思うところがあり、投稿を見送っておりました。
***前回までのあらすじ***
色々あって球磨川禊に師事していた緑谷出久はついに雄英高校の実技試験当日を迎えた。
使いこなせない個性と身につけたゲリラ戦法を武器に試験を攻略していった出久は、合格を目指し戦いを始めた。
遠くから直進してくる仮想敵へスリングで鉄くずを飛ばしてカメラを壊し、立ち往生させる。もう一度振りかぶり、動きが単純になった1
それを繰り返しつつ2P仮想敵の元へ向かうが…
「っ…そんな簡単には近づけないか!」
2P仮想敵による攻撃によって行く手を阻まれる。
「なんらかの衝撃波か、それともクレイ弾のようなものを飛ばしているのか、おそらく受験生の生死に関わるような硬い実弾のようなものではないんだろうけど...いや、しかし、周りを見る限り仮想敵の攻撃で倒れている受験生もいるわけで、受けるか逸らすか避けるかして直撃は避けるべきか...。ただ、避けながら進むことは不可能に近い...じゃあ一か八か受けるか逸らすかしてるのが上策...?でも、実体を持たない攻撃、例えば衝撃波とかであった場合逸らすことはできず直撃を受けるわけで......」
考えながら2P仮想敵へ近づいていくが、距離が近づいていけばいくほど攻撃の間隔は狭まり避けることが困難になっていく。
そして、ついに仮想敵の攻撃が僕を捉えた。
「くっ...」
とっさに左腕を突き出し盾を使って自分の身を守る。
「...なるほど、なるほどね」
盾の角度が良かったのか、仮想敵の攻撃は上手いこと逸らされ直撃は回避された。
「つまり、実体はきちんとあるものが飛ばされているってことか」
それに、逸らした時にそれほど強い余波を受けなかった。そのことから、きっと直撃しても一発KOというようなことにはならないだろう、ということもわかった。
「よし、行くぞ!」
と言いながらUターンし、後ろから迫ってきていた1P仮想敵の攻撃をすれ違うように避ける。
僕に体当たりを避けられた1P仮想敵は2P仮想敵にぶつからないように急ブレーキをかけようとするが、そうはいかない。
間をおかず、再度Uターンし助走をつけて1P仮想敵の背中部分を飛び前蹴りで蹴り飛ばす。その結果、1P仮想敵は勢いそのまま2P仮想敵と衝突した。
今、僕の目の前には動かなくなった1P仮想敵とそれによって動きにくくなっている2P仮想敵がいる。
鉄パイプをしっかりと握り直し、2体の仮想敵の下へと駆ける。2P仮想敵が1P仮想敵から離れ攻撃を再開するより数手早く、僕の足が1P仮想敵を踏み台にする。
5つあるセンサーのうち、正面取り付けられている3つは1P仮想敵に塞がれ、残りの2つは横側に付いている。そんな状態にある2P仮想敵は僕の飛びかかりに反応できなかった。そして2P仮想敵は、その頭部の発射口に鉄パイプを貫通させられた。
2P仮想敵は首に組み付く僕を振り落とそうとするが、なんとかそれを凌ぎ首にまたがる体勢になる。暴れる仮想敵をよそに、僕は仮想敵の首から飛び降りた。
...仮想敵の後頭部から突き出る鉄パイプの先端を持って。
高さと重力による力によって頭部が捻り壊された2P仮想敵は時間を置かずその動作を停止した。
「ふう、これでようやく2P仮想敵を倒せたなぁ...」
今の3Pでちょうど20Pか...。
合格の条件がわからない以上もっと狩っておきたいところだけど...そろそろ時間がまずいなぁ。
ってそんなことを考えている暇があったら1Pでも多く倒しておくべきか...!
時間を気にしながらより一点でも多く点を稼ぐため、次の狩場となりうる場所を目指し駆け出した。
2P仮想敵を倒してから少しして、ようやく見つけた1P仮想敵を倒したその時、ビルが倒壊する爆音と共にその倒壊したビルと同等の大きさの仮想敵が現れた。
0P仮想敵だ。
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「まずったなぁ」
初めの方は良かった、というより今さっきまでは割と順調に試験内容をこなしていたはずだった。
しかし、その順調は今目の前にそびえ立っている大きすぎる仮想敵の出現によって崩れ去ってしまった。自分ひとりだけなら助かったかもしれないが、0P仮想敵が出現した時自分の周りには複数の受験者がいた。
試験時間も残り少なくなり、同時に仮想敵の残りも少なくなってきた時にあぶれていた彼らは、戦闘が苦手な方なようで0P仮想敵を前にして動けなくなってしまっていた。
そんな彼らを救けるために個性を発動し方々へ流したことに後悔はない。
そんな行動に、これから起こる事柄に後悔はない。
しかし、それでも...
「それでも痛いのは怖いなぁ...」
複数人の受験生を同時に浮かせ、安全圏まで避難させたことで体力は限界まできている。幸運なことに吐き気こそないものの、今から自分に対して個性を発動してこの場から逃げ切ることは到底不可能な状態である。
そんな風に考え諦めかけていたその時、遠くの方から声が聞こえてきた。
「大丈夫ですかぁっ!?」
それは入試が始まる前に転びそうになっていた、地味目の人の声だった。
ダメだ、ここにきたら危ない、そう声を上げる前に再度声が掛かる。
「安心してください、救けにきました!」
そう言い終わるや否や地味目の人は空高く跳びあがり
「スマッッッッッシュ!!!!!!」
掛け声と共にあの巨大すぎる0P仮想敵を粉砕した。
絶叫しながら落下する彼をなんとか個性で浮かせるも、体力に限界がきてしまう。
どうにか恩返しがしたいなぁ、と考えながら気を失い、気がつくと試験は終了していた。
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入試が終わった。はっきり言って点数が足らないような気がしてならない。
もちろん、突然流れてきた怯えながら浮いている謎の人たちを辿って、結果今朝の人を救けられたことを後悔したりしてるわけじゃない。
むしろ後悔し反省すべき点は他にある。ありすぎる、と言っても良いくらいだ。準備を怠ったことや分析に時間がかかりすぎてしまったこと、せっかくオールマイトから受け継いだ個性を上手く活用できなかったことなど際限なく挙げられる。
なによりも個性を発動した後、今朝の人に救けてもらわなければ死んでいたかもしれなかった、このことが一番の反省点だ。
救けに行ったはずなのに救けられる、他の誰かに救けてもらわなければまともに戦えない、そんなんじゃ一流どころかそもそもヒーローになることすらできない。
そんなことを考えながらどんよりと帰り道を歩いてると、突然声をかけられた。
『あれ、出久ちゃん?』
『ぶつぶつ独り言をしながら歩いてるぶつかるよ?』
『主に人間関係の壁とかに』
球磨川さんだった。
「こ、こんにちは...」
「入試を受けてきたんですけどね、実はひどい失敗をしてしまって...」
ぽつぽつと今日のことについて話す。主に個性の制御がきかず腕がおしゃかになってしまった話についてだ。
『ふーん、制御ねぇ』
『いや、出久ちゃんがしたいならやってもいいとは思うんだけどさ』
『
たしかに球磨川さんは今までも似たようなことを言っていたけれど...。こんな暴走列車みたいな使い方しかない力に...いや、オールマイトから受け継いだ個性を持て余すことしかできない僕に、そんなことができるんだろうか。
『まぁ色々方法は考えられるけど』
『例えば指だけで使うとか、ね』
「...え?」
『その
『なら、制御なんてまどろっこしい努力をする前に』
『そんな
『その"100%の力"を、視点を変えて機転を利かせて使うべきなんじゃないかな』
『肉を切らせて骨で断つ、力の使い方ってのはそういうもんだぜ』
衝撃的である。僕は「いかに傷を負わずに個性を使うか」なんて風に考えていたけれど、そうじゃない。
本当に大事なのは「どんなに傷を負ったとしても倒れずに
手札の数や良し悪しじゃない、限られた手札を使い切って戦い切ることが大事なんだ。
「すみません、初心を忘れて舞い上がってたみたいです...」
「これからも球磨川さんに教わったことを大切にして、立派なヒーローになれるよう頑張ります!」
『いやいや、そんな大したことは言ってないさ』
『それじゃ』
『また明日とか!』
球磨川さんはそう言って颯爽と去っていってしまった。見返りも求めず弱者の味方をする、そんな球磨川さんこそ立派なヒーローなんじゃ、そんな見方もあるんじゃないだろうか。
少なくとも僕が少し
この後の展開
・緑谷出久の成長の影響によって体力テストでビリになった峰田実が退学になる(「合理的虚偽」こそ虚偽だったため)
・失意の中、峰田実は球磨川禊に拾われる
・球磨川、トガ、峰の3人は水槽学園からの交換留学生として雄英1-Aへ
・トガが校長の血を取ったり、峰田の個性が「伸縮自在の愛」のようになったり
etc.....
色々あるのですが、読者の「理想の球磨川禊」と私の想定する「原作終了後の球磨川禊」に乖離が見られるため、今後の更新に関しては検討中です。