謎の至高Xオルタ   作:えっちゃんの羊羹

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三話です。

まずは感想や評価、誤字修正ありがとうございました。

UAとか評価を見てひっくり返ってました。

今回の話は正直えっちゃんの影が薄いです。


3話 忠誠と守護者

「状態異常のレジストもできましたし、予想よりずっとうまく動けています。そちらは……」

 

 口々にほめたたえてくる双子の頭を撫で回しながら話しかけてきたXオルタをモモンガは遮り、メッセージの魔法を使う。

 

『ここからはメッセージを使いますね。アウラとマーレにはまだ聞かれたく無いので』

 

 急なメッセージへの切り替えに驚いたXオルタはビクリと肩を震わせたが、直ぐに双子とのやり取りを中断してモモンガの報告に耳を傾ける。

 

 もともと沼地だったナザリックの周辺が草原になっていたこと、知性を持った生命体の存在が確認できないこと、周辺にはナザリック以外の人工物すらないこと、そして空が今いる場所と同様に夜空が広がっていること。

 

 言われたことに了承済みだったかのような素振りでXオルタは頷き、焦った様子もなく答えた。

 

『ナザリックが丸ごと他所に転移したということですね』

『はい、そんなところだろうと思います』

 

 断言するXオルタの話し方にモモンガは僅かに違和感を覚えた。しかし、直ぐに守護者達が到着したためメッセージによる繋がりを断ち、意識を切り替える。

 

 最初はシャルティアだった。ついでコキュートス、アルベドとデミウルゴスと続く。呼んでおいた全員が揃ったと見ると、モモンガがゆっくりと口を開いた。

 

「これで皆集まったな」

「はい、モモンガ様。これにてお呼びいただいた階層守護者、皆揃いました。つきましてはここで今一度忠誠の儀を執り行わせていただきたく存じます」

「ん、うむ、良いぞ」

 

 玉座の間で最後に見たときのアルベドとのギャップに呆気にとられたモモンガは勢いに押されて了承してしまう。直ぐに完璧な統制のもと、守護者達がモモンガとXオルタの前に跪いていく。全守護者が忠誠を誓い終えた頃にはモモンガ達は混乱から各種スキルやエフェクトを撒き散らした後だった。

 

 先に冷静さを取り戻し、行動に移せたのはモモンガだった。

 

「面を上げよ」

 

 その瞬間、一糸乱れぬ動きで全守護者の頭が上がる。その様を見てモモンガは出ないはずの唾を飲み込み、言葉を続ける。

 

「では……まず良く集まってくれた。感謝しよう」

 

 感謝を固辞したアルベドはモモンガ達の戸惑いを察して続ける。

 

「モモンガ様、謎のヒロインXオルタ様からすれば私達の力など取るに足らないものでしょう。しかしながら私たち――階層守護者各員、ご命令さえいただければいかなる難行といえども全身全霊を以って遂行いたします。造物主たる至高の42人の御方々――アインズ・ウール・ゴウンの方々に恥じない働きを誓います」

 

 他の守護者達も声を揃えて続く。絶対的な忠誠心に裏打ちされた力強い声が響いていた。

 Xオルタは振り向いてきたモモンガの顔を見て思った。その骨の顔には大きな表情の変化は表れないはずなのに隠し切れない喜びが読み取れた。

 応えるように頷くXオルタを見てモモンガは守護者達に向き合う。もはや不安はない。言葉は滑るように出てきた。

 

「素晴らしいぞ。守護者達よ。お前たちならば我々の目的を理解し、失態なくことを運べると強く確信した」

 

 満足気に守護者達を見回した後、モモンガは異常事態の発生を告げる。

 

「原因は不明だが、ナザリック地下大墳墓がかつてあった沼地から草原に転移したことは間違いが無い。この異常事態について、前兆に思い当たることがあったり、自らの階層で別の異常事態の発生に気がついたりした者はいるか?」

 

 モモンガの言葉を受け守護者達は順番に否定の言葉を述べる。一通りの確認が済んだ頃に小走りで向かって来る人影をXオルタが見つけた。

 

「モモンガさん、セバスが戻ってきましたよ」

「モモンガ様、謎のヒロインXオルタ様、遅くなり誠に申し訳ありません」

「いや、構わん。それより周辺の状況を聞かせてくれないか?」

 

 セバスは顔を上げると跪いている守護者にちらりと目を向ける。

 

「非常事態だ。階層守護者達も何があったのか知る必要がある」

「了解でいたしました。まず、周囲一キロですが――草原です。生息していると予測される小動物は見ましたが、いずれも戦闘能力がほぼ皆無と思われる生き物でした。また、人工的な建築物は一切確認できませんでした」

「そうか……ごくろうだった、セバス」

 

 報告を受けたモモンガはセバスにねぎらいの言葉をかけ、各守護者に警備と連携の強化の指示を下す。九階層、十階層の警備について言及した時、守護者たちに動揺が走ったがそれを押しとどめ双子に視線を向ける。

 

「アウラとマーレだが……ナザリック地下大墳墓の隠ぺいは可能か?幻術のみでは心もとないしコストもかかるからな」

 

 双子は互いに顔を見合わせて考え始めた。先に口を開いたのは弟のマーレだった。

 

「ま、魔法では難しいです。地表部を隠すとなると……。壁に土をかけて、植物を生やすとか……」

「栄光あるナザリックの外壁を土で汚すと?」

 

 アルベドの言葉とともに守護者たちもマーレの提案を批判するような雰囲気を漂わせた。

 

「アルベド……余計な口を出すな。マーレ、土をかけて隠すのは可能か?」

「は、はい。お、お許しいただけるのでしたら……ですが……」

「壁を隠すとなると確かにマーレの手が妙案。であればマーレとアウラで協力してそれにとりかかれ。周囲からはあまり目立たないように工夫しておくこと。その際に必要なものは各階層から持ち出すことを許可する」

「は、はい。かしこまりました」

「さて、わたしからはこれで終わりだ。オルタさんは何かありますか?」

 

 急に話を振られたXオルタは目を丸くしながらモモンガを見て、言いたいことがあったのを思いだす。

 

「じゃあ、私からは一つだけ。私のことはこれからXオルタかえっちゃんと呼ぶようにしてください。ほかのみんなにも伝えておいてください、ね」

『畏まりました。Xオルタ様』

 

 相変わらず完璧な連携で返答を返す守護者たちを見て、Xオルタは安心した表情を浮かべる。ちょっとがっかりしたことはばれていないようだ。

 一方、モモンガは守護者たちに最後の指示を出す。

 

「さて、今日はこれで解散だ。各員休息に入り、それから行動せよ。決して無理をするなよ」

 

 守護者たちが了解の意を示す。

 

「最後に各階層守護者に聞きたいことがある。――お前たちにとって私達二人はどのような存在だ?」

 

 突然始まる圧迫面接のような問掛けに隣のXオルタが固まるが、守護者たちはよどみなく自身の思いを語る。

 

 まずはシャルティアが美しさについて、次いでコキュートスがその力を、アウラとマーレが子供らしく簡潔に二人をほめたたえる。デミウルゴスが美辞麗句を尽くし、セバスが最後まで残ってくれたことへの思いとともにその慈悲をたたえる。最後にアルベドが二人に忠誠を示してからモモンガへの愛をささやく。

 

「……なるほど、お前たちの考えは十分に理解した。今後とも忠義に励め」

「……あぁ、これからも、よろしく?」

 

 モモンガとXオルタは褒められすぎてマヒした思考からどうにか言葉を絞り出し、頭を下げている守護者から逃げるようにレメゲトンに転移した。

 

「疲れた……。あいつら……」

「お疲れ様です。対応ほとんど丸投げしちゃってすいません。でもすごかったですね、あの高評価。本気で言っていますよ。これからどうすればいいんでしょう?下手なことはできそうにないですし」

 

 守護者の前でほとんど話さなかった反動か、Xオルタが怒涛の勢いで述べた。勢いに押されないようにモモンガは身振りでXオルタを抑える。

 

「あっ、すいません。テンション上がってしまって。ちゃんとこれからのことも考えなきゃいけないのに……」

「いや、しょうがないですよ。こんなことが起こった後ですから。今日はしっかり休んで細かいことは明日また話しましょう」

「……そう、ですね。明日しっかり話し合いましょう」

 

 そのままモモンガとXオルタはそれぞれの自室へ向かう。前を歩いていたモモンガは最後までXオルタの表情を見ることはなかった。

 

 

 ◇◆◇

 

 

 一方、2人が去ったと知ってなお守護者たちは立ち上がる者はいなかった。しばらくして、最初に立ち上がったのはアルベドだ。続いて残りの守護者たちも立ち上がり口々に言い募る。

 

「モ、モモンガ様、すごく怖かったね、お姉ちゃん」

「ほんと。あたし押しつぶされるかと思った」

「シカシ、スグニ恐怖ハ晴レ重圧ニ耐エラレルヨウニナッタ」

「流石は至高のお方々。私たち守護者にすらそのお力を発揮するモモンガ様、そして、そのお力に竦んでいると見るとさりげなく支えてくださったXオルタ様……」

「我々よりはるかに優れていると知っていましたが、これほどとは……」

 

 守護者に影響した二つの効果の正体。一つ目の重圧の方はモモンガのスキルである「絶望のオーラ」がスタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンの効果によって強力化したもの、二つ目の支えた力はXオルタのエンハンス系スキル「王の見えざる手」の効果だ。どちらも忠誠の儀において混乱したモモンガとXオルタがまき散らしたスキルに過ぎない。ただの偶然から生まれた天然のマッチポンプではあるがその効果は絶大だったようだ。

 

「守護者としての姿を見せた瞬間から、お二方はその偉大なお力の一部を発揮されていました」

「ツマリハ我々ノ忠義ニ応エ、支配者トシテノオ顔ヲ見セラレタトイウコトカ」

「確実にそうでしょうね」

「あたしたちといたときも全然、オーラを発していなかったしね。Xオルタ様の戦い方を見せていただいたときは隣に座らせてくれて」

 

 その瞬間、各守護者から強烈な嫉妬の気配が立ち込める。際立っていたのはアルベドとコキュートスだ。コキュートスが双子に問い詰めた。

 

「Xオルタ様ハ何トドノヨウニ戦ワレタノダ?」

「え、えっと、相手はモモンガ様の召喚した根源の木精霊でした。はじめはずっと攻撃をしないで避けていただけだったんだけど――」

 

 武人であるコキュートスは戦いに純粋だ。Xオルタが力の一端を振るったと知って、ただ手をこまねいていることが我慢できなくなったのだろう。マーレの話に相槌を打ちながら、質問を繰り返す。

 一方、アルベドの嫉妬は業が深い。愛する者の隣という特等席を奪われたのだ。

 

「では私は先に戻ります。モモンガ様とXオルタ様がどこに行かれたかは不明ですが、おそばに仕えるべきでしょうし」

 

 嫉妬のあまり狂いそうになっているアルベドを正気に戻すかのようにセバスが口を開く。ついでに、二人の名前が出たことにより、話し合っていたコキュートスとマーレを含む全員が口を噤みセバスの方を見る。

 

「わかりました、セバス。お二方に失礼がないように仕えなさい。それと何かあった場合はすぐに私に報告を。特にモモンガ様が私をお呼びという場合は即座に駆け付けます。何を放っても!ただ寝室にお呼びという場合は――」

「了解しました。アルベド。一刻も早くおそばに仕えるべきだと思いますのでこれで失礼します。では守護者の皆様も」

 

 再びアルベドが暴走する気配を感じ取りいち早くセバスは職務に戻る。

 残された守護者互いに目を合わせ、最終的にずっと黙り込んでいたシャルティアに向く。

 

「何カアッタノカ?」

 

 コキュートスが不用心にもシャルティアに問いかけた。それを受けシャルティアはとろんとした目を向け答えた。

 

「あの凄い波動の余韻を満喫していたら……少ぅし下着がまずいことになってありんすの」

 

 理解していないマーレと軽蔑の感情を示すアルベドを除いた守護者があきれ返る。

 

「このビッチ」

 アルベドの罵倒を切掛にシャルティアとアルベドによるモモンガの后の座を巡る論争が始まる。

 呆れたデミウルゴスたちはアウラに2人のことを押し付け少し離れて観戦する。背後のアウラの文句は誰にも届かなかったようだ。

 

「全ク。喧嘩スルホドノコトナノカ?」

「個人的にはどうなるかは非常に興味深いところですね」

「ナニガダ、デミウルゴス?」

「ナザリック地下大墳墓の将来という意味でね」

「ど、どういう意味ですか、デミウルゴスさん?」

「ふむ……」

 

 この無垢な同胞にどこまで伝えていいのか悩みながら口に出す。

 

「偉大なる支配者の後継はあるべきだろう?モモンガ様のご子息に忠義を尽くすことを考えるとね」

 

 コキュートスが妄想の世界にトリップしてからデミウルゴスはマーレに向き直る。

 

「しかし、至高のお方の後継について考えるなら大きな問題がある。Xオルタ様の御世継ぎについても考えなければいけない。そうなると私たちも候補の中に入ることになるからね」

「え、え!?ボ、ボクたちもですか?」

「ああ、何せXオルタ様は女性だからね。第一候補はモモンガ様だとしても次点には男性である私たちも含まれることになるかもしれないだろうからね」

 

 そのようなことを言いながら、デミウルゴスは他の同僚の様子を見る。コキュートスは相変わらず夢の中で、マーレも先ほどの言葉に戸惑い顔を赤くしていた。アウラは憔悴しているように見えるが、その甲斐もあってアルベドとシャルティアの論争は幾分落ち着いたようだった。

 

「落ち着いたようだね、アルベド。これから色々と動かなければならないのだから命令をくれないかね?」

「そうね、命令をしないといけなかったわね。――」

 

 守護者統括としての仕事をするのにふさわしい威厳を見せたアルベドに各階層守護者は敬意を示し礼をする。

 

「まずは――」

 




ついに各守護者が出せました。前二つより若干長いです。

正直タグが仕事してない気がしてるんですが次辺り転生とかオリ主の地雷系タグの処理入るつもりです。

よろしくお願いします。


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