇◆◇

 

 

 一瞬でXオルタの視界は小汚い宿の寝室から盛り上がった大地と朝日の風景に切り替わった。出迎えて来たアルベドにXオルタは告げた。

 

「この子について内密に調べたい。場所の用意をしてパンドラを呼び出しておいて。後、シャドウデーモンからの報告をすぐに受けられる様にして」

「かしこまりました。ならば第七階層よろしいかと、デミウルゴスにすぐ部屋を用意させます」

「わかった。よろしくね」

 

 シャドウデーモンがデミウルゴスの配下である事が第七階層になった理由だろう。アルベドがメッセージでデミウルゴスとパンドラズ・アクターに連絡している間にXオルタはナザリックを出る時に外していたリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを装備した。

 アルベドが準備の完了を告げるとXオルタはその素早さに若干の驚愕を示しながら転移する。

 

「お待たせしました。Xオルタ様。こちらに部屋を用意しております。お荷物は私がもちましょう」

 

 出迎えたデミウルゴスにニニャを預け案内されてついていく。着いたのは第七階層にしては比較的涼しげな色合い正確にはむき出しの石造の部屋で拷問器具が用意されていた。Xオルタは戸惑いを隠しきれずに告げる。

 

「も、もっと普通の……会議室とか応接室みたいな部屋、ないかな」

「も、申し訳ありません! 直ちに別の部屋へご案内します!」

 

 今度こそ目的に沿った部屋に辿り着いたXオルタは後から来たパンドラズ・アクターとともに気絶しているニニャに向かい合った。

 

「この子がモモンガさんの変装を見破ったみたいだから理由を確かめたい」

「畏まりました。Xオルタ様。では、私は再現実験を行うためにモモンガ様の仮の姿、漆黒の戦士モモン・ザ・ダークウォリアー様の役をやらせていただきたいと思います!」

「あ、はい」

 

 パンドラズ・アクターが変装を完了して準備が整ったのを確認したXオルタはニニャにポーションをかける事で意識を取り戻させた。

 

 部屋の外ではデミウルゴスとアルベドが話していた。デミウルゴスは己の失敗を悔いる様に歯ぎしりをしながら言った。

 

「私はXオルタ様のご要望にお応えできませんでした。……この罪を一体どの様に償えばよろしいのでしょう」

「いえ、あれは私の責任でもあるわ。パンドラズ・アクターへの連絡を焦りあなたへの連絡が手短になってしまったの。せめてあの人間がそれなりに重要な存在だとわかっていればもっと方法はあったでしょう」

 

 失敗を悔いる2人は俯きながら話し合う。

 

「しかし、それは不可能な事でしょう。先ほど漏れた話によるとあの人間はモモンガ様の変装を見破ったとのこと。その詳細を暴くまでは何よりも迅速かつ秘密裏に行わなければならなかったのですから」

「ならばどうすれば良かったのかを考えましょう。まずあの人間の詳細ね。あの女何者なの? 変装を見破ったのはあの女1人だけの様なのになぜ始末してしまわなかったのかしら?」

「それは難しいところですね。しかし、殺しも拷問もしないということはそのままで利用価値があるということでしょう。おそらく例のカルネ村でモモンガ様直々にアイテムを下賜された少女の様に扱われるのではないでしょうか?」

 

 深読みが先行していく途中、遠くから一体の悪魔が走り寄って来た。シャドウデーモンの管轄を任せていた個体だ。それに気がついたデミウルゴスが問いかける。

 

「どうしたんだい? 何か奇妙なことでもあったのかな?」

「はっ、モモンガ様より監視を命じられた3人の冒険者についてなのですが……我々が発見した時には既に全員ベッドで死亡しておりました」

 

 その言葉を聞いたデミウルゴスはすぐさまXオルタのいる部屋にノックして入る。部屋ではパンドラズ・アクターがモモンガにメッセージを伝える声が朗々と響いていた。

 

「モモンガ様、変装が露見したのは死の宝珠というアイテムが原因のようです。かなり希少なものらしく2つ目による他の誰かに正体を見破られる事を警戒する必要はないかと思われます」

『成る程、ならば私の正体を知りかねないものはニニャを除けば後の3人位か?』

「死の宝珠を彼らがどこで手に入れたかによりますが今の所その3人だけでしょう」

『なら、報告はそれで終わりだな』

「はい、これで報告内容は全てでございます!名残惜しいーー」

 

ノックとともに侵入してきたデミウルゴスの声がパンドラズ・アクターの報告を遮った。

 

「Xオルタ様、シャドウデーモンより報告です。監視を命じられた3人は確認しに向かった時、既に死亡していた模様です」

 

 部屋の中にいるXオルタとモモンの姿をしてモモンガにメッセージを送っていたパンドラズ・アクター、そして目を覚まし思考力を取り戻したニニャが目を合わせた。

 

「え、い、嫌……」

 

 既に仲間が死んでおり、おそらくそれが洗脳されていた時の自分の仕業であると気が付いたのだろう。絶望に沈むニニャのつぶやきが周囲の喧騒に淋しげに響いた。

 

 その姿を見ることができないモモンガはパンドラズ・アクターによる報告が途中で止まったことを訝しみメッセージの向こう側で言った。

 

『ん、まだ報告するべきことがあるのか?』

「はい、たった今、デミウルゴスのシャドウデーモンより続報が入りました。漆黒の剣の残りのメンバーは宿で死亡が確認されたそうです」

『……そうか、とりあえず漆黒の剣のほかのメンバーの死体は回収しておけ。彼らの死から宝珠の存在が漏れないようにな。それとこちらの仕事は終わったとオルタさんに伝えてくれ。凱旋を済ませたらすぐにナザリックへ戻れるだろう』

 




久々のデミえもんでした。

次から三巻、オリジナル展開が増えそう。

ちなみに墓地のアンデッドはカジットが宝珠とサヨナラしたせいで制御から外れた連中です。ゾンビ150はいたらしいしほかにもいると思うので彼の弟子たちはきっと全滅してます。


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