そして、お気に入りが45名になっていて、驚いてしまいました。本当に“え……うそぉ……”みたいな感じでして。
評価の方にも、8と6っていう勿体無い評価を頂いて嬉しい限りです!!
多くの方に読んで頂いている事に、深く感謝致します(礼)
私の幼馴染は強い精神力と行動力を持っている。それは普段は眠っているが、大切な人を守ろうとする時などに使われるなど、私もその精神力と行動力に助けられた人の一人である。
彼女のその強さは、彼女の生活の何処から建築されて行くのだろうか?
私には、それが分からない。だって、彼女は私に多くを語らないから……
しかし、私だって思うのだ。
私の事をもう少し、頼ってくれてもいいのに……と。
彼女に守られてばかりではなく、今度は私が彼女を救いたい。彼女の力になりたいとーーしかし、その私の願いはまだまだ叶いそうにない…
γ
私を庇って、クラスメイトたちを脅した陽菜荼はあの放課後の出来事から私と共に、クラスメイトたちに避けられている。その避けるクラスメイトの中には、陽菜荼が私以外に初めて出来た友達も含まれていて……
“私なんか構うから、陽菜荼まで…”
初めての友達グループだったその子たちは、私たちが通ると顎で私たちを指差し、一目散に私たちから逃げる。
「うん、でね」
「うんうん、それ見た!面白かったよね〜」
「私ね、あの人が犯人だと思うんだよ〜」
「えー、絶対違うよ〜、あの人は……って」
「どうしたのよ」
「ん、香水と朝田」
「あぁ〜、本当だ。道開けよ」
「うん」
それは、彼女たちだけではない。
クラスメイトたち全員が私たち通るたびに、パァ〜と散らばり、私たち通り終わると何事もなかったように話し出すのだ。
私は陽菜荼に申し訳なさと私がいる方へと巻き込んでしまった罪悪感で、陽菜荼の隣で歩く時も下ばかり見ていた。
「……香水って変わり者だよね〜」
「……そうそう、あんな人殺しの事構うなんてさ〜」
「……まぁ、実際 香水自体も何考えてる分かんない奴だしさ〜」
「……そうだな、まぁいいんじゃねぇ。人殺しと不思議ちゃん同士で仲良くやればっ」
「……そうそう」
そのヒソヒソ話の後に続くのは、小馬鹿にしたような下卑た笑い声だ。
“陽菜荼は…不思議ちゃんなんかじゃない。陽菜荼は勇気がある人なんだ…私なんかよりも。増してや、あそこでコソコソ話なんかしてる奴らよりも、ずっとずっと多くの勇気を持っていて…その勇気を周りにいる困った人へと使うことが出来る人なんだ。それがどれほど大変な事なのか、あそこにいる人たちはそのことの重要性が分かっているだろうか?いや、分かってないだろう”
そんな無知で人を陥れることしか、考えてない人達になんで陽菜荼は陰口なんかを言われているのだろうか?
理由なら、分かってる。
“全部私のせいなんだ……私のせい…”
そんな輩に、陽菜荼が陰口を囁かれているのは、全部私のせい。なので、私は下を向き、陽菜荼のカッターシャツの袖口を掴んでーー
「ーーごめんね…陽菜荼。ごめんね…私のせいで…っ」
罪悪感の強さから溢れそうになる涙を堪えつつ、そう呟く私に陽菜荼は突然立ち止まると私の方へと振り返る。
「意味が分からないな」
ポツンと呟かれた一言に、私は下を向いていた顔を上げて、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をして、陽菜荼の顔を見た。
そんな陽菜荼はというと、透き通った空のような蒼い瞳を此方へと向けて、不愉快そうに眉をひそめている。
「え?」
「だ・か・ら。詩乃がなんで、あたしに謝ってるのかが分からないって言ってるの。アンダースタン?」
「アンダースタンって……。陽菜荼こそ、分かってるの!?陽菜荼は私なんかを庇ったせいで、みんなから避けられているのよ!」
陽菜荼の小馬鹿にしたような態度に、つい血が上ってしまい、大声が出てしまう。周りにいる違うクラスの生徒や先生達が、何事かと好奇心に溢れた視線を向けてくるが私たちと分かると、何事無かったように散っていく。
「ほら、見てよ。違うクラスの子たちや先生までもが、私たちが存在してないかのように振舞っているのっ!
私はそれをどうとも思わないけど、陽菜荼は違うでしょう!?陽菜荼はあっち側の人じゃない!なのに、なんでこっち側の人のように扱われているの!?
私はそれが許せないのッ!!!
陽菜荼は優しい人なのに……私なんかを助けてくれたのに……こんな扱いなんて無いのよ…ぅっ、うぁあああああん」
「ちょっ、詩乃!?なんで、怒ってたかと思うと泣くのさ!?あたしの方が意味がわかんないよっ!」
「うぁあああああん」
「もう泣くなら、屋上行こ?あそこなら、誰も来ないしさ。あたし達が授業休んだところで、誰も咎めないだろうからさ。
ほら、泣いてないで行くよ。目を開けて、瞑ってたらさ。階段に躓くよ」
「うっ、ぅっ……うん、分かった……っ」
怒っていたかと思っていたら、突然泣き出した私に陽菜荼は困惑した様子だったが、私が泣き止まないと分かると屋上に続く階段を私の手を引いて、登り出す。
γ
「いやぁ〜、授業サボって、屋上とか割とロマンだよね〜」
屋上に配置されているベンチへと腰掛けた私へと、隣に腰掛けた陽菜荼がハンカチを差し出す。それを受け取って、涙を拭く間に陽菜荼はパタパタとはしたなく脚を動かしている。
「ロマンって」
私が問いかけると、陽菜荼は空を見上げて語り出した。
「ロマンだと思わない?
だってさ、本当はあたし達以外にも人がいるのにさ〜。こんなに静かでさ、まるでこの世界にあたしと詩乃しか居ないような感覚になんない?こう、ドキドキするっしょ!?」
「陽菜荼らしくない、その回答」
「あのぉ〜詩乃さん、本気で怒るよ」
素っ気ない私の返事に陽菜荼が睨みつけてくる。その後はどちらともなく、笑いあった。
ひとしきり、笑った私たちは深呼吸して息を整えると、陽菜荼が私の方を向いてきた。しかし、私はそんな陽菜荼の視線から逃れるように、視線を下へと向ける。
「いやぁ〜、笑った笑った。
さて、それじゃあ、詩乃が知りたがっているであろう話でもしようかね」
「……」
「何、身構えてんのっ、対した話しないしさー。詩乃があたしの話を聞きたくないのは分かるけどさ〜、でも一つだけは言いたいし、伝えたいんだーー
ーーだからさ……あたしの顔を見てよ、詩乃
詩乃に後ろ向きなんて似合わないって。いつか、あたし言わなかった?」
「いっへない」
「そう、それは残念……って、ブ〜ッ!!」
私の頬を両手で掴んで、無理矢理、前へと向けさせた陽菜荼は私の顔を見て、ブッと吹き出す。それに腹立てた私は陽菜荼の両手を剥がすと、陽菜荼を睨みつける。
「……陽菜荼は、私と居て楽しいの?無理してない?」
私が考えに考えた質問に、あっけらかんとした感じで答える陽菜荼にカーッと血が上ってしまい、ついに思ってもないことまで言ってしまう。
「楽しいよ、なして?そんな事聞くのさ、変な詩乃〜。
第一に無理なんかしたことないし、詩乃と一緒居たいっていうのが、あたしの本心だしさ」
「ッ、本当に本心なの?陽菜荼は私に同情してるだけじゃないの」
「ーー」
「何も答えないって、さっきの私の言葉に肯定ってわけね。やっぱり、そうなのね。陽菜荼は同情で私とーー痛ぁ…?え?陽菜荼…?」
左頬にヒリヒリとした痛みが広がる中、私は痛みよりも目の前にいる陽菜荼の頬を流れる透明な雫に言葉が出なくなる。右手が上がっているところを見ると、頬をビンタされたのはどうやら事実らしい。
「詩乃は今まで、あたしの事をそう思っていたんだね、びっくりだよ。全く、見くびられたものだよな。
ねぇ、詩乃…あたしも言いたいことがあるんだ、いい?」
「……何よ」
涙を乱暴に拭った陽菜荼は、私を睨みつける。その瞳には、純粋に怒りの炎だけが燃えさかっており、私は戸惑う。彼女と出会って、そんな感情を私は今まで向けられたこともなかったのだから。
「さっき言ったよね?あたしはあっち側の人間で、詩乃はこっち側の人間だって、あの意味が分からないんだけど、詳しく説明してよ」
「説明しなくても分かるじゃない、そのままの意味よ」
「だから、それがわかんないって言ってんのっ!!分からず屋だな!!詩乃が言う、そのままの意味って何さ!?あたしが詩乃を邪険に扱うあんな情念の腐り切った輩と同じとでも言いたいわけなのか!?どうなのさ、詩乃、答えてよ!!」
「……」
そこで、私は私の罪に気づいた。
“私は私の価値観を、陽菜荼に押し付けていただけなんだ…。勝手にあっち側とかこっち側とか決めつけて、陽菜荼はそうするべきって思って……でも、陽菜荼はそんな事望んでなくて……。
陽菜荼が望んでいるのは、もっと単純なものなんだ……”
ポロポロと溢れてくる涙が頬を濡らすが、頭に血が上ってしまった陽菜荼はそれくらいでは収まらない。
いつもは優しく穏やかな色を帯びている蒼い瞳が一瞬で赤く染まる。恐らくそれは、陽菜荼が私に対する怒り…私の一言で彼女はそこまで怒り、私へとそのまるで研ぎ澄まされた刃物のような視線を向けているのだ。
その鋭い視線が私の心の深いところを
“一瞬でも陽菜荼を疑った私自身を殴ってやりたい”
「何、黙ってるのさ!!あたしは聞いてんの!?あたしはあっち側の人間なの?それとも、こっち側の人間?」
「……ひくっ」
「何、泣いてんのさっ。まだ、詩乃の口から答えを聞いてない。さぁ、答えて。あたしはどっちの人間なの?」
「ぅっ……ひなっ、た……はどっちの人間でもない…わ…」
「……何?人間ですらないとでも言いたいの?詩乃」
陽菜荼の冷たい声が鼓膜を通り、私の深いところへと突き刺さる。
首を横に振る私に、陽菜荼は眉を顰めると視線だけで先を促す。
「……陽菜荼は、あっちでもこっちでもない。私の大切な親友よ」
「……そう、ならあたしがあんなに怒ったわけも分かるよね?」
「うん。さっきはごめんなさい、陽菜荼が同情なんかで人を判断してるわけないものね。私がバカだったわ、頭に血が上っていたからって、あんな事を…平気な顔をして言うなんて……」
下を向く私の頭にポンと手を乗せた陽菜荼が、よしよしと私を頭を撫でる。そして、私がチラッと陽菜荼の方を見ると、頬をかく。
「あぁ〜うん、あたしも悪かったよ。あんな感情をぶつけるような事言ってさ。
でも、それだけは言っとくよ。あたしが詩乃の傍に居るは同情なんかじゃない…、もっと単純な気持ちだよ。詩乃の傍が楽しんだもん、楽しいから傍に居たいし、助けたいって思う。誰だって楽しくて居心地いい方を選ぶものでしょう?たまたま、それが周りに受け入れなれなかっただけ、ただそれだけなのに。詩乃ってくだらない事で悩むんだね、もっとあっさりしてるかと思ったのに」
「あっさりしてなくて、悪かったわね……私だって、大切な親友が陰口を囁かれていたら、止めたいって思うものなのよ」
プク〜と頬を膨らませる私に陽菜荼は爆笑。
「ぁ〜、やっぱ、詩乃の傍が一番落ち着くし、楽しいわ〜。今日も凄く笑わせてもらったし」
「それはどうも」
陽菜荼はふいに、私へと顔を近づけてくる。突然迫ってくる整った顔立ちに、私は息を止める。そんな私に、陽菜荼はニコ〜と輝く笑顔を浮かべると
「詩乃はどうよ、あたしと居ると、安心する?」
「するっ、するから顔を離しなさいよ」
「いや、これは嘘をついてないか、調べるためだから」
「意味わかんないわよっ!!」
どうにか、陽菜荼を剥がした私に陽菜荼はニコニコと絵がを浮かべたままに右手を差し出した。
「んじゃあ、これからもよろしく、親友」
「えぇ、よろしく、親友」
その握手の後に響くチャイムに、私と陽菜荼は屋上を後にして、教室へと向かった…
どうしよ…やらかした感じしかしない…。
でも、ケンカシーン入れたかったんですっ