感想評価ありがとうございます。
ちょっとだけ伏線を回収しつつ伏線を張る。
なお、今回は原作でいうトカゲ編の序盤の序盤になります。
えっちゃんは王国にいるので基本的に出番はなしです。ごめんなさい
地味に存在感はあるけど
コキュートスが木製の扉を開けると部屋の中では既に3人が待ち構えていた。同僚であるアウラとマーレ、そして彼等の最高支配者モモンガである。
「遅クナリマシタ、モモンガ様」
「うむ、よく来た。さて、早速始めよう」
モモンガはコキュートスが出入り口に最も近い席に着いたことを確認するとアウラに声を掛ける。指名されたアウラは元気よく立ち上がり、ホワイトボードを使いながらテキパキと説明をし始めた。
「私たちの任務はこの辺りにいるナザリックの事を知らないやつらにその凄さを教えてやって支配することです」
少し過激な言い方だが間違ってはいない。モモンガに促されるままに説明は続く。
「このナザリックを知らない奴らっていうのは3つに分けられます。東にトロールの洞窟、北にリザードマンの住む湖、西には特定の種族というわけではないですけどそこそこの種類のモンスターがいます」
「ご苦労、アウラ。大まかな状況は掴めたな。今回はコキュートスの連れて来た軍を使い彼等を征服する。気になることがあるものはいるか?」
アウラが一通りの説明を済ませた後を継いでモモンガが3人を見回した。アウラは直々に労われたことで嬉しそうにして、コキュートスは変わらず武人然として疑問など無さそうだ。1人だけマーレが緊張からかもじもじしながら恐る恐る手を挙げて言った。
「あ、あの、僕達3人でそれぞれ一つずつやっつけるということでしょうか?」
「ちょっとやっつけるんじゃなくて征服でしょ! モモンガ様の前で間違えないでよ!」
マーレの言葉にアウラが小声で注意したがモモンガは2人を手振りで抑え、質問に答えた。
「良い質問だな、マーレよ。確かにその方法が最も簡単で素早く事が済むだろう。しかし、今回は3人にはできる限りまとまって行動して欲しいと思っている。理由は3つ有るのだが解るものはいるか?」
慌てていたマーレはモモンガの言葉に落ち着きを取り戻し分かったような分かっていないような曖昧な表情を浮かべながら頷いた。アウラは活発な彼女らしくもっとわかりやすく戸惑っている。わかりにくいのはコキュートスだが、俯いていて答えられないようにモモンガには見えた。
「ふむ、少し難しかったか? では、……どうした?」
3人が答えられないことに少し気落ちしながらモモンガが前にアルベドに説明され、暗記してきた事を説明しようとする。
その時だった。僅かな間を置いてコキュートスが静かに挙手していた。
予定通りにならなかったがモモンガとしては子供が一つ成長したような気がして非常に喜ばしいことだ。先程とは一転して弾んだ声で問いかけた。
「いいぞコキュートス。気がついた事が有るのなら話してみろ」
「ハッ、アリガトウゴザイマス、モモンガ様。間違エテイルカモシレマセンガ説明サセテ頂キマス。マズ、我ラノ任務ハナザリックノ名ヲ知ラヌ者ニナザリックノ存在ヲ教エル事……デス。ツマリ我ラノ……実力ヲ示ス必要ガアリマス」
コキュートスは考えを整理しつつ話しているせいか所々間が空いて聞き取りにくくなっている。しかし、モモンガにとっては考えながら話しているという事実が嬉しくて、相槌を打ちながら話を促す。
「ソウナルトマーレノ考エデハ……守護者1人ノ『武』ヲ示セテモナザリックノ……集団トシテノ『威』ヲ示スコトガデキマセン。我ラ3人ガ共ニアレバナザリックヲ知ラヌ者ニモヒトツノ組織……トシテナザリックノコトガ伝ワルデショウ」
コキュートスが話し終えたところでコツコツと骨を打ち鳴らす音が響いた。例え拙い説明であっても守護者が自力で考えて述べた事がモモンガにとっては望外の喜びだった。
「素晴らしいぞ、コキュートス! お前が言ったことはお前達が3人でいる必要がある理由のうち最大のものだ。更に言えば……ッ、精神安定の抑制か……」
一気に興奮から引き戻され若干気分が悪くなったモモンガだが、その内心は未だ暖かなものが残っていた。しかし、その様子を見ていた守護者達は僅かに身を硬くする。
「ヤハリ足ラヌ部分ガアッタノデショウカ?」
「いや、問題ないとも。先程の続きだがこの理由はコキュートスに軍を率いらせることにも通ずる極めて重要なものだ。相手は将来的に我らの民となる存在、示す力は明確な方が良い。素晴らしい答えだったぞ、コキュートス」
「アリガトウゴザイマス」
無機質でわかりにくい声でありながらその短い一言には込められる限りの喜びが込められているのだとはっきりと解る。その態度がこそばゆくてモモンガは急いで話を切り替える。
「残り2つの理由を説明しておこう。1つ目は安全のためだ。この世界にも数は少ないようだが我々に迫る力を持つ者はいた。警戒は必要だ。2つ目はナザリックにおけるメッセンジャーの不足だな。緊急時はスクロールを使うがそれ以外ではできる限りメッセージを使える魔法詠唱者を軸としたチームで活動することによって各チーム毎の報告、連絡、相談をやり易くしたい。因みにこのチームでメッセンジャーになる魔法詠唱者は私になるが遠慮はするなよ」
僅かに慌てる守護者達を見てモモンガは部下の私用の連絡すら管理することになる自分に嫌気がさしてくる。湧き上がる自己嫌悪を抑えつけ、尊大な態度でモモンガは立ち上がった。
「さて、やるべき事は理解したな。最後になるがこの仕事はコキュートスをリーダーとしてアウラとマーレがサポートせよ。ただし私はあまり手を出す事は無いだろうからお前達自身の力で励むように」
そう激励したモモンガは解散の指示を出すと、扉に近い守護者から順に部屋を出ていく。コキュートス、マーレと続き、最後にアウラが扉をくぐる時にモモンガが呼び止めた。
「アウラ、1つ聞きたい事があるから少し待ってくれ」
「はい! かしこまりました」
部屋から出て行こうとしていたアウラはキィと音が聞こえるようなUターンでモモンガの前に戻ってきた。あまりの反応の良さにモモンガは面食らうが悟られないように切り出した。
「聞きたいことというのはこの森の状況についてなのだが……お前から見て明らかに他と違う、神殿だったり何かがあった痕跡などがあったかについてだが……思い当たる事は無いか?」
◇◆◇
「凄かったです! コキュートスさん、モモンガさまのお考えがわかるなんて!」
「イヤ、偶然ダ。昨日ノ夜デミウルゴストバーデ話シテイタ内容ヲ整理シタダケデ私ガ思イツイタコトデハナイ」
「でも前日からモモンガさまに命じられた仕事のことを考えて素晴らしい結果を出したんですよ! 凄いんです!」
普段の吃音もなりを潜め、興奮しながらマーレはコキュートスを讃える。しかし、コキュートスからしてみると特別なことは何もない、偶然の産物なのだ。妙な気恥ずかしさがあり、誤魔化すために話題を切り替えた。
「ソノ話ハモウ良イダロウ。ソレヨリコレカラノ仕事ノ話ヲスルベキダ」
「あ、そ、そうですね。頑張らないと」
コキュートスの言葉に納得してマーレが先程とは違う部屋の扉を開ける。そのままコキュートスは部屋に入ったが、マーレは扉を開けたまま周囲を見回し姉を探す。少し待つと自分達が歩いて来た道を走ってくる姿が見えた。
「お待たせー」
「あ、お、お姉ちゃん。モモンガ様とのお話が済んだんだね。ど、どんな話だったのか聞いてもいいのかな?」
「別にいいわよ。森の中に変な場所がないかっておっしゃられたから小さな荒地のこと言っただけだし。念のため近寄らないようにしておけって言われたけど」
部屋の入り口での姉弟の会話にコキュートスが口を挟む。
「フム、モモンガ様ハソノ荒地ニ我々ニハワカラナイナニカガ有ルトオ考エナノダロウ」
「そうだね。取り敢えず後で監視用のモンスターを出しとく」
「モモンガ様ガアウラダケニオ尋ネニナッタトイウコトハソレデ充分ダトイウコトダロウ。サテ、コレカラノ話ニ移ロウ。我々ハ三方ニ攻メ入ル必要ガアル。何処カラ相手ニスルベキダロウカ?」
3人は其々の知恵を寄せ合いどうするべきか話し始めた。
◇◆◇
アウラから荒地の話を聞いて1人残されたモモンガは一息つく。窓からはアンデッド達が今いる屋敷を増築している姿が見えた。
実のところ、この木造の屋敷はまだ完成していない。早急に国土を得るための前線基地が必要になったため、建築途中であってもモモンガとコキュートスはこの屋敷に入ることになったのだ。
窓の外を眺めながらモモンガはナザリックの未来について考えていた。とはいっても彼自身リアルでもユグドラシルでも周囲をリードするタイプではないのですぐに何かが思い浮かぶわけではない。
ため息とともに視線を室内に戻すと今回の遠征に連れてきた一般メイドの姿が見えた。ナザリックを拠点にした後、ギルメンが増えるのに合わせて作るプランがあったはずだ。結局、ギルメンの募集が42人目で打ち止めになったことで殆ど無意味なことになったようだったが。
モモンガはナザリックを手に入れたばかりの頃のことを懐かしみながら声をかけた。
「確か……、フォアイル、だったか?」
「はい、モモンガ様」
短く切り揃えられた金髪が返事に合わせて微かにゆれた。外見と同様にその声も溌剌として普段の性格が伺える。
沢山いるメイド達のうち彼女が今回モモンガについてくるメイドに選ばれたのには訳があった。以前、ナザリックのNPCを集めて昼食会を行った時にXオルタと一緒にいたメイドが彼女だったのだ。2人とも大食いで同じように頬を膨らませながら話していたのをアルベドに迫られながら見ていたのだ。
Xオルタがアルベドの設定を変えた理由を探りたいモモンガとしては自分の知らない彼女の姿を知っているかもしれない相手だ。彼女を含めた他のメイド達もモモンガの傍にメイドが控えていることを強く望んだため多少の危険があると理解していたが連れてきたのだ。
「以前食堂でオルタさんと話していたようだが……」
「は、はい!何度か食事をご一緒させていただいています。な、何か問題があったのでしょうか……?」
たかがメイドが主人と同じ席について食事をする無礼を見咎められたと思い焦ったのだろう。怯えるフォアイルにモモンガは若干慌てながら告げる。
「いや、問題はないとも。ただ私はあまり食事を摂らないのでな。少し気になったのだよ。何度かということは良く会うのだろう。どんな話をしているのだ?」
「普段は食堂のメニューについてです。好みの和菓子やお好み焼きの作り方などをうかがいました。あっ、後、インクリメントはお勧めの小説を紹介してもらったと言っていました!」
「……他のメイドとも親しかったのか」
モモンガは驚きと共に小さく呟く。態々フォアイルに話を聞く必要は無かったかもしれないと思い話を切り上げようとした。しかし、呟きから会話を続けようとしたフォアイルの言葉がモモンガを止めた。
「はい。一般メイド41人、全員がそれぞれにXオルタ様と食事をご一緒させていただいています」
「……どういうことだ?」
「ッ、Xオルタ様は食堂を毎日の様に利用くださるのでご一緒させていただく機会が多くなるので……」
「そういうことではない!……いや、すまない。声を荒げてしまった。問題はそこではないのだ。今、一般メイドが41人と言ったな。それは確かなのか?」
「は、はい。一般メイドは合計41人となっております」
「……仲間の数に合わせた筈じゃなかったのか。プレイアデスのように1人だけ別の場所に居るということはないのか?」
「……申し訳ありません。私はそのような事は聞いた事がありません」
深く謝罪するフォアイルを見てモモンガは頭を抱える。戸惑いながらも既にモモンガは何故1人足りないのかなんとなく理解していた。この犯人もやはりアルベドの設定と同様にXオルタだろう。
41人
この数字に特別な意味を見出すものはこのギルド、アインズ・ウール・ゴウンにおいて1人しかいない。
しかし、証拠を探す必要がある。モモンガは精神安定化を超えてくる困惑を抑えながらフォアイルに聞いた。
「……もし42人目のメイドが居るとしてだ。その存在を知っているかもしれないNPCに思い当たりはあるか?」
「メイド長のペストーニャ様ならご存知かもしれません。……あっ、あとは私達の設計図を描かれたホワイトブリム様に創造された者ならばもしかすると何か知っているかもしれません」
「成る程……。儘ならないものだな」
後で他のメイドにも確認を取ろうと決めたモモンガは先程までの自分の態度を思い出す。フォアイルには随分ときつい事を言っている。
「……済まない、少々取り乱していたようだ。詫びと言ってはおかしいかもしれないが今日は私も何か食べようと思う。夕食でも一緒に食べないか?」
妙にズレた謝罪ではあるがフォアイルは少し慌てながら大喜びで受け入れた。その夕食はトブの森に来ていた3人の守護者を交えて非常に賑やかなものになった。
主人公が一瞬たりとも出てこない回になりましたがご容赦ください。
今回はオリ主がえっちゃんになる前の話とでもいうものに触れました。
このあたりFGOファンの方はえっちゃんに変な感じがして嫌いかもしれませんが彼女の過去の説明は展開の都合上どうしても必要だったのでご容赦ください。
で、今回はオバロ二次で書きたいことが二つも盛り込めたので結構満足しています。
コキュートス将軍記(これから始まる)と一般メイドの人数について。
感想、批評、突っ込み、質問なんでもください。お願いします。
最後にCCCコラボで思いついたネタを一つ。オバロとEXとCCCのクロスです。白野多分無し
CCCを100年ずらして2130の事にしてAOGの崩壊の切っ掛けをを実はギルメンの誰か(ウルベルトあたりが面白そう)が月の聖杯戦争に巻き込まれたからということにする。
聖杯戦争中も同じ電脳世界みたいなものだしユグドラシルにログインはできたということにして他のギルメンは人を殺しながら死の恐怖に狂っていくその人を見て徐々にユグドラシルから離れていく。モモンガは他の皆をどうにか引き戻そうとするが失敗。崩壊の切っ掛けとなった誰か(月で死亡済み)を内心恨みつつ原作突入。
電脳世界つながりでムーンセル側がユグドラシルの転移に気が付いて死んだギルメンを蘇生させてオバロ世界に放り込む。この先はなんか適当に頑張ってねって感じで
誰かこのネタ書いて