謎の至高Xオルタ   作:えっちゃんの羊羹

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30話です。

感想、評価、誤字報告ありがとうございます。

まず、更新が非常に遅くなったことをお詫びします。

そして今後も多分週1~2くらいになりそうです。ごめんなさい。

今回は所謂、確認回です。どんな情報があるのかっていう感じの事を確かめたくて書きました。


30話 曖昧さと真実の話

「オルタさん。厄介なことがわかったので少し相談に乗ってくれませんか?」

「また自称最強ちゃんが変なこと言ったんですか? 前はエルフの王族って話でしたよね。今度は何事ですか?」

 

 草臥れた様子のモモンガに対しXオルタが気の抜けた声で答えた。彼女の言う"自称最強"とは番外席次を指す。この渾名は彼女のもたらす曖昧な情報に振り回される2人がどちらともなく呼びはじめたものだ。元ネタは番外席次が明かした彼女の属する部隊のメンバーにつけられた香しい四字熟語の二つ名をもじったものだ。

 

 番外席次はナザリックに連れてこられてからシャルティアに預けられていた。真正面から戦った時に1番勝率が高いのがシャルティアだからだ。そこで彼女はナザリックに対し様々な情報を提供しているが一つ極めて大きな問題があった。

 番外席次の情報は曖昧なのだ。つまり精度が足りない。番外席次は法国の幹部にあたるが書類にあまり手をつけないから正確なことを知らずうろ覚えな答えが多い。

 さらに、肉体年齢や精神年齢は14,5歳程だが実際にはそれより遥かに長いこと生きている彼女の記憶はかなり時系列がいい加減だ。

 

 例えば、10年前に起こった事件を最近の事として話したり、逆につい数週間前のことを遠い昔のことを思い出すように話したりする。

 その影響が特に大きかったのは神人についてだ。プレイヤーの子孫で高レベルまで届き得る存在についてモモンガが詳しく説明を求めると過去の神人の話なども混ざってしまうのだ。時には10歳や50歳の神人がいてどちらも老衰死しているなど不要な情報が入り込んでいる。

 結局、モモンガ達にわかったことはスレイン法国には未成年の神人と年齢不詳の神人が1人ずついることだ。人数についても番外席次が覚えている限り2人というだけで、想定より戦力が少ないことはわかったがそれ以上はお手上げだった。

 

 しかし、質問にはかなり素直に答えてくれるため多くの情報を得ることができた。評議国や竜王国と大陸中央の大国について、八欲王と彼らの都市の存在は大きな収穫だ。ただ、そのほとんどが曖昧で信頼性を確保するために下取り調査が膨大な量必要だった。

 そしてモモンガが今持ってきた情報も曖昧だが、迅速に対処する必要があるものだ。

 額を抑えながらモモンガは説明をする。

 

「……ここ凄いドラゴンが封印されているらしいです」

「……ふぅ、聞かなかったことにしたい。あっ、お汁粉いりますか?」

「誤魔化さないでください。先住民がいるってことは俺ら不法浸入者ってことになるんですよ。無視するのはまずいです。それとお汁粉は要りませんから」

 

 モモンガは語気を強めて告げた。ナザリックの支配者として神器級装備に身を包み、生体装備などの遊びがない姿には彼の真剣さが見て取れる。

 しかし、Xオルタはそのドラゴンの存在に半信半疑で気の抜けた態度のまま2杯目のお汁粉を食べながら答えた。

 

「この辺に凄いドラゴンがいた覚えはないんですが……。それにもし居たとしても封印されているなら放っておきませんか? 触らぬ神に祟りなし、です」

 

 Xオルタの原作知識ではこの近辺にいるドラゴンはアゼルリシア山脈のフロスト・ドラゴンだけだ。また、モモンガの言うドラゴン、正確には破滅の竜王の事を彼女はドラゴンと認識して居なかった事もあって話が噛み合わなかった。

 

 この食い違いの最大の原因はスレイン法国にある。彼の国は神人にしか対処できない仮想敵を全て竜王として分類する癖がある。これは手を出せない物を一括りにしておくという点でそれなりに有効な方法だが、彼等より強い存在にとって意図しない偽情報による遅延工作となることがある。

 

「オルタさんは覚えてなくてもこの辺りには天変地異を起こしたドラゴンが居た伝説があります。その調査は必要です。これについては冒険者としての立場を使って調べたいと思います」

「……了解です。じゃあ、私はエ・ランテルの本屋を漁ってみますね」

 

 見縊られたように感じたXオルタは嫌々ながら納得する。しかし、軽んじられたのも仕方ないことだった。仮にも未来の情報があるのに頻発するアクシデントはXオルタのノートに対する信用を下げていた。転移以前は可能な限り原作通りに進めなければならないと脅迫観念に苛まれていたXオルタと比べれば遥かに上手く未来の情報と向き合えているだろう。

 Xオルタが不機嫌になりかけているのを感じてモモンガは話題を変える。

 

「もう一つ、一時的に冒険者活動を控えようと思っています」

「……何故ですか? 外貨も集めないといけないのでむしろ増やすべきだと思うんですが?」

 

 言っていることが理解できずXオルタは質問した。本来なら彼女の言葉は何も間違っていない。しかし、モモンガには2つの理由があった。

 

「まず、さっき言ったドラゴンに対して警戒したいから。天変地異を起こしたって事は〈ザ・クリエイション/天地改変〉が使えるかもしれないという事です。無視できる相手では無いし封印した技術も気になるので、できれば友好的にファーストコンタクトを取るためナザリックからあまり離れたくないんです」

「……そこまで警戒する存在とは思えませんがわかりました。もう1つの理由はなんですか?」

 

 慎重派のモモンガといい加減なXオルタでは認識に差があって納得していないようだ。しかし、2つ目の理由は極めて曖昧だがXオルタの危機感を煽るには充分だった。

 

「もう一つ、王国が信用できなくなってきました。セバスの報告ですでに滅びかけなのはわかっていたけど、法国との会談でアダマンタイトになると王族の子飼いになる危険性まであるようだったのである程度の立場を確保するまで昇級しないようにしたいと思います」

 

 国家というものはリアルで貧困層だった彼等にとって極めて警戒すべき存在だ。2人とも上位者に対して疑心はすぐに抱けるが、信頼するのは難しい。

 

「王国にいるアダマンタイトは紅の雫と蒼の薔薇、どちらも同じ貴族家の出身で蒼の方が頻繁に王女と個人的に接触を取っているそうです。アダマンタイト級冒険者は王族と親密になるべきとかいう暗黙の了解があったら目も当てられない」

「うわぁ、胡散臭い。なら、クエストのペースを落とすのはいいですけど、もっと詳しく知りたいですね」

「なのでデミウルゴスをセバスと同じ任務につけたいと思います。警戒対象がノートにあった"天才的な変態"のラナー王女なので賢いNPCが必要です」

 

 Xオルタをおだてるためにわざわざモモンガはノートから引用した言葉で説明する。また、デミウルゴスが比較的暇だったこともあり、この提案はXオルタにすんなりと受け入れられた。

 

「いいかもしれませんね。法国との接触で洗脳に警戒する必要減ったのでNPCも動かしやすいですし」

「ですよね。それにたっちさんとウルベルトさんは喧嘩するほど仲がいいって感じだったので、あの2人も色々有っても上手くやってくれると思うんですよ」

 

 意見に納得してもらえたことと少しだがギルメンの話ができたことがモモンガのテンションが上がっていく。一方でXオルタにはたっち・みーとウルベルトに仲がいい部分があった覚えが無いので置いてけぼりになっていた。

 Xオルタは慌てて強引に話を切り変える。

 

「と、ところでモモンガさんはアルベドとは進展ありましたか? 彼女の設定には少し絡んだので気になります」

「え……いや、いきなり何ですか⁈ 突拍子のないことを言わないでくださいよ!」

 

 Xオルタの言葉にモモンガは僅かに違和感を覚えたがそれ以上に内容に心を乱される。

 

「アルベドはモモンガさんのこと真剣なのでしっかり考えてください。で、では、私はこの後暫くエ・ランテルで調査するので先にアルベドと建国の予定について話し合っておきますね」

 

 男女関係に言及するのは恥ずかしかったらしくXオルタが飛び上がりながら駆け出した。食べかけだったお汁粉をしっかり飲み干してから立ち上がるあたり徹底している。

 行動と言動がかみ合ってない様に呆れながら僅かな違和感を抱く。しかし、すぐにモモンガはアルベドをけしかけられる確定した未来を想像してげんなりするのだった。

 

 

 ◇◆◇

 

 

「法国との対談を見据えて明確に組織があると示すために領土を確保したいと思います。つきましては範囲をまずはトブの森以北、アゼルリシア山脈までとして、その征服任務にコキュートスを推薦したいとXオルタ様が仰っていました」

「いいんじゃないか? 森に関してはコキュートスにアウラとマーレと力を合わせて任務に当たるように言っておこう。住民は将来我々の臣民になるのだからあまり強引にならないように気をつけるようにも言うべきだな」

「かしこまりました。戦力はシャルティアの配下である下級アンデッドをメインとしてナザリックの財政に影響を与えないようにします。続いてデミウルゴスをセバスの元に派遣するにあたって活動資金をどうするかについてですが――」

 

 モモンガはアルベドからXオルタとの会議の報告を聞きながら思考の海に囚われていく。Xオルタはアルベドと話し合った後は常に報告をアルベドに任せている。また、今振り返れば常にアルベドとの仲の進展を望んでいたような行動をしている。その事実がXオルタとの会話で感じた僅かな違和感に明確な形を与えていた。

 

「――鍛治師に王国、帝国及び交易用の金貨3種類を複製させています。外見上は同じものができているので問題ないでしょう。これで今回の報告は全てです。何か問題はございますか?」

「ん、いや無いとも。流石はアルベドだな。いつもお前には助けられてばかりだ」

「そ、そんな勿体無いお言葉! ……で、では……」

 

 張りのあるアルベドの声に徐々に湿り気が混ざる。モモンガとしては自分の好みを悉く網羅したアルベドに好意を寄せられる事は嫌ではないが強引さに辟易しているのも確かだった。

 アルベドの恋愛感情を応援するXオルタにけしかけられる事には慣れたが、Xオルタがわざわざ他人の恋愛事情に口を出すとは思えなかったのだ。特別な理由があるはずで、モモンガには1つ心当たりがあった。

 アルベドの暴走を止める意味もあって、モモンガは確認のために問いかける。

 

「話は変わるがアルベドの創造主はタブラさんだったよな。彼がお前の設定を決めた時の経緯を覚えているか? 例えば別の誰かが設定した部分があるとかについてだが」

「設定ですか? 詳しい経緯はわかりませんがXオルタ様がタブラ・スマラグティナ様との討論の末に最後の一文を書き換えてくださいました。そのおかげで私はモモンガ様のことを――」

「ああ、やはりか」

 

 再び惚気に入りかけたアルベドを無視してモモンガは1人納得する。

 やはり因果関係が逆だった。

 Xオルタはアルベドの恋心を知って応援しているのではなく、アルベドの感情を設定したからけしかけているのだ。

 

 何を以てNPC制作から距離を置いたXオルタがアルベドの設定を書き換えたのか。

 転移のことを知っていた以上アルベドの設定にあった最後の一文には何かしらの考えがあるはずだ。

 

 "モモンガを愛している。"

 

 この10文字の裏にあるXオルタの真意を彼女がエ・ランテルでの調査を終える前に突き止める。モモンガは密かに決意した。

 




番外さんは名前がわからないのが最大のネック。適当なあだ名でごまかしました。
そして彼女の情報はあまり信用できないという話でした。でも膨大だから有用。

ラナーと蒼の薔薇についてはクアイエッセフィルターを通しているので警戒心マシマシです。モモンガさんの彼女らに対する第一印象は結構ひどい。

最後にアルベドの設定。ちょこちょこと書いてはいたんですが”モモ愛”に変えるように仕向けたのはえっちゃんです。
ついでにえっちゃん作のNPCはいない。強いて言えば黒騎士くんだけどあれゴーレムってことになっているので

色々と伏線もどき入れてみたせいで相当わかりにくいことになっているかも。
ごめんなさい。
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