謎の至高Xオルタ   作:えっちゃんの羊羹

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25話です。

感想誤字修正たくさんの評価ありがとうございます。

テンション上がったので評価の文字制限は今後も0文字にしておきます。

ps.更新が遅れてすいません。ちょっと忙しくて手が止まってました。


25話 加速していく話

 モモンガの執務室を出たXオルタは先ほどまでモモンガと話していたアインズ・ウール・ゴウンの国家制度の相談のためにアルベドの部屋に向かおうとしていた。途中で、参考書籍を持っていくために自室に立ち寄る。

 

 ここで本来なら上司であるXオルタがアルベドを呼び出すのが筋だがそれをしない理由が2つある。

 

 1つ目は単純に部屋が狭くて話し合いに適さないのだ。本来キングサイズのベッドや様々な装飾に溢れたスイートルームのほぼ全域を潰し小さめの勉強部屋と巨大な倉庫だけになっている。おかげでプレイ期間と課金額も相まってXオルタのアイテム含めた総資産はギルメンの中でもトップクラスにあるが職場としては最悪な事になっていた。

 

 もう1つの理由Xオルタの自室はパンドラズ・アクターの研究室として使われているからだ。研究内容はリアルとの往復手段を手に入れることである。

 元がゲームの存在であるNPCがリアルと関わるのはモモンガにもXオルタにも不安だが、やむを得ない事情があった。

 単純に2人とも科学的に研究開発を重ねていくことが下手すぎたのだ。とりあえずアイテムを使ってみる以外の方法を取れなかった2人による研究は瞬く間に頓挫していた。

 苦肉の策として研究開発プロジェクトのリーダーの座をパンドラズ・アクターに譲り、同時に研究対象のアイテムの宝庫となっていたXオルタの部屋を明け渡す事になったのだ。結果的にパンドラズ・アクターは暇さえあればXオルタの部屋で研究することが日課になっている。

 

 恐る恐る自室を覗き込みパンドラズ・アクターがいないことを確かめたXオルタは手早く目的のものを抱えてそそくさとアルベドの部屋に急ぐ。その様子はまるで盗人のようでとてもナザリックの支配者の1人とは思えない。

 

「アルベドはいる、かな?」

 

 返事は聞こえないが奥の方でガサゴソと物音が聞こえる。広いスイートルームの奥までXオルタの声は届かなかったようだ。先ほど自室に入った時のように忍び足でXオルタは奥へと進んで行く。そばに控えるメイドは主人であるXオルタを止めるようなことはせず、頭を深く下げるだけでそのまま素通りさせてしまう。

 

 1番奥にある寝室の扉を開いたXオルタが見たのは大量のモモンガだった。

 正確には大量のモモンガ型抱き枕だが、初見の相手には大差ないだろう。

 とにかくその光景に驚いたXオルタは抱えて居た本、タイトルは「六法全書・総集編」、を取り落として足の指に直撃させてしまった。

 

 先に説明をするとこの本はXオルタがリアルで集めた法律関係の書籍を全てデータ化して取り込んだものだ。

 そのデータ量はテキストとして読み込ませるためだけに伝説級の素材を必要としたほどだ。つまり、付加効果皆無の伝説級の攻撃力(重さ)を持つ書籍とも言える。

 具体的にはこれで殴ればモモンガの〈上位物理無効化Ⅲ〉を突破できる。

 

 その鈍器を足の指に直撃させたXオルタは声にならない悲鳴をあげながら転げ回る。ここまでくればアルベドもさすがに気がついた。

 

「Xオルタ様! な、なぜこの部屋に! い、一体何があったのですか!」

 

 レベル100の身体能力で転げ回るXオルタは同格の戦士職が全力を尽くさないと止められない。アルベドの努力の甲斐あって言葉が通じるようになった頃には部屋にあったモモンガ抱き枕の半数を破壊した後だった。

 幸か不幸か抱き枕の残骸がクッションになったおかげで調度品の類は全て無事だった。

 

「ご、ごめんなさい……」

「い、いえ私こそXオルタ様がお越しくださったと言うのに気がつけず、このような怪我を負わせてしまうなどと言う失態。守護者統括として許されるものではございません」

 

 アルベドが気がつかなかったのはXオルタの声が小さすぎたせいだというのは関係ないようだ。互いに折り合いをつけた上で本題に入る。

 

「連邦制、ですか。では周囲の国々をアインズ・ウール・ゴウンの連邦区として、その統括として至高のお方々が支配されるという形ですね」

「うん、できればそれぞれの国の特色を残しておきたいから自治権は強めにしておきたいんだけど……」

「なるほど、畏まりました。占領後はその様に推し進められる様にしましょう。では、まずはこの帝国に軍を差し向けますか?」

 

 突拍子のない発言にXオルタは戸惑うがアルベドとしてははっきりとした考えがあっての発言だ。

 法国はプレイヤーの影があるため情報収集が済むまでは大っぴらに敵対できず、王国は最初に攻めるとしたらモモンガ達の冒険者としての拠点であるエ・ランテルになってしまう。そうなると最初に攻め込む先は消去法で帝国になる。

 しかし、Xオルタとしては戦争は避けたかった。できれば自分からアインズ・ウール・ゴウンの配下に収まって欲しかったのだ。その旨を告げるとアルベドは僅かに悩んだ様子を見せた後答えた。

 

「なるほど、そう言う事でしたか。流石は至高のお方です。すでに手を打っておられたとは」

「あ、うん。準備はしていたんだけど……」

 

 Xオルタには何が流石なのかわからないが取り敢えず納得した様なふりをしておく。そのまま、アルベドは了解済みのこととして話を続ける。

 

「はい、お二方の準備のお陰で極めて動きやすくなっております。後は私からアウラとマーレに指示を出しておきましょう」

「え、えっと、よろしく? あ、それと法律のこと考えるときはこれを使ってね」

 

 なぜアウラとマーレが出てくるのかXオルタは理解していなかったがアルベドに鈍器こと「六法全書・総集編」を預けて一仕事終えたつもりで満足げに言った。

 

「じゃあ、モモンガさんとの事も頑張って、ね。協力するから」

「で、では1つ伺ってもよろしいでしょうか?」

 

 途端にアルベドの纏う空気が変わった。飛びかかる様にしてXオルタに問い掛けるアルベドの姿は一種の恐ろしさすら感じさせるものだ。気圧されるようにしてXオルタは答える。

 

「う、うん。何が聞きたいの?」

「……Xオルタ様はモモンガ様のことをどのように思っていらっしゃるのですか?」

「え、大事な仲間、だよ」

「そ、その様な意味ではなく男性としてどの様に見ているかという事です!」

 

 アルベドにとってモモンガ争奪戦の最大の仮想敵はXオルタだ。しかし、2人が仮に相思相愛になっていたらとても割り込もうなどと思えない。

 さらに、アルベドの中でモモンガはXオルタに惚れている事になっていた。転移直後に互いの部屋を行き来したり、Xオルタの言葉が原因でペットのハムスケを捕まえてきたり、アルベドにはモモンガの行動がXオルタに貢いでいる様に見えたのだ。

 この質問はアルベドがモモンガとXオルタの間に割り込めるかどうかを確かめるためのものだった。自分の行いが不敬だとわかっている以上、アルベドはここでXオルタがモモンガを愛していると言ったら正妻争いからは完全に身を引くつもりであった。なお、正妻戦争は降りても愛人としてモモンガを狙わないわけではない。

 しかし、その心構えは全て無駄に終わる。

 

「ないよ、モモンガさんはそういうのない」

 

 あまりにもあっさりとした返答にアルベドの目が点になる。

 

「で、ではモモンガ様がXオルタ様をお求めになっても……?」

「そういうのないです」

「そう、ですか……」

 

 もはや脈はないのが明らかだった。アルベドは安心感とともに僅かに悲しさを覚える。モモンガを愛する障害が1つなくなったのは喜ばしいが逆にモモンガの恋(勘違い)が破れた事に一抹の寂しさを感じた。

 結果、アルベドの中でやるべき事の優先順位が変動する。1位に繰り上がったのはモモンガの昔の恋(勘違い)を忘れさせる事だ。

 Xオルタは勘違いを暴走させて1人で百面相しているアルベドを尻目に部屋から出て言った。

 

 

 ◇◆◇

 

 

「……隊長、なぜあの方が此処にいるのですか?」

「仕方ないだろ。そういう命令なんだから」

 

 金髪の三十路あたりの男が、若い射干玉の髪を地面に届くほど伸ばした青年に尋ねた。彼等こそスレイン法国が誇る漆黒聖典、黒髪の方が第1席次で金髪の男が第5席次だ。

 話題に上がっているのは2人の視線の先にいる相手は髪が左右で白と黒に分けられた尖った耳をした少女だ。彼女こそ実力で先の2人を超えるスレイン法国の最高戦力にして漆黒聖典の番外席次"絶死絶命"。血と血の混じり合いとありえない確率で生まれたこの世界における最強の1人である。

 

 彼女は極めて軽い調子で質問をした金髪の男を皮肉った。

 

「それは相手が強いからに決まっているでしょ。私が出てこないといけないかもしれないくらい。……それよりもクインティアの片割れがいる方が疑問だけどねぇ? 相手は"疾風走破"を捕まえたんだよ。あなたの顔は見られたらまずいんじゃない?」

 

 番外席次の言葉に金髪の男、第5席次"一人師団"クワイエッセ・ハゼイア・クインティアが苦虫を噛み潰したような顔をする。

 番外席次の言う疾風走破とはクレマンティーヌであり、クアイエッセの妹にあたる。そして、この場に揃った3人の任務はクレマンティーヌを捕縛したエ・ランテルの冒険者であるエックスの調査と勧誘だ。

 つまり、クレマンティーヌに良く似たクアイエッセの顔は今回のターゲットに違和感を持たれるかもしれないというのが番外席次の指摘だ。

 しかし、当然の如くその様な問題があると言うことは法国の上層部は理解しているし、番外席次もその上層部の1人である以上、3人中では最も任務の裏事情に通じている。全て理解しているのに茶々を入れてくる番外席次にため息をついた第1席次が対処法を示す。

 

「問題ないですよ。その為に今回は"仮面"を私の物の他に2つ持ってきています。2人ともこれで顔を変えるように」

 

 そう言って第1席次が2枚の仮面を番外席次とクアイエッセにそれぞれ渡す。更に番外席次にはもう1つ、黒い粉の入った袋を渡した。

 

「それで髪を染めておいてください。目立ちますから」

「はぁい!」

 

 その張りのある大きな声からは浮かれているのが見て取れた。それもそのはずで彼女はその特異な性質と職務ゆえにこれまで法国の最奥から殆ど出られなかったのだ。

 しかし、今回の任務は彼女が出ていく為にうってつけだった。

 

 まず、相手の戦力が不明瞭ながら第1席次を超えかねないため番外席次が必要であること。

 

 次に、場所が王国であり仮に評議国に発見され戦闘になっても法国は被害を受けにくいだろうということ。神人2人による迅速な行動であれば早々発見されないだろうという前提はあるが。

 また、王国が多少のダメージを受けたとしても帝国が征服しやすくなるだけで法国には益しかないからだ。

 

 最後に仮に戦闘になっても最大の仮想敵"白金の竜王"ツァインドルクス・ヴァイシオンに対し神人2人という法国のドリームチームに加え未知の強者を加えた3対1で相手をすることができるかもしれないということ。これ以上の戦力を法国が用意できる可能性はほぼ無いので此処でケリをつけられるのなら賭けてみようという考えだ。

 

 それら3つが神官長達が彼女の出撃を認めさせた要因だ。ただ、彼等の本音に外に出ることがほぼ許されていなかった彼女に世界を見せてやりたいという気持ちはあったかもしれない。

 

 全員が準備を済ませ、第1席次である漆黒聖典の隊長が号令をかける。今回に限り、番外席次は彼の指揮下に入ることになっている。

 

「準備はできたな。クアイエッセはクリムゾン・オウルで周囲の警戒を担当してくれ。ただ、移動速度が遅くなりそうなので僕らで背負っていく。万が一交渉が決裂して戦闘になったらモンスター達を壁として使わせてくれ」

 

 真剣な表情の指揮官に対し残りの2人もそれぞれしっかりと頷いた。

 

「なら、出発だ。目的地はエ・ランテル、主な任務は冒険者エックスとの交渉だ。途中はカッツェ平原を全速力で突っ切るからエ・ランテルの郊外で風花と落ち合うまで休みなしだ」

 

 2人の様子に満足した第1席次はそのままクアイエッセを背負い番外席次を率いて法国国境に位置する神殿から飛び出した。

 

 




まず、前回のちらっと書いたえっちゃんがなぜ世界征服するつもりなのかについて。
本文に入れ損ねたのでここにかきます。

前提としてうちのえっちゃんはオリ主です。なのでAOGに対するイメージが二つあります。
1つはユグドラシルで仲間とともに築いたギルドとしてのAOG。これには確固たるいまーじがあるはず。

もう1つは原作知識からくる世界征服していくNPCをメインとしたAOG、ナザリックといった方がいいかもしれないもののあいまいな印象。

これから彼女の頭の中ではナザリックのNPCは征服者っていうあいまいなイメージがあるので征服しないという選択に至ったんじゃないかなあとか

これはあくまで理屈でしかないので本当はちゃんと考えてないし
原作で征服してたし……とかいう軽い調子で世界征服言ってるのがうちのえっちゃんです。

そして今回ついに番外さんが出撃しました。ツアーに発見される前に任務の終わらせることができるのかが彼女と法国の分水嶺です。

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