sunny place 〜彼女の隣が私の居場所〜   作:律乃

67 / 205
2弾目である今回の話は1弾で話した通りで、助けに来たトンキーとキーボウに飛び乗る時の話と背中での話です。

では、本編をどうぞ!!


023 A man of high caliber

くおおぉぉーーー……ん

 

と微かな鳴き声はだんだんと近づいてきて、あたしは同じく鳴き声が聞こえてくれるらしいリーファと共に円盤の上に立ち上がる。その際にシノンにシリカのことを頼んで、器用に淵まで歩いたあたしが見たのは、周囲を取り巻く氷塊を器用に避けながら、飛来する象のような長い鼻にクラゲのような身体を持ち、四対八枚の翼を羽ばたかせているその白い物体は---

 

「キーボウぅーー!!!」

「トンキーーーー!!!」

 

---スリュムヘイムの入り口まで送り届けてくれた飛行邪神のトンキーとキーボウで、あたしとリーファが大声で呼びかけるともう一度、くおおぉぉーーー……んと答えるとゆらゆらと円盤へと近づいてくれる。そういえば、スリュムヘイムまで送ってくれたのはこの二匹であって、だから二匹が迎えに来てくれてもおかしくない。

 

のだが---

 

“---今の今まで忘れてたぁぁあああああ!!!”

 

恐らくそれはあたしだけではないだろう、13名+1名の誰もが。しかし、この絶体絶命な状況に助けに来てくれたのは正直嬉しい。嬉しすぎて、涙が頬を伝う。

なので、みんな立ち上がると思い思いに二匹へと両手を振るう。

 

「おーい、トンキー!こっちーこっーちー!!」

「キーボウ、こっちこっち。こっちだよー!!」

「トンキー、キーボウ。私たちを迎えに来てくれてありがとう!!」

 

とリズベットは叫び、ユウキは元気一杯に、フィリアはお礼を言いながら、アスナも二人と共に手を振り、レインとルクスは揺れる円盤が怖いのだろう、お互い手を取り合いながら、キーボウが近づいてくれるのを待ち、シノンに手を繋いでもらい胸にぎゅーと抱いたピナの水色の羽毛越しにおそるおそるシリカは顔を上けて、シノンの方を見上げて、見上げられたシノンは微笑むとやれやれとしっぽを振るうのだった。

汚名返上の為に大ジャンプを決めるはずが無理で、あたしとシノン、シリカの三人による追加精神攻撃によって白い灰となっていたクラインは二匹が迎えに来てくれたことを知ると上半身を起き上がると親指を立てる。

 

「カッコつけてないで。起き上がりなよ、クラさん」

 

親指を立てるクラインを起き上がられせると縦並びで現在落下中の円盤に五メートルの間を空けてホバリングするトンキーとキーボウへと次々と飛び込んでいる仲間達を見る。

 

まず、トンキー組の方に鼻歌交じりとも思えるほど無造作にふわりとジャンプし、無事トンキーの背中に飛び乗る。そして、こっちに両手を差し伸べると「シリカちゃん!」と叫ぶ。シノンは繋いでいた手を離すとシリカはコクリとうなづき、両手で子竜ピナの両脚を掴むとぎこちない助走の後に空中へと身を任せると両脚を掴まれているピナがパタパタとその小さな羽を羽ばたかせると主人をトンキーの背中へと導き、リーファの胸へと抱きとめられる。続けて、リズベットが「トリャアア!」と威勢のいい声と共に飛び乗り、更にアスナが流麗なフォームでロングジャンプを決める。やや強張った顔をしたクラインの背中をキリトとあたしがどつくと「うわぁあああ!」と情けない声をあげながら、なんとかトンキーの鼻でキャッチされるのだった。

 

キリトの事はひとまず置いといて、キーボウ組の方はだが…まず、ユウキが「僕一番乗りね」と楽しそうにピョーンと大ジャンプを決めると、続けてルクスとレイン共に大きく息を吸い込むとしっかりと助走した後に飛び乗るとお互い手を取り合ってぴょんぴょんと嬉しそうに喜んでいる。フィリアはお宝探しの時にアグレッシブな場面に会うことが多いのだろう、怖がるそぶりなく綺麗なフォームで三人の近くに飛び乗ると三人でぱっしんぱっしんとハイタッチする。シノンの方もフィリアと同じく度胸が据わっているらしく、空中でくるくる二回転する余裕すら見せて、ストンと着地を決めると四人とすました顔でハイタッチをする。

 

そして、残されたあたしとキリト+ユイであるが…

 

「キリ、それどうするの?」

 

あたしが指差す先には大事そうに抱えれたままの《聖剣エクスキャリバー》。それへと視線を落とすキリトも微妙な顔をしている。いや、微妙な顔をしてはいるが、本当はその胸にあるキャリバーを離したくはないのないだろう。あたしもその気持ちは痛いほどにわかる。だが、ここはそれを我慢してもらわないとならない。

 

キャリバーを捨てることに渋るキリトの右手を無理矢理引っ張って、助走を取る。

 

「キリ、ここはそれを手放して。必ずみんなで取りに来よう」

「くっ…わかったよ、カナタ」

 

助走の位置でコソッとキリトに伝える。

そして、二人で駆け抜ける際にキリトは真下へとキャリバーを放り、あたしはキーボウへ乗り込み、ぱちんぱちんと仲間達とハイタッチして、キリトと無事トンキーに飛び乗ったところで視界の端に映るのは、キラキラと輝き回転しながら視界の端を流れていくキャリバーを悲しそうに見つめるキリトであって、あたしはカキカキと栗色の癖っ毛を掻く。

 

“そんな顔されたら、捨てさせた方が気分悪いじゃん”

 

「…あたし、やっちゃったかな」

 

キリトにキャリバーを捨てされたことを後悔するあたしの肩を掴んで、退けさせたのは---鮮やかな水色のショートヘアーからシャープの三角耳を生やす猫族妖精(ケットシー)だった。

すれ違い様に、左手で肩から長大なロングボウを下ろし、右手で銀色の細い矢をつがえる。

 

「大丈夫よ、ヒナタ。そんな顔しないで」

「…シノ?」

「ここは私に任せて」

 

ウィンクをあたしへと飛ばして、続けて素早くスペルを詠唱し、矢が白い光を包む。

 

「---二百メートルか」

 

そう呟くと、四十五度ほど下方、彼方を落下するエクスキャリバーの更に下方に向け、ひょうっと射る。矢は空中に不思議な銀のラインを引きながら飛翔していく。

 

“これは弓使い専用の種族共通(コモン)スペル、《リトリーブ・アロー》…?”

 

《リトリーブ・アロー》というのは、矢に強い伸縮性・粘着性を持つ糸を付与して発射する。通常使い捨てになってしまう矢を回収したり、手の届かないオブジェクトを引っ張り寄せられる便利な魔法なのだが、糸が矢の軌道を歪めるうえに遠距離なんて…

 

正直、幾ら何でも、と思うだろう。

 

だがしかし、シノンなら…シノならやってくれると思う。

 

そして、その気持ちが通じたのか。はたまたシノンの腕が格上なのか…まぁ、恐らく後者の方が強いだろうけど。

そのシノンの腕によって、だんだんと黄金の剣と銀の矢が近づいていき、磁石のSとMがひかれあうよう---たぁん!と軽やかな音が発した衝突する。

 

「よっ」

 

衝突したのを見計らったかのように右手から伸びる魔法の糸を思いっきり引っ張った。

すると、黄金の光が、ぐうっと減速し、停止した後に、次いで上昇を開始した。そして、だんだんと光の点だったものが、みるみる細長くなり、剣の姿へと変わる。

 

そして、シノンが引っ張る魔法の糸の軌道に合わせて、落下する位置まで走ったあたしの腕へと落ちてくるエクスキャリバーを

 

「きゃーちっ!」

 

と声をあげながら、腕に抱える。

 

「って…ヤバっ!?お…もっ」

 

しかし、その重さにぐらつくあたしを支えるのは愛弟子(ルクス)である。

 

「大丈夫ですか?カナタ様」

 

両肩に両手を置き、見上げるあたしに微笑むルクスへとにへらと笑う。

 

「…あんがと、ルー。ルーのおかげで軽くなった」

 

二人で支えながら、トンキー組の方でなんだがワナワナしているキリト達へとあたしは右手を、ルクスは左手を振る。

そして、その途端、トンキー組とキーボウ組の背中で合唱するのが「シノンさん、まじかっけぇーー!!!」という10人+1人の叫び声であった……




ということで、あのシーンで終わったわけですが…私、あのシーンが好きなんですよね〜。
何回見ても、ついみんなと一緒に「シノンさん、まじかっけぇーー!!!」って叫んでしまいます。
また、その後のあのニッコリと笑ったシノンさんが可愛すぎてですね…(悶)

と話が逸れてしまった上に時間も多く空きますが…第3弾でまたお会いしましょう!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。