sunny place 〜彼女の隣が私の居場所〜   作:律乃

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036 過去へと終止符を。

 

【○○県にある○○駅】

 

○○県にある実家近くの駅に着いたあたしは旅行ケース、リュックを背負ってから改札口を出る。

 

「んーッ!!着いたー!!」

 

背伸びしながら、駅の入り口から出たあたしは実家に向かって、とぼとぼと歩き出す。

 

詩乃に送り出された時は日が上がり始めた頃だったのに、今では日光ではなく電灯が路頭を照らしている。

 

コンクリートに映し出される自分の影を踏みながら、ゆったりと歩いていく。ガラリガラリとスーツケースを引き、片側だけで支えてあるリュックをゆらゆらと左右に揺れながら夜道を歩いていく。

 

「…?」

 

不意に振動がお尻から伝わってきて、ピロリと後ろのポケットに突っ込んだままにしてあるスマホを取り出す。

 

ホームボタンを押し、電源を付けてみる。

 

そこにはメッセージアプリの通知があり、『陽菜荼、今帰ったのか?お父さんが迎えにいこうか?』の文字列が見えた。

 

"相変わらず心配性だな、父さん"

 

苦笑いを浮かべながら立ち止まる。そして、メッセージアプリを開く。

 

そして、キーボードで『うん、今帰ったよ。でも、心配しないで。人通りが多い場所をなるべく通って帰るから。だから、温かいご飯でも作って待ててよ』と文字列を打ち、メッセージを送る。

すると、すぐにつく既読の文字に思わず苦笑いを浮かべる。

あたしのメッセージが届くまで、そわそわと両手で携帯端末を握りしめて、うろうろする父の姿が脳裏に浮かび、苦笑ともにクスクスと笑みが思わずこぼれ落ちる。

「……ほんと、父さんって陽菜荼の事が大好きなんだから」

 

"さーて"と背伸びし、お尻のポケットに携帯端末を入れてから、とぼとぼと帰路を歩いていく。

 

真っ暗闇を照らす電灯はオレンジ色がかかり、暖かい気持ちにさせる。

 

穏やかな気持ちの中、夜道をのんびりと歩いていると真正面から歩いてくる人影があり、中央部を歩いていたのを脇にそれる。

 

そして、 会釈をしながら通り過ぎようとする人影があたしの顔を見た瞬間に立ち止まる。

 

「……もしかして、香水か?」

 

そう言って、立ち止まった人影は明らかに少年の形をしており、声も女性にしては低い方に分類していた。

いたが、自分自身が低い声質のため、相手が本当に男性なのか、女性なのか、判断が出来なくて……暗闇の中、目を凝らして、立ち尽くす相手の顔をまじまじと見る。

 

「もしかして、忘れたのか?」

 

忘れたのか?と言われても、あたしの中でリアルの異性の友達といえば、キリトにクラインさん、エギルさんの3人が主である。

他にも居たりはするが、上の3人に比べると親愛度が一定値を達しておらず、何処かよそよそしさが残る。

 

だからこそ、目の前の人物が会った時からフレンドリーすぎて、困惑しているのだ。

実家のある○○県にキリト達が居るわけないし、教えてもないのに居たら居たで怖いし……そもそも、実家の方では異性の友達とか居なかったはずだがーーーー

 

"ーーーーマジ分からん。こいつ誰だ?"

 

自分の顔を凝視したままで一言も発しないあたしに痺れをきたらしたのか、人影がヒントを与える。

 

「お前んとこの右隣の家。小学校の時はよく朝田、香水と俺でお日様組とか言われてた」

 

そこまで言われたあたしは目を見開く。

 

そして、目を丸くし、震える指で人影を指さす。

 

「お前!香川 夜か!」

 

「ああ」

 

そう言って、一歩前に踏み出してくる香川 夜は小学生の頃に比べると身長も体格も全てが変わっていた。

 

懐かしさに胸を熱くしながら、あたしは彼へと近寄ったのだった。




 037へと続く・・・・


■登場人物簡単紹介■

▶︎香川 夜:カガワ ヨル
主人公、詩乃の近所で暮らしている少年。
香水家の右隣の家の住民。
二人とは異なり、中学校・高校共に家の近くに進学している。

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