コードギアス オルタネイティヴ   作:電源式

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第22幕 【国家解体宣言】

 

 

 

「この世界に住まう全ての者に告げる!」

 

 一度目の声明は黒の騎士団からの離叛と黒の騎士団に対する糾弾、それに伴う拠点=蓬萊島への攻撃を以て漆黒の騎士を鮮烈にデビューさせた。

 以降漆黒の騎士は世界のあらゆる強者、不当な力を行使した者に対して容赦ない断罪を下していく。

 

 二度目の声明は漆黒の騎士率いるゼロに対する、黒の騎士団率いるゼロの宣戦布告だった。偽物と、人殺しと批難し、対決姿勢を露わにする。

 二人の救世の英雄による新たな騒乱の幕開けを誰もが連想し、現に世界は混迷の色を強くした。

 

 そして三度目の声明。

 彼の語る言葉再び世界を揺るがすであろう事は容易に推測できた。

 ならばその内容は何なのか?

 世界は固唾を呑んでその言葉に耳を傾ける。

 

「合衆国中華首脳部は合衆国日本を拠点とする皇コンツェルンと結託し、自らも賛成票を投じた超合集国最高評議会の決議によって、保有・製造・研究を禁止されたフレイヤ弾頭の開発に着手していた!

 故に愚かで罪深き合衆国中華首脳部に、たった今天誅を下した!!」

 

 放たれたのは戦略型荷電粒子放射兵器=レメゲトン。

 フレイヤの生みの親であるニーナ・アインシュタインが、その基本理論を発見し構築させるよりも以前。ダモクレス初期計画において、フレイヤ射出機構に代わり搭載を想定されていたのは重力兵器や質量兵器、高出力ビーム兵器といった超兵器であった。

 しかし実際問題として、その開発は遅々として進まず、最も完成に近かったビーム兵器ですら出力が不安定であり、放射熱によって自壊する恐れすらあった。

 その為、少なからず焦りを抱いたシュナイゼルは、ニーナ・アインシュタインと彼女が製造した次世代爆弾の存在を知り、自身が直轄する研究機関インヴォーグに彼女を招き、その研究に惜しみない援助を施すことになる。

 

 それから4年、未完成だったビーム兵器は、花形に展開された特殊ブレイズ・ルミナスに集光及び放熱機能を持たせることにより欠点を克服。ダモクレス級浮遊要塞ソロモンに搭載され、悪魔を使役する魔導書の名に相応しい威力をまざまざと見せ付けた。

 

「今回の私の断罪を行き過ぎた行為だと非難する者も少なからず居るだろう。合衆国中華が現状の世界情勢にどれ程の影響力を持ち、その消失がどれ程の悪影響を与えるのか、それは私も十分に理解している。

 だが残念ながらこの世界が抱える問題は、我々の想像を遙かに超えて深刻だ。今この世界は再び一部の権力者=強者の欲と悪意に満たされ、覇と武を競い、悲劇に溢れた前時代へ逆戻りしようとしている!」

 

 明確な自信と共に語られるゼロの言葉。

 だがその言葉を素直に受け容れることは出来ない。

 それどころか自らの耳を疑ったはずだ。

 合衆国中華と世界的企業団皇コンツェルンの裏切り?

 フレイヤの開発?

 前時代への逆行?

 

 合衆国中華の国家元首=蒋麗華と、皇コンツェルンの代表=皇神楽耶が親しい間柄であることは周知の事実である。合衆国中華の再建に関しても皇コンツェルンが協力したことも事実。

 しかしそれがフレイヤ開発に直結する考えには至らない。

 何ら証拠が示されなければ支離滅裂の妄言でしかなく、例え救世の英雄だとしても、誰もその言葉を信用しない。

 それどころか今の彼は、罪のない人質が捕らわれていた朱禁城を、大量破壊兵器によって問答無用で消し飛ばした虐殺者である。

 だからこそゼロは言葉を続けた。

 

「ここで一つ、超合集国が隠蔽した事実を教えよう。

 朱禁城を占領した流浪の獅子。如何に彼等がその制圧に成功し、何故破滅しか残されていない籠城策を選び、それでもなお強硬な態度を取るをことが出来たのか?」

 

 流浪の獅子を名乗るテロリストによる今回の朱禁城占拠事件。その鮮やかすぎる制圧には疑問の声も多く、何か裏があるのではと囁かれていた。

 伝えられている流浪の獅子の戦力は旧世代KMFと通常火器。首都防衛の為に派遣されている黒の騎士団の部隊が最新鋭の装備を保持している事を考えれば、戦力差は火を見るよりも明らかであり、容易く撃退できたはず。しかし周辺住民の話によれば戦闘の痕跡は皆無に近かったと言われている。

 戦闘に発展する間もなく朱禁城が制圧され、国家元首である蒋麗華を始めとする文官を人質に取られた可能性もあるだろう。

 だがもし人質以外に攻撃を躊躇うだけの理由があったとしたら……。

 

「彼等を率いていた劉緋燕は頭の切れる優秀な男だと聞いている。中華連邦平定戦を生き逃れ、牙を研ぎ続けていた男が果たして何の確証もなく事を起こすだろうか?」

 

 彼を知る者は首を横に振ったことだろう。

 あの狡猾で野心溢れる男が自滅を選ぶはずがないと。

 

「答えは簡単だ。彼等がフレイヤ弾頭を保持し、洛陽に住む全住人を人質としていたからに他ならない!」

 

 ゼロは超合集国の指示により隠蔽されていたフレイヤの存在を世界に明かす。

 最悪の大量破壊兵器と畏れられたフレイヤ弾頭を、国家転覆を狙うテロリストが保持していた事実を。

 

「だが一介のテロリストでしかない流浪の獅子が、どうやってフレイヤを手に入れたというのか?」

 

 フレイヤの研究開発には国家プロジェクト並みの莫大な資金と、最新鋭の高性能設備を必要とする。フレイヤを製造した研究機関インヴォーグも、超大国ブリタニアの皇子であり宰相を務めるシュナイゼルという出資者の存在があったからこそ、実用化させることに成功したと言っても過言ではない。

 逃亡と潜伏を繰り返していた流浪の獅子が、その資金と設備を用意できたとは到底考えられない。

 ならば彼等は世界が保有・製造・研究を禁止したフレイヤ弾頭を、一体どこから手に入れたというのか?

 その答えこそ、ゼロが最初の言葉に帰結している。

 

「そして何故、超合集国は情報統制を行い、フレイヤの存在を隠蔽したのか?」

 

 もちろんパニックの発生を阻止し、更なる混乱を生み出さないためのやむを得ない処置であったのは確か。

 それでも知らず知らずの内に生命の危機に晒されていた洛陽の住人が納得するはずがない。フレイヤに対する恐怖は、やがて怒りに塗り替えられる。

 思考誘導の結果、この時点で少なくとも洛陽に住まう者の心の片隅には、フレイヤ弾頭の存在を隠蔽した国家政府ではなく、その脅威を取り除いてくれた英雄の言葉を信じようとする思いが生まれていた。後は証拠を提示するだけ、それで民意は大きく動く。

 

「その全ては世界を支配する国家、また国家に巣くう悪が、己が立場を守るために他ならない。

 フレイヤ製造の事実。その果てにテロリストに奪われ、国家を揺るがし、民を危険に晒した事実を歪め、都合の良い事実のみを真実として公表する。

 それは自国の民、そして全世界に対する明らかな裏切り行為である! 

 この裏切りを、この暴挙を許せるだろか? 否、断じて否! 許せるはずがない、許して良いはずもない!

 我らには知る権利がある! 故に私が入手した全ての情報を証拠として、今ここに包み隠すことなく公表しよう。これが世界の真実だ!」

 

 刹那、情報ネットワークの海に放出された膨大な量の情報は、やがて世界各国のマスコミ、様々な情報媒体を通して、この世界に住まう全ての人間が目にする事になる。

 それはゼロの言う真実、秘密裏に開発されるフレイヤに関する全ての情報。

 開発を行っている施設の所在は当然として、資金の流れ、物資の流れ、人の流れといった痕跡。

 フレイヤの製造だけでなく、各種物資の運送、調達、保管に至るまで、携わった全ての人間のリストに詳細なプロフィール。そして罪状=関わりが、日時に至るまで明確に記されていた。

 そのリストには超合集国にも名を列ねる国家の要人や高官、世界的企業の代表者など、表舞台で活躍する権力者達の名前も含まれている。

 もちろんその他大勢の中には、自覚の無いまま単に仕事として関わった者も当然含まれている事だろう。

 しかし容赦なく、そして平等に彼等の名前も公開される。

 

 また流浪の獅子が起こした今回の事件に関して、彼等がどこからフレイヤ弾頭及び各種兵器を入手したのか。その入手先や入手経路も追記されていた。

 誰も逃れられない程に詳細で、疑いようのない確たる証拠を世界に突き付け、ゼロ──いやルルーシュは仮面の下で笑う。

 

「刮目せよ、この世界に害為す強者達よ!

 やがて訪れる断罪の刻に脅えるが良い!」

 

 

 

 

 

     ◇

 

 

 

 

 

 合衆国日本、静岡・山梨両県の境に聳える霊峰富士。古くより日本の象徴であったその山は、極東事変後、戦勝国である神聖ブリタニア帝国の政策によって稀少鉱物=サクラダイト採掘及び加工プラントへと姿を変える。

 そしてダモクレス戦役において、悪逆皇帝ルルーシュの策略によって人為的に噴火を誘発され、黒の騎士団へ対する攻撃に利用された。

 結果、日本人に親しまれ、また尊まれてきた霊峰は、見る影もない無残な姿を晒す事となる。

 

 ダモクレス戦役から4年が経過した現在でも、小規模な噴火活動が断続的に続き、民間人の入山は固く規制され、特に旧富士鉱山部分は完全に封鎖されていた。再び潤沢なサクラダイトを掘り出せるのは、早くても数万年先のことだろう。

 富士鉱山の管理・運営はブラックリベリオン後に桐原産業からブリタニア政府に移り、ゼロレクイエムを経て合衆国日本政府へ返還され、更にその後、皇コンツェルン子会社=皇産業に業務委託された。

 皇産業は旧桐原産業に代わり、サクラダイトの採掘や輸出に大きな影響力を持ち、富士鉱山に代わるサクラダイト産出鉱山として桜島鉱山や阿蘇鉱山、有珠鉱山などの事業拡大に力を入れている。また一方で富士鉱山の再開発を計画していたが、火山活動の継続を理由に──表向き──計画の中止が発表された。

 

 そう、既に再開発は完了している。

 だがそれは鉱山プラントとしてではない。

 固く立ち入りを禁止した封鎖領域最奥に存在する地下研究施設。最新の研究設備を持つその施設は、地熱を利用した発電システムと地下水を利用した循環システムを有し、また少数ながら残るサクラダイトの採掘施設を併設することにより、外部からのエネルギー供給に頼ることなく半永久的に稼働を続ける事が可能だった。

 施設の存在意義はフレイヤを始めとする次世代大量破壊兵器、トロモ機関やインヴォーグから流出した技術の研究・開発。平和と発展の為の次世代技術研究機関=バベルとは、180度逆の方向へ突き進んでいる。

 

 主任研究者の男は元トロモ機関の出身者であり、あの天空要塞ダモクレスの建造にも携わる。本来ならばダモクレスの完成に前後して、口封じのために殺されていたはずの人間だった。

 現にルルーシュがトロモ機関の制圧を行った際、主要施設は破壊され、研究者や技術者の多くが死亡。あるいは行方不明となっており、その後の足取りを掴めた者はいなかった。

 男も後者の内の一人だが、奇跡的に暗殺から逃れる事に成功する。しかし表だった行動を取れるはずもなく、文字通り地下に隠れるしかなかった。ただ彼自身、その境遇を不幸と思っているかと問われれば、否と答えただろう。彼もまた狂い壊れた側の人間であり、自身が求める研究を続けられれば満足だった。

 

 だが果たしてそれは本当に奇跡と呼べる偶然だったのだろうか?

 起きないからこそ奇跡である一方、起こるのではなく起こすことが可能であるのもまた事実。

 だとするなら誰が何のために?

 いや、既に問うまでもないのかも知れない。

 最も単純な答えは、今まさにこの瞬間そのものと言える。

 

 その研究施設に勤める研究者達は現在、仕事の手を止め、青い顔でモニターを食い入るように見つめていた。

 場を支配する重圧は恐怖。

 ゼロが語る言葉、示した詳細なデータは彼等に死を宣告するも同じだった。

 

「まさか……どうやって……?」

 

 何故、この場所がバレたのか?

 内部に裏切り者が居る?

 

 広がる動揺に対し、主任研究員が自らを鼓舞するように声を荒げる。

 

「そんな事はどうだっていい! メインシャフトから順次閉鎖! すぐに撤収の準備を始めろ。持ち出せない機材は破壊、データも全て消去だ!」

 

 第六感とでも言うのか、本能が叫んでいた。

 残された時間が僅かだと。

 

『は、はい!』

 

 上司の命令に従い、作業を開始する研究者達。

 ただそれは残念ながら無意味な行為だ。

 ゼロが欲しているのは研究成果でも、ましてや流出技術でもない。それこそ、そんな物は彼等より先に手にしている。それは保有するエナジーウイング搭載の新型KMFや、大量破壊兵器を搭載したダモクレス級浮遊要塞を見れば理解できるだろう。

 そう、ゼロが本当に欲している物。

 

 それは──自らの『正義』を体現する為の──生贄だった。

 

 直後、大きな揺れが施設全体を襲う。

 天井が崩れ落ちた。

 同時に施設内に広がる土砂と粉塵を伴い、黒い機械の騎士達は出現する。

 

「ひっ」

 

 研究者達の顔が恐怖に歪む。

 そして彼等が想像した最悪の結末は現実のモノとなった。

 掃射された機銃が研究者達を薙ぎ払い、放たれたロケット砲が機材の塊を粉砕する。

 本来そこは地下深くに存在する堅牢な砦として、彼等の身の安全を守ってくれるはずだった。けれど今、堅牢な砦は強固な檻と化し、彼等から逃げ場を奪う。

 だから彼等は強者の蹂躙に対して、ただ絶望の叫びを上げることしか出来なかった。

 

 

 

 

 

     ◇

 

 

 

 

 

 同時刻、合衆国日本首都東京。

 中央行政区画にも程近い高度経済区画に聳える高層ビル群。その中でも一際存在を誇示するビルがある。それこそが世界経済に広く名を知らしめ、事実上日本の経済を支配する複合企業(コングロマリット)=皇コンツェルンの本社ビルだった。

 その高層階に存在する重役専用フロアの会議室では、皇コンツェルンの中核企業──皇産業、皇商事、皇重工、皇電機、皇マテリアル、皇銀行など──の代表が一堂に会し、蓬莱島襲撃の際に負傷した会長=皇神楽耶に代わり、現状の社会情勢における今後の経営方針についての話し合いが行われていた。

 

 議題の合間に一人の男が問い掛ける。

 

「小娘の容体に変化はないか?」

 

 小娘。つまりは神楽耶のことだと、その場の全員が理解している。

 

「そのような報告は受けておりません。依然生命に別状はないかと」

 

 部屋の隅に待機する秘書の一人が淡々とした口調で応えた。

 

「ふん、あの場で死んでくれていれば良かったものを」

 

 男は忌々しげに吐き捨てる。

 

「もう、言葉が過ぎますよ」

 

 別の女が指摘するが、その声に批難の意は込められていない。

また、その言葉に数人が失笑する。

 

 中核企業の多くは、かつてキョウト六家と呼ばれていた財閥──桐原家、宗像家、公方院家、刑部家、それぞれが保有していた企業で構成されている。

 その為、進んで黒の騎士団に肩入れしていながらも、ブラックリベリオン敗戦後、一人だけ処刑を免れた神楽耶を快く思わぬ者も多い。故に彼女に対する忠誠心は欠片もなく、その実、企業の実権の大部分は既に彼等に掌握されている。

 

 ただ、朱禁城消滅の映像に継ぐゼロによる3度目の声明と同時に、彼等は軽口を噤むどころではなく、言葉そのものを失った。

 ゼロの言葉を聞き、示したデータの内容を目にして愕然とする。

 極秘裏に進められていた計画の全てが白日の下に晒され、有無を言わせぬ確たる証拠と共に突き付けられる。

そしてそこには、当然のように彼等の名も記されていた。

 

「……馬鹿な」

 

 ようやく言葉になったその一言が、今の彼等の心情の全てだった。

 予期せぬ事態に混乱した思考は上手く働かない。

 

 断罪という死から逃れたい。

 その為にはどうすればいい? 何をしたらいい? 嫌だ、死にたくない。隠蔽する事は可能か? 対策は? マニュアルはどうなっている? 協力国との密約は? 取締役会を緊急招集する方が先か? 施設の破棄は始まっているのか? いや、そんな事はもうどうだって良い。会社のことなど知ったことか。逃げよう。どこへ? 分からない。だが逃げなければ。ゼロから、民衆から、世界から、死から。

 

 彼等は一斉に椅子から立ち上がる。

 もはや彼等に余裕はなく、冷静な判断は下せない。

 思考を支配するのは保身のことのみ。

 だがそもそも彼等に残された猶予はない。

 既に断罪は始まっている。

 

 半瞬、電動ブラインドが勝手に動き出した。微かな稼働音と共に、ゆっくりとブラインドが開いていく。

 隙間から射し込んだ日差しが室内を照らしていく。

 自然と視線がそちらに向かい、彼等は息を呑んだ。

 ブラインドによって隠されていた窓の外、そこに存在していたのは4機の黒き重武装型KMF。4機それぞれが手にした武骨で巨大なライフルが、既に銃口内に光を灯した状態で自分達に向けられている。

 携行型シュタルクハドロン重砲ヴァジュラ。かつてのナイトオブシックス=アーニャ・アールストレイム専用機であるモルドレットのシュタルクハドロンを基に、ランスロット・アルビオンのスーパーヴァリスの技術を流用して製造された携行兵器。単発のカートリッジ方式を採用し、チャージ時間とエネルギー効率を度外視したことにより、オリジナルを凌ぐ破壊力を有し、KMFに搭載する必然性のない過剰殺傷力(オーバーキル)兵器として完成する。

 

 しかしその事実を彼等が知ることは、この先絶対にあり得ない。

 次の瞬間、彼等の視界を暗い赤色の閃光が覆い尽くすと同時、圧倒的な力の奔流はビルの上層部ごと、塵の一欠片を残すことなく消し飛ばした。

 

 

 

 

 

     ◇

 

 

 

 

 

「私は黒の騎士団CEOとして正義を掲げ、陰ながら超合集国を、延いてはそれを構成する国家を支えつつ、彼等が自らの行動を省みる時を待っていた。

 だがそれも無意味だったようだ。彼等はその間にも企業との癒着を、禁忌への渇望を強め、本来民を導いていくはずの国家を腐敗させていく。

 強欲にして暗愚。

 真実を知りながら彼等に猶予を与えてしまった。それは私が犯した過ちだ」

 

 ゼロは心苦しそうな演技で胸に手を当てながら一度俯き、改めて顔を上げて力強く告げる。

 

「だからこそ私は贖罪の為に、全ての業をこの身に背負い、責務は果たすことを約束しよう! 

 故に今ここに私は、超合集国及び現存する全ての国家の解体を提言する!」

 

 自らが提唱し、築き上げた現状の社会システムの基盤=超合集国。

 それを今度は解体するという。

 解体、つまりは破壊を意味している。

 その混乱は二人のゼロによる騒乱の比ではない。

 

 だがルルーシュはかつて、世界を統べる資格を壊す覚悟だと述べ、その言葉通りに神聖ブリタニア帝国を、世界を壊した。理想を実現する為、望んだ結果を得る為には手段を選ばない。ならば今回もその言葉に偽りはなく、修羅の道を歩み続けるだろう。

 

「国家による統治こそ、罪なき民を苦しめる諸悪の根源。

 現状の国家制度が争いの火種を灯し、悲劇を生み出していることは明白だ。腐敗が広がり形骸化した民主主義、機能不全を繰り返す国家という枠組み、平和への足枷はもはや必要ない!

 本当に必要なモノは平和を願う強い意志と崇高なる正義、そしてその結果に構築される新たな秩序に他ならない!

 国家とそれを食い物にする一部の権力者達によって奪われた主権を民の手に取り戻す!

 穢れなき者よ、今こそ選択して欲しい。古き世界と共に滅ぶのか、それとも私と共に新しい未来を歩むのか。

 異議のある者は挑んでくるがいい。だが私は如何なる力にも屈することはなく、その全てを悉く退けるだろう。

 全ては新しい世界の為、穢れのない未来の為に!」

 

 ゼロによる三度目の声明。

 それは全世界に対する国家解体戦争の宣戦布告に他ならない。

 

 

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