憐憫の獣、再び   作:逆真
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今回の冒頭に登場するのが拙作のガチの黒幕。
少なくとも本編においてはラスボス。
一応正体はぼかすけど、発言から察するよね。


朝を迎えるために

 では頃合いだ。騎士を撤退させてくれ、獅子王。

 

「これがおまえの筋書きか? ■■■■」

 

 概ねその通りと言いたいところだが、そうでもない。よもやビーストDが両方とも倒されるのは予想外だった。代案があるとはいえ、手間が増えるのは何とも面倒だ。流石はソロモンといったところだな。

 

「あくまでもソロモン一人の手柄だと?」

 

 当然だ。

 

 ソロモンは優秀だ。私が加護を与えた者の中でも特に。ただ……彼の価値観には理解できない面もある。シバの女王の件もそうだが、よくわからない行動をする子だった。最近ではリリスを復活させたことだな。強力な肉体が必要とはいえ、アダムが棄てたものに縋ろうなど。世界線によっては世界が滅びかねないというのに。

 

「世界が滅ぶとしたら、それはおまえの責任だろう。おまえがいなければソロモンが『真理』を生み出すことはなかったのだから」

 

 そうでもない。私が一因であるのは認めるが、起源は四千五百年前に此方の英雄王が――いや、これは関係のない話か。語る意味もないこの星の恥部だ。神々の劣悪さが招いた失敗だ。

 

 それに、『真理』が世界を滅ぼすような旨の発言は控えてもらおう。逆だ。逆なのだ。『真理』がなければ、この世界はとっくの昔に滅んでいた。そんなことにも気づけないこの世界の神々は、霊長を統べる資格がない。ソロモンが詐欺同然の文句で『真理』を組み立てたのはそれが原因だ。異なる神話が複合しているという歪な宇宙観は、『真理』という柱のおかげでかろうじて保っているのだ。私やソロモンがやっていることは、その修正だ。責められる謂れなどどこにもない。

 

「不愉快だ。実に不愉快だ。本来であれば、私の理想都市におまえのような存在は不要だ」

 

 私がこれからの世界にとって必要であることは再三教えただろう?

 

 君と円卓の騎士が天使の代わりに、ゲーティア達が悪魔の代わりになる。そして私が神になる。女神と言っても、君は成り上がりだ。主柱にするには少々脆い。ゲーティアは強度では問題がないが、彼は混ざり物過ぎる。オーフィスには「無限」だけではなく「混沌」という性質がある。トライヘキサは言うまでもない。グレートレッドにはこれ以上の負担をかけるわけにはいかない。

 

 私たちが適した座に就くことで、聖と魔を始めとした世界のバランスは保たれる。当初の予定では天使も悪魔も魔神にしてもらうはずだったが、君の登場は私にとって嬉しい誤算だった。支柱は多ければ多いほどいいからね。

 

 君が此方に来る契機を紡いだ夢魔には感謝を捧げたい。リンゴでも……いや、かの妖精郷には掃いて捨てるほどあるのだったかな?

 

「あれは感謝など要らんだろうよ。奴にとっても私にとっても、貴様が盛大に失敗することが最大の報酬となるがな」

 

 それは出来ない相談だ。最早ここまで来てしまえば、私が神になることは決定事項のようなものだ。

 

「ほう? そういえば具体的な手段は聞いていなかったな。貴様、どうやって神になるつもりだ? 貴様の権能は神に等しいが、貴様――貴様の種族はその性質上神にはなれない。もしなれるのならば三大勢力は冷戦状態になどならんだろう」

 

 簡単だ。ベリアルを通じてリゼヴィムに流してもらった『聖書の神の復活』の方法はね、本当に唯一神を復活させられるんだ。まあ、蘇る唯一神は聖書の神ではなく私なのだが。『システム』には随分前に細工させてもらった。聖書の神の肉体は復元される。だが、その中に入るのは私だ。次の唯一神はミカエルでもソロモンでもルシファーでもない。私だ。……『訣別』がなされていればこうはいかなかったが。

 

 ざまあみろ、と言うやつだな。神め、私にあのような仕打ちをした報いだ。『槍』の中で臍でも噛んでいるがいい。コキュートスには娯楽がないのが最大の難点だ。こうして意識だけ飛ばすのも疲れる。“痛がる演技”もいい加減飽きた。

 

 ミカエルたち天使がもう少し優秀だったら君達やゲーティアを異世界から呼ぶ必要もなかったというのに。

 

「……滑稽な話だ」

 

 全くだ。私やベリアル以降の天使にはどうも役立たずが多くていけない。わざわざこんな手の込んだことをしなくては、神の一柱も復活できないのだから。

 

 此方の君を妖精どもに奪われたこともそうだ。アーサーだけではない。モーセやシャルルマーニュを『システム』にくべられていたならば、もっと早くに準備は整ったのだが。リチャードやジャンヌは優秀と呼ぶには一歩足りなかった。結局、手に入った上等な死体はソロモンだけだった。ヨシュアやゲオルギウスは合格ラインだったが、手違いで『システム』にくべられることはなかった。

 

 ……救世主とまで呼ばれた『あの子』があんな結末になってしまったのが最大の失敗か。どうして優秀な子に限って反抗的なのやら。私の目的に気づいたのならば私に協力すべきだとどうして理解してくれない。

 

「……貴様がその理由に気づかない限り、永遠に解決はしないだろうな」

 

 何が言いたいかは分からないが、そろそろ始まるぞ。盛大な花火が。

 

「花火?」

 

 私が三千年前から待ち侘びた、特大の花火だよ。新たな神の誕生を祝うには、ちょうどいい。

 

 

 

 

 

 

 とある廃屋の中、その少年は目を覚ます。

 

「…………ここはどこだ」

 

 暴走という名の呪縛から解放されたばかりのヴァーリ・ルシファーである。

 

「よう、ヴァーリ。俺っちが分かるか?」

「おはようにゃん、リーダー」

 

 ぼやける視界に入ったのは、猿と猫の妖怪。

 

「美猴に黒歌……? 俺は確か……」

 

 記憶を手繰り寄せようとして、ヴァーリを強い頭痛と寒気が襲う。

 

 彼の一番新しい記憶は神造兵器の本気だった。圧倒的だった。自在に変化する身体に、驚異的な機動力。砂を千差万別の武具へと変えてきたが、その武具ひとつひとつが伝説級の魔剣や聖槍に匹敵した。そんな武具をまるで絨毯爆撃のように雨あられと惜しみなく撃ち込むのだから堪ったものではなかった。

 

 魔王の血筋であり歴代最強の白龍皇と言われるヴァーリと孫悟空の末裔である美猴をして、手も足も出ないほどの暴力の権化。逆鱗に触れられた龍とはまさにあの様を指すのだろう。

 

「俺は、どうなっていたんだ?」

「その様子だと記憶はないみたいだな。俺っちも詳しいことは知らないけど、何でもオーフィスの蛇を突っ込まれたらしいぜい? それも旧魔王派や英雄派に渡されたのとは比較にならないほどでっかいのを。で、今の今まで暴走してた」

 

 それを聞いて、何故かヴァーリの脳裏に胡散臭い男の軽薄な笑みが浮かんだ。魔術師然とした恰好をした花だらけの男だ。記憶にない顔のはずだが、何故そのような顔が見えたのかは分からない。

 

「……アルビオン」

『意識が戻って何よりだ、ヴァーリ。目覚めたばかりで悪いが大事な話がある。歴代白龍皇の残留思念は消滅した』

「消滅?」

『先程、今代のドライグを鎮めるために使われた妙な力に巻き込まれてな。どうやらあの小娘の能力は封印や沈静の類のものらしい。そして、おまえを鎮めるためには歴代の残留思念が邪魔だったというわけだ。さながら病原菌の如く消し飛ばされた』

 

 神器を探ってみれば、歴代の気配がなくなっている。消滅したというのは本当らしい。

 

『次に、おまえが飲まされたオーフィスの蛇の力だが――そのまま残っている』

「は?」

『自分の身体がどうなっているかよく調べてみろ』

 

 言われてみれば、自分の肉体が自分でないような感覚がある。しかし違和感があるわけでもない。与えられた力が馴染んでいるといった感じだ。

 

「あれからどのくらい時間が過ぎた?」

「あー、三か月くらいだな。俺っち達もソロモンやら狐の姐さんやらトライヘキサやらにこき使われててよ。目を盗んでようやく逃げ出せたんだぜい」

「トライヘキサ?」

「そのあたりは追々話すにゃん。いやー、これで私達も自由の身だにゃー。……冥界が焼かれる前に、白音を迎えに行かないと」

「????」

 

 状況が理解できないヴァーリ。彼がいくら天才と言っても、二人の僅かな言動だけで世界の現状を理解できるはずもない。強者との戦いなどという小さなスケールで物事は動いていない。

 

「それで、リーダーはどうするんだよ。先に言っておくけど、禍の団はもう原型留めてないぜ」

「ついでに言うと旧魔王派は全滅して、オーフィスと英雄派は魔神柱に鞍替えしたにゃ。アーサーやルフェイも獅子王ってやつのところに行っちゃったみたいだし」

 

 二人の様子から察するに、首魁である龍神や二大派閥の旧魔王派と英雄派がその有り様では、他の派閥もまともに機能していないだろう。元々強者との闘いが目的で入ったため、それほど愛着はない。

 

「……そうだな」

 

 思い返すのは、泥人形の猛攻。通常であればトラウマ級の恐怖を刻み込まれ、二度と彼に会いたくないと考えるだろう。だが、この戦闘狂は違った。天賦の才能を以って生まれた歴代最強の矜持が、あれほどの敗北を許さなかった。

 

「やはりキングゥに再戦を申し込もう。やられっぱなしは趣味じゃない」

「――まるで成長しておらぬ。敗北から何を学んだ?」

 

 床に剣が突き立てられるような音がしたかと思えば、突然、その場に『死』が現れた。

 

 それは骸骨の面をつけた大男。巨大な剣を携え漆黒の衣装を着た姿はまさに死神。武を限界まで極めたであろう圧倒的強者の風格。一瞬でも油断すれば首を取られる。

 

 美猴と黒歌は狐の小間使いをしていた時期にこの死神と対面していた。同時に、初対面のヴァーリよりも彼我の実力差を痛感していた。何より二人は目撃している。この死神が、最強の魔獣を真理から解放する瞬間を。この剣士がどれだけ規格外かを思い知っている。

 

「げえ! この爺さんはやべえぞヴァーリ!」

「な、何でアンタが此処に……!」

 

 二匹の恐怖も驚愕も無視して、死の使いは言霊を紡ぐ。それは死刑宣告に等しい。

 

「白龍皇よ。貰い物の翼で何処を目指した?」

 

 悪魔の羽? 忌み嫌う祖父や父の遺伝だろう。白い龍の翼? 運よく手に入れた偶然の力だろう。龍神の力? おまえの愚かさの証明だろう。

 

 そんなもので何処に行けるというのだ。

 

「野花すら咲かぬ地獄の底か?」

 

 最強の座? 強者との闘い? 宿敵との決着? 真なる白龍神皇?

 

 おまえが欲しかったものは、そんなものではないだろうに。おまえが求めていたものは、もっと有り触れたものだったはずだ。

 

「馬鹿者め。首を出せ」

 

 

 

 

 

 

 獅子王の号令により、円卓の騎士たちは撤退していく。人間界からも、冥界からも。

 

 冥界の戦場の一つで、ひとりの戦士の命が消えようとしていた。

 

 魔帝剣のジークフリート。シグルド機関の最高傑作。聖王剣のアーサーとの戦いに彼は敗れた。四肢は切り裂かれ、右目は潰れ、頭部は砕かれ、腹部は開かれていた。今からではヴァレリーは間に合わない。治療班も間に合ったとしても、安楽死させる道を選ぶだろう。

 

 彼が所持していた魔剣も、魔帝剣グラムを含めて破壊されていた。無論、相手側であったアーサーもかなりの重症ではあったが。

 

「ジークフリートよ。死の担い手であろうと、自らが死を迎えるとは滑稽な」

 

 それを看取るのは、人型になった魔神フェニクス。クラン・カラティンから分離した彼は救援としてこの場に来たが、手遅れだった。生と死を司るといっても、聖獣のフェニックスのように回復の涙を流せるわけでもなし、不老不死を与える血を宿しているわけでもない。

 

 最初から冥界にも戦力を回していれば話は違ったのだろうが、円卓の騎士の介入は予想外だった。出現するとしても会談の方であると予想されていたのだから当然だ。

 

「悲哀/疑問/彼は悪か。否、否、否、彼こそが自然」

 

 生きるが故に死ぬ。彼の生涯は此処で終わる。だが、そこには未練や後悔といった感情がない。

 

「なればこそ近似必然/ジークフリート≒フェニクス」

 

 いつまでも戦い続けたい邪龍や晴らすべき無念があった八重垣正臣とは違う。ジークフリートはヴァレリーの聖杯にも応じないだろう。宿敵とも言うべき最強の剣士との闘いで、この戦士は燃え尽きたのだ。

 

「我/生の中に死にたくないと願いしもの。彼/生ではなく死のために生み出されたもの」

 

 元々彼は短命だ。ならばその限りある命を意味のある使い方で終わらせたかった。何の意味もない生涯など御免だ。だからこそ自分は教会を抜けて曹操の理想に手を貸した。今の時代、戦うことしかできない自分が名前を残すのは不可能だ。英雄になって、何かを残したかった。それが、敗北という形であっても。

 

「強制/我らはあるだけで/矛盾内包。絶対的未成就願望を持ち続けよと!」

「……前々から思っていたけど、貴方の詩はセンスが絶望的だな」

 

 そう言う彼の顔は満ち足りていた。生涯最後の戦いとしては、最高の一戦だった。

 

「フリードやリント。弟や妹に遺言はあるか?」

「弟妹? あれが? 馬鹿を言ってくれるなよ。人知を超えた魔神らしくないな。あいつらは失敗作だ。僕みたいな最高傑作の足元にも及ばない。失敗作に伝えるべきものなんてないさ」

 

 あの二人は自分とは違うと強調するジークフリート。

 

「成功作の僕がこうなんだ。失敗作のあいつらには戦士としては何の期待もできないな。だったら、あいつらは人間でいいだろう。これから普通に生きて、普通に死ぬべきだ」

 

 だから僕はここで終わっていいと嘯くジークフリートに、フェニクスは心底妬ましそうに唸る。

 

「限りある命。なんと羨ましい」

 

 フェニクスの言う通りかもしれない。どの道名前さえ残せないというのなら、本当に何も残したくない。残される者に背負わせるものなどない。

 

「あてつけがましい生者だ。あてつけがましい死に方だ」

 

 本当に羨ましい、と魔神は再度唸る。

 

「だから、我は汝を簡単に死なせるつもりはない」

「へえ、こんな死に損ないを具体的にどうするつもりだ? 聖杯での復活はお断りだけど」

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 フェニクスの背後から現れたのは、美しい戦乙女だった。麗しい銀髪。現在オーディンの御付をしているロスヴァイセである。

 

「一度会っている、んですよね? フェニクスさん。私の記憶にはありませんけど」

「その件に関しては謝罪しよう、戦乙女ロスヴァイセ。そして感謝しよう。あれがなければ今頃我らは消えていた。完全消滅は我の望むところではあるが、定義の間違った神に利用された終焉など拒絶する」

 

 状況が飲み込めないジークフリート。

 

「ど、どういう」

「キングゥは異世界のことを会談にて公開した。そして、その話から北欧の大神オーディンはニヴルヘイムのヘルが我らと通じていることを突き止めた。我らの計画に協力する代わりに、勇者の魂を差し出せと交渉してきたわけだ」

 

 魔神柱と地獄の長たちの関係を見抜くまでならともかく、この短時間でそこまで交渉を進めるのは如何に知恵の神であるオーディンでも不可能だろう。つまり、元々その為の準備はしていたということか。

 

「一応は元教会の戦士である君が死ねば、その魂は十字教の地獄――冥界に落ちるだろう。だが、ここはもうすぐ焼却される。それでは文字通り犬死にだ。有効利用させてもらう」

 

 何も残せないのと何も残らないのとでは意味が違う。

 

「よってヴァルハラに召されるがいい。かの地に召されることが、汝が英雄であったことの証明だ。英雄を目指していたのだろう? 不満など許さん」

「……はは、最期まで利用されるってわけだ。まあ、そういうことだと認識しておくさ」

 

 踵を返すフェニクスは去り際にロスヴァイセに一言。

 

「我らの共犯者をよろしく頼む」

「ええ。戦って死んだ勇者を無碍にはしませんよ」

 

 ロスヴァイセの発言は正しく北欧の価値観だ。何せ北欧神話においては『戦って死ぬことが最高の名誉であり、戦死以外は悪』なのだから。

 

「では、勇者様。どうか我らのヴァルハラに――」

 

 オーディンの下に迎えられる英雄の完成。これを以って、シグルド機関の研究は完全に終結した。

 

 

 

 

 

 

「――以上でフラウロスからの報告を終了する」

「ゲーティアより確認。これにて『期待』の獣は打倒された。この世界の人間の価値は証明された。復活の可能性がある魔術王に妨害される前に、獅子王にこれ以上余計な動きをされる前に、魔王どもが対策を重ねる前に、計画を次の段階に移行する」

「ゼパルより報告。兵藤一誠は時間神殿に来ず、リアス・グレモリーの下に向かった」

「何がどうなったらそうなるんだ!」

「やはり交渉下手か貴様は!」

「今度はどんな失言を漏らした!」

「このゼパんなんとか!」

「おまえはもう黙っていろ!」

「おまえ達こそ私の待遇を改善したらどうなんだ!?」

「黙れと言っただろう、ぺっ!」

「待遇を改善だと? 貴様のミスがなければ余計な獣を顕現させずに済んだろうが、ぺっ!」

「君だけではなく私達全員のミスだとは理解しているんだがな、ぺっ!」

「我々もタイミングを見失ってちょっと困っているんだ、ぺっ!」

「そのうち改めるから、それまで口を閉じていろ、ぺっ!」

「俺たちに口などないのだがな、ぺっ!」

「唾棄しているのも気分の問題だな、ぺっ!」

「ぺっ!!」

「改善どころか悪化しているのだが!?」

「ぺっ」

「オーフィスまで!」

「やめるのだ、オーフィス。行儀が悪い」

「問題はそこか?」

「やはりゼパルはオーフィスの情操教育に悪影響なのでは?」

「おまえ達の方が教育に悪いわ!」

「ナベリウスより報告。冥府を始めとした各神話の地獄の長への通達が完了」

「キマリスより報告。冥界および次元の狭間、時間神殿に危惧された術式または装置の類は発見されなかった」

「アスタロスより報告。我々の体内および神器の中にも発見されなかった。エネルギーが第三者に奪われる可能性は皆無である」

「フェニクスより報告。地獄の長以外の協力者への通達が完了」

「フォルネウスより報告。現状、他勢力の障害は確認されない」

「アロケルより報告。……できる限りの救済はした。これ以上の転生悪魔は諦めるしかない」

「フルフルより報告。獅子王や魔術王を始めとした他陣営の妨害対策の配備完了」

「アモンより報告。再計算の結果、十分な熱量の資源が想定される」

「ベレトより報告。宝具展開に問題はない」

「ラウムより報告。次元の狭間の部分的封鎖完了」

「アンドラスより報告。獅子王に消滅させられた希少金属以外、冥界に特別に利用すべき資源はない」

「グレモリーより報告。『槍』の封印に異常なし」

「ビフロンスより報告。光帯の回収準備、仔細なし」

「アンドロマリウスより結論。魔王との対話を反復した結果、議論の余地はない」

「バルバトスより統括。全ての条件を達成した」

「七十二柱を代表してバアルより要請。統括局よ、第三宝具の使用を」

「ゲーティアより全ての同胞に通達――」

 

 思えば、半年足らずの時間でありながら、此処に来るまであの三千年のように長かった。

 

「――これより地獄を焼く」

 

 第三宝具『誕生の時来たれり、其は全てを修めるもの』起動。




もはや正しい秩序はない。冥界を護る法則はない。何一つ、おまえ達の味方となる者はいない。
この地ではおまえ達こそが悪なのだから!
……だが、こと生存において善悪の優劣はない。
おまえ達がまだ諦めないと言うなら、我が宿敵と同じく、何もかも無に帰したこの状況で、まだ生存を望むというのなら、愚かしくも、力の限り叫ぶがいい。
惜しげもなく過ちを重ね、あらゆる負債を積み上げてなお、希望に満ちた悪魔の戦いはここからだと!







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