sunny place 〜彼女の隣が私の居場所〜   作:律乃

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さて、今回はお待たせいました!あの人の登場です!!

ですが、今回は容姿だけで…名前は出てきませんが、この本編では初となるカナタとの絡みをお楽しみにです♪

では、本編をどうぞ!


6/16〜誤字報告、ありがとうございます!


2章027 歌姫と蒼目の侍 前編(カナタside)

80層のカーリアナの街並みを眺めながら、隣にいる金髪をポニーテールに括っている少女・リーファへとカナタは視線を向ける。さっきのさっきまで、クエストクリアのために…この80層のフィールドを駆け回っていたので、カナタは疲れを飛ばすために…「ん〜っ」と背伸びする。そんなカナタの様子を見て、クスッと笑うリーファは普段の無邪気な様子からは想像出来ないくらい大人の雰囲気が漂っていた。カナタはスゥ〜とリーファから視線を逸らすと問いかかる。

 

「…ふぅ〜。すっごい遊んだ〜」

「すっかり暗くなってしまいましたね。カナタさん、アークソフィアに戻りますか?」

 

リーファの問いかけに、首を横に振ったカナタは…リーファへと尋ねる。リーファも頷き、カナタは心配するであろう…みんなへとメッセージをしようと、ウィンドウを開く。

 

「あたしはここで休もうと思ってるよ。リーは?」

「あたしもカナタさんと一緒でここで休むことにします」

「OK。だったら、みんなにメッセージを送って…。あっ、シノにも晩御飯は要らないからってメッセージしないと…」

 

小さくそう呟くカナタに、リーファは眉を顰めるとこう思うーー

 

“ーー晩御飯?…カナタさんとシノンさんって、同居してるのかな?”

 

顎へと指を押し当てながら、「ん〜」と考えるが答えがなかなか出て来ない。確か、自分の記憶が正しければ…カナタとシノンは其々の部屋を使っていたはずだ。同居するにも…一部屋一部屋が狭かったはず…。なのに、何故…晩御飯?

 

“って…あたし、なんでこんなにもカナタさんの事を気にしてるの!?”

 

チラッと隣で、メッセージを打つのに夢中なカナタの横顔を盗み見て…ドキッと胸が高鳴るのを感じて、頬を染める。そんなリーファに、カナタは丁度 メッセージを送り終えたのか…可愛らしく小首をかしげると質問する。

 

「? リー、どしたの?」

「いえ、なんでもありません。それでは、宿屋を探しに行きましょう!」

 

パッチリと黄緑色の瞳と蒼い瞳の視線が交差する中、リーファは素早くカナタから視線を逸らすと…宿屋を探すために後ろを振り返るが、カナタの意外な言葉に向きを素早く変えるとつっこむ。

 

「ん、そういうのはリーに任せる」

「任せちゃうんですか!?」

 

つっこむリーファに、カナタはウィンクしながら…顔の前に両手を重ねる。そんなカナタに、リーファは苦笑いを浮かべると…宿屋を探しに向かう。

 

「ん、任せちゃう。あたしが探しに行っちゃったら…絶対、料金が高いものになりそうだもん。だから、リー お願いね」

「…分かりました。なら、ちょっと探しに行って来るんで…ここで待っててもらえますか?」

「えっ、あたしも行くよ〜」

「いいですよ。今日は、あたしがカナタさんに頼りっぱなしだったので…これくらい、させてください」

「じゃあ、リーのご好意に甘えるよ。ここで待ってればいいんだね?」

「はい!では、行ってきますね!」

 

リーファを見送った後、カナタは近くにあったベンチへと腰掛けると…ウィンドウを開いてアイテム欄を整理する。すると、その時に遠くから音楽のような音色が聞こえてきた…。

 

「〜♪」

 

“綺麗な歌声だな…”

 

目を閉じて、耳をすませてみると…そよ風のような優しい音色に合わせて、可愛らしい…澄んだ声が混ざっているのに気づく。現実にいた時は、あまり音楽とか聞かなかったが…この流れている曲はずっと聞いていたい気がする。カナタは閉じていた瞼を開くと、歌声がする方へと視線を向ける。そして、リーファが歩いていった方を見ると…歌声がする方へ歩いていく。

 

「リーはもう少し帰ってこないと思うし…、少し聞きにいこうかな?」

「〜♪」

「こっち…。この広場か…」

「〜♪」

 

カナタはその歌声に導かれるように、そっちの方向へと歩き出すとーーカーリアナの町の離れにある噴水に腰掛けて、手に持ったギターのようなものを鳴らしながら…目を閉じて、静かに唄ってる一人の少女の姿があった。その少女の前には、多くの人ざかりができており…一番、後ろの列にいるカナタには、歌っている少女が時折 見えるくらいであったが…少女の歌声と歌詞に自然と疲れが取れていく気がする。

 

“へぇー、上手だな。

 

閉じていた目を開けた少女の瞳は髪と同じ色の薄焦げ茶色で、夜風に揺れる腰まで伸びたさらさらの髪は電柱の光の下できらきらと輝いていた。頭の上には、ちょこんと可愛らしい羽がついた帽子が乗っかっており…手に持った楽器を鳴らすとゆさゆさとワイシャツの上にボロボロなマントが揺れた。そして、人影の隙間から見えた下の服装はどうやら短パンに…ニーソックスを履いてるらしい。

今度は、うってかわってノリノリな感じの歌を唄う少女をながめながら…カナタは少女の顔をジッと見る。

 

“…この子…誰だろ?見たことが…無いな…”

 

攻略組の人達とはそれなりに顔見知りなので分かるが…こんな少女はみたことがなかった気がする、ということはこの少女は下の階からごく最近に来て戻れなくなってしまった人なのだろうか?

 

“…でも、すごいよなぁ〜。こんな人前で、堂々と唄えるなんて…”

 

尊敬の眼差しを少女へと向けていると…観客を見渡していた少女の薄焦げ茶色の瞳と目があってしまった。その途端、少女の歌声と音色がピタリと止まる。カナタを見つめたまま、ピクリとも動かない少女に周りの観客がざわめく。

 

「ーー」

「あれ?どうしたの?」

「もう終わり?もっと聞きたかったのに〜」

 

ざわめく公園の中、少女はカナタから視線を外すと真っ赤に染まった頬を隠すように…後ろへと振り返り、そのまま走り去ってしまった。

 

「〜〜ッ!」

「へ?」

 

少女が立ち去った公園の中、あんなに多くいた観客たちは瞬く間にいなくなってしまった。そんな公園にポツンと立ち尽くすカナタは、少女が立ち去った方向へと走り出した……




ということで、歌姫との出合いを果たしたカナタですが…その歌姫には逃げれてしまいました(^_^;)その歌姫とは、誰なのか…?なんで、逃げたのか…?

理由は後編にて、明らかになります!


明日は、更新 休みます(^_^;)少し用事がありまして…、次回の更新は虹章となると思います。ではでは(微笑)

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