憐憫の獣、再び   作:逆真
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連載が長くなって複雑化してきたので、ゲーティアの計画を整理
0.聖書の神の打倒 ※すでに死んでいた模様
1.神滅具/聖遺物を魔改造(詳しい理由は伏せます) ※聖十字架と聖杯は完了、残るは聖槍
2.冥界を悪魔・堕天使諸共焼いてエネルギー回収 ※下準備ほぼ終了、3の準備が完了したらすぐに実行
3.天界を天使やシステムごと焼いてエネルギー回収 ※他神話の介入、天使による自爆を阻止する必要がある。現在重点的に行われているのはこの部分
4.冥界・天界を焼いて得たエネルギーで歴史を改竄して『天使・悪魔・堕天使が最初からいないが、救世主という史実は存在している世界』を創り出す
5.ゲーティア解散(この世界に居座ったり元の世界に戻ったり)

連載を決めた頃は十話くらいで終わる予定だったんだけどなぁ……。当初は連載の予定はなかったし。新宿がなかったらすでに終わっていたかもしれません。


ズレ

「魔神柱のことを教えてくれか。分かった。堕天使の総督アザゼル、その頼みは断らせてもらうよ」
「……あいつらのことを俺たちよりも知っていることは否定しないんだな。一応聞くけど何でだ。何でそれを俺たちに教えられないんだ、キングゥ」
「馴れ馴れしく名前を呼ばないでもらいたいんだけど。彼らとは協定がある。彼らの邪魔をした場合、この京都が攻撃されるんだ。その際の責任を全面的に、貴方が、堕天使が、聖書が背負ってくれるならば話しても構わないけどね。まあ、契約を守ろうとするほど貴方たちは律儀ではないか。前科がある」
「随分な言い様だな。そういうのは死んだ神とかミカエルとかに言ってくれ」
「まるで自分は約束を必ず守る誠実な人格者とでも言いたげな台詞だ。堕天使はよくカラスに例えられるが、ニワトリの方が合っているんじゃないかな」
「てめえ……!」
「――やる気かい? 其方が手を出してくれたらボクとしても楽なんだけど」
「ちっ。こんな安い挑発に誰が乗るか。でも、俺もアポを駆使してようやくこの対談をセッティングできたんだ。サーゼクスやミカエルを納得させられる話をしてもらわないと困るんだがな」
「あっそ。安心しなよ。彼らとの協定は邪魔も協力もしないという内容だ。今のところ、ボクがキミ達の敵になる予定はない。協力する理由もないけどね。そもそも日本としても京都としても妖怪としても、キミ達聖書に示す礼などないはずだ。勢力としての協定はないんだから。観光以外の目的で来ないでくれないかい?」
「魔神柱のことは協定で言えない、か。だったら、おまえのことを教えてくれよ」
「ボクの?」
「ああ。『何も言えない』じゃ危険視されることはおまえにも分かるはずだ。それはおまえにとっても京都にとっても面倒だろう? 俺たちにとってもだ。魔神柱について言えないんだったら、おまえについて言える範囲で教えてくれないか? 例えば、おまえの種族って何なんだ? 俺が知る種族にはない雰囲気ではあるが、魔神柱って連中とは違うっぽいしな。トップとしてじゃなくて個人としても興味がある」
「ボクはただの泥人形だよ。この国の文化に倣うなら、新人類になり損ねた妖怪だ」







 某国某所、本日もいつも通り看護団の護衛として周囲の警戒をしていたゼノヴィアは、突然の訪問者に驚いていた。

「フリード・セルゼン!?」
「あー? どっかで見たことあると思ったら、デュランダル使いのビッチさんじゃねえの! いやー、お懐かしいでございますネ!」
「き、貴様、一体何をしに来た!」

 デュランダルの切っ先をフリードに向けるゼノヴィアだったが、よく考えたら現在の自分は彼と同じ組織に所属していることを思い出す。咄嗟にこのような対応をしてしまったのは、はぐれ悪魔祓いである彼への危険意識が抜けていないからか。

 引っ込みがつかなくなったゼノヴィアを無視する形で、フリードは自分の目的を簡潔に述べる。

「近くに寄ったもんでねー。フローレンス先生とかアーシアちゃんとか元気かなと思ってさ。ぶっちゃけ、要らないと思うけど護衛頼むぜ。俺にとっても先生は恩人なんだ」

 その言葉が嘘偽りのないものであると直感し、自分の知るフリード像と現在の彼がかけ離れていることを思い知るゼノヴィア。

「二人とも過労が心配なほど働いているよ。何なら、おまえが直接会ったらどうだ?」
「いやいやいや! 俺みたいな身体がボロボロの奴があの二人の前にいけるわけねえでしょうよ。殺してでも休養させるぞ、あの二人は」
「それはさすがに」

 それはさすがにないと言えないゼノヴィア。

 端的に言って、フリードの危惧は正しい。優秀な戦士であると同時に、フリードは人体実験の被験体だ。投薬や人体改造などによって、身体は歪になっている。例え、魔神柱の因子と同化したとしても、その白髪が実験の後遺症を如実に示している。

 そして、こんなフリードに労働を許可するほどフローレンス・ナイチンゲールも現在のアーシア・アルジェントも『治療する立場の人間』として愚鈍ではない。抵抗するならば発砲も辞さない。

「俺様も本当は来たくなかったんだけど、ちょっと気になったもんでしてね。何もないならようござんした」

 そう言いながら大して嫌そうでもないフリード。あまりにも違う。教会で聞いていた彼の人間像とは全く違う。コカビエルによる聖剣強奪事件の際の彼は、想定していた人格そのものだった。おそらく元々の人格はあれが正しいのだろう。だが、彼も変化したということなのか。

「じゃあ僕ちゃん、先生に見つかる前に帰りますので――」
「ま、待て!」
「え、何だよ」
「おまえは、どうして彼らに従うんだ?」

 同胞さえ手にかけた人格破綻者。悪魔を殺すことの悦楽に沈んだ異端者。それがどうしてここまで変わったのか、知りたかった。答えてはくれないと思ったが、意外なことにフリードは口を開いた。

「妹がいたんだ」
「……いた?」
「いや、過去形って意味じゃなくてな。つい最近、分かったんだよ。正確には妹みたいな奴、なんだけどな。困ったことに、聖十字架に適合しやがるしよ」

 元々、フリードは試験管ベイビーだ。教会の戦士育成機関の一つ、シグルド機関によって作り出された。しかし、彼は完成品にはなれなかった。天才と言われても、機関の人間にとってはサンプルの一つでしかなかったのだ。実戦に出されるも、戦士としては優秀だったが、使徒としては落第だった。

 教会を追放されたフリードは、追手をしのぎながら、レイナーレという堕天使の下についた。フリードの主観では、美人ではあるが頭の緩い上司だった。レイナーレを始めとする堕天使とその使徒はフラウロスによって殺害されている。四月頃に発生した堕天使の拠点の連続襲撃事件の一つである。襲撃者の危険度を理解したフリードは従属を選択する。もっとも、適当なところで裏切る予定だったが。

 だが、ある時、事情が変わる。

 フラウロスとはまた別の魔神柱が保護――教会の視点では簒奪――した人間の中に、リント・セルゼンがいた。フリードとリントは同一遺伝子の試験管ベイビーであり、兄妹のようなものである。

 フリードは彼女の存在を知った当初は、「そういうこともあるのだろう」という程度の認識だった。ただ、気にはなったので会話はあった。最初は本当に何の愛着もなかったのだ。悪魔やその契約者だけではなく、同胞であるエクソシストさえ殺してきた自分にそんな人間らしい感情があるはずもないと思っていたのかもしれない。だが、いつからか認識が変わっていた。コカビエルが聖剣を強奪した頃には、自覚できる程度にフリードは変わっていた。自ら魔神柱の端末としての調整を受けようとするほどに。

 別に、悪魔を殺したいと思うフリードがいなくなったわけではない。ただ、ちょっとだけ別のことを考えるようになっただけだ。フリードの願う光景を叶えるには、ゲーティアへの協力が一番確実だった。

「旦那たちが勝てば、あいつが楽しく生きられる世界になるはずなんだよ」
「おまえは……」
「なーんちゃって!」

 フリードは露骨なほどに剽軽な声を上げる。

「このフリード・セルゼン様がそんなお涙頂戴のベタ展開をお届けするはずねえだろうが! 俺は単純に、旦那たちに下についた方が一番暴れられるって思ってんだよ。それ以外に何があるの? あー、悪魔ぶっ殺しまくって気持ちよくなりたいぃぃいい! 色々と溜まっちゃうYO! じゃあね、バイビー!」

 逃げるように去るフリード。実際逃げているのかもしれない。主に近くにいるはずの鋼鉄の看護師とその弟子から。逃げた先で鉢合わせしそうな予感もするが。

「……私は」

 悲劇の聖女は治すためではなく、救うための信念を手に入れた。白髪の神父は刹那ではなく、未来を求める理由を見つけた。そして、今のゼノヴィアは知らないが、かつての相棒は新しい信仰に出会った。聖槍の英雄志望は道筋を定め、聖杯の吸血鬼は晴天の下に立った。

 ならば、ゼノヴィアは一体、何を探すべきなのだろうか。答えはまだ分からない。







 ここが夢の中だってすぐに分かった。

 俺――兵藤一誠は明日から部長の里帰りにご同行する予定だ。つまり冥界、地獄と呼ばれる場所に行くんだ。部長や会長さんなんかは次期名家の当主としてお披露目会もあるらしい。テロリスト対策の会議なんかも開かれるらしいけど。部長のご実家に行くってことで、俺も緊張しっぱなしだ。……それから、延期になっていた焼き鳥とのレーティングゲームをいよいよやるんだ。部長の未来のためにも勝たないと。

 天使、悪魔、堕天使という三大勢力の和平のための協定――駒王協定。これで木場の聖剣計画のような犠牲者はなくなるはずだ。協定の後に、アザゼルが駒王学園の先生としてやってきた。しかも、オカルト研究部の顧問についた。結構スケベで話の分かる人、じゃなくて堕天使だった。今では素直にアザゼル先生って呼べるぜ。

 それにしても変な夢だ。夢だって自覚できるんだけど現実感があるというか、違和感が強い。

『相棒。これはただの夢じゃない。何者かがおまえの意識に干渉して、強制的に見せているようだ。気をつけろ。どのような精神攻撃をされるか分からんぞ。このような能力はなかったから白いのではないと思うが……』

 すぐそばにいるドライグが、そう説明してくれた。普段は神器からの声だけだが、今は夢だからかドラゴンの姿がはっきり見えた。

 真っ黒な空間だ。上下左右前後に黒しかない中で、テレビをつけた時みたいに空間の一部に映像が映し出された。

 そこには龍を象った赤い鎧を着た人物がいた。その人物が俺だってのはすぐに理解できた。あれが『赤龍帝の籠手』禁手状態『赤龍帝の鎧』なんだろう。前にアザゼル先生に借りたリングで俺は疑似的な禁手になったんだけど、まさにあんな感じだったのだ。

 映像の中央に立っている俺に、子どもたちが寄ってきた。どういう状況なのか理解できないでいると、軽快な音楽が流れてくる。ヒーローショーっぽいなと考えていると、衝撃のタイトルコールが。

 ――おっぱいドラゴン、始まるよー!
 ――おっぱい!

 ……………………何、これ。

 困惑する俺に、こう、意味不明な歌が聞こえてきた。そう表現するしかない歌が聞こえてくるのだ。作詞した人の正気を疑いたくなるような歌詞だった。振付もあるし、気合い入りすぎだろう。……え? なんなのこれ?

 場面が変わり、色々な映像が流れていく。その中に登場する誰もが、信じられない言動を繰り返していた。それも、俺に対して。一つ一つが断片的すぎるけど、俺にとって不本意な何かが起きていることだけは明らかだった。

  ――噂を聞いている。女の乳を糧に行動する破廉恥な男だと
 ――私の宿敵に乳龍帝などいない
   ――乳龍帝よ、乳神様の加護を貴方に
  ――ドライグ、乳を司るドラゴンになる?
 ――おケツもいいものだよ
   ――ずむずむいやーん
  ――ずむずむいやーんってずっと聞こえてくるの……

『な、何だこれは! その、何なんだこれは!』

 絶叫するドライグ。俺に聞くなよ! 本当に何なの、これ!? どうして、あの厳めしい武人みたいなおっさんは俺がおっぱいを食べるなんて思っているんだ。乳龍帝とか乳神様ってなんだ。ずむずむいやーんってどういう意味なんだ。そこはかとなく魅力を感じるけど、何で巨大なドラゴンが連呼しているんだ……。あと、気のせいじゃなければドライグが幼児みたいな喋り方をしていたような……。

 困惑する俺たちに、どこからともなく声が届く。

『これこそは、異世界の貴様の姿。これから廃棄できる選択肢の結論にして、まだ排除できる可能性の結末である』

 映像が途切れて、周囲が一気に殺風景になる。この自由さが夢の証明だった。

『そ、そら、相棒。どうやら黒幕のお出ましのようだぞ』

 どうにか調子を取り戻したドライグと同じ方を見ると、そこにはバケモノがいた。

『私はソロモン七十二柱がひとり、ゼパル』

 柱みたいな身体に、大量の赤い目。七十二柱の名前を勝手に使っている、魔神柱を名乗っている怪物。前回のグラシャ=ラボラスとは違うけど、こいつも全体的に黒っぽい。

「な、何でおまえが俺の夢に出てくるんだよ! こんなデタラメ見せてどうするつもりだ!」

 俺の問いかけに、魔神柱はせせら笑う。いや、声に感情は宿っていないように思うんだけど、こいつは俺を見下していた。ライザーやヴァーリのように、あるいはそれ以上に。

『虚偽ではない。これは間違いなく有り得た貴様の生き方だ。そして、貴様に話などない。人としての可能性を放棄した悪魔よ。利用価値のない半端者よ。私が用があるのは、其方の龍だ。ブリテンの守護神ア・ドライグ・ゴッホよ』

 俺じゃなくてドライグ? ドライグと会話したいけど、ドライグは神器に魂だけが封印されている状態だ。だから、直接じゃ駄目で、俺の夢を通しているってことか?

『ほう? 俺に何の用だ』
『見てもらった通りだ。貴様はこのままでは、その歴史を恥辱に染められる。だが、今ならば間に合う。その転生悪魔よりも、我々の方が貴様の力を正しく利用できる。我々には、貴様に新しい肉体を与えられる手筈がある』

 魔神柱――ゼパルは、ドライグにこう告げた。

『赤い龍よ。我々と手を組め。そして、龍王を超えた“天龍”として復活せよ』



ゼパル「かわいそうなドラゴンとか言われる前にこっち来いよ」
これがアンケートを通して得た私なりの解答だ。

〇〇〇さんをIFで書いたりしないのかだって? 無理っす。手一杯っす。やりたい人がお好きにやってどうぞ。ただⅡの案はあるんですよ。IF書くとしたらそっちかな。