今回はいつもより短いし、会話がほとんどで読みづらいかもしれない。本当にすまない。
名称 ヴリトラ・アンドロマリウス
クラス アサシン(ブレイク時にバーサーカーに変化)
スキル 新生の時来たれり(自身の攻撃力アップ(3T))
黒い龍脈(敵単体のNP獲得量ダウン(1T)+自身のチャージ増加)
真・偽眼(自身に必中状態を付与(1T))
終わらないでくれ!(自身にガッツ付与(3回・永続))※ブレイク時に使用
チャージ攻撃 人理推敲式ヴリトラ(敵全体に攻撃&呪い付与(500・10T))
ある国に、とてもまずい食材「K」があります。
とある料理を勉強中のSさんはKを使って美味しい料理が作れると思っています。
しかし、SさんはKで料理を作った経験などありません。これからも作る予定はありません。それどころか、Sさんの周囲には美味しいKもなく、Kを使った料理ができる料理人もいないのです。基本的に、外国産の食材ばかり使っています。国全体を見ても、美味しいKがあるかさえ不明です。
なのに、SさんはKの畑を作ってしまいます。Sさん自身、まだ一人前の料理人にもなっていないのに。学業の片手間で美味しくなるなら、ほかの誰かが美味しくしているはずですが。
ちなみに、Kの畑作りには外国人の料理人が支援をしてくれました。どうしてでしょう? 外国からやってきたのなら、国内の料理人よりもKのまずさはよくわかっているはずです。もしかして、Sさんのお姉さんが料理人の権威であることが関係しているのでしょうか? そうだったら、どう考えても体の良い賄賂ですね。
そんな当然の摂理も分からないようなら、Sさんは人の心が分かっていません。そういう輩の最期は、みっともない破滅と相場が決まっています。
Sさんの夢はきっと途中で破綻して崩壊して消失するでしょう。
でも大丈夫!
きっとSさんではない誰かが、Sさんの大失敗を参考にその夢を実現してくれるでしょう! だって、本当に素晴らしい理想ならば、他の誰かにとっても素晴らしいはずです。ならば、実現しようとする誰かはSさん以外にもいるはずです。
そうやって、理想を現実に変えていく誰かにバトンは受け継がれていきます。最適な人に、最高の形で。
別に、成功するのは貴女じゃなくていいのです。
貴女であってはいけないのです。
■
「とはいえ」
謎の女医は、龍と化した魔神を睨みつける。
「最優先の患者はあの魔神ですか。まったく、また彼らを治療する日が来るとは思いませんでした」
対して、魔神は激しく動揺する。
この女は自分を終わらせるものだと理解したから。
「いやだいやだいやだ、死にたくない死にたくない死にたくない! 生きる生きる生きる生きる! 我は、終わらない。終わるわけにはいかない。我らは終わってはいけない。まだ、まだ、まだ、まだなのだ。この世界で、あの理想を続行するのだ――! 我でなければならない! 我がしなければならない! 我にしか――」
「それは違います」
女医は告げる。患者に教える。
「その言葉は本心であっても真実ではないでしょう。問診の結果、貴方は病気と判明しました」
いまの問診だったんだ、とその場にいた全員が思った。
謎の女医は懐からメスを取り出す。
「では、緊急オペを開始します。許可? そんなものは後です」
■
「緊急治療!」
『姫ってばマジ姫』
『クレイジードクター☆』
『やばい、やばい!』
「よし、マスター、マシュ。いまのうちに逃げるぞ。アンドロマリウスの犠牲を無駄にしてはいけない!」
「あの、××? あの婦長二号みたいな女医さんはどなたなの?」
「こっちで『彼』が召喚したフローレンス・ナイチンゲール先生の弟子一号だ」
「え?」
「何でよりによってナイチンゲールさんを召喚したんですか……?」
「『彼』自身、めちゃくちゃ後悔していたよ。余計な仕事増えたみたいだしな。無駄話をしている暇はない。早く。一刻も早く」
「ちょっと必死すぎではないか、葬儀屋」
「第五特異点と同じか、それ以上ですね……」
「正直言うとな、あいつは先生より怖い。先生はブレーキの壊れたダンプカーだが、あいつのブレーキは利きが悪い。ちゃんと機能する分、変にたちが悪いんだよ。というわけで逃げよう。ないと思うが、あいつとマスターに縁ができてしまう。アーシアが召喚された日には、俺は座に帰るぞ!」
「そこまで?」
「――あんな女性相手にそこまで必死に逃げようなんて、みっともない男がいたもんだな」
「……まだいたのか、自称曹操」
「誰が自称だ!」
「うっさい。他人……猿だったが、に教えてもらうまで知らなかった先祖の名を誇らしげに使うんじゃない。いいか? 英雄だろうが怪物だろうが、神様だろうがな――怖いものは怖いんだよ!」
「言っちゃったよ。こいつ、怖いって言っちゃったよ」
「黙れ、怖いものを怖いと言って何が悪い!?」
「開き直るんじゃない!」
「そうか? きっとあの女はおまえを見たらこう言うぞ? 『曹操のネームバリューでは世界中の英雄を集めるのには微妙ではないですか?』!」
「……………ぐはっ……!」
「結構なダメージ入ったぞ」
「ごふっ」
「なんか言った方も傷ついてるぞ」
「は、はぁ、あああああああ、ぁああああ、う、ああ、ああああああああ! は、はぁ、があ……! ごぼぅ、は――、は――っあ!」
「り、リーダー?」
「しっかりしろ、曹操!」
「うわあ……」
「ふー、ふー。なあ、自称英雄ども、そもそもだ。おまえたちは何故、グレートレッド召喚に京都が選ばれたか知っているか?」
「え? いや、ここが一番グレートレッド召喚に適しているからじゃあ……。そうだよな、ゲオルグ」
「ああ。正確にはいくつかの候補地の中から曹操が選んだんだが……」
「三大勢力と京都が同盟を結ぼうとしているから、それを妨害するって建前があるから?」
「いいや、それもあるだろうが、最たる理由じゃない」
「っ、や、やめろ――!」
「教えてやろう。京都が選ばれたのはな、日本が世界で一番曹操の知名度が高いからだ!」
「え?」
「は?」
「ん?」
「おまえたちにはわからないだろう。本国どころか世界中で知名度があるおまえたちにわかるはずがない。なぜなら、三国志の知名度は中国では低いんだからな! 日本では曹操の名前がそこそこ知られているぞ、ゲームのおかげでな!」
「黙れぇ!」
「おおう」
「図星なのね……」
「知りたくなかったな」
「黙れよ、自称英雄ども! 知っているんだからな、おまえたちも曹操という英雄について何も知らないって。初対面で名乗った時、『無学だと思われるのが嫌だから知っている振りをしていた』ということ、俺はちゃんと知っているんだからな!」
「嘘だあああああああああああ!」
「いや、ごめん……当たってる」
「しかも、いま京都にはアザゼルとセラフォルーがいる。どちらも日本のサブカルチャーに通じている。ならば曹操を知っている可能性が高い。だから、おまえはこの時期に京都襲撃を選んだんだ!」
「びっくりするほどくだらないね!」
「えぇ~、妾たちの京都、そんな理由で襲われたのか……」
「母上! お気を確かに!」
「大丈夫ですか、八坂殿」
「これは、申し訳ありませんな、異国の騎士殿。ちょっと衝撃が大きかったもので……」
「いえ、気持ちはわかります。仮にそんな理由で蛮族が侵攻してきたら途方に暮れてしまいます。あのアグラヴェインですら呆けてしまうこと間違いありません。それに、そのように申し訳なさそうにする必要はありません。女性を支えるのは男として当然です。むしろ誇り――」
「ランスロット卿」
「その、マシュ? さすがにこれは仕方がないと思う」
「リーダーに代わって謝罪します」
「本当に申し訳ございませんでした!」
「やめろ、頭など下げるな! 日本式の土下座なんてするんじゃない! 俺の立場がなくなるだろうが!」
「おまえの立場なんて最初からないんだよ、自称曹操!」
「敵の言い分に乗っかるのは嫌だけどよ、本当に何やってんだよ。大体、先祖の知名度って。そんなに気にすることじゃねえだろうに」
「おまえに、何が分かる……」
「あ?」
「ヘラクレスと名乗れば、世界中どこにでも通じるような大英雄の転生体であるおまえに、本場中国ですら知名度の低い武将の末裔である俺の一体何が分かると言うんだ――!」
「っ……。いや、シリアスな雰囲気に騙されそうになったけど、別に俺は悪くねえじゃねえか! 勝手にコンプレックス抱いているおまえの責任だろ!」
「リーダー、ガチ泣きしながら何言ってんのよ……」
「ああ、そうだ。おまえは自分のルーツを旗印として掲げながら、それが真実かどうかを調べなかった。一言で曹操の子孫と言っても、彼には大勢子どもがいた。三国志の曹操と自分の間にどのような血のつながりがあるのか調べなかった」
「黙れ」
「……だって、怖いもんな」
「黙れ!」
「もしも――微妙な奴の血を継いでいるとしたら、どうなるって話だ! 出世頭なら歓迎する。梟雄なら逆に燃える。だが、もしも、歴史に名前だけが残っているようなちょい役の末裔だった場合、どうなる!? 心がへし折れるぞ!」
「黙れえええええええ!」
「今後の付き合い方を本気で考えさせるね」
「本当、何が曹操だってんだ。どうせ覇王の末裔として生まれるなら、曹操より項羽がよかった!」
「××さん、項羽好きなんですか?」
「嫌いな中国人は劉邦のファンくらいだ。いや、俺はどっちも好きだが。実際な、日本でどうして劉邦や項羽より三国志が有名なのか本場の人間からしたら不思議でしかないんだよ。……実を言うとな、俺はマスターがサーヴァントを召喚する度、項羽が呼ばれるんじゃないかとドキドキしていたんだ」
「そんなに?」
「当たり前だろう! 同時に、曹操が呼ばれるんじゃないかとヒヤヒヤしていたんだが。項羽はどんな項羽でも許せる。項羽は項羽である時点でかっこいいからな。だが、曹操は俺が思い描く以上の曹操でないと絶対に嫌なんだよ」
「理不尽すぎる……」
「何の話をしているかよくわからないのに、クソ、めっちゃわかる。共感しかない」
「ああ、じゃあ、やっぱりアレって未来の……」
「なんだろうなぁ……」
「まあ、××。逃げたい気持ちもわかるけど、あっちを手伝わないと……。流石にひとりで魔神の相手は――」
「――そうか、我でなくてもいいのか……。我以外でもいいのか! はは、はははは、ギャハハハハハハハ!」
「治療完了です」
「あれ、なんか終わってる!?」
「ほら、さっさと逃げないからぁ!」
「いえ、どう考えてもこの短時間で魔神柱を単騎で撃破するほうが異常です! あの人、本当に何者なんですか!?」
「――私はアーシア・アルジェント。見ての通り、ただの女医です。さあ、時間は有限です。次の治療を開始しましょう」
真名 アーシア・アルジェント
クラス キャスター
ステータス 筋力:D+ 耐久:A 敏捷:B 魔力:A 幸運:B+ 宝具:C+
スキル 道具作成:D 陣地作成:B 医術:A+ 生体理解:A 星の開拓者:EX
宝具 聖母の微笑 穢れ無き極光の園
備考 悲劇の聖女アーシア・アルジェントが、サーヴァント・バーサーカー、フローレンス・ナイチンゲールの影響を受けたことにより誕生した究極女医。
彼女の持つ「生体理解」は、人間はもちろんのこと魔神や邪龍、黙示録の獣さえ治療した経歴を持つが故のスキル。なお、サーヴァントはこのスキルの適用外である。