それでは、本編をどうぞ!
6/6〜誤字報告、ありがとうございます!
橙の羽織を追いかけるように、走り出した私たちは忽ちにその華奢な背中を見失った。神秘的な雰囲気が漂う碧い通路に立ち止まり、傍らに立つ白銀の髪にウェーブが掛かっている何処かぽわ〜んとおっとりした雰囲気を漂わせている少女・ルクスへと話しかける。
「カナタ、早い。もういっちゃったのかな?」
「そうかもね。でも…あんなに慌てた様子のカナタ様、初めて見たよね?」
ルクスも立ち止まると、私へと振り返って…微笑むとさっきまで追いかけていた少女の事を話す。
「うん。私達の前じゃあ…ヘラヘラ笑ってるもんね、カナタって」
「あははっ。だね!それがいつものカナタ様だ」
「でも…そんなカナタがあんな様子になるってことは…」
「あっち側で大変な事が起きてるんだろうね…。もしくは、カナタ様の大切な人が…」
“カナタの大切な人か…”
ルクスのその言葉によって蘇るのは…『シノノトコ…イカナクチャ…』と言っているカナタの青ざめた顔だった。私達の前では、おちゃらけていたあのカナタがあそこまで…顔を青ざめさせて、何かに取り憑かれたように…ふらふらと管理区へと歩みを進めていた。
恐らく、カナタにとって…その『シノ』という子は自分の命よりも大切な人なんだろう…。さっきの様子で、なんとなくそんな気がした。
“…なんか、悔しいなぁ…”
この世界では、私の方がその『シノ』という子よりも多く、カナタと一緒に居たのに…カナタの気持ちは一瞬も此方へ向くこともなく、ずっとその『シノ』という子へと向いている。
“そういえば、そのシノって…。あのメッセージの下に書かれていたシノンって子よね…?多分…”
キリトのメッセージの一番下に…いつも一言だけ、『シノンより』というものが添えられていた。それを読んでいる時のカナタの表情はとても穏やかでーー
“ーームゥ…カナタの事、考えてると腹が立ってきた…”
「…」
「フィリア?なんか怒ってる?」
「ーー」
「どうしたの?」
小首を傾げて、こっちを見てくるルクスを見て…ふと、思ったこの子はカナタの事をどう思っているんだろうと…
「ルクスはカナタの事、どう思ってるの?」
「へ!?わ、私!?」
慌てるルクスをまっすぐ見つめながら、私は質問を続ける。
「ルクスって、カナタの事好きなの?それとも、尊敬してるだけ?」
「ど、どうしたの?フィリア?私は…カナタ様の事を尊敬してるだけだよーー」
私から視線をそらして、頬を赤く染めながら…そう呟くルクスに安心する。しかし、続いた言葉に私はその安心をぶち壊された。
「ーーでも…どうしてかな?最近は、カナタ様の側がとても落ち着く気がする。話していると楽しく思うし…ずっと、側に居たいなぁ〜って思う。不思議だね?フィリア」
「……」
「フィリア?」
どうやら、ルクスもカナタの魅力にとらわれてしまったらしい…。
このはと鉄砲を食らったような顔をしているが、恐らく…ルクスは恋愛というものを知らないだけだろう。それを知れば…強敵になるかもしれない。
“最初の目標は、私を意識させるかなぁ…?”
そうこうしているうちに、管理区に戻ってきたらしい。転移門へと歩み寄ると…ルクスへと振り返る。
「さて、ルクス。いよいよ…アインクラッドだね」
「うん、なんか緊張するね」
「…うん…。良しっ、それじゃあ行こうか?」
「うん…行こう、フィリア」
私達は転移門へと足を踏み入れた…
こうして、ルクスさんとフィリアさんも無事、アインクラッドへと帰ってこれました(微笑)
本当に良かったですね!!