憐憫の獣、再び   作:逆真
<< 前の話 次の話 >>

24 / 45
御身の再臨をもって彼のクラスは決定される。

唯一神など偽りの座。

其は人間が誤認し、人類史に最も災禍を導いた大災害。

『真理』の理を持つ獣。

誰もが縋り、誰もを貶めてきた絶対の理。

それこそが■■■■の獣性である。


おうさまのおはなし

『リアス・グレモリー様の「投了」を確認しました。ライザー・フェニックス様の勝利でございます』

 その放送を聞いても、この決着を見ても、VIP席の重鎮達に驚きの色はなかった。おおよそ予想通りの展開だったからだ。

「つまらん。赤龍帝がいれば状況は違っただろうに」

 誰がかそう呟いた。

 その呟きに同調するように、周囲に嘲笑が満ちる。

 ゲームの流れを簡単に述べるとこうだ。ライザーは眷属の数を活かして『犠牲』で勝った。リアスは質では上だったが、その質を活かしきれなかった。リアス側の『戦車』と『僧侶』は相手側の『兵士』を倒して油断した隙をつかれて脱落。『女王』はライザー側の『女王』を追い詰めたが、フェニックスの涙を使われ逆転。禁手に至った『騎士』は『女王』を倒したが、消耗が大きく結果的に相打ちになった。

 兵藤一誠がいたならば、精度の高い回復能力があったならば、もう一人高火力持ちがいたならば、容易く覆せた盤面だっただろう。もっと言えば、『女王』や『戦車』が自分の本当の力を使っていれば、『騎士』の余力が残された状態だったはずだ。

 今回のゲームがもたらすものは、魔王の妹である我が儘姫が、不死鳥の三男坊を婿に入れることになった。そんな事実だけだ。このゲームの勝敗にそれほど深い意味などなかっただろう。少なくとも、世界から見ればちっぽけな戦いが終わっただけである。

 誰も彼も、こんなことをやっている場合ではないというのに。それを知っていながら何も言わない神もいるのだから、救われないものだ。







 空気が重い。

 その場の状況を一言で説明すると、そんな感じの言葉が出てくるだろう。

 この世界とは異なる円卓の騎士。彼らは女神ロンゴミニアドによって召喚され、再び円卓の席に座っていた。ただし、円卓には空席がいくつかある。

 まず、肝心の王がいない。また、王の義兄ケイと太陽の騎士ガウェインがいない。そして当然と言うべきか、ギャラハッドの姿もない。

 トリスタンの姿もないが、ベディヴィエールを迎えに行っている。

 聖剣を求めて各国を巡り歩いていたベディヴィエール。彼だけは、獅子王に召喚されなかった。堕天使の幹部の手によって極東の島国に聖剣が集まっているという話を聞いて、日本に出向いたはいいが、到着時にはすべて終わっていた。

 所在不明になった聖剣の情報を探しながら世界各地を歩いていると、トリスタンに再会し、現在に至る。

「それで、彼がこの世界に来たのはあの宮廷魔術師の仕業でいいのだな」
「ええ。トリスタンからの連絡で、確かにそう告げていました」

 それを聞いて、その場にいた全員が不快な……もとい、深いため息を吐き出す。

「魔術師殿は何のためにそんなことを……」
「でも、あの方ですし」
「マーリンですからねえ」
「あのジジイだからなぁ……」
「陛下ならご存じかもしれませんが」
「このようなことで王の手を煩わせるなど」

 全会一致で花の魔術師の真意は後回しになった。元々人間とは違った価値観を持つ彼の考えなど先読みしようとするだけ無駄だ。用心はするべきだろうが、それなりに見知った仲である以上、ある程度の信頼はある。

「では、ベディヴィエール卿が帰還する前に状況を整理するとしよう。彼への説明のためにも、認識を共通する必要がある」

 実は、この場にいる全員が第六特異点の出来事を覚えているわけではない。

 例えば、トリスタンは、同胞を殺したことも、獅子心王を騙る存在に挑んだことも、民衆を虐殺したことも覚えていない。覚えていないが、覚えていないが故に覚えている者からの感情を読み取ってしまった。それこそがこの空気の悪さの原因だった。別に生前からこうだったとかはない。

 アグラヴェインはすべて覚えているが故に、ランスロットはここで処分すべきだとも考えるが、彼が必要な戦力であることは重々承知している。流石に三度目はないと思いたいところだが。ちなみに、ランスロットはぼんやりとしか覚えていないらしい。あの最期の独白を覚えられていないのは有り難いところだが、「ギャラハッドに物凄く罵倒されたような気がする……」しか覚えていないあたり、この男の能力以外は評価できない。

 加えて言うならば、アグラヴェインとしてはガレスが何も覚えていないのは幸いだった――

「入ります! 紫藤イリナ、ただ今戻りました!」

 ベディヴィエールが早く到着したのかと思ったが、入ってきたのは紫藤イリナ。かつて教会に仕えていた戦士だ。縁あって現在はアグラヴェインの直轄騎士の一人になっている。先日も重大な使いを果たしてもらったばかりだ。彼女の姿を確認するなり、モードレッドが不愉快そうに舌打ちをする。

「うるせえぞ、自称騎士」
「モードレッド様! ひどいです!」
「じゃあ自称日本人だな」
「自称じゃありません! ちゃんと日本人です!」
「うそつけ。ランスロットの方がまだ正しい日本の知識あったぞ」

 何故ランストロットが日本に詳しいんだ? と数人の頭に疑問符が浮かぶが何等かの形で聖杯戦争にでも呼ばれて、その名残なのだろうと勝手に判断した。なお、ガレスとガヘレスに関しては「流石ランスロット卿! 遠い島国のことまでお詳しいとは!」と目を輝かせていた。

「……モードレッド卿。気持ちは分かるが、彼女は我が騎士団の一員だ。そう邪険に……」
「うるせえ! アーサー王の末裔でもない、円卓の騎士でもない、ただ教会の戦士として育って因子を受け取っただけの女が、父上の……アーサー王のエクスカリバーを使ってやがったんだ! こんなふざけた話があるかよ!」

 その言葉に、誰も何も言えないでいた。当然だ。

 ‟エクスカリバーはアーサー王とともにある剣である”。

 そんなことは言葉にするまでもない当然の理だ。だからこそのベディヴィエールによる返還だった。だからこそのモードレッドによる叛逆だった。だからこその、誉れ高き円卓の騎士の滅びだった。

「モードレッド卿。気持ちは分かるが落ち着くのだ。円卓に着きながらこれ以上の醜態を晒すことは許されない」

 そう言われて渋々黙るモードレッド。と、ここでイリナの後ろに二人の騎士が立っていることに気づく。

「私は悲しい。何やら取り込み中で帰還したことに気づいてもらえない」
「……この言葉が正しいのかは分かりませんが、言わせてください。ベディヴィエール、恥ずかしながらアーサー王の元にはせ参じました」

 円卓の空席に気づき、ベディヴィエールが最初に口にした疑問はあまりにも当然のもの。

「アグラヴェイン卿。王は、どちらに?」

 質問しながらも、答えは出ていた。ガウェインとケイがいないのも、それが関係している。

「決まっているだろう。『外交』だ」







「アンドロマリウスより提案。兵藤一誠を通じてキャスパリーグより得られた情報を活用して、『奴』への対抗策を練るべきだ」
「デカラビアより賛同。これ以上、ゼパルの交渉能力の低さやフェニクスの独断行動による不利益、フラウロスの節穴について論じるのは時間の無駄である」
「フラウロスより怨嗟。おまえ達、後で覚えておけよ」
「ゼパルより同調。その感情を理解できる」
「フェニクスより追従。罵倒を受けるのが我らだけであるのは間違っている」
「アモンより要請。反省せよ、面汚しども」
「フォラスより提唱。我らの中にある異常を取り除くことから開始すべきだ。そうでなくては話が進まない」
「ガミジンより提案。逆転の発想で、もう一度死んでみてはどうか」
「アンドラスより拒否。断固拒否する! 繰り返す! 断固拒否する!」
「フェニクスより同意。仮に実行される場合、試験体にはガミジンを推薦する!」
「フルカスより見解。あまり現実的な手段ではない。また、我らの特性を省みれば、無意味に終わる可能性も高い」
「グシオンより指摘。我らの異常がどのような形で存在するかの議論が必要だ。だが、我ら自身がこの点に関して議論を重ねた所で無駄である」
「ロノウェより要請。協力者が絶対条件だ。今の我らでは、こうして議論を交わしていることさえ彼奴の意思が組み込まれている可能性があるのだ。我らとは別の、神殺しの協力者が必要だ」
「ボティスより提示。第一の条件として、神に影響されない存在であることだ。最上位の神格を意味する」
「ウェパルより補足。元より、彼奴の計画がいつから始動していたのかは不明だ。三つ巴の大戦時に思いついたのか、創世記には開始されていたのか。『槍』に封印されている遺志がそうさせたのか」
「シトリーより提示。次の条件として、我らと協力関係を築けることだ。多くの神話では、我々を禍の団の一部と認識している。積極的な関係を一から築くのは困難だ」
「ナベリウスより解説。数多の地獄と交渉し、これに成功した。だが、それは信用されたわけでも、彼らを信用しているわけでもない。彼らに計画のすべてを開示したわけでもない」
「ブエルより訂正。聖書以外の勢力に彼奴の再臨など説明したところで、正気を疑われるだけだ」
「フォルネウスより宣言。だが、三大勢力との交渉だけは断固拒否する。奴らはこれを利用しかねない。故に、協力者は聖書に名が記されていないことが前提だ」
「グレモリーより危惧。英雄派には我らの因子を与えてある。彼らを利用することは危険だ」
「ムルムルより総括。これらの条件が該当する存在を検索することから我らの叛逆は開始される」
「ウァラクより反論。そんな都合の良い存在などいるわけ――」
「…………」
「……………………」
「………………………………………」
「いるな」
「ああ、いるぞ」
「確かに、いるが」
「あれにこのような難解な事象を解決できる能力はあるのか?」
「中身は純粋無垢極まりないドラゴンだぞ?」
「だが、作戦の候補の一つとしては悪くないはずだ」
「ゲーティアより全魔神柱に通達。固有結界の中で惰眠を貪っているであろうオーフィスを叩き起こすぞ」
「ゲーティア、我を呼んだ?」
「いつから戻っていた。だが手間が省けたな。オーフィス、突然で悪いが、おまえの力を借りたい」
「――――我、条件がある」
「いいだろう。本来であれば固有結界を教えた代償としてもらいたいところだが、今回の件はそれを上回ってあまりある。それでおまえは何を望む? やはりグレートレッド打倒の助力か? それとも聖杯か? あるいは我々の世界の知識か?」
「我と遊んで欲しい」
「ほう、お安い御用だ。計画に支障があるわけでもない。我々にとっては造作もないこと――――え?」
「ゲーティア、我に構ってくれない。我、寂しい。これ、我の求めた静寂と違う。我、ゲーティアと一緒がいい。だから、ゲーティア、我と遊ぶ」
「ほ、他にないのか?」
「我、それ以外だと協力しない」
「い、一度口にした以上、撤回する、わけに、はいかない、な。い、いいだろう。貴様の遊びとやらに、付き合ってやろうではないか。我々は人理を焼却することさえ可能なのだ。その程度のこと、造作もない。ない、はずだ。造作もないはずなのだ」
「我、遊園地に行きたい」
「あ、ああ。分かった……。では説明の前にだ、オーフィス、おまえに説明を求める。おまえが連れているその奇怪な生物は何だ?」
「えへん」
「……Ddraig……!」







 むかしむかし、あるところにおうさまがいました。

 おうさまはかしこいおうさまでした。おうさまはすごいまほうつかいでした。おうさまはやさしいひとでした。でも、おうさまはいつもおこってばかりでわらっていません。

 おうさまはかみさまがだいきらい! だってかみさまときたら、おそらのうえでえらそうにしているばかりで、なにもしないのです! いつもえらそうで、どこでもいばっていて、ありえないくらいよくばりです!

 てんしさんもだいきらい! だっててんしさんときたら、かみさまのごきげんとりばかりしています。おうさまをにんげんだとばかにしています。おうさまのくにのひとのことも、ひつじだとばかにしています。そのくせ、おうさまやおうさまのけらいがかみさまのことをばかにすることはゆるしません。にんげんはかみさまをほめないといけないのです。

 あくまだってだいきらい! だってあくまときたら、おうさまがみはっていないと、おうさまのくににわるさばかりしてきます。たいせつなゆびわをぬすまれたこともあります。にんげんをだまして、とおくにつれていかれたこともあります。おまけに、いらなくなったごみをすてます。

 だてんしだってだいきらい! だってだてんしときたら、てんしやあくまとけんかばかりです。かみさまもしかりませんから、もっとわるさをします。だてんしはおそらにかえりたいけど、かみさまはだてんしなんてもういりません。だから、だてんしはにんげんをいじめるのです。

 おうさまがどれだけがんばっても、かみさまもてんしさんもあくまもだてんしも、いうことをきいてくれません。おうさまはききたくないこえをききました。おうさまはみたくないものをみました。おうさまのくにはもうめちゃくちゃです。

 だから、おうさまはしかえしをおもいつきました。

 かみさまやあくまのこまったかおをおもいうかべると、おうさまはうまれてはじめてわらいました! にやにや、にこにこ、にたにたとわらってしまいます!


 そしておうさまは――全人類に呪いをかけました。



毎度おなじみ魔神柱会議(意訳)である。
※イッセーを通じて前回のフォウくんからの情報は伝わっている状態

アンドロマリウス「フォウくんからの情報で、あの駄神への対策練ろうぜ」
デカラビア「そうだな。これ以上、ゼパルとフェニクスと、再確認されたフラウロスの節穴っぷりをいじるはやめよう。時間の無駄だ」
フラウロス「おまえら、後で覚えておけよ」
ゼパル「まったくだ」
フェニクス「何で私たちだけ怒られるんだ」
アモン「反省しろ、おまえら」
フォラス「とりあえずバグ取り除こうぜ。今のままだと何でできない」
ガミジン「死んだら治らないかな」
アンドラス「冗談でもそういうこと言うなよ!」
フェニクス「もしやることになったらてめえを最初に殺すぞ!」
フルカス「まあ、あんまり期待できないからやめておこうぜ」
グシオン「俺たちの異常がどんなものなのか、第三者に診てもらわないと」
ロノウェ「協力者が必要だな」
ボティス「奴の影響を受けていない神格持ちが最低条件だ」
ウェパル「奴の計画がいつから始まったのか分からない以上、古ければ古いほどいいな」
シトリー「ここで禍の団だと認識されていることが非常に面倒になってくる」
ナベリウス「冥府とかとも手出し無用って計画だからな。急に協力は多分無理」
ブエル「奴の再臨とか頭疑われるだけだろうし」
フォルネウス「かと言って、聖書陣営に頼るのだけは絶対にないぞ」
グレモリー「私たちの因子やったから英雄派も使えない」
ムルムル「この条件に当てはまる奴っているか?」
ウァラク「そんな都合の良いやついるわけねえだろう」
魔神柱一同「………………………………………いるけど、大丈夫か? いないよりはいいか」
ゲーティア「オーフィス呼んで来い」
オーフィス「呼んだ?」
ゲーティア「突然で悪いけど手伝ってくれ」
オーフィス「じゃあ代わりに遊んで」
ゲーティア「分かった。――――え? あ、遊ぶのじゃないと駄目か?」
オーフィス「駄目。一緒に遊園地行こう」
ゲーティア「仕方がないな(え、どうすればいい? マジで行くの?)。ところで、その生き物、どこで拾ってきた?」
オーフィス「えへん」
誰ーリ「どらいぐころす」

D×D原作ではよくロボットアニメで禁手とか例えられるのでそれに則ると、誰ーリさんはバルバトル・ルプスレクスって感じ。