謎の至高Xオルタ   作:えっちゃんの羊羹

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28話です。

感想評価誤字報告ありがとうございます。

そして遅れてすいません。全部ノッブが悪いんです。あのシスコンが悪い。

FGOイベントでえっちゃんがちょい役で出てきました。ただの腹ペコでしたがほっこりしました。

そして今回はえっちゃんの出番が少ない。後半にちょっとだけです。


28話 二分された話

「良かった、治りましたね」

「はぁ、安心した。おい、クアイエッセ、聞こえているか?」

 

 頭の両側から聞こえた2人の男の声でクアイエッセは意識を取り戻した。声の主は漆黒の鎧を着た戦士と直属の上司である漆黒聖典の隊長だ。

 意識にかかる靄を振り払い目の前を確かめる。起き上がった自分の前にいる2人の男は辛く苦しい経験を共に乗り越えて来たような奇妙な絆があるように見える。

 微妙な居心地の悪さを感じながらクアイエッセは記憶を遡り始めた。

 

 

 ◇◆◇

 

 

「まずは宿ですね」

「ああ、流石に無視はできないからな」

 

 番外席次がXオルタの霊体を見つけて飛び出したあと、残されたクアイエッセは第一席次にターゲットの仲間である冒険者"モモン"に接触を取ることを提案したのだ。2人は相手が居る宿の部屋を訪ねて接触することにした。

 今回の任務でクアイエッセは唯一の大人と言える。番外席次は種族のせいで幼さが残っていて、第一席次も法国最高級の戦力を持ち最高の教育を受けているがまだ成人には幾年もかかる。だから、不慮の事故や有事の際には単独任務が多く経験豊富なクアイエッセがサポートすることになっていた。

 

「では、場所はわかりますか?」

「ゴーストが出て来た方向に向かえばあるはずだ」

 

 ゴーストが出て来た方向というのは透明化看破能力を持たないクアイエッセにはわからないが第一席次にはわかっていたようだ。若い上司の後を歩いていると5分も掛けずに目的地「黄金の輝き亭」に着いた。冒険者が泊まる宿としては随分と高級な部類だ。いきなり客に会いたいなどと言うような怪しい連中はそのまま門前払いされかねない。

 

「まずいですね。実際にモモンに会えるまでかなり手間取りそうです」

「なんとか受付まで呼んでもらうか?」

「いいえ、身内が迷惑を掛けているのです。こちらから強引に呼びつけるのは避けた方が良いでしょう。上手く取り計らうので交渉は私がやります」

 

 第一席次に許可を取ってクアイエッセは宿に入っていった。

 数分後、クアイエッセが宿の者を連れて出てきた。

 

「お待たせしました。例の冒険者の隣の部屋を取れました。すぐに向かいましょう」

「は、え?」

 

 第一席次の困惑をよそに連れてきた従業員の案内に従ってクアイエッセは進む。途中、目の前の従業員に聞こえないよう小さな声で第一席次に説明した。

 

「これで隣部屋の客として自然に接触できます。いちいち怪しまれることもないでしょう」

「……だが、失礼ではないのか? いきなり押しかけているようなものだぞ」

「確かに失礼かもしれませんが彼らのためになることです。エックスが異形である事が今回の番外席次の行動の原因です。人目につかないやり方であることが重要です」

 

 内容を聞いて納得したところで部屋に着いた。2人は部屋に荷物を降ろしてから隣の部屋に向かう。ノックをしてみたが反応はない。

 

 彼らは知らないがこの時モモンガはナザリックに山河社稷図を取りに戻っていて部屋にいなかった。そのまま彼らはXオルタと番外席次の戦闘が終わるまでモモンガ達との接触を持つことはできなかった。何もしなかったわけではないが山河社稷図の効果で隔離、封鎖されている空間と関わることができなかったのだ。

 

 暫くして隣室に番外席次が飛び込んだことで状況は緊迫していた。風の音すら聞こえなくなった部屋は明らかに魔法的な影響下にあるとわかっていた。

 

「結界ですね」

「エックスの手によるものだろう。決着がつく前に接触したいが不可能だろうな。結界が維持できないレベルまで追い詰められるまで待つしかない」

「ではなんらかの音が聞こえるまでは待ちましょう。確認は隊長に任せても?」

 

 第一席次が頷き壁に耳を当てる。高レベルの聴力なら隣の部屋で何がおきているかくらいは感じ取れるだろう。

 暫く静かに待っていると第一席次が何かにきがついたようだった。

 

「声がする」

「番外席次の物ですか?」

「いや、違うだろう。聞き取りにくいがエックスの物じゃないかな」

 

 彼らにとってそれは朗報だ。

 音が聞こえるという事は魔法効果が途絶えたという事だ。番外席次が負けるという発想がない以上、魔法詠唱者であるエックスが敗れ結界を維持できなくなったと考えた。

 エックスが負けたのに会話ができているという事は番外席次がとどめを刺さずに我慢しているということになる。

 

「隣に行くぞ」

 

 第一席次の一言で2人は部屋を出る。我慢しているとはいっても番外席次は自制がきかない。エックスを助けるために部屋に割り込む必要があったのだ。

 完全な勘違いに基づき彼らはモモンガ達の部屋の前に来た。再び第一席次が耳を澄ませ内部の情報を得ようとした。

 

 その時だった。

 部屋の中から重苦しい金属音が響いた。モモンガの鎧が出現した時にたてた音だ。

 

 しかし、第一席次とクアイエッセは部屋に2人しかいないと思っていた。魔法詠唱者は金属武器を身につけないので音の原因は番外席次だと考えた。

 遂に我慢の限界がきたのだ。番外席次がエックスにとどめを刺そうとしていると考えた2人は多少もたつきながら第一席次、クアイエッセの順に慌てて部屋に飛び込んでいった。

 

 ノックをしなかったのが最大の失敗だったかもしれない。

 

 2人の目に映ったものは着替えている途中でほぼ裸のターゲットだった。扉側に向かってお辞儀をするようにしながら両手を背に回していた。下半身はともかく上半身は下着がぶら下がっているだけでほとんど裸だ。

 先に入った第一席次は女性の裸など初めて見たのだろう。完全に目が泳いでいた。

 クアイエッセは咄嗟に第一席次の手を引いて部屋を出ようとしたができない。レベルが違いすぎる。所詮は30レベル程度のテイマーでしかないクアイエッセの筋力では完全に硬直した高レベル戦士の筋肉は微動だにしなかった。

 

 直後、響いた悲鳴とともに圧倒的な力で押しつぶされる。

 

 ――妹もこんな風に叩きのめされたのだろうか――

 

 全身の骨が折れるような激痛とともにそんな場違いな思いを抱いたのがクアイエッセの最後の記憶だ。

 

 記憶を取り戻したクアイエッセは再び目の前の2人を見る。漆黒の戦士と第一席次の間にある生温い絆の意味を理解してしまった。

 初めて風俗に連れ立っていった男友達の間にできるものだ。

 現代風に言えば一緒にエロ本を買った仲間だ。その直後に身内にバレる所まで合わせてワンセット。

 

 2人とも申し訳なさを全身から醸し出しているが相当混乱しているようで部屋の状況は気を失う前とほとんど変わっていない。

 

 一か所だけ変わったところといえば奥で黒いマントにくるまって震えているものくらいだ。マントのてっぺんから重力に逆らう金髪が一房だけ飛び出ていた。その手前には着替えが散らばっていて未だにXオルタが下着姿であることがわかる。

 クアイエッセは何故ここにモモンがいるのかなどといった状況は理解できていないが、最初に言うべきことはすぐに分かった。

 

「とりあえず3人で私たちの部屋に移りませんか? このままでは彼女も辛いでしょう」

 

 その発想は無かったらしい。激しい同意を得てクアイエッセは先頭に立ち隣の部屋に第一席次とモモンガを連れて行った。

 

 

 ◇◆◇

 

 

 部屋に残されたXオルタは部屋に誰も残っていないことをしっかりと確認して羽織っていたマントを脱いだ。

 周囲に注意を払いながら着替え始める。隣の部屋から聞こえる男どもの声をできる限り無視して手早く着替えると再び蹲ってしまった。思考が纏まらず、どうしたらいいのかわからない状態だ。

 

「ねえ、あなた何を落ち込んでいるのよ。私に勝ったんだからもっと偉そうにしなさいよ」

 

 番外席次の言葉だ。モモンガの魔法の効果が切れたのか意識を取り戻したらしい。Xオルタがびくりと飛び跳ね警戒心を露わにすると彼女は慌てたように言葉を続けた。

 

「別に今更何かしようってわけじゃないわよ。こんな腕で何ができるとも思えないし……。単純に私より強いあなたがそんな態度しているのが気にくわないのよ」

 

 肘から先がない両腕を広げて語る番外席次は心配しているようで声からは微かな不安が感じられた。本心からの言葉だろう。

 Xオルタは何が起こったのか説明するべきか悩む。襲撃者とはいえこの場にいる唯一の同性だ。メッセージが使えないXオルタはナザリックの女性陣に相談したければモモンガを通さなければならない。それだけは絶対に避けたかった。

 彼女にとって同性に今回の事を相談する最後のチャンスかもしれないと思ったら自然と口が動いていた。何より彼女はXオルタの着替えを見た犯人ではない。

 

「……着替えを見られた」

 

 しかし、特別詳しく説明するわけではない。Xオルタにとって思い出したくない記憶でもあるのだ。

 微かな声ではあるが番外席次には聞き取れた。ある意味で納得のいく理由だが引っかかることがあった。

 

「あのガイコツに見られたんだ。でも私と戦った時みたいに一瞬で着替えたりはしなかったの?」

「……あれは課金アイテム、だから何度も使えない。あと、変な2人組も……」

「2人組……?」

 

 Xオルタの声がますます小さくなっていく。説明された2人組は同じ任務を受けていた同僚だ。番外席次としては何故第一席次とクアイエッセがその場にいたのか気になったがXオルタに聞いてもわかることではないだろう。

 会話が途絶える。番外席次もコミュニケーション能力が高い部類ではない。基本的に引きこもっていただけの彼女に他人を慰めるのはハードルが高過ぎた。しかし、この沈黙はもともと活動的な彼女には居心地が悪い。強引な形ではあるが話題を変える。

 

「次の話。私は強かったかしら?」

 

 普段は使わない武技を用いて戦い、勝てると思った瞬間の敗北は番外席次のプライドをへし折っていた。高圧的な口調は性根に染みついているもののようで変わる様子は無いが真剣な問いかけだった。

 急に質問されたことはXオルタを驚かせたが自分の痴態と関係のない話ができるのなら彼女にとっても望ましい。彼女は率直な感想を述べていく。

 

「強くはなかった。ただ、弱かったわけじゃない」

「……そう。なら少しは自信を持っていいのかな」

 

 己の力を信じられなくなった番外席次にとって明確な強者が力量を保証してくれたことはありがたかった。強敵と言ってもらえなかったことは残念だが納得はできる。

 自分を打ち倒した異形がこんな人間臭い相手だとは思っていなかったが。

 

「あなたが男だったらよかったんだけどね」

「……え?」

「もし男だったらあなたの子を産めたかもしれないじゃない。どんな強い子が生まれていたのかしら」

 

 Xオルタの人間臭い側面に触れるほど番外席次は惜しいと思ってしまう。普段から自分より強い男の種を孕みたいと公言している身としてXオルタが男だったらと思ってしまった。

 当然の事だが本当に男だったら子を産みたいなどと考えないだろう。彼女にとって子作りは未だ想像の中にしか存在しない非現実のものでしか無い。

 Xオルタが同性だという気安さと現実感の無さがくだらない発想を許しただけに過ぎない。

 

「……えぇぇ……。そういうの無いです」

「ちょ、ちょっと待って。冗談よ、冗談。ここであなたに引かれたら私何もできなくなるのよ。いなくならないでよ」

 

 Xオルタは大袈裟に距離をとるが肘までの腕を上げた番外席次の言葉ですぐに戻る。ほんの数分前まで殺しあっていたことが嘘のように2人は話に花を咲かせていた。

 

 




今回の話も突っ込みどころが多いと思います。

前半についてモモンガさんはテンパっているというよりやるべきことがわかってない。だって生の女の子の着替えなんて見たことないし。
後はクアイエッセがメインです。唯一の非童貞がどう行動するのかですね。

後半、番外さんの強い男の子をはらむ発言は彼女の中二病が現れたようなものってことになってます。ウン十年物の処女が相手が欲しすぎて暴走してる妄想?
多分あの子の中身は穢れのない乙女が歪んだ感じの中二病

そして最後、うちのオリ主の性認識は完全に女性です。
一応TSタグをつけていますがこれは二回も体が変わっているので(転生時と転移時)どっちかで性転換していた方が自然だからです。確か75%でTS経験者。
正直なところ元の性別は設定してないのであまり気にしないでください。

感想評価指摘いろいろお願いします。あると興奮して周回速度が上がります。
執筆速度も気持ち早くなるかもしれません。



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