謎の至高Xオルタ   作:えっちゃんの羊羹

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29話です。

感想評価誤字報告ありがとうございます。

ちょっとうまくまとまらなくて時間がかかりました。

今回はクアイエッセが頑張ります。本当に頑張ります。

若干壊れ気味



29話 再会のための話

「先ほどは失礼しました。窓が割れるような音がして緊急事態かと思ったのでノックをしたのですが反応がなく、暫くすると室内で金属音がしたので事件かと思い無礼とは知りながら押し入ってしまいました」

 

 3人の男が部屋に入って最初に口を開いたのはクアイエッセだ。多少無理がある話だが今のモモンガではすぐにその粗に気がつくことはできない。

 

「正式な謝罪は後ほどエックスさんに直接したいと思いますので、まずは自己紹介をさせていただきたいと思います」

 

 クアイエッセはこの場の誰よりも現状を冷静に理解していた。

 それは、八欲王に匹敵する相手と敵対関係になりかねないということだ。番外席次が敗北した事実に戸惑っている余裕はなく、意識を切り替え今後のために力を尽くさねばならない。互いの実力をある程度理解している第一席次より遥かに弱く雲の上のこととして考察を切り捨てたクアイエッセの判断は的確だった。

 だから、彼は会談の主導権を握り自分の優位に話を進めようとモモンガが口を挟む暇がないように捲し立てた。

 

「私はスレイン法国のクアイエッセというものです。本日はモモン様とそのチームメイトの方々に会うために参りました」

 

 しかし、モモンガも混乱しているからといって一方的に丸め込まれる程愚かではない。交渉事はモモンガにとって得意分野だ。するべきことがはっきりしているという点で先程のような男女関係とは段違いにわかりやすい。

 

 "スレイン法国"

 

 その単語はモモンガを警戒させるには十分だった。捕らえた陽光聖典の背後にいた国だ。過去にプレイヤーとの関係があった国だとXオルタのノートにはあった。モモンガは注意深く交渉にあたる。

 

「法国の方が他国の冒険者に何のようでしょうか? 依頼というわけでもないでしょう」

「確かに依頼ではありませんね。しかし、ある意味で似ています。それというのもあなた達が既に依頼を果たしてくださった、と言えるからです」

 

 クアイエッセはモモンガの質問に対し迂遠な形で答える。クアイエッセにとってモモンガがこのタイミングで口を挟んで来たのは予想外だった。

 さっきまで異性の着替えを見た程度で狼狽えていた男がこれ程素早く会話の舵を取ろうと割り込んでくるとは思わなかったのだ。

 しかし、次の言葉は決して遮られるわけにはいかない。クアイエッセは息継ぎをしないで口早に言い切る。

 

「我々はその調査の後、可能であれば友好関係を結ぶために参りました」

 

 番外席次がXオルタに襲いかかったのに白々しいと思われるかもしれない。しかし、法国の最高戦力が相手の手にある以上敵対は法国の滅亡、ひいては人類という種の滅びを意味する。

 多少強引だとしても敵意が無いことを示す必要があったのだ。主導権を握り続けられないならせめて対話は続けたい。

 しかし、彼の言葉はモモンガの警戒心を掻き立てる。国が個人と接触するということはモモンガの常識ではありえない。つまり、彼らはモモンガの背後に組織があると想定していると思われたからだ。

 

「……ほぅ、私には心当たりがないのですが聞かせてもらっても?」

「もちろんです――」

 

 番外席次の行動に対して即座に報復される可能性がなくなった事にクアイエッセは安心して説明する。

 

 クアイエッセの話は大きく分けて2つ。

 秘密組織ズーラーノーンの計画と裏切り者クレマンティーヌの存在だ。モモンガ達がミスリル級に昇格する原因となった2つの事件に繋がる。

 

「本来ならどちらも国家レベルの戦力で対処するべきものです。しかし個人でそれを成し遂げた者がいた。これは周辺諸国のパワーバランスを大きく揺るがすものです。なので我々はあなた方が身軽なうちに、王国のアダマンタイト冒険者という柵に囚われる前に接触したかったのです」

「……アダマンタイトとは、お世辞だとしても嬉しいですね。しかし、少々性急すぎるのではないでしょうか? 我々は冒険者です。国家の柵に囚われることはありません。それに恥ずかしいことですが今の私では所詮はミスリル級、法国の使節殿のお話を伺うのは荷が勝ちすぎます」

 

 モモンガは何とかして時間を稼ぎたかった。自分は情報が足りず、クアイエッセは明らかに焦っている。時間がモモンガの味方をすることが明白だからだ。

 しかし、情報の不足は致命的だ。クアイエッセが苦虫を噛み潰したような顔で語ったのはモモンガの計画に罅を入れかねないものだった。

 

「王国以外の冒険者ならそうするでしょう。しかし、王国の冒険者に限りそうはいかないのです。端的に言うとこの国のアダマンタイト級冒険者は半ばヴァイセルフ家の私兵と化しています。組合に聞けばすぐにわかるでしょう」

「ヴァイセルフ?」

「ん、ああ、モモンさんは異国の方でしたね。ヴァイセルフ家はこの国の王族の名前です。しかし、これを知らないとは随分と遠くからいらしたのですね。私は仕事柄旅をよくするのですが一度モモンさんのお国にも伺ってみたいものです。あなた方の様な優れた冒険者の故郷ならばさぞ素晴らしい方々がいらっしゃるのでしょう」

 

 新たな神人やプレイヤーを発見した場合、その故郷を明らかにするのは極めて重要だ。神人ならばその親族は次の神人になり得るしプレイヤーならギルド拠点や従属神ことNPCがいる。

 クアイエッセとしては蒼の薔薇とラナー王女の蜜月の説明で王国から引き離すよりモモンガの拠点の情報の方がはるかに重要だ。しかし、モモンガの無知につけ込んだクアイエッセの問いに、彼が期待した答えは返ってこない。

 

「そう、ですね。確かに素晴らしい仲間たちがいます。いつか紹介できると願っています」

「……ありがとうございます。私もその機会があることを神に祈っております。しかし、随分と話が逸れてしまいましたね。話を戻しましょう」

 

 周囲の気温が僅かに下がった様に感じた。モモンガの言葉が今までの慇懃さで塗り固めた表面だけのものではなく本心からだと理解したからだ。

 

 "仲間"

 

 その言葉がモモンガにとって大切なことは明らかだ。目的の内容ではなかったがクアイエッセは付け加えただけの世辞が望外の幸運を引き当てたことを感謝する。

 この圧倒的な存在も仲間を大切にする一個人であるとわかり、クアイエッセは初めてモモンガに対する親しみを抱いた。

 

 

 ◇◆◇

 

 

 Xオルタはアイテムボックスから明石焼きを取り出して食べ始めていた。食事とは偉大なもので男達が部屋を出た頃は沈んでいた表情にも明るさが戻っている。

 一方で、それを見る番外席次はなんとも言えないモヤモヤしたものを抱えて言った。

 

「……色気より食い気ってまさにこういうことなのね 」

「はにはほんはいへも?」

「何言っているのかわからないわよ。喋るときくらい食べるのやめなさい」

 

 口の中のものを胃袋に流し込みXオルタは再び答える。

 

「何か問題でも?」

「食べ物でご機嫌になるって子供っぽいと思って」

「……美味しいのが悪い。いや、美味しいのは良いことですけどね」

「ふぅん、そんなに美味しいのかしら? 1つ分けてもらってもいいかしら?」

 

 僅かにためらいながらXオルタは楊枝に1番小さな明石焼きを刺して番外席次の口元まで運んだ。礼を言ってから番外席次は一口でパクリと食べてしまう。

 

「……確かに美味しいわね。もう1つは……無いのか。あなた食べるの早いのね」

 

 Xオルタからの返事はない。残りを番外席次に取られないように一気に口に放り込んだせいで頰が餌を貯めているハムスターのように膨らみ声を出せないからだ。

 

「仮にも自分を殺そうとした相手の前でよくそんな無様な顔を晒せるわね」

 

 引っかかるところがあったのかXオルタは咀嚼しながら首を傾げた。流石に6個の明石焼きを一気に食べるのは辛かったようで両手で口を押さえながら首を傾げている姿はますますハムスターらしくなっている。

 番外席次は呆れながら先に食べきることを促しXオルタを待った。Xオルタが喋れるようになったのはそれから2分は経ってからだった。

 

「私のこと殺したかったの?」

「殺したいとかじゃなくて、街のど真ん中にゴーストいたら危ないじゃない。普通の人間なら退治しようとするでしょ」

 

 当たり前のように番外席次は告げた。Xオルタにとってもそれはわかりやすかった。ユグドラシルで言えば異形立ち入り禁止の街に異形種が突然現れたようなものだろう。危険視するに決まっている。

 

「じゃあ、私のこと殺そうとしてここに来たの?」

「いくらなんでも見たこともない相手を殺したくなるほど狂ってないわよ。殺そうと思ったのは実際に見てゴーストだって気がついてから。その前は強いやつがいるって聞いたから戦いたいなって思っていただけ」

 

 それでも十分に物騒な話だ。しかし、Xオルタが少し引くような素振りを見せると慌てて訂正する。

 

「い、今はそんな事考えてないわよ! 戦って勝てるとも思えないし、あなたの事だって、嫌いじゃぁないし……」

 

 尻すぼみの言葉を聞いたXオルタの目が生暖かいものに変わった。それに対して番外席次が文句を言おうとした時、ドアからノックの音がした。焦る番外席次を無視してXオルタが応じるとモモンガとクアイエッセ達が入って来た。

 3人とも番外席次が起きている事に僅かに驚いた様子を見せたが既に彼女の扱いにも話し合ってあるようでそれ以上のものはない。むしろ童貞2人がXオルタの顔を見るなり直ぐに顔をそらした方が問題だ。そのせいでXオルタの脳裏に嫌な記憶が蘇りそうになった時だった。

 

「覗き魔の変態が勢揃いね」

「返す言葉もございません。エックスさん先程の件は全て我々の不徳によるものです。誠に申し訳ございませんでした」

 

 番外席次の罵倒が澱みかけた空気を壊し、続くクアイエッセが示した謝罪が一気に場を整える。流されるようにしてモモンガと第一席次も謝った。

 Xオルタが渋々ながら納得した様子を示してからクアイエッセが話しはじめた。

 

「では私達は国に戻ります。是非一度私達の屋敷にもいらしてください。準備が整い次第組合に宛てて手紙を送らせていただきます。それと番外……いえ、彼女は怪我をしているようなのでここに残していきます。療養中よろしくお願いします」

「ええ、わかりました。是非伺いたいと思います。その時はもっと腹を割った話ができるといいですね」

 

 置いていかれる事になった番外席次は若干不貞腐れているがモモンガとクアイエッセは互いに次の話し合いの予定を確認していた。2人の間に隔意はあれど敵意はない。次の会談が互いに実りあるものになると予感しているからだ。

 スレイン法国の2人は礼を尽くして部屋を出ていった。

 

 残ったモモンガはXオルタに告げる。

 

「えっと……、さっきはすいません。……それとナザリックでスレイン法国と交渉する準備を進めたいので協力してもらえますか?」

「はい、もちろんです。ただ、覗きは私じゃなくてアルベドにしてくださいね。あ、あと彼女もナザリックに連れていきますね。ここでは腕のないエルフとか匿えません。それに私は彼女の事、嫌いじゃないし」

 

 Xオルタの背後で番外席次の顔が羞恥心で紅く染まっていた。

 

 

 ◇◆◇

 

 

「ところでクアイエッセ。なぜ彼女を置いてきたんだ?」

「ああ、評議国対策です。今の彼女ではあの竜王には対抗できません。彼らにかくまってもらうのが最も安全です。それに、謝罪でもあります。彼女を人質として預けておくことでいざという時に国全体に彼らの怒りを受けずにすむでしょう」

「かなり危険だな。彼女の命は大丈夫なのか?」

 

 第一席次にしてみればクアイエッセの言葉は薄情に過ぎた。番外席次の命を度外視しているように思えたからだ。

 

「初めからあの部屋にいることはわかっていましたから無事を確認してから治療してほしいなどの名目で預けるつもりでした。約束さえすればモモンという男は相応に義理堅い男です。誇るべき仲間がいればその仲間に恥ずかしい行いはできません。きっとうまくいくでしょう。それに彼女とターゲットはあの短時間でずいぶん親しくなったようです。エックスさんも悪いようにはしないでしょう」

 

 クアイエッセの言うモモンの人物像は二人の会話中ずっとXオルタの裸体などの事が頭から離れなかった第一席次にはいまいち把握しきれてなかったが、信頼する仲間の言葉だと受け入れる。彼らはその後評議国の目を番外席次からそらすため風花聖典に連絡を頼んでから少し遠回りして法国に戻っていった。

 




モモンガ様とクアイエッセのやり取りで脳汁絞りつくしました。
頭脳戦のつもりで書いて無理だと悟りました。

あと第一席次はたぶん中学生くらいの年です。一番異性に興味深々でむらむらしている年頃

そして番外席次はスーパー箱入りお嬢様。

明石焼き食べたい。
お汁粉食べたい。
お好み焼き食べたい。
感想、評価ください。質問や文句もなんでもください。
あると喜びます。

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