魔法少女リリカルなのはStrikerS-King Seong clone of another-   作:炎狼

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半年以上もほったらかしにして申し訳ありません。
これにて完結になります。


これから

 休憩中に話し合った結果、模擬戦は2on2のチーム戦ということとなった。もちろん聖の相手はなのはとフェイトチームだ。難易度的にはベリーハードだが、決まってしまったものは仕方がない。

 

 そして聖の相棒はというと……

 

「準備は良いか? ティアナ」

 

「はい」

 

 言いながら自身が展開したオレンジ色の魔法陣の上に立っているのは、クロスミラージュを構えるティアナだ。

 

 なぜ四人のフォワードメンバーの中からティアナを選抜したのかと言うと、なのはと相性がよかったからだ。なのはのポジションはセンターガード、チーム戦では所謂固定砲台としての役割を担うポジションだ。

 

 ティアナもまたそのポジションが向いているからこそ、聖は彼女を選抜したのだ。因みに言うと、聖のポジションはガードウィング、フェイトも同じだ。

 

 と言うわけでこの面子なのだが、聖はにやりと笑みを見せると、ティアナに告げた。

 

「なぁ、ティアナ。この場を借りて、前なのはにこっぴどくやられたし返しでもしてみるか?」

 

「う……。やめてください聖さん、それは私にとってある意味黒歴史ですから」

 

「ハハハ、そりゃそうだ。あん時の砲撃は流石に死ぬかと思ったなぁ」

 

 ティアナは苦笑いを浮かべ、聖はしみじみとあの時のことを思い出す。

 

 すると、そんな二人を現実に引き戻すように空間モニタが表示された。

 

『二人とも準備はええかー?』

 

 問うてきたのははやてだ。二人は彼女の問いに頷くと、はやてもそれを確認し、告げた。

 

『今回もさっき聖くんがシグナムと闘ったときと同じように、制限時間を設けるからなぁ。時間内に相手チームを戦闘不能にするか、残った人数が多いほうの勝ちになるかんじでええな』

 

「おう」

 

「はい」

 

『ほんなら、十秒後に開始やからねー』

 

 はやては言い残すと、モニタを閉じた。入れ替わるように二チームの間に制限時間を表示したモニタが現れた。

 

「さぁて、結構キツイかもしれないが、気張れよ」

 

「大丈夫です。なのはさんからのシューターは全部撃ち落して見せますから」

 

「その意気だ。お前も気ぃ抜くなよ、シュトラルス」

 

〈マスターも気を抜かぬように〉

 

 若干毒のあるセリフを吐いたシュトラルスだが、聖は嬉しげな笑みを浮かべていた。

 

 そして模擬戦開始を告げるアラームが鳴り響くと、聖が膝を曲げて一気に飛び、フェイトに接近する。フェイトもそれが予測できていたのか、バルディッシュを構えて聖の攻撃を防ぐ。

 

「やっぱりクロスレンジで来るよね」

 

「あったりまえだろ。俺の戦闘上クロスレンジが真骨頂なんだからな!」

 

「それは私も同じだよ!」

 

 こちらの攻撃をハーケン状態のバルディッシュで受け流しながら言うフェイトも聖と同じくどこか嬉しげだ。けれど、決して手を抜くようなことはせず、時折髪や頬に金色の魔力が擦過する感覚が伝わってくる。

 

 ……さすがに早いな。こりゃ崩すのは骨が折れそうだ。

 

 内心で嘆息していると、視界の端から桃色のシューターが迫っているのが見えた。なのはがこちらを狙ったものだろうが、聖はそれを一切気にせず、目の前のフェイトに斬撃を放っていく。

 

 シューターはそのまま聖の身体目掛けて接近していく。が、聖に触れるまであと数メートルといった所で、オレンジ色の燐光と共に弾けて消えた。

 

「……ナイスだティアナ」

 

 小さく呟き、チラリと眼下にいるティアナを見やると、彼女の周囲にはオレンジ色の魔力で構成されたシューターがいくつも浮遊していた。今のはティアナのクロスファイアシュートだろう。

 

 入隊した当初はまだまだ荒削りの操作だったが、なのはの厳しい訓練と、JS事件で培った経験によって、最初のころとは比べ物にならないほど上達している。

 

「やっぱりティアナはセンタガードのポジションで正解だな」

 

「そうだね。指令も完璧に出せるし、状況判断能力も四人の中ではずば抜けてる」

 

「そのうち集束砲もぶちかましそうでこえーよっと!!」

 

 言いながら斬撃を放つものの、フェイトはそれをバルディッシュで防ぎ、マントの死角からプラズマバレットを打ち出してくる。聖はそれをシュトラルスで叩き切り、難を逃れるが、フェイトから視線を離したせいで彼女の姿を見失ってしまった。

 

 視線を周囲に巡らせていると、左後部から閃光が駆け抜けていった。一瞬影がちらついたおかげなのか、それとも直感的なものなのか分からないが、身体を捻るようにしてかわすことができた。

 

 金色の影が駆け抜けていった方向を見やると、バリアジャケットを軽装甲状態にし、バルディッシュを二本に分割した形態、真・ソニックフォームのフェイトが見えた。

 

 あの一瞬で装備を転換し、更には攻撃を仕掛けるとはさすがといったところか。

 

「真・ソニックフォームまで出してくるとか……大人気なくね?」

 

「勝負に大人気ないもにもないよ!」

 

「はぁ、なのはも大概だが、お前も相当なバトルジャンキーだよなぁ」

 

「ば、バトルジャンキーじゃないってば! ただ、模擬戦といえども聖相手だと手は抜けないからだよ!」

 

 あたふたした様子を見せるフェイトに聖は思わず笑ってしまったが、確かに彼女の言うことも最もなので、聖もそれに答えるようにフォームを変化させる。

 

「シュトラルス、アングリッフフォーム」

 

 瞬間、シュトラルスが光を放ち、バリアジャケットを別のものへと書き換えていく。

 

 脚部装備は変わらずカーゴパンツ風だが、その上からは漆黒のグリーヴが装備され、上半身はマントが量子変換され、粒子が腕に移動し掌から肘にかけてまでを光が覆う。そして光が弾けた時、その下には薄手の手甲が装備された。そして上にかぶさるようにしてシュトラルスが一度分離し、彼の両腕に収まると、次の瞬間には漆黒のガントレットに変化した。

 

 ガントレットにはスバルのマッハキャリバーのようにギアが付いているわけではないが、肘の裏にはカートリッジの排出口が装備されているし、カートリッジの直下には白銀色の杭のようなものが装着されている。

 

 全体的にどこか聖王モードを髣髴とさせるフォームを確認していた聖だが、腕に装備されているシュトラルスの姿を見て思わず声を漏らしてしまった。

 

「パイルバンカー……?」

 

〈いえ、その武装の正式名称はペネトレイトファングです〉

 

 シュトラルスは言ってくるものの聖はなんともいえない表情をしていた。チラッとシャーリーを見やると、彼女の顔は何処となくにやけていたので、恐らく確信犯だろう。

 

「まぁこの際なんでもいいや。待たせたなフェイどわああああああ!!?」

 

 そう言ってフェイトを見ようとした聖の目の前を桃色の太い砲撃が駆け抜けていった。なのはのディバインバスターだ。彼女を見ると、かなりイイ笑顔を見せていた。

 

「こ、こえー……さすがに今のはびびったぜ……」

 

 冷や汗を書きながら動悸を抑えていると、ティアナから思念通話が飛んできた。

 

(大丈夫ですか!? 聖さん!)

 

(あぁ大丈夫だ。気にすんなティアナ。それよりも、お前も大丈夫か?)

 

(私は撃ち落す作業だけなので大丈夫です。でも、なんとなくなのはさんが聖さんと戦いたそうにしている感じがすごいです)

 

(デスヨネー。なんかヒシヒシとそんな視線感じるもん。でも俺は答えないね。今はチーム戦だし。と言うわけで引き続きシューターの迎撃頼む)

 

(はい)

 

 二人は通話を切ると、それぞれ自分の相手に戻っていく。聖は戦闘態勢を新たに、フェイトを見据えると、彼女もまた答えるように双剣状態のバルディッシュを構えてこちらをみやる。

 

「仕切りなおしていくぞフェイト!」

 

「うん。今度は絶対に当てて見せるよ!」

 

 言うと同時に彼女はこちらに向けて凄まじい速度で接近してくる。さすがスピードを重視したフォームだけあり、一つ一つの行動を追うのは困難だが、攻撃してくる一瞬はスピードが下がるはずだ。

 

 だからこそ、その一点に集中し攻撃を仕掛けるのが最善策といえるだろう。

 

 刹那、フェイトの姿が眼前に現れ双剣が襲い掛かってくる。それを迎撃するように、シュトラルスからカートリッジが吐き出され、パイルバンカーが引き絞られる。そして聖は身体全体を捻り、腰を落としながら双剣による攻撃を避けきると、フェイトの腹部に重い一撃を叩き込む。

 

「クルセイドヴァルムンクッ!!」

 

 技名と共に放たれた攻撃は最初に拳た直撃し、それに次いで引き絞られたペネトレイトファングが追撃を打ち込み、生成された魔力弾で対象を打ち抜くというものだ。

 

 さすがのフェイトもここまで肉薄すれば避けられないだろうと、聖は内心で笑うが、その予測は容易に覆されるものとなってしまった。

 

 フェイトは一瞬の判断で上体をブリッジをするように逸らし、そのまま地面に落下する形で攻撃を回避したのだ。

 

「チッ!」

 

 舌打ちをしつつ追撃を加えようと彼女の後を追おうとした瞬間、聖は自身の両手と両足が動かないことに気が付いた。

 

 まさかと思いながら腕を見やると、手首の辺りに金色の輪が展開し、雷光がバチバチを煌めいている。フェイトのリングバインドが発動したのだろう。

 

 そして動けないの聖の視線の先には、巨大な桃色の球体と、それに集まっていく無数の星があった。なのはお得意の集束砲だ。しかも周囲から魔力を集めているあの砲撃は、ヴィヴィオを救出する時にも使用したスターライト・ブレイカーだ。

 

 顔を引き攣らせつつティアナを見るが、彼女も見事にバインドに捕まっており身動きが取れない状態でいる。

 

「え、ちょ、マジ?」

 

 思わず上ずった声が出てしまったが、なのはがそれを聞き入れてくれるわけもなく、次の瞬間には彼女の力強い声が響いてきた。

 

「スターライト……ブレイカーーーーーーッ!!!!」

 

 声と共に放たれた超極太の桃色の砲撃は真っ直ぐこちらに迫って来る。砲撃に一切の容赦はなく、完全にこちらを昏倒させる一撃だ。いや、一撃と言っていいのだろうか? アレに呑み込まれたら数秒間は魔力の奔流にもみくちゃにされるのだ。

 

 一度アレを経験しているからなんとなく分かる。あの時は結構耐えたものだが、今回は無理だと思う。

 

 けれどそんなことを考えていたら、既に桃色の砲撃は目の前にまで迫っていた。

 

「あー、これは無理だな」

 

 呟いた瞬間、彼の身体は桃色の魔力の奔流の中に呑み込まれ、一瞬で意識を刈り取られてしまった。

 

 

 

 模擬戦結果

 

 所要時間 七分二十八秒。

 

 赤組 生存一名、行動不能一名

 青組 両者生存

 

 勝者 青組

 

 

 

 

 

 模擬戦を終えてしばらくした夕刻、聖はヘリポートでぼんやりと夕日を眺めていた。

 

〈なにか考え事ですか? マスター〉

 

「まぁ……な。ちょっとばかし、アイツ等に答えないといけないことがあるから、それで悩んでた」

 

 ふわりと浮き上がりながら問うてきたシュトラルスに返しつつ、彼は大きくため息をつく。

 

 ……やっぱりハッキリしたほうがいいよなぁ。あの時は空気で何とかなったけど、いつまでもなぁなぁで済ませるわけにも行かないし。

 

 悩んでいるのは、なのはとフェイトに自分の想いを伝えることだ。生まれてこの方、女子と付き合ったことのない男である聖は、どういうタイミングで切り出せばいいのかと悩みに悩みまくっていた。

 

 ……しかし告白と言うのはやっぱりロマンチックな方がいいのか? 夜景が綺麗なレストランとか、ホテルとか? いやいや待て待て、性格によってはそういうのが嫌いな子だっているだろうし……。

 

〈あの、マスター? さっきから完全に思念がこちらにまで伝わってくるのですが〉

 

「え、マジ?」

 

〈気付いていなかったようですね……。しかし、随分と悩まれているようですね。これが俗に言う恋煩い? でしたか。なかなか興味深いです〉

 

「若干外れているような気もするけど、まぁそんなもんかな」

 

〈なるほど。そしてマスターの想い人と言うのが、なのは様とフェイト様ですか」

 

 その言葉に聖は軽く頷く。

 

「あの二人はオレの大切な人になった。守りたいと思ったし、一緒に居たいと思った。それにヴィヴィオはオレのことを父親として接してくれている。そんな三人から離れることは出来ない。いいや、したくないんだ」

 

〈だったらその想いをそのまま素直に伝えればいいのではないですか? 場所とか、雰囲気とかそういう考えずに、自分の気持ちに素直になって、思いを伝えれば、きっと答えてくれるはずですよ〉

 

 シュトラルスの言葉は安定したトーンだったが、その中には優しさが含まれているようだった。どこかクラウンと似た言葉を吐くシュトラルスに聖は苦笑した。

 

「そうだな。お前の言うとおりかもしれない。いつまでもウジウジしてたら愛想尽かされちまいそうだしな」

 

〈優柔不断な男は嫌われるといいますしね〉

 

「……お前、そういうの何処で覚えてくんのよ」

 

 妙に年増感溢れるシュトラルスに呆れながらも、聖は覚悟を決めて隊舎の中へ戻っていった。

 

 

 

 

 

 いつもどおり三人と夕食を済ませた聖は、私室にあるソファになのは達と向かい合うように座っていた。

 

「話したいことってなに? 聖くん」

 

 なのはが首をかしげながら問うてきた。それに続くようにフェイトの膝の上に載っているヴィヴィオと、フェイトも疑問を孕んだ視線を送ってくる。

 

 三人の様子に聖は一度大きく深呼吸をすると、口を開いた。

 

「なのは、フェイト。随分と遅い告白になっちまうけど言わせてくれ。オレは、二人のことが好きだ。だから、その、なんだ……これからはずっと……ずっと……」

 

 そこまでは言葉が出てくるものの、どうにもこうにも最後の言葉が出てこない。二人も顔を真っ赤に染めてしまっていて、こっちもこっちで恥ずかしくなってしまっている。

 

 ……えぇい! なにどもってんだオレは! 言えばいいんだよ言えば! 根性見せろ白雲聖!!

 

 心の中で己を鼓舞して、自分を奮い立たせると、聖は声を大にしていった。

 

「これからはずっと一緒にいて欲しゅい!」

 

 噛んだ。

 

 盛大に噛んでしまった。

 

 告白したことの恥ずかしさも相まって、聖は自分の顔が熱くなり、体全体が沸騰するような感覚に襲われた。

 

 やっちまった、と思いながら二人を見ると、案の定二人はどこか反応に困った様子だ。けれど嫌な表情はしていない。

 

 なんともいえない空気が流れるものの、なのはとフェイトは互いに頷き合うと、微笑を見せながら告げてきた。

 

「こちらこそ、これからもよろしくお願いします」

 

「えっと……それは、OKってことでいいのか?」

 

「もちろんだよ。私達も聖と一緒にいたいし、ね? なのは」

 

「うん。それに聖くんだけにヴィヴィオを任せてもいられないしね」

 

 フェイトの膝の上でキョトンとしているヴィヴィオの頬をつつきながら言うなのはは、少しだけ悪戯っぽい笑みを浮かべている。

 

 彼女の様子に聖は肩の荷が取れたのか、大きく息をつき改めて二人に視線を向けた。

 

「そんじゃ、改めまして。これからよろしくお願いします、お二人さ……」

 

「おめっとさーん!!」

 

 聖が言い終わるよりも早く何かが部屋の中に飛び込んできた。見ると、にやにやとしているはやての姿があった。彼女の後ろには、申し訳なさそうな表情を浮かべているスバルたちの姿も見える。

 

「はやて、お前いつから……!」

 

「まぁまぁまぁ、細かいことはええやないかぁ。それよかやっとプロポーズしたんやねー。このまま何事もなく終わるんやないかと思うて、ほんまひやひやしてたわー」

 

「おい。ちょっとまてお前、まさか最初っから聞き耳立ててやがったな!?」

 

 聖が声を張り上げながら言うと、はやてはなんともいえないイイ笑顔を浮かべて頷いた。

 

「ええ告白だった思うよー。真っ直ぐで回りくどく言うよりはずっとええ。まぁ最後噛んだのは残念やったけど」

 

「うっせ! つーか最近妙に視線を感じると思ったらお前かはやて!」

 

「せやー、こんな面白そうなこと放っておくわけないやんけー。スバルたちも喜んで協力してくれとったし、なぁ?」

 

 はやては視線をスバルたちに向けるものの、彼女らは苦笑いを浮かべるだけだった。

 

「嘘をつけい! 道考え立って無理やり間溢れてんだろうが! というか隊員の部屋に聞き耳を立てるなよ……」

 

「部隊長権限!」

 

「世間ではそれを職権乱用という……」

 

「まぁ細かいことはええやないの。ほんなら私はこれで帰るけど、聖くん。二人のこと泣かせたらアカンからね」

 

 最後だけは真面目な表情で言った彼女は、そのままスバルたちと去っていった。残された四人はまるで嵐が過ぎ去って行ったような感覚を味わった。

 

「アイツのあの性格はなんとかならんのか……」

 

「まぁはやてってアレが通常運転だしねぇ」

 

「子供の頃からイベント好きだったからっていうのもあるのかもね」

 

 二人はしみじみと呟いていたが、そこでフェイトの膝の上に乗っていたヴィヴィオが聖の袖を引っ張りながら問うてきた。

 

「パパとママ達これからずっといっしょ?」

 

「ああ。ずっと一緒だ。もちろんお前もな、ヴィヴィオ」

 

 視線を合わせるためにしゃがみながら言うと、ヴィヴィオも嬉しかったのか頬を緩ませた。

 

「さてっと、それじゃあこれからの予定を決めないとなぁ。まずは二人の実家にご挨拶で、いいのかな?」

 

「そうだね。じゃあ今度私達二人がオフの時に行こうか」

 

「私も母さんに連絡しておくね」

 

 二人はそれぞれの家に連絡を入れる予定を立て、聖は聖で二人の両親と家族に挨拶するときの言葉を考えることとなった。

 

 

 

 

 

 それから一週間近く後の休日に、聖はヴィヴィオを含めた四人で挨拶をしに地球へ赴いた。

 

 最初に挨拶したのはフェイトの義母であるリンディだ。彼女とはクロノつながりで何度か顔を合わせているため、緊張せずに挨拶をすることが出来た。ことのいきさつを全て話し、フェイトに抱いている気持ちを素直に話すと、彼女はすんなりとOKしてくれた。

 

 そして挨拶を聞いていたクロノの妻であるエイミィもまた祝福の言葉を述べてくれた。ただ、彼女からは「プレイボーイだねぇ、聖くん」などと少しだけからかわれてしまったが。

 

 フェイトの家での挨拶を終えた後は、なのはの家へ向かった。けれど、彼女の実家での挨拶は一筋縄では行かなかった。母親である桃子と、姉の美由希はリンディとエイミィのように祝ってくれたのだが、父親の士郎と兄の恭也は聖のことを簡単には認めてくれなかった。

 

 それはそうだ。なにせ聖はフェイトともそういった関係になろうとしている。そんな人物を素直に認めることはそう多くないだろう。というか、地球の文化ならないはずだ。

 

 だから、二人は聖に勝負を持ちかけてきた。二人は御神流という剣術の師範代で、相当の腕前らしい。恐らくなのはの芯の強さと戦闘術は彼等から学んだのではないだろうか。

 

 結果から言うと、聖は二人に勝利した。魔法を使わない戦闘は久々だったため、勘を取り戻すのに苦労したが、勝利することは出来た。しかし、思わぬ話も聞けた。

 

 なんと聖の体得している白雲流剣術を士郎が知っていたということだ。修行の一貫で他流派の剣士と手合わせした時に会ったようだ。

 

 二人に勝利したことで、聖には正式になのはと関係を持つことが許された。そして別れの際、恭也にはなのはを絶対に悲しませるなと言う使命も預けられた。

 

 両家の挨拶を終えたあと、今度は白雲の家に向かい、家庭を持つことを義父と義母に報告した。義母は素直に祝福してくれたものの、こちらもやはりと言うべきか、父親が立ちふさがった。

 

 義父は聖との一騎打ちを申し出てきたのだ。理由を聞くと、「自分を倒すことが出来ない者が家庭を持つなど、断じて許さん」とのことだった。一日前に士郎、恭也と闘った聖だが、まさか義父からこのような申し出をされるとは思わなかった。

 

 しかし、ここで退いては何の意味もない。だから彼は義父と正々堂々、正真正銘の一騎打ちをした。同じ白雲流を扱うのだから、型で見切られてしまうのはどちらも同じ、勝敗を決するのは、単純な力量差と言っていいだろう。

 

 戦いは少なくとも十分以上は続いた。義父の剣技は凄まじく、シグナムとも闘えるのではないかと錯覚させるほどだ。けれど、聖も負けることは出来ない。せっかく両家から許しを得たというのに、ここで負けては全てが無駄になる。だからこそ、彼は義父を越えた。

 

 魔法など一切使わない、彼自身が持つ戦闘能力を全開に発揮した、全力全開の攻撃を叩き込んだのだ。結果、義父の剣は折れ、戦闘続行は不可能となり、義父もまた聖を認めてくれた。

 

 こうして、三家の許しを得た三人は正式に関係をもつことになった。

 

 

 

 

 

 更に時間は流れてその数ヵ月後、機動六課はその役目を終えて解散。しかし、ただ解散で終わらないのが、機動六課だ。最後の最後でリミッターを解除したフルドライブ状態の隊長達全員と、スバル達との最終模擬戦が執り行われたのだ。

 

 聖は隊長ではあるが、流石に数が合わないので彼等の戦闘をヴィヴィオと共に見守ることにしたが、やはり双方のぶつかり合いは、見ていて楽しかった。模擬戦は約二十四分行われたが、勝敗の結果は公式の記録には記されていない。聖もその勝敗は自身の胸にしまっておくことにした。

 

 そしてフォワードメンバーはそれぞれの道を歩んでいった。スバルは正式に特別救助隊へ転属。災害救助の先鋒であるフォワードトップとして、人命を救助し続けている。その力は「人命救助の為に生まれ育った」とさえ形容されるほどの実力を示しているとまで言われているらしい。

 

 ティアナは一階級昇進扱いで、次元航行部隊に転属、フェイトの補佐官をしながら執務官への道を確実に歩んでいる。聖ともよく話をしている。

 

 エリオとキャロは自然保護部隊に希望配属し、エリオは竜騎士としてキャロは召喚師として共に密猟者の摘発、自然保護業務に当たっている。また、エリオはルーテシアとも友人関係になったらしい。

 

 ヴァイスとアルトは共に地上本部のヘリパイロットとして勤務。ヴァイスは返納していた武装局員資格を再取得して、武装局員としても勤務できるようになった。妹のラグナとの関係も回復してきている。

 

 ルキノは本局の次元航行部隊に転属、事務官補としてグリフィスの補佐を務めながら操舵手補として艦船操舵手への道を歩んでいる。

 

 グリフィスはルキノと同じ次元航行部隊に転属し、彼女の上司として艦船の事務業務にあたっているとのことだ。

 

 また、道を歩み始めたのは六課のメンバーだけでなく、ナンバーズのチンク、セイン、オットー、ノーヴェ、ディエチ、ウェンディ、ディードは隔離施設で更正に向かっているらしい。彼女らの更正を促しているのはギンガで、ギンガ自身もまんざらではない様子。噂ではナカジマ家で何人か引き取るという話も持ち上がっているらしい。

 

 ルーテシアもまた隔離施設で更正プログラムを受けていたが、魔力を大幅に封印し、管理局の保護観察の下、第三十四無人世界「マークラン」の第一区画で、意識と取り戻した、母、メガーヌ・アルピーノ、そしてガリューと静かに暮らしている。こちらも聞いた話しによると別人のように口数が増えたという。

 

 アギトはチンク達やルーテシアと隔離施設で過ごした後、八神家の一員となった。新たな「ロード」はシグナムで、役職的には彼女の副官となった。因みに保護者はシグナムではなくて、はやてである。

 

 しかし、更正仕切れていないものもおり、ナンバーズの残りである、ウーノ、ドゥーエ、トーレ、クアットロ、セッテの五人は危険性があるとして軌道上の留置場で、スカリエッティと共に監視下に置かれている。

 

 そして残った隊長達はどうなったかと言うと、はやてはその功績を評価され、数多の指揮官職の勧誘を受けたが、それらを全て辞退し、しばらくはフリーの特別捜査官に戻ることを決意し、再び海と陸を行き来して密輸品や違法魔導師関連の捜査指揮に取り組んでいる。海では捜査のトップである捜査指令を務めることが多く、自分の部隊を持つという夢に向かって邁進している。因みに、はやて曰く「またこのメンバーが必要になるなら 私が絶対集めるけどな」とのこと。どうやら部隊長はまだまだ継続中らしい。

 

 彼女の家族であるヴォルケンリッターの中では、ヴィータがなのはに教導官の道を進められ、回答を保留にしており、現在ははやての下で働いている。シグナムは正式にアギトのロードになったが、時折「保護の先輩」としてフェイトに意見を仰ぐこともあるらしい。エリオへの剣技教導と、聖との模擬戦は続けており、充実した日々を送っているらしい。聖との模擬戦は過激さを増しているようで、模擬戦用の練習場が崩壊したこともあるとかないとか。

 

 リインは新たな家族であるアギトを迎えるものの、喧嘩をしたりもあるらしいが、現在は資格取得に向けてがんばっているとのこと。シャマルはなのはと聖の主治医として、無理をしがちななのはを諌めている。聖とは聖王の力関連での身体検査が主であるのだが、二人して無理をすることに嘆いている。ザフィーラは陸士108部隊への出向が多く、ギンガからは捜査に関して師事されている。人間形態でいることも多いらしい。

 

 そして、高町なのは、フェイト・T・ハラオウン、白雲聖、ヴィヴィオの四人はというと……。

 

 なのは、フェト、聖の三人は六課が解散した半年後に正式に入籍し、結婚。若い三人の結婚は心配事も多かったが、ラブラブ状態であり、心配などいらなかった様子。ヴィヴィオは彼等に引き取られ、聖の娘として聖王教会系列の学校であるSt.ヒルデ魔法学院に入学し、勉学にいそしんでいる。悩みとしては、両親達が心配で学校に覗きに来ることがあるらしく、恥ずかしいとのこと。

 

 それぞれの役職として、なのはは機動六課解散後、昇進提案があったものの、はやて同様に辞退。戦技教導官の空戦魔導師として現場に残っている。フェイトは機動六課でも活動が高く評価され、執務官として名をはせている。

 

 聖は執務官としての活動を続け、妻であるフェイトと行動を共にしたり、単独で次元犯罪者の逮捕など海と陸を忙しなく駆け回っている。時にはなのはの教導に顔を出して、生徒達の育成を手伝ったり、なのはと模擬戦を行って参考資料を作っているらしいが、殆どは使えないものになってしまったらしい。

 

 けれど彼はどんなに忙しくとも、家族への配慮は忘れない。ちゃんと家に帰ってヴィヴィオの勉強や、魔法の手ほどきをし、時には思い切り遊ぶ日々を送っており、父として、二人の妻を持つ夫として、家族へ無償の愛情を注いでいる。

 

 そんな忙しい彼だが、辛いことなどなく現在の生活はとても充実していて、「幸せだ」と述べている。なお、彼は入り婿としてそれぞれの家族の姓を取り「高町・H・聖」と言う名に変わった。

 

 

 

 白雲聖は聖王のクローンだ。これは絶対に変わらない真実であり、だれにも帰られない現実だ。けれど彼は、今、娘を持ち、妻を持ち、多くの仲間を得て日々を幸せに過ごしている。

 

 時には危険な任務に身を投じることもあるだろう。しかし、彼はもう一人ではない。仲間がいて、頼れる人がいる。それだけで、彼の力は何倍にも膨れ上がるのだ。

 

 そして彼は今日も管理局の執務官として仕事をこなす。

 

「さてっと、今日の相手はなんだったっけか、シュトラルス」

 

〈今日は密輸品を扱い利益を得ている者達の摘発ですね。相手は多いですが、貴方にかかれば問題ないでしょう。マスター〉

 

「お褒めの言葉どうも。じゃあサクッと終わらせて帰りますかね。今日はなのはの手作りシチューの日だ。ヴィヴィオとも約束があるしな」

 

〈すっかりお父さんですね。マスター〉

 

「あったりまえだろ。そんじゃ、行くぜシュトラルス……」

 

 聖はシュトラルスを中空に放ると、叫んだ。

 

「セット・アップ!!」

 

 瞬間、彼の身体は光に包まれ、光が晴れたときにはバリアジャケットを装着した聖の姿が露になった。

 

 彼はそのまま飛翔した。何処までも続く青い空に。

 

 

 

 

 

 かつて王の器として生み出された少年がいた。けれど彼は失敗作と揶揄され、本当の王となることは出来ず、兵器として育成されていた。繰り返される非道な実験、やがて少年の心は磨耗し、彼はその世界から逃げ出した。

 

 やがて、成長した彼はその手に光を得た。守りたいと想う人ができて、救いたいと想った少女がいて、彼は過去と対立するために再び闘った。その身が壊れそうになっても、不屈の闘志を持った彼は過去との決別を果たす。

 

 そして今、彼は家族を持ち、幸せの中で暮らしている。無限大の幸せの中で。

 

 

 

 

 

 魔法少女リリカルなのはStrikerS-King Seong clone of another-

 

                 ~完~




はい、最後まで読んでいただき本当にありがとうございました。
途中何回も何回もエタったこと本当に申し訳ありませんでした。それでも私の作品を呼んでくださった方々、本当にありがとうございます。

今回でこの作品は最終回とさせていただきます。駆け足過ぎてすっ飛ばしすぎた感じはもちろんあります。この回だって最後のほうなんて説明ばっかりですからね、酷いもんです。聖の改名は悩みましたが、家族になったのだからしょうがないですね。実際はなのはとフェイトを改名すると言う手もありましたが、なのはは高町という苗字しか合いませんし、フェイトはあれ以上名前が長くなるのは可哀想だったのでやめました。

完結したというのにここでお知らせと言うか、報告と言うか、決定事項といいますか。お伝えさせていただきます。
私はこの作品を今一度書き直して、リメイクします。その名も
「魔法少女リリカルなのはStrikerS -Another Sankt king- Re:」
です。
名前変わってますが「Re:」です。これだけは変えませぬ。今一度考えてみたらこっちの方が分かりやすかったですね……書き始めた当初の私は色々おかしかった……。
リメイクはボリュームを増し増しで行きたいと想います。もっと描写を細かくして、別の話もどんどん盛り込んでいって、聖の感情の起伏ももっと分かりやすくすすめたいと想います。また、なのはとフェイトがほれる話もがっつり書きます。これとはまったく別の話しも多く出てくるかもしれませんし、リメイクにあたって話しを改変する場合もありますが、ご容赦を。
また、リメイクするにあたってこの作品は一度消させていただきたいと考えています。リメイクの方が盗作扱いにされるのが怖いので。まぁそんなことはないと思いますが。

また、Vividの方のプロットはある程度できております。あちらは新しいキャラを主人公に置いて、聖が登場人物の一人として登場するようにしたいと考えています。まぁヴィヴィオのお話しですからね。
そこで、こちらは提案ですが
案その一 この作品は残しておいて新たにvividの方を書き始め、同時進行でリメイクをすすめる。
案その二 この作品を消し、リメイクをかきあげてからvividを書き始める。または、ここに上げずに、自分で書いたものをリメイクが終わると同時に書き始める。
このどちらかにご回答くださると幸いです。また、回答はメッセージの方でお願いします。感想だと利用規約に引っかかった気がするので。

では、最後まで目を通していただきありがとうございました。
アニメvividで皆がかわいく動くところが見れて私は幸せです。欲を言うならセブンアークスさんがよかったですが、今回はまた違った感じがして私は好きです。ブルーレイを予約せねば!!

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