sunny place 〜彼女の隣が私の居場所〜   作:律乃

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長らくお待たせいたしましたm(__)m

私用も終わり、安心して…新年を迎えられそうなので、更新致します。

随分、空いてしまいましたが…これからは、キャリバー編を更新していきたいと思ってます。
此方の予定では10話くらいで、キャリバー編を終えられると思うので…それからは、今まで進めてなかった本編を進めたいと思ってます。

随分、空けてしまったので…もう一度、自分でも本編を見直してみることにします(笑)


では、長らくなってしまいましたが…本編をどうぞ!!


014 A man of high caliber

眠気を醒まそうと長い階段で余計なアクロバットを決めたあたしの体力が戻った頃合いを見て、あたしは黄緑がかかった金髪をポニーテールにしてる風妖精族(シルフ)ことリーファへと声をかける。あたしに声をかけられたリーファが首を縦に振るのを見て…あたしとリーファは同じ行動をしようとする。

 

「じゃあ、そろそろ呼ぼうか?リー」

「そうですね」

 

親指と人差し指をくっつけ、輪っかを作って、それを口元へと当てようとするあたし達へと先の方に葉っぱがついた枝を持った水妖精族(ウンディーネ)が声をかける。

声がかけられた方へと向くと、空色の髪を揺らしてスペルを唱えるアスナが居た。

そんなアスナの姿を見たあたしとリーファはアスナの意図を感じ取ると輪っかを唇に当てたまま待つ。

 

「あっ、待って。カナちゃん、リーファちゃん」

 

そして、暫くするとHPゲージの下へと小さなアイコンが点灯する。

アイコンが点滅し始めると…さっきまで寒かったのが嘘かのような感覚になる。まるで、上等なダウンジャケットを着込んだような感じを思わせるそれはーー恐らく、アスナが凍結耐性を上昇させる支援魔法(バフ)を使ってくれたからだろう。

 

「サンキューね、アッスー」

「どういたしまして」

 

柔らかく微笑むアスナへとお礼を言ったあたしはリーファへと視線を向けるとひんやりした空気を肺へと貯め、一気に外へと吐き出した。

 

ピュー、と高く口笛を吹き鳴らしたあたしとリーファの耳へと数秒後、さらさらとそよぐ風の音に混ざり、くおおぉー………んというモンスターの鳴き声が聞こえてきた。

目を凝らしてみると暗闇の中を二つの真っ白な影が浮上してくるのが見える。

近づいてくるそれを改めてみるとーー平らな魚のような、あるいはシャモジのような胴体を胴体の側面から四対八枚のヒレに似た白い翼が伸びている。体の下には植物のツタ状の触手が無数に垂れ下がり、片側三個ずつのクリっとした黒い瞳と長く伸びる鼻が付いている。

 

“うーん、改めて見ても不思議な容姿を持ったモンスターだこと”

 

某シルフが可愛いとおしゃっていたが…あたしはまだ、この象水母から羽化した奇怪かつ美しい邪神達の良さが分からない。

 

「トンキー!キーボウ!こっちだよぉーー!!」

 

だがしかし、あたしの呼びかけに「くおぉーん!」と返事し、こっちへと寄ってくるあの二匹のことを可愛いと思ってしまっている自分も確かにいるので…あたしがこの二匹のことをどう思っているのかは、また今度考えることにしよう。

 

「カナタ、早く」

「ん」

 

ボゥ〜とくだらない事を考えてしまっている間に速やかにキーボウの上へと飛び乗った仲間達に急かさせる形で飛び乗ったあたしはキーボウの頭を優しい手つきで撫でると、ぶら下がっている逆三角形ダンジョンを指差す。

 

「さて、キーボウ、あのダンジョンの入り口まであたし達を連れてってくれるかな?お願い」

「くおぉーん♪」

「ん、じゃあお願いね」

 

あたしの頼み事を聞いてくれたキーボウとリーファの頼み事を聞いてくれたトンキーが同じ動作で翼を羽ばたかせるのを見るとーーあたしはこれからの冒険に胸を高鳴られるのであった…

 

 

γ

 

 

「…はぁ…死ぬかもった…」

 

トンキーとキーボウによる急激なダイブになんとか耐えたあたしは冷や汗を拭うと…その下に広がる光景に目を疑った。

薄暗闇の中、三十人を超えるくらいの大規模なレイドパーティーが長い触手の上にお饅頭型の胴体を乗せて、その胴体へと長い鼻と大きな耳を付けたモンスターを攻撃していた。

 

“あれが…ここにくるまでに耳にした【スローター系クエスト】か?”

 

虐殺(スローター)系クエスト】

その名の通り、『○○というモンスターを○匹以上倒せ》《○○というモンスターが落とすアイテムを○個集めろ》など、こういうゲームではよくある類のクエストだ。

必然と指定された種類のモンスターを片端から狩りまくることになるこのクエストで、よく起こることといえば、POP…つまり、モンスターが再湧出する場所の取り合いというわけだ。

人いうものは、どこにいようと他者よりも優位に立ちたいと思うもの。もっというと…あたしやキリトのような《レア》などの文字に弱い根っからのゲーマーなどは、そのクエで手に入るものがレア武器などになると何が何でも手に入れようとしてしまうものーーそのような熱狂的なプレイヤー達が集まれば、モンスターが出現する場所の取り合いでギスギスしてしまうのは仕方がないことと割り切れるが…

 

“なんだよ、これ…”

 

このクエストに向かう前に聞いていたスローター系クエストの内容を予想していた上でも、あたしの視界に広がる光景は異様…不気味と言わざるおえないものであった。

 

まず、象水母型邪神モンスターを攻撃しているのが、種族混同なレイドパーティー30人の他にいること。

そいつの特徴は、大柄な土妖精族(ノーム)の身長の六、七倍させたような上背。フォルムは人間型なのだが、異様なことに腕は四本な上に顔に至っては縦に三つ並んでいる。肌の色は鋼鉄のように青白く、目は燃え上がる石灰のような赤。

身に覚えあるその姿は、出会った頃にトンキーとキーボウを殺そうとしていた人型邪神の一族だ。

鍛え上げられた各腕に握るはギザギザにカットされた剣達でーーそれを象水母型邪神の背中へと無慈悲に振り下ろされる。

悲痛な悲鳴を上げる象水母型モンスターへと眩いフラッシュ・エフェクトが立て続けに炸裂しては、プレイヤー達の刀や槍、矢などが象水母型モンスターのからだへと突き刺さり…体液を辺りへと散らす。

 

「…くっ!」

 

それ以上は見ていられず、唇をかみしめて前を向くと…そこには、恐らくあたしと同じような表現を浮かべている仲間達がいた。

 

「あれはどういうことだろう?誰かがあの人型邪神をテイムしたってこと?」

「いいえ、そんなことはありえないわ。邪神級モンスターのテイム成功率は、最大スキル値に専用装備で底上げしても0パーセントってシリカが言っていたわ。それにそんな都合よく憎悪値(ヘイト)が稼げるとも思えないだけど…」

「確かにシノンの言う通りだよね」

 

緩やかなウェーブがかかる青緑色が混ざった銀髪を風に遊ばせている風妖精族(シルフ)・ルクスの呟きを聞いた猫妖精族(ケットシー)が凛とした声で否定する。

鮮やかな水色のショートヘアから同色の三角耳を生やし、シャープなしっぽを左右へと素早く揺らしたシノンは形いい眉をひそめると、追加でさっきまで見ていた現状を冷静に分析した上でのコメントをする。それを聞いたあたしが頷くとーー同時、さっきまで見ていた方から「ひゅるるるるぅぅ……」と悲しげな断末魔が聞こえ、続けて膨大なポリゴン片を振りまき…

 

遂に、トンキーとキーボウの仲間が儚い命を散らしたのだった…

 

「…ぅっ」

 

チラッとトンキー側に乗っているリーファへと視線を向けると、細い肩を静かに震わせていた。そのリーファの頭上にいるナビゲーションピクシーのユイちゃんも深く俯いていた。

 

そんな二人から視線を逸らしたあたしへとさらなる驚愕が襲った。

 

それはというと、キーボウの仲間を狩った大規模レイドパーティーと四本腕巨人が戦闘にならないことだった。

普通は、状態がテイム、扇動、幻惑状態でないと…邪神クラスを操る、もしくは共闘することは出来ない。

なのに、その三つの状態でない四本腕巨人は「ぼるぼるるぅ!」と勝利の雄叫びを上げるとその足元で同じく小さくガッツポーズを取るレイドパーティーを引き連れて、新たなターゲットを探して向きを変え、歩き出す。

驚きのあまり、食い入るようにそのレイドパーティーを目で追うあたしの肩を誰かが叩く。そちらへと向くと、いつの間にか隣にきていたどちらかというと戦闘系鍛冶妖精族(レプラコーン)のレインがそのレイドパーティーとは違うところを指差していた。

 

「カナタ君見て、あそこ」

「…?」

 

真っ赤に燃える紅葉のような赤い髪を揺らし、革手袋が指差す方見たあたしは蒼い瞳を丸くする。

レインが指差した方には丘があり、その丘でも戦闘のエフェクト光が激しく明滅しおり、目を凝らしてみると…こちらも大勢いるプレイヤー集団と今回は人型邪神の方がニ匹になり、ワニのようなフォルムに多脚がついている邪神を共闘して狩っているではないか。

 

「意味が分からん…。こんな事ってあっていいのか?」

「カナタ、落ち着いて。今の私達じゃあ…あそこにいるキーボウの仲間達を助けられない」

「…だよね。…ん、あんがと、フィー。落ち着いたみたいだよ」

 

癖っ毛の多い桃いろの髪を掻き毟っていると、その手を何者かにつかまれる。

視線を向けると、肩まで伸びた影妖精族(スプリガン)特有の黒髪を風になびかせているフィリアが髪と同色の瞳を心配の色で満たして、あたしを見つめている。

 

掻き毟っていた手を見ると…これまたリアルに作り込まれている数本の桃色の髪の毛がある。

 

どうやら、あたしも知らぬ間に…大事な仲間と意識しているキーボウの同胞達を小癪な手により殺めていくプレイヤー達とあの四つ腕巨人邪神への怒りが積もりに募り、何も出来ない自分へと当たる事でそれを発散しようとしていたらしい。

 

未だに心配そうに見つめてくるフィリアへと淡く微笑むとあたしは今は、あのダンジョンに向かうことが先決と判断し、前を向く。

もちろん、ここで生まれた人型邪神モンスターへの積怒(せきど)をダンジョンに徘徊している人型邪神モンスターにぶつけようと思っているわけではない。断じてないっ!

 

「カナタはキーボウが好きなんだね。僕、カナタのそういうところ好きだよ」

「奇遇ね、ユウキ。私もよ」

「あはは、シノンも。カナタも素直になればいいのにね、キーボウ達を仲間って思ってて、リーファ以上にキーボウ達のことが好きって」

「えぇ、そうね。あぁ、見えて…カナタって、頑固だから。認めないでしょうね」

「もうバレバレなのにね。あんな顔してる時点で」

「ふふ、そうね」

 

後ろで、何だがキャッキャウフフしてる我が恋人殿と絶剣殿があたしにとって不本意な事を述べていらっしゃるが…この際、そんな事はどうでもいい!

 

まずは、この溜まりに溜まった怒りをーーあの人型邪神どもへとぶつけなければ…ッ!!

 

だが、あたしのその望みは暫く叶う事は無かった…。

 

なぜならば、トンキーとキーボウの背中の後ろーー誰も座ってないはずの空間に光の粒が音もなく漂い、凝縮しては…一つの人影を作り上げたからだ…




というわけで、次回はあの方々の登場です!

また、その方々との出会いの後は…あの牛達との戦闘が待っております。

そちらもお楽しみいただければと思いますm(_ _)m




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本作、【sunny place〜彼女の隣が私の居場所〜】ですが…今年の2月26日から始まり、今回の話を更新して…全部で85話となりました!

お気に入りもいつの間にか、406名となり…評価してくださった方も25名となり…
1話ごと自分の気分のままに書き殴っていた私の小説を多くの方に読んでもらっていることが嬉しくもあり…申し訳ない気持ちがしてなりません(大汗)

恐らく、他の方の小説と比べ…設定も構成もまだまだであり、ころころと話の芯がズレてしまうのが欠点なのですが…そういうところも含めて、私の小説なので…これからも自分らしく、ゆったりと更新していこうと思っております(礼)

また、こんな駄作へと暖かい感想を下さった多くの方にもう一度感謝と、お礼を申し上げます。
皆様のおかげで私も楽しく筆を取らせてもらい、元気を貰ってます!
いつも、本当にありがとうございます(礼)




そして、これから先は簡単なお知らせとなります。

来年からの更新は週ニを目標としていきます。また、新たな挑戦…といいますか、リクエストを頂いたので、この小説Rー18版も来年から更新していきたいと思っております。

百合系統のそういった話は書いたことが無いので…読者の皆様のご期待に添えるかは分かりませんが、精一杯そちらも書いていこうと思ってますので…

気になった方は、そちらもご覧頂ければ幸いと思います。




長々と書いてしまい、失礼致しました…

では、来年もこの【sunny place〜彼女の隣が私の居場所〜】をよろしくお願いしますm(_ _)m





【sunny place〜彼女の隣が私の居場所〜】作者・律乃
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