謎の至高Xオルタ   作:えっちゃんの羊羹

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4話です。

お気に入りとか評価がやばいことになってます。
ありがとうございます。
どうしよう

では、今回ですが説明回です。リアルとか前世でえっちゃんがどうなっていたかについてになります。今までも地雷のような話でしたが今回は地雷を敷き詰めた上から土をかぶせただけといった有様です。

それでもよろしければどうぞよろしくお願いします。

あと、うちのえっちゃんは転生オリ主です。
うちのえっちゃんは転生オリ主です。大事なことなので二回言いました。




4話 告白と金

 ナザリック地下大墳墓の第九階層スウィートルームにある自室、Xオルタはベッドに寝そべり時計を眺めていた。モモンガの自室と比べると極めて狭いが整頓されていて壁際にはぎっしり詰まった本棚と学習机が並んでいた。机の上にはマル秘と書かれたノートと大きめの巾着が置いてある。転移してからもうすぐ6時間が経つ。

 Xオルタの眺めていた時計の短針と長針が一直線に並んだ。

 

『おっはよ〜、えっちゃん!起きて、起きて!』

 

 Xオルタの頼みでぶくぶく茶釜が特別に吹き込んでくれたアラームだ。僅かにはにかんだXオルタは机の上の荷物を持ち部屋の外に控えているメイドに声をかける。

 

「あの……よかったらモモンガさんに今から大事な話をしに行っても構わないか聞いてもらえない、かな?」

「はい、畏まりました」

 

 メイドはそのままモモンガの部屋にむかい二言三言話してから戻って来てモモンガの言葉を伝える。

 

「モモンガ様より、『直ぐにそっちに行くのでちょっと待っていてください』とのことです」

 

 その言葉にXオルタはモモンガの自室の惨状を思いだして納得する。

 

「わかった。待っています」

 

 部屋の奥に戻り話しやすい様にイスをベッドに向ける。直ぐに部屋の外から声がモモンガの声が聞こえた。

 

「オルタさん、今来ました。入ってもいいですか?」

「どうぞ。座ってください」

 

 モモンガを招き入れたXオルタはイスに座りベッドを指し示す。言葉通りにモモンガはベッドに座った。

 緊張している様子のXオルタをみかねて助け船を出す。

 

「あの……話しにくい様でしたらまた今度にしますか?」

「……いえ、大丈夫、です。今しか言えないと思うので」

 

 重苦しい空気の中Xオルタは続けた。

 

「私は以前から昨日起きたことを予想していました。そのための準備もしてありました」

「……なんて?」

「私は昨日の転移を予め知っていました」

「……まじで?」

「はい」

 

 モモンガの頭の回路がショートした。一瞬のうちに様々な憶測が頭の中を飛び交う。僅かに間を置いて鎮静化してから恐る恐る問いかけた。

 

「冗談っていうわけじゃないんですよね。もし、良ければ理由を聞かせてもらってもいいですか?」

「大丈夫、です。ただ、最初に断っておきます。ものすごく突拍子のない話です。ありえない、と思うかもしれませんがどうか最後まで、聞いてください」

 

 Xオルタの真剣な表情にモモンガは静かに頷いた。

 

 

 ◇◆◇

 

 

「モモンガさん、転生というものを聞いたことはありますか?」

「……確かどこかの宗教にある『死んでから生まれ変わる』っていう考え方ですよね」

「概ね間違いじゃありません。私は死ぬ前の、いわゆる前世の記憶を持って転生しました。その記憶に今回の転移とその後の事が含まれていました」

 

 Xオルタの質問に答えたモモンガは、話にカルトじみた雰囲気を感じながら先を急かす。

 

「その『記憶』ってのはどんな内容だったんですか?」

「この先に起こる内容についてはまとめてあるので後回しにしますが、ほぼ現状と同じです。ユグドラシルがサービス終了するタイミングでナザリックにいたモモンガさんが1人でNPCと一緒に異世界に来てしまう。そこから、いろいろな事件が起こることになります」

 

 その回答にモモンガは違和感を覚える。『モモンガさんが1人』だけである。目の前のXオルタはどうなったのか。

 

「オルタさんは一緒じゃなかったんですか?」

 

 Xオルタの顔がゆがむ。聞いてはいけない事だったのだろうかと焦りすぐさま弁明する。

「あっ、いえそれが問題だっていうわけじゃ――」

「かまいません。……確かに私はいなかった。その記憶の中で私はそもそも存在しませんでした」

 

 弁明を遮られたモモンガは固まる。

 

「『記憶』の中ではアインズ・ウール・ゴウンのメンバーは41人。私が知っていたアインズ・ウール・ゴウンは……『オーバーロード』という小説の中の存在です」

 

 Xオルタは俯きながら吐き出していくように続けた。

 

「私は、前世では20世紀の終わりから、21世紀の初めの、日本に住んでいました。でも、単純に100年前の人間だったわけではない、です。前世と今世はあまりに違いすぎて、それがただひたすらにきつくて。12年前のユグドラシルのサービスが始まった時、小説『オーバーロード』とリアルやユグドラシルの話がほとんど同じだって気が付いて。それで、この世界がオーバーロードをなぞっているんじゃないかと思ったんです。それが、私がこの転移をあらかじめ想定していた理由、です」

 

 途中何度も息継ぎをしながら語り切ったXオルタに対しモモンガが声を絞り出す。

 

「……オルタさんの言っていることは、わかりました。まだ、受け入れきれてないけれど理解はできたと思います……でも、ひとつだけ教えてください。オルタさんにとってアインズ・ウール・ゴウンは、俺たちは何だったんですか?」

 

 モモンガの本音を言えば、最後まで一緒にユグドラシルに残ってくれた、そしてこの先も共にあるだろう友人の事を信じたい、ということになる。

 しかし、それはXオルタが今まで自分やほかのメンバーを騙して仲間に入ってきたということかもしれない。もっと悪く、自分たちを別種の存在、作り物として見下していた事を認めることになりかねない。どうにかして友人に今まで同様の信頼を向けていたいという気持ちで問いかけ、Xオルタの本心を見極めたいという気持ちから、自然と様々な看破スキルが発動された。

 それらに気が付くこともなく、Xオルタは相変わらず俯いたまま震える声で答えた。

 

「……モモンガさんは……、アインズ・ウール・ゴウンのみんなは友達です。私が転生してから周りを受け入れられず、前世の痕を探し回っていた中であった、こんな社会不適合者に優しくしてくれた、他とは比べられない大切な友達でした。……そして……私がだました、いつか必ず謝らなければいけない相手です。ごめんなさい、モモンガさん。私はあなたがこの世界に巻き込まれると知って見逃しました。許されることではないとわかっています。でも、私は、他のみんなに謝りたい。どうか、そのチャンスをください」

 

 話を聞いたモモンガはそこにウソがないことを実感し、その言葉を反芻する。

 

 ――自分と大して変わらないじゃないか――そう思う。

 

 リアルがきつかった。生きているのがつらかった。今の時代そうじゃない人間なんてほとんどいない。その度合いがちょっと特殊な事情で大きかっただけだ。

 アインズ・ウール・ゴウンの仲間たちが他とは比べられないほど大切なものだということ。自分の感じていたものと全く同じだ。目の前の1人を含めた彼らとの思い出、友情は自分のすべてだ。ほかに比べられるものなどあるわけがない。

 仲間達への罪悪感。確かに隠し事をしていたことは悪いのかもしれない。しかし、巻き込まれたのは自分一人だ。結果をみれば上々ではないだろうか。むしろ、これほど苦しんでいた友人に気が付かなかった自分こそ、責められるべきじゃないのかとさえ思える。

 

 一通り自分の中で納得がいく考えがまとまったところでモモンガは呼びかけた。

 

「ありがとうございます、打ち明けてくれて。でもオルタさんは何も悪くない。もっと元気を出してください」

「で、でも、私は身勝手にギルドに潜り込んで、みんなを騙し続け――」

「違います」

 

 自虐し始めるXオルタを遮りモモンガは続ける。

 

「俺はオルタさんの『記憶』にあるアインズ・ウール・ゴウンがどんな物なのか知りませんが俺のいるアインズ・ウール・ゴウンは42人いて、その中にはしっかりと『謎のヒロインXオルタ』っていう貴方が含まれているんです。何も気にすることはないんです」

 

 モモンガの言葉にXオルタの目が大きく広がる。

 

「それに多少の隠し事ぐらい問題ないでしょう。これで問題ならるし★ふぁーさんはどうなるんですか?」

 

 笑いながらモモンガは畳みかける。骨の顔にはほとんど変化はないが眼窩の奥の炎が温かみを増した気がした。Xオルタは言葉を出せず涙を流しながら震えていた。

 

 

 ◇◆◇

 

 

 数分後、Xオルタが落ち着いたころを見計らいモモンガが口を開いた。

 

「あ、あの、オルタさん、もう大丈夫ですか?できたらこの先の内容とかも聞けたらなぁって思っているんですが……」

 

 だんだん声が小さくなっていった。Xオルタは顔を赤らめ、慌てた様子で答えた。

 

「っ!そ、そうですね。できることは早めにしないと、ですね」

「いいんですか!この先に起きることについてですよね」

 

 モモンガの声からは期待が隠しきれていない。小声で「未来の情報か、ノストラダムスみたいなのかな」などと漏らす。一方Xオルタは事前に用意してあったマル秘ノートと巾着を持ち出す。

 

「これです。このノートに転移後の事のうち憶えていることを一通り書きました。こっちの巾着は転移後に特に役に立つと思って貯めておいたアイテムです」

「そんなものも用意してあったんですね。折角なので、先にアイテムから見せてもらいますね」

 

 モモンガは巾着に手を入れいくつかのアイテムを取り出す。出てきたのは3つの指輪、いずれも同じ意匠であり自分の指にもはまっているとても見慣れたものだった。見なかったことにして巾着に戻す。中にはまだそれなりの数があったようだがもう見る気力はなかった。しっかりと口が閉まっていることを確かめ、そのままXオルタに返す。

 

「……あの、オルタさん?つかぬことをお聞きしますがこちらの袋にはおいくらほど費やされたのでしょうか?」

「急に妙なしゃべり方してどうしたんですか?その中身なら確か……300万くらいだったと思います」

 

 モモンガが今まで一度も見たことがないような金額が出る。前世の話以上の衝撃だった。理解が及ばずそのまま聞いてしまう。

 

「……ど、どうやって工面したんですか?」

「あぁ、ユグドラシル始める前からの貯金です。お金の使い道がなかったのと、前世知識で勉強はそれなりにできたから12で高卒資格取れたおかげかいい仕事につけてたので」

 

「……前世ってすごい……」

 

 モモンガのつぶやきはXオルタには聞こえなかったようだ。

 




本作ではモモンガ様のボーナスは現在の新社会人のボーナスの平均より少し下を想定し20万に届かない程度と考えています。
また、えっちゃんの転生後の人生の比率はユグドラシル6、仕事3、勉強1、程度と考えています。
貯金は苦行だけどそもそもの使い道がなければすぐにたまるよね、きっと。

ちなみにうちのえっちゃんにとってモモンガ様はFGOにおけるぐだとかあっ君を足して2で割ったようなポジです。ほかのギルメンはダ―クラウンズというか、体験クエのあっ君みたいな感じ。

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