sunny place 〜彼女の隣が私の居場所〜   作:律乃

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今回は、タイトル通りの話となってます!

では、本編をどうぞ!


*簡潔に書きすぎたかもしれません…(汗)



6/16〜誤字報告、ありがとうございます!


2章025 アントクイーン&アルベリヒ戦(カナタ&シノンside)

「…」

「…ヒナタ、緊張してる?」

 

84層のボス部屋の前での最後となる作戦会議の途中、ちょんちょんと肩をつつかれ…あたしはそちらへと視線を向ける。すると、隣に立っている赤黄緑黒の複雑な服を身につけている幼馴染・シノンが心配そうにこちらを見つめている。髪と同色の焦げ茶の瞳を見つめ返しながら…あたしは、目の前にそびえ立つ重々しい扉を見つめて…小さく苦笑意を浮かべる。そんなあたしに、シノンは優しく微笑むと…そっと手を繋いでくれる。

 

「それはね…。初となるフロアボス戦だし…前衛任されたし…。あたし、攻撃力だけ強いだけなんだけどな…」

「大丈夫よ。私はヒナタなら出来るって信じてるもの」

「その言い方って…なんか、お母さんっぽいね。…そだね、任せられたことはちゃんとしないと…それに、あたしはシノのことを信じてる」

「任せて。ヒナタの背中は私が守るわ」

「あぁ、あたしもシノの背中を守るよ」

 

繋いでいた手をギュッと握りしめて、離すとボス部屋へと足を踏み入れた。その途端、中央にいたボスモンスターが侵入者に向けて、牙を向く。

 

「シャアアア!!!」

 

84層のボスモンスターは、どうやら女王蟻をイメージしているらしい。あたしの10倍近くあるピンクの胴体に、背中の方には大きな羽根が生えている。頭上に浮かぶ名前を読むとこう書かれていたーー

 

「ーーアントクイーンか。…みんなの攻撃の邪魔はさせない」

 

あたしは、右の腰から刀と小太刀を引き抜くと…最初に攻撃する。アントクイーンの正面へと走りより、その顔面に向けて…全力のソードスキルを放つ。

 

二天一流スキル【紫雲英(げんげ)】。防御力DWと出血効果有りの優れもののこのソードスキルは、よく愛用している。二つの光を放つ刀身をアントクイーンの顔面へと埋めたあたしへとアントクイーンは、怒りの声をあげて…鋭く尖った紅い瞳を向ける。あたしは、アントクイーンの攻撃を避けながら…出来る限り、タゲを自分へと向けるために…硬直から抜けると、そのピンクの巨体へとソードスキルを叩き込む。攻略組総勢の攻撃より、アントクイーンのHPが最後の段の三分の二となる。

 

“ぼちぼちかな?”

 

あたしは後ろを振り返ると、今まさに矢をつがえようとしてるシノンへと視線を向ける。バッチリあった視線で交わすのはアイコンタクトだ。

 

〔シノ、一緒にソードスキルいける?〕

〔任せて、私はいつでもOKよ〕

〔ん、じゃあ…3・2・1のタイミングで〕

〔分かったわ〕

 

頷きあい、其々の武器を掴んで…其々、3・2・1と数えると、あたしとシノの武器が淡い光を放つ…シノの無数の矢がアントクイーンの身体を直撃する寸前に、あたしの二刀が紅い筋を作り出す。

 

「はァアアアア!」

「ッ!」

 

二天一流スキル【天竺牡丹】を放った瞬間、愛刀を鞘へと納める。その瞬間、パリンと青白いものが天井へと登っていった……

 

 

 

γ

 

 

84層のボスを倒し、85層の攻略を進めていたある日、あたしはシノンと共にアークソフィアの街を歩いていた。転移門がある公園に、見知った白と赤の騎士服と黒い戦闘服を見つけて…あたしは、小走りでその2人の元へと向かう。相手の方も、あたしの足音で気付いたらしい。

 

「あっ、カナちゃんとシノのん〜」

 

白と赤の騎士服が特徴的な親友・アッスーことアスナがニコニコと微笑みながら、右手を振ってくれる。

 

「ん?キリに…アッスー、どしたの?こんなとこで…」

「今度、攻略組に参加したいってギルドが居てね。そのギルドマスターの人とこれから会うの」

「俺は、そんなアスナの付き添いだな」

 

そんな2人の横へと並びながら、あたしはアスナへとニコニコする。満面の笑みを浮かべるあたしの隣に並びながら、やれやれと肩を上下に動かすのは…シノンである。

 

「へぇー、どんな人かなぁ〜。あたしも見てみたい」

「カナタが見たいって言うなら、私もお邪魔するわ」

「ふふ、キリト君と二人が居てくれたら…とても、心強いよ」

「…どうやら、来たみたいね。あの派手な装備をした人じゃない?アスナ」

「んー、そうかも」

 

シノンが指をした方には、前髪を上へと持ち上げた金髪にまるで貴族のような騎士服を身につけている男性がいた。横一列へと並んでいるあたしたちを見た男性は、深く頭を下げながら…キリトの横に並ぶあたしを視界に収めた瞬間、背筋が凍るようなねっちこい笑みを浮かべた。

 

「お初にお目にかかります、アルベリヒと申します。おやおや…これは…ふふふ…」

「?」

 

“なんだ…この人、なんでさっき…にやりとした?あたしの方を見て…”

 

向けられたあのねっちこい笑みの不気味さに、あたしは心の底から悪寒と生理的な嫌悪が湧き上がる。おもっきり、顔をしかめるあたしに…隣にいるシノンは苦笑している。そんな中、アスナが謎の男性・アルベリヒへと話しかけている。

 

「初めまして、血盟騎士団副団長のアスナです。今日はよろしくお願いします」

「噂はかねがね聞いております。《閃光》のアスナさん、いやはやお美しい限りです。もしかして、現実ではご令嬢なのでは…と、こっちの世界ではリアルの話はタブーでしたね。ふふふ」

「はぁ…」

 

あたしの親友に対しても、あのねっちこい笑みを浮かべるこのアルベリヒという男に対してのコメントを、ボソッとシノンへと呟く。シノンは、あたしの横腹を小突くと…あたしを嗜めるような口調で囁く。

 

「…あたし、こいつ嫌いだな…」

「こら。そんなこと言わないの…っ。折角、攻略組に参加してくれるって言ってくれてるんだから。アスナが言うには、相当の実力者なんだから。ヒナタの負担もーー」

「ーーそんなん、あたしが今よりも数倍頑張ればいいだけの話でしょう?それに…こいつは、なんか信用ならない…。こんな変な奴入れても…皆の輪を乱すだけだよ…」

「…ヒナタ?」

 

冷たく吐き捨てるあたしを不思議そうな目で見ている。そんなシノンをチラッと見たあたしは、苦笑いを浮かべて肩を上下に動かすと…アルベリヒとアスナ達の会話を黙ってきく。

 

「と、そちらの方々は?」

「はい、ここにいる三人は今回はオブサーバーとして居てくれる…」

「キリトだ。主にソロで攻略してる…よろしく…」

「おぉ!《黒の剣士》様でしたかっ!そして、他の方は…」

「あぁ、あたしは…」

「存じておりますよ、《蒼目の侍》様。《黒の剣士》様と肩を並べるほどにお強いと聞いております。そして、その隣にいらっしゃるのは…《狙撃手|スナイパー|》のシノンさんですよね?」

「ーー」

「カナタだけじゃなくて、私の事も知ってるんだ」

「はい、存じておりますよ。お二人のコンビネーションは、向かう所敵なしとか…。数々の危機をお二人の力で切り抜けてきたと聞いておりますよ」

 

“…やっぱり、こいつ…”

 

何故、キリの事は知らないのに…あたしだけでなく、シノの事を知ってるんだ?キリを見る目とアッスーを見る目…、シノを見る目とあたしを見る目…どちらも似ている気がする。あたしとアッスー、この男は…何を企んでいるんだ?

 

「さて、では…今回はどうしましょうか?我々の力を見ていただけたら、攻略組の皆さんともわだかまり無く接しられると思うのですが…」

「はい、そうですね。では…御手数ですが、わたしとデュエルをーー」

「ーー待って。あたしがアスナの代わりにお相手するよ」

「カナちゃん!?」

「「カナタ!?」」

 

前に出ようとするアスナを退けて、前に出るあたしに周りの人たちが目を丸くする。意外そうな顔しているアルベリヒに、あたしは片眉を上げてきく。

 

「おやおや、《蒼目の侍》様直々ですか?」

「…不服?」

「いえいえ、私の実力で《蒼目の侍》様の相手が務まるか少々不安なんです」

「そんな謙遜はいいよ。…君の出せる全力で、あたしを打ちのめしてみな。まぁ、無理だろうけどね」

「…っ!いいでしょうっ、ぼくの実力を見せてあげますよ!」

 

“おいおい…いきなり、キャラが壊れてるんだが…”

 

わざと怒られるようなことを言ったあたしもあたしだが、怒りでさっきまで演じてた役くらいは最後までする。それを忘れるくらい怒り狂ってるってことだろうか?さっきので…?

右腰から刀を引き抜こうとしているあたしの左腕を掴んで、後ろへと引っ張ったのはどうやら、キリトらしい。耳元で囁いてくるキリトに、あたしはニンヤリと笑うと両手で刀を構える。

 

「おい、カナタ…」

「…キリ、こいつが怪しいこと見抜いてるんでしょう?」

「…あぁ」

「暫く、時間は稼ぐ。あとは頼んだ」

「勝手言うぜ、こいつ」

「あはは、それはお互い様でしょう?」

 

刀を構えるあたしを見て、そう聞くアルベリヒにあたしは右手をくいくいと手前に動かす。

 

「いいですか?」

「いつでもいいよ。どっからでもかかってきな」

「ッ!」

 

走り寄って、片手直剣をあたしへと振り下ろすアルベリヒの斬撃は確かに重い。だがーー

 

「ふん!はぁッ!!」

「!?」

 

全体重をかけて、押さえつけてくるアルベリヒの攻撃を左手を下に下げることで…回避すると、その無防備な背中に向けて刀を振り下ろす。だが、それはあと寸前で交わされてしまう。そして、また攻撃。

 

“…弱い。そんなへっぴり腰の攻撃が当たるかっての!”

 

数十分間、戦ってみたが…このアルベリヒという男は弱い。武器の使い方もなってないし…振り方もなってない。隙は沢山あるし…ソードスキルも放ってこない。

 

“そろそろ、決めるか…”

 

ワンパターンの攻撃で、振り下ろしてくるアルベリヒを避けると…その身体へと全力のソードスキルを叩き込む。よろめくアルベリヒの剣を叩き落としてから、その首元へと刀を突き立てる。

 

「ジ・エンド。君の負けってやつだ」

 

刀を鞘に納めるあたしを睨みつけて、アルベリヒは幼子のようにダダをこねる。そのダダを受け流しながら、冷たく言い放つとアルベリヒは立ち上がり、あたしを指差しながら…走り去っていった。

 

「くそっ!こんなのまぐれだ!この僕が負けるわけがない!なんか、ズルをーー」

「ズルなんてしないさ。あたしはあんたみたいな最低な奴にはなりたくないからね…」

「くっ!《蒼目の侍》!お前はのちに、僕を陥れたことを後悔することになる!それまで、精々 今の生活を満喫してろ!」

 

走り去るアルベリヒを呆れ顔で眺めながら、あたしは振り返って肩を竦める。

 

「…なんだ、あいつ…。最終的に、結果すら聞かずに…あたしを罵倒して去るとか…何をしに来たんだ」

「カナタ、大丈夫?」

「大丈夫、大丈夫。この通り…ね」

「流石だな、カナタ。それにしても…」

「変な人だったね」

 

その後、そのアルベリヒの事を注意するようにと…集まったみんなへと話した……




というわけで、アルベリヒ戦でした(汗)

私、この人が嫌いですね〜(⌒-⌒; )下手すると、あのPoHより嫌いかもです…あのねっとりした笑み…うぅっ…っ!思い出しただけでも…悪寒が…

次回は、このアルベリヒの部下さんとある人との話です。そのある人とは…一体、誰でしょうね(≧∇≦)

では、次回をお楽しみに、です!

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