ゲーム・ア・ライブ 作:ダンイ
「ほらー、ご飯だぞ」
俺はそう言って猫缶を乗せた皿を床に置くが、猫は俺を警戒して一切近寄らない。
俺がそんな猫の様子に苦笑しながら、距離を取ると猫はようやく皿の方へと近寄り、過剰じゃないかって思うくらいエサの匂いを嗅いだ後、ようやく食べ始めた。
目の前でエサを食べる猫は先日ネプテューヌが捕まえて猫で、名前はイディと名付けられたんだが……
この猫、すごく警戒心が強いんだよな。毎日のように世話をしている俺ですら身体に触れることはできない。唯一触れられるのはネプテューヌだけだ。
彼女には懐いている……と言うよりは攻撃されてもネプテューヌが執拗に迫っていたので、猫の方が諦めたと言う感じだ。
あの執念深さはすごかったからな。
俺は執拗に迫っていたネプテューヌとそれから逃げる猫の光景を思い出しながら朝食の準備の取り掛かる。
そう言えば四糸乃は今頃何をしてるんだろうな……今はまだ朝早いし寝ているかもしれないか。
四日前に霊力を封印したっきりで一度も会えてないからな……少しだけ不安になってくる。
よしのんも居るから大丈夫だとは思うけど、検査で動揺して霊力が逆流しないといいんだが……
ピンポン!!
鳴り響くチャイムの音。
一体誰が来たんだ?こんな朝早く何の用事があって家に来たんだ?
心当たりがあるのは……折紙くらいか?でも今までこんな朝早く来たのはなかったはずなんだけどな……
何時までも外で待たせる訳にはいかないので、俺は急いで玄関へと向かって鍵を開けて扉を開けた。
すると、扉の目の前には……
「四糸乃……?」
「おはよう……ござい、ます」
『やっほー、士道君久しぶりだね。元気にしてた?』
「ああ、元気にはしてたけど……」
俺はそう言いながらワンピースを着た四糸乃達を見つめる。
この二人が家の前に居るってことは検査はもう終わったのか?
ってことは……まさか十香みたいに住む場所ができるまで家に一緒に暮らしますってことじゃないよな。
四糸乃には悪いけど、それだけはやめてくれ。最近はラタトスクによる十香を使ったトラップで精神をすり減らしているのに、それに四糸乃まで加わったりしたら……
その先は想像したくなかった。そうなったらもう士織モードになって日常を過ごすかな……
なんて現実逃避をしていると四糸乃の後ろに琴里が現れた。
「琴里……どう言う事か説明してくれるか?」
「別におかしなことなんて考えてないわよ。ただお隣さんになるんだから挨拶をしに来ただけよ」
「お隣さん……?」
何を言ってるんだ?
隣は空地のなんだから……………あれ?
なんでいつの間に巨大なマンションが建っているんだ。俺、工事中の現場とか見た覚えがないんだが……いや、少し落ち着くんだ。
少し前に琴里が空間震で破壊された街は自衛隊の復興部隊が顕現装置を使って一晩で修復してるって言ってたじゃないか。
だったらきっと、今目の前にあるマンションはその技術を使って一瞬で作ったものなのだろう。
「住居が出来たって事は……十香もこれからはそこで暮らすのか?」
「ええ、その通りよ。明日からこの家で過ごして貰うわ。十香の精神は安定してるけど……一度霊力を暴走させたら普通の家では危険すぎるもの」
「普通の家って……このマンションは何か違うのか?」
「普通なのは見た目だけよ。物理的強度は数百倍にしてあるし顕現装置も搭載してあるから霊力的な防御もばっちり施してあるわ」
下手な要塞よりも頑丈になってるのな……
何かあったら、シェルターに逃げ込むよりも此処に逃げた方が安全そうだ。
それと普通の家は危険って……俺達の家で一緒に過ごしていたのは大丈夫だったのか?
まさか俺の知らぬ間に家が改造されているってことは……ありえそうだな。今までのラタトスクの行動を踏まえるとそう思わざるを得ない。
俺が我が家の事を怪訝そうに見つめていると、四糸乃が俺に声を掛けてきた。
「士道……さん、これから……よろしく、お願い……します」
「ああ、よろしくな四糸乃」
そう言いながらゆっくりと伸ばされる四糸乃の手を、俺はしっかりと握りながら返事を返す。
すると四糸乃は嬉しそうに笑ってくれた。
その顔は何にも代えがたいもので……今までの俺の苦労が報われるような笑顔だった。
きっとこれから四糸乃は笑顔を見せてくれる機会は多くなるはずだ……だって、もう四糸乃を攻撃する存在はいないんだから。
どうかこれからは彼女が笑顔でいられますように……俺は心の中でそう祈った。
投稿が遅れてしまいすいません。
次の話は番外編で、超次元での話と、士道と十香の出会いに関するお話を予定しています。