目の前で彼女が撃たれ、その命を散らせる。
彼女は融和と平等、そして慈愛に満ちた世界を望み、自らそれを実現しようとした。
だが彼女の想いを世界は認めてくれなかった。
果たしてそれは偶然、それとも必然だったのだろうか?
彼女は虐殺皇女として、その名を歴史に刻まれてしまう。
彼女の想いは穢され、踏みにじられた。
だから赦さない、と復讐を誓う。
その為ならどんな犠牲も厭わないと。
手にした剣が、彼の胸を貫く。
それは復讐が完遂された瞬間だったのだろう。
だけど、心はまるで晴れなかった。
むしろより暗くて厚い雲に覆われてしまった。
自分はどこかで、その瞬間を拒んでいたのかも知れない。
間違っていると気付いて居たのかも知れない。
だけど止められなかった。
止まることは赦されなかった。
沸き上がる歓声。
異様な熱気がその場を支配し、人々は狂喜する。
それが酷く悲しかった。
もちろん自分がそんな感情を抱ける立場でない事は理解していた。
それでも今この瞬間だけは……。
溢れる涙を、自分の弱さを、明かせぬ想いを、黒き仮面が隠す。
夢を見た。
本当に夢?
いや、違う。現実に体験した記憶。
過去の回想。
最高で、最悪の友達との大切な思い出。
本気で殺し合った。
自分にとって彼は悪で、敵で、決して相容れぬ存在だと。
しかし、想い描いた理想は同じだったと気付く。
優しい世界。
ただそこに辿り着く道が、手段が違うだけ。
互いに正体を隠し、相手を欺き続けた擦れ違いの日々。
今にして思えば、自分がやろうとした事は綺麗事だった。
誰も殺したくない、殺させたくないと力を望み、やがてその力に押し潰され、そこでようやく自分の考えが間違っていた事に気付かされる。
その結果、理想の為だと自分に言い訳をしながら、状況に流され多くの命を奪ってきた。
一方、彼は端から見れば何ら暴力と変わらない手段によって世界を変えようとした。
人を騙し、己を騙し、ただ前へと進む。立ち塞がる全てに抗いながら。
そんな彼のやり方を、自分は結果が全てなのかと罵った。
だが結果に固執していたのは自分の方ではないのか?
間違った方法で手に入れた結果に価値はないと彼に言った。でもそれは逆説的に、正しい方法で得た結果こそが重要なのだと認めている事と同じだ。
矛盾。
そもそも自分は彼のように、全ての業を背負うことも厭わない覚悟を持っていたのだろか?
罰と死を渇望し、その過程に齎される自己満足ではなかったと言い切れるのか?
その問いに今の自分が明確な答えを出せる自信はない。
彼の手段が全て正しいとは今でも思えない。だけど、全てが間違っていたとも思えない。
だったら自分の取った行動は……?
彼の覚悟は最後の瞬間まで変わることなく、家族を、祖国を、世界を、人類その物を相手に抗い続けた。
だから、僕は彼を殺す。
世界の願いを叶える為に……。
それがかつての自分の願いであり、彼自身の願いでもあったから。
でも、そこまで彼を追い詰めてしまったのは自分なのかも知れない。
もっと早くに互いを解り合えたなら、結末は変わっていたんじゃないのか?
いや、例えそうだったとしても、今となってはもう遅い。
全ては過去。
そして、過去を変える事なんて誰にも出来はしない。
今の自分に出来るのは、後悔と懺悔だけ。
ごめん……ルルーシュ。ごめん……。