ゲーム・ア・ライブ   作:ダンイ

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七話

「ふぁ……よく寝た……」

 

昨日は折紙のせいで疲れたからな……そんな事を思いつつ裏返って……

 

むにっ

 

な、なんだ?このデジャブを感じる感触は……ま、まさかそれはないよな。

俺は嫌な予感を感じつつ目を開くと、そこにはすやすやと眠っている十香の姿が……

琴里っ!!また俺をめやがったな!!しかもまた手が胸の上に置かれてるし……なんで俺の手は人の胸をピンポイントで狙うんだよ!!

 

とにかく俺が手を十香の胸からどかそうとしたところで……目を覚ました十香と目が合った。

しばし訪れる静寂の時間……そして十香は自分の身体を見て胸の上に俺の手がある事に気付く。そして再び俺の方を見つめる。すると見る見るうちに十香の顔が真っ赤になって……

 

「し、シドー!?どうしてこんな所にいるのだ!しかもその手は……!!」

 

「お、落ち着いてくれ……俺は何もやってないんだ!!気づいたら此処に居て……手だって裏返った拍子に当たっただけなんだ!!」

 

「そ、そんなことなどあるものか!シドー怒らないから正直に言ってくれ!!」

 

「十香ったら、それは正直に言った後に怒る人が言うセリフだよ」

 

十香とは逆の方向から聞こえてきた声に驚いてそちらに目を移すと、そこには俺達を見つめているネプテューヌの姿が……ってどうしてネプテューヌは俺の部屋に居るんだよ!

確か昨日ネプギアと一緒に帰ったはずだよな!?まさか仕事が嫌になって逃げて来たんじゃ……

 

「一応言っておくけど、今日は仕事から逃げるためにこっちに来たんじゃないからね。実はあの猫に会いたくなって、こっちに朝早く来たんだけど……士道と十香が一緒に寝てたから、起きたらどうなるのかなって見つめてたんだ」

 

「……俺だけ起こすと言う選択肢はなかったのか?」

 

そうすれば今のような気まずい状況にならなかったのに……ネプテューヌは前回の件で俺がこういった訓練をやってるのを知ってるはずだよな。

ってそんな事を考えてる場合じゃない。今問題なのは顔を真っ赤にして俺を見つめている十香の事だ。

早く何とかしないと俺は十香に吹き飛ばされてしまう。

 

「十香……信じてもらえないかもしれないけど、本当に俺は何もやってないんだ。気づいたら十香が隣に居て……」

 

「信じる……」

 

「へぇ?」

 

「シドーの事を信じると言ったのだ。上手く言い表せないのだが……今のシドーが嘘を言ってるようには見えないのでな……だからシドー、その手を早く退いてくれ」

 

「あっ!!すまない、十香」

 

十香の言葉で俺は未だに手を胸の上に置いているのに気づいて、慌ててその手を退ける。

十香は両手で胸を抑えると顔を真っ赤にして俺を見つめている。十香には本当に悪かったと思う……ネプテューヌが突然現れたことでそっちに意識が向かなくなっていた。

 

ネプテューヌが俺の耳元でささやく「やーい、士道のラッキースケベ」っと言う言葉は聞き流す。

そうしないと精神的にやられてしまいそうだ。だってネプテューヌの言葉には心当たりがあり過ぎる……

 

「って、ネプテューヌは猫に会いに来たんじゃないのか?早く会って戻らないとイストワールにまた怒られるぞ」

 

「おおっ!!危なく忘れるところだったよ。それじゃあわたしは下に行って猫と戯れてくるね」

 

ネプテューヌは元気よく俺の部屋から出ていくと、階段を下りて下に行った。

残された俺と十香は……取りあえずいつまでもベッドの上に居ることは出来ないので起き上がることにした。

何時もなら起きてすぐに着替えるのだが、さすがに十香の前で着替えることは出来ないので、彼女が部屋から出ていくのを待っていると……

 

ウゥゥゥゥゥゥゥ!!

 

突如響いて来た空間震警報……四糸乃か?

いや、他の精霊の可能性もある。とにかく、フラクシナスに回収してもらって現場に向かわないといけない事は確かだ。

俺は机の引き出し(神次元とつながっているのとは別のもの)の中からインカムを取り出すとクローゼットの中の着替えを手に取る。

そして部屋の外に出る前に十香に声を掛ける。

 

「十香!!俺は何時も通り精霊のところに行ってくるけど、十香は近くのシェルターに隠れててくれ」

 

「うむ、分かったぞシドー……でもシドー、あまり危険な事をするのではないぞ……」

 

「出来る限りやってみるよ……」

 

十香には申し訳ないけど、精霊と向き合う以上はどれだけ俺が気を払っても限界があるからな……

勿論、怪我はしたくないから最大限の努力はするつもりだけどな。

俺は心配そうに見つめる十香を笑顔で「大丈夫だ」と言った後に急いで玄関の方に向かう。

そして、そこに着いた俺はズボンと靴を履いて上着を羽織る。そして現界したのが四糸乃だった場合に備えて玄関に置いていたよしのんを手に取り、インカムを耳に入れると琴里の声が聞こえてきた。

 

『よかったわ。士道の事だから寝てるんじゃないかって心配してたのよ』

 

「ついさっき起きたよ……それよりも琴里、やってくれたな」

 

『あら?なんの事かしら、身の覚えがないわね。第一私が十香を貴方の布団に入れたっていう証拠があるのかしら?』

 

白々しい……

人の布団に勝手に女性を入れるのなんてラタトスク以外にしないだろ。それに俺が具体的な事を言っていないにも関わらず、琴里が俺の言いたい事を突き止めている事を考えれば、彼女が関係しているのは明白だ。

まあ、どうせその事を言ってもしらを切られるだけだから何も言わないけどさ。

 

「今、玄関に居るんだけどフラクシナスで回収してくれないか?」

 

『任せて……って言いたいんだけど、その必要はないみたいよ。先程現界したハーミットは士道の家をめがけて一直線に向かっているわ。そこで待っていれば四糸乃に出会えるはずよ』

 

「そうなのか?」

 

それはありがたいって言えば良いのだろうか……取りあえず、現界した精霊が四糸乃で安心した。

でも家には十香がいるから来られても不味いのか?四糸乃が危険な攻撃をするとは思わないが……万が一と言う事がある。

 

「琴里、今家には十香が居るからここで会うのは不味い……家の前で四糸乃と会うことは出来ないのか?」

 

『今それを士道に指示しようとしていたのよ。家を出たら道路を右に一直線に進みなさい。それで四糸乃と会えるはずよ』

 

「了解……」

 

雨の降る中、傘を持たずに家を出た俺は琴里の指示に従って道路の右側に向かって走り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……士道、さん……」

 

雨が降る住宅街の中……四糸乃はASTに攻撃されながらも必死に逃げ回っていた。

空間震を起こす現界をすれば攻撃される。それは何時もの事だったが、何時もと違うのは左手に着けた人形……心強い友達であったよしのんがこの場には居ないという事だ。

よしのんが居ればASTの攻撃に晒されても、敵意に満ちた視線を向けられても反撃せずにいられた……でもよしのんの居ない今は限界だった。

攻撃したくないのに……傷つけたくないのに……それなのに相手を攻撃してしまいそうで怖かった。

 

だからだろうか……気づけば、その人の名前を呼んでいた。

自分の事を強いって言ってくれた……よしのん以外に初めて信頼出来そうだったあの人の名前を呼んでいた。

 

でもあの人は自分の味方ではなかった。今も後ろから自分を攻撃してくる人と一緒に何かを話していた。でも……もう四糸乃に取って、それはどうでも良かった……

もし、あの人が自分を攻撃するなら、きっと自分が悪いのだろう。だからあの人の家に向かった。殺されるのならそれでも良いと……

もしかしたらそれはただの勘違いで、自分を助けてくれるのではないかと言う淡い期待も抱きつつ。

 

「あっ……」

 

士道の家まであと一歩……そんな所で四糸乃は濡れた地面に足を取られて転んでしまった。

四糸乃は急いで立ち上がろうとするが……そんな大きな隙を見逃すASTではなかった。

身動きの取れない四糸乃を取り囲んで次々とミサイルを放っていく……それらは霊装を纏った四糸乃に致命傷を与える事は出来ないだろうが、手傷を与えるには十分な量だった。

それを見た四糸乃は目を瞑ってくるであろう衝撃から耐えようして……

 

「はぁぁぁぁぁああっ!!」

 

突如として聞こえてくる掛け声と爆音……

四糸乃が驚いて目を開けてみれば、自分とASTの間に何者かが立っており、自分に迫っていたミサイルは跡形もなく消え去っていた。

その人物はASTと似たような服装に身を包み、長く伸ばした紫髪を三つ編みに纏めている。

そして手に持った剣先を自分ではなくて攻撃してきた者達に向けている……もしかして彼女が自分を助けてくれたのだろうか?

 

なんで私を……

四糸乃がそんな事を思っていると、急に自分に近づいて来た人物に持ち上げられてしまった。そして、自分を抱えたままこの場から逃げるように走り始める。

勿論四糸乃は抵抗しようとしたのだが……

その人物の顔を見て止まってしまった。だってその人は……

 

「……士道、さん……」

 

「遅れて悪かったな、大丈夫だったか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここまで来れば大丈夫か?」

 

俺は四糸乃がASTから攻撃されていた地点から十分に距離を取った場所に着くと右手に抱えていた四糸乃を丁重に地面に下ろした。

彼女は俺の事を呆然とした顔で見つめている……なんで自分を助けたのか、そう言いたげだ。

やっぱり先日の件で誤解させてしまったのか、そう思いながら俺は苦笑すると腰を下げて四糸乃と自分の顔の位置を合わせる。

 

「悪かったな……先日に誤解させるようなことをして……」

 

「……し、士道、さんは……攻撃、してくる……人達の、仲間……じゃなかった……ですか……?」

 

「違うって言っても信じてくれないかもしれないけど、俺は仲間じゃないよ。先日会ってた折紙とはちょっと特殊な事情があってな……」

 

俺の言葉を信じてくれたのか、四糸乃は安心したような表情を作る。

そして俺へ手を伸ばして……そのまま抱きついて来た。俺もそれに応じるように四糸乃を優しく抱きしめる。

良く見れば四糸乃の顔には涙の跡があった……きっと、よしのんが居なくて涙を流したくなるほど怖かった中、間違ってASTを攻撃しないように一人で必死に恐怖と戦っていたのだろう。

俺はそんな四糸乃を慰めるように、一人で耐えきった事を称えるように、彼女の頭を優しくなでる……そしてポケットの中にしまった物を渡すべく四糸乃に話しかける。

 

「四糸乃……渡したい物があるんだけど……少しだけ目をつぶってくれるか?」

 

なんでっと言いたげに首を傾げる四糸乃だが、すぐに彼女は目を瞑ってくれた。

俺は目を閉じた四糸乃の左手に気付かれないように、そっとよしのんを嵌める。

先日ASTの基地から奪ってきたこの人形……攻撃に晒されたせいか所々壊れていたが、昨日プルルートが修復した結果、新品のように綺麗になっている。

そのよしのんを嵌め終えた俺は四糸乃に目を開けるように合図をする。すると四糸乃はゆっくりと目を開けて……

 

「よしのん……!!」

 

『やっほ!!久しぶりだね、四糸乃。四糸乃には一人で寂しい思いをさせちゃってごめんね。いやーよしのんが不甲斐ないばかりに……』

 

「よしのんは……悪くないよ……」

 

嬉しさのあまり、涙を流しながらも会話を進めていく四糸乃。

その顔は、よしのんを失って絶望しかけていた時からは考えられない程のものだった。

これで一件落着したわけだが……好感度の方はどうなっているのだろう。爆音とかが近くなって来た事を考えると、達していないなら四糸乃を連れてこの場から逃げた方が良い。

俺がそんな事を思っているとインカムから琴里の声が響いてきた。

 

『士道よくやったわ。好感度が封印できる所まで上がったわよ。早くキスして封印を済ませてしまいなさい』

 

軽々しくキスをしろって言うなよ……

普通の人なら短期間に複数の相手とするようなものじゃないんだぞ。

精霊を救うためっという名目がなければ決してできない行為……って言うかそういう名目があっても俺には正直きつい。

でも四糸乃を助けるためにはそんな事は言ってられない。俺は覚悟を決めると正面から四糸乃を見据えて話しかける。

 

「急に話に割って入って悪いんだけど、四糸乃を助けるためにある事をしたいんだけど……大丈夫か」

 

「え……は、はい……私は、大丈夫……です」

 

『なになに~、士道君たら無知な四糸乃に一体何をする気なの?変な事だったらよしのんが許さないんだからねー』

 

「えっと、だな……」

 

どうしよう、よしのんが居るせいで素直に言いにくい。

キスをしてくれなんて言ったら絶対によしのんが突っ込むだろうし、下手をすると攻撃を受けてしまいそうだ。

キスをして霊力を封印してからよしのんを渡せば良かった……少しだけそう思ってしまったが、頭を振って直ぐにその考えを捨てる。四糸乃が悲しんでる姿なんて見たくないからな。

こうなったら腹を括って正直に話すしかないだろう。ちゃんと説明すればよしのんだって理解してくれるはずだ……と思う。

俺が意を決してキスをしてくれ……そう言おう思った瞬間だった。

俺達の方に飛んでくるミサイルが見えたのは……

 

きっとそのミサイルは流れ弾なのだろう。

たった一発のミサイルでは霊装を纏っている四糸乃は傷つかない。そんな事は分かりきっている事なのに気がつけば俺は四糸乃の右手を掴んで投げ飛ばしていた。

そして四糸乃を投げ飛ばしたことで完全に無防備になった俺にミサイルが……

 

 

 

 

 

 

 

 

四糸乃は急な浮遊感に襲われていた……よく見れば自分は地面の上を飛んでいた。

士道が自分を投げ飛ばした……そこまでは理解する事が出来たのだが、投げ飛ばした理由が分からなくて四糸乃は困惑してしまう。

士道が自分を投げたのには何かしらの理由があるはずだ……そこまでは考えることが出来たのだが、それ以上は無理だった。心当たりが全くなかった……がその数秒後に四糸乃は理由を知る事ととなった。

 

爆発したのだ。

先程まで四糸乃が立っていた場所が……そして士道の居る場所がだ。

それを見た四糸乃が最初に思ったのは、なんでそんな事をしたのかという事だった。

自分は精霊、ミサイル一つ程度では傷つきはしないのだ。そして人間である士道がミサイルを受けたらきっと……

その事を思うと激しい喪失感が四糸乃を襲った。よしのんを除けば初めての友達になれそうだった、自分に初めて優しく接してくれた人間が消えてしまったのだ。

 

四糸乃がその事実に呆然として、受け身を取ることもせず地面に叩きつけられれた。軽い衝撃を感じたが、霊装を纏ってるせいもあってその程度だった。

四糸乃は今もなお戦闘している。ASTとネプテューヌを見つめる……こいつらのせいだ……こいつらが来たから士道は死んでしまったのだ……

何時も自分を攻撃してくる時は心配していた……でも今はそんな感情なんてなかった。今、四糸乃が彼女らに向けるのは感情はたった一つ……怒り。それだけだ。

 

「よしのん……」

 

『分かってるよ……よしのんもここまで頭にきたのは初めてかなぁ。それじゃあ、四糸乃……あいつらを痛い目にあわせてやろっか』

 

よしのんの言葉にゆっくりと四糸乃は頷く。

自分の命をよりも大切なものを奪った相手だ……手加減してやる必要はない。

だから呼んだ……精霊を精霊とたらしめる。自らの誇る最強の矛の名を……

 

「……〈氷結傀儡〉…………っ!!」

 

 

 

 

 

 

 

「やっかいね……」

 

時間を少し巻き戻して、ネプテューヌは女神化してASTと戦闘をしていた。

先日は直ぐに蹴りが付いたのだが……今回はそうはいかなかった。まあ、それも当たり前の話だろう。先日のASTは偵察も兼ねていたため比較的軽装だったが、今回は精霊を討伐するために重装で来ている。

しかも、先日の戦いで自分には近接攻撃しかない事が知られてしまっているため、ASTは距離を取って攻撃してきているのだ。一応遠距離攻撃手段として32式エクスブレイドがあるのだが、あれは完全にオーバーキルだ。直撃どころか余波だけで相手の息の根を止めかねない。

 

しかし、あくまで相手にするのが厄介なだけで倒せないというほどではない。

飛行性能はこちらの方が上なのだ。相手の攻撃をかわし距離を詰めて一人一人着実に倒していけばいいだけの話だ。

現にASTの半数はネプテューヌによって倒されている。このままいけばASTの全滅させるのに、さほど時間はかからないだろう。

ネプテューヌは飛んできたミサイルをかわして……その先に士道が居るのが見えてしまった。急いでミサイルを迎撃しようとしたのだがすでに時は遅く、ミサイルは士道に当たって爆発してしまった。

 

「士道!!」

 

それを見た折紙は焦ったような声出し士道の元に飛んで行った。

正直に言えばネプテューヌもそうしたかったのだが……それは出来なかった。自分が士道の元に駆け寄ればASTも引き連れてしまうからだ。

士道が無事かどうか気になるが……彼には女神化や治癒の炎がある。ミサイル一発程度では死にはしないだろう。

 

ならば自分にできる事はASTをいち早く倒すだけ。そう自分に言い聞かせながら、相手に剣先を向けようとした時だった……

悪感を感じたのは……

ネプテューヌにはこの感覚に覚えがあった。たしかこれは十香が本気で戦おうとした時と同じもの……そこまで考えが至ったネプテューヌは全力でその場を離れる。

そして彼女が距離を取ってすぐの事だった。

 

「一体なんなのよ、これは……」

 

ネプテューヌの目の前……

彼女が先ほどまで戦っていた場所が冷気のドームによって覆われていた。

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