ゲーム・ア・ライブ   作:ダンイ

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三話

「……琴里なんだよな?」

 

「あら、妹の顔も忘れてしまったの、士道?まさか、若年性認知症とかに掛かったんじゃないわよね?今から介護施設の予約でもしといた方が良いのかしら」

 

本当に琴里なのか…………

俺の知っている琴里は此処まで高圧的な話し方をしないし、何より俺の事はおにーちゃんと呼んでいて、士道なんて呼び捨ては今まで一度もしたことがない。

でも見た目は俺の知っている琴里と違いがないし……違いがあると言えば、髪を纏めるのに何時も使っている白いリボンではなく黒いリボンを使っていることぐらいだろう。

もしかして、別の次元の琴里か?それなら十分にあり得なくもないんだが……やっぱり性格以外には違いがないんだよな。次元の違うノワールやブランなどを見た時には、ほんの少しだけど見た目に違いがあったし……

 

俺が頭を抱えて悩んでいると、プルルートが俺の服を引っ張って来た。

ジェスチャーで顔を近づけろと伝えて来たので、素直に俺がプルルートに顔を近づけると小さな声で俺に話しかけてきた。

 

(士道君はぁ、昔、琴里ちゃんは俺を慕ってくれる無邪気で可愛い子だって言ったよねぇ~。でもあたしには無邪気な子には見えないよぉ~)

 

(いや、何時もは違うって言うか、あんな琴里を見たのは初めてなんだよ。この前に布団に入ってた時に琴里の声を聞いただろ?俺が見てきた琴里は何時もあんな感じなんだよ)

 

(なるほどね。たぶん士道の妹は相当の恥ずかしがり屋で、人前だと本音を言えなくて二人っきりの時だけに本性をさらす人なんだよ。だからベットで寝ていた士道一人だと思ったから、あの時は無邪気な一面を見せてたんじゃないかな)

 

(なるほどぉ、そうだったんだぁ~。ねぷちゃん、頭良いねぇ~)

 

(いやだから、今の状態の琴里を見るのは初めてなんだって。何時もは人前でも無邪気な姿を見せてるんだよ)

 

(ありゃ、外れちゃった。だったらどうして今日は士道に冷たく接してるんだろうね?何か心当たりとか……はぁ!!もしかして、昨日私たちが布団に入ってたのがバレてたんじゃないかな!?それで、見知らぬ女二人と布団に入ってた兄に失望して、こんな冷たい態度に……」

 

「ふぇ~。どうすれば良いのねぷちゃん~。それだとぉ、あたしたちが兄妹の仲を引き裂いた事になるよぉ~」

 

(しぃぃぃ!!二人とも声が大きいって、琴里に聞こえるだろ。それと、お前たちが帰った後の事を考えると誤魔化せてる気が…………殺気ッ!?)

 

いきなりの殺気に驚いて、そちらの方向を見ればとてもいい笑顔でこちらを見つめている琴里の姿があった。顔だけは笑みを浮かべているのだが目はぜんぜん笑っていない、完全に俺達に切れているようだ。

もしかして……会話の内容が聞こえてましたか?

 

「もうそっちの話は終わりでいいわよね?私としてはこの後はそこの二人に、士道とどういった過程で会ったのかとか、どんな風に仲を深めていったのとか、あまつさえ、昨日士道の布団の中に入って何をやっていたのかとか、色々と問い詰めたいことが沢山あるんだけど……取りあえず今は私たちの組織に関する説明をしてあげるわ」

 

「えっと……いつからバレてましたか?」

 

「そこの短髪の方が大きな声で言ってたじゃない……「私たちが布団の中に入ってた」ってね」

 

しっかりとネプテューヌの声を聞いていたのか……

俺がネプテューヌの方を睨むと、彼女はバツが悪そうに顔をそらした。一応は自分が悪いっていう自覚はあるらしい。

 

俺がネプテューヌに非難の視線を送っていると、コトっと靴で床を叩く音がした。音がした方には若干不機嫌そうな琴里がいる……どうやら早く話を進めたいらしい。

俺達は一旦この話題を置いておくことにして、琴里の説明を聞き始めた。

 

「さて、説明を始めたいと思うけど……誰かモニターに映像を流してくれないかしら?」

 

琴里が下にいるクルーに命令した後、いくつものパラメーターを映していた正面の巨大モニターが切り替わり映像を映しだす。

その映像には、滅茶苦茶に破壊された街に大きなクレーター、そしてそのクレーターの中心では十香が剣を振るっていた。そして、その斬撃で吹き飛ばされるメカメカ団の姿も映っていた。

まさか、精霊に関係する組織なのか?

 

「この中心にいる少女が精霊と呼ばれる怪物で空間震の元凶よ。こっちの吹き飛ばされてるのはASTって呼ばれる対精霊部隊で、自衛隊の部隊よ。こいつらは空間震の元凶となっている精霊に対処しようとしているらしいけど映像から分かる通り、全く意味を成してないのが現状よ。それにしても、よくこんな中に女二人も連れて入ろうとしたわね。私達が……」

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ」

 

「どうしたのよ。私が説明しているのを遮ったのには、それなりの理由があるんでしょうね。変な理由だったら、そのちんけな頭を足で踏みつぶしてあげるわよ」

 

「本当ですか!?」

 

「うおっ!?」

 

急に割って入って来た声に驚いて、声を上げながらそちらの方を向くと、そこにはいつの間にかに復活した副司令が立っていた。

そして直ぐに琴里が「神無月!あんたじゃないわよ!!」の一喝と共に、鳩尾に拳を入れると副司令は再び気を失ってしまった。その顔はどことなく幸せそうだ。

取りあえず、副司令の名前が神無月だってことを知ることは出来た。そして俺の予想通りの結果だったってことも確認できた。

出来れば外れて欲しかったのに……

 

そんな事を思いつつ、俺は自分の携帯をいじって位置情報確認のアプリを起動させる。そしてそこには琴里がいまだにファミレスに居ることを示していた。

でも琴里は此処にいるよな……携帯をファミレスの近くに落としたのか?でも電話は鳴らなかったよな?

とにかく、俺は琴里に携帯の画面を見せると彼女は「ああ」と少し納得がいったというような声を上げると、下のクルーに向かって指示をだした。

 

「なるほど、そういう訳ね。たっく、この馬鹿兄は私をどれだけ馬鹿だと思ってるのよ。まあ、今回は私にも非があるから、お咎めはなしにしてあげるわ」

 

「馬鹿って……妹の位置が避難区域あったら誰だって心配するだろうが」

 

「普通の人は携帯を落としたって考えるわよ。まあ、その話はもういいわ。一回フィルターを切って」

 

琴里が下のクルーに指示を出すと、今まで薄暗かった艦橋が一瞬で明るくなった。

いきなり明るくなったことでチカチカする目を手で隠しながら上を向くと、そこには一面の青空があった。でもそこまでは問題じゃなかった。

本当の問題はそのあとに下を向いた時に、とてもとても小さな街並みが見えてきた事だった。

もしかして此処って上空なのか?

 

「どう?驚いた?ここは上空一万五千メートルに浮かんでいる空中艦〈フラクシナス〉の中よ。これで分かったかしら?私はファミレスに居たわけじゃなく、その真上を丁度飛んでいたフラクシナスの中に居たのよ。……でもそんな抜け道があったとはね。後で何かしらの対策を打っておいた方がいいわね。それにしても……」

 

琴里は何やら詳しく説明してくれているみたいなのだが俺は……いや、正確には俺達には空中艦のあたりから耳に言葉が入ることはなかった。

その空中艦と言う一言は俺達にそれほどまでの衝撃を与えてしまったのだ……だってそれは……

 

(すごいねぇ、ねぷちゃん~。さっき言ってた事、ほとんど当たってるよぉ~。まるで預言者みたいだねぇ~)

 

(いやぁ、そう言われると照れるというか……これが真の主人公たる私の実力かな。まだまだ、士道には主人公の座を渡さないよ)

 

(まだ根に持ってたのかよ……っていうかネプテューヌが変なフラグを立てたからこうなったんじゃないのか?)

 

(ねぷっ!士道、それはひどい冤罪だよ!!確かにフラグを立てたのはわたしだけど、それで士道の妹が秘密の組織の司令官になったりするわけないんだよ!)

 

(わかった、わかった。俺が悪かったって……それよりもそろそろ琴里の説明が終わりそうだ。ちゃんと話を聞いていたふりをするぞ)

 

「はい」と小さく返事を返した二人が俺と一緒に琴里に向き直ると、琴里が丁度言いたいことが言い終わったようでこちらに視線を向けてきた。

何やら説明の途中で、インビジブルやらアヴァオイドなどと言っていた気がするが、ちゃんと聞いていなかったので意味は全く分からない、もし聞かれたらよく分からなかったと言っておこう。

たぶん今の琴里だと土下座しても、俺の頭に足を乗せて踏みつけるだけで決して許してもらえないだろうけどな。

 

「まあ、〈フラクシナス〉の話はこれくらいで良いでしょう。これから本題に入ろうと思うんだけど……士道、精霊ってのはね、出現するたびにASTの奴らに襲われてるんだけど、貴方思うところはないの?」

 

「思うところって言われても……」

 

正直に本音を言ってしまえば十香達を助けたい……

他の精霊まで同じだとは限らないが、少なくとも十香は街を破壊しようなんて意思はない。むしろ空間震で街を破壊してしまう事を申し訳なく思っているくらいだ。

それなのに一方的に攻撃されるなんて理不尽にもほどがある。

でも、精霊達を助ける力が俺にはない……せいぜい精霊を絶望の淵からほんの一歩引き上げるのが限界だ。

 

「だんまりしてないで、何か言いなさいよ。まさか耳まで遠くなったんじゃないわよね」

 

「あっ……いや、悪い……精霊の事だったよな?それは勿論助けたいとは思うよ」

 

「なんでそんな事を思うのかしら?あれは存在するだけで辺りを破壊する怪物よ。そんな危険な生き物倒されてしまった方がいいだなんて考えたりはしないの?」

 

「そんな風に言うのは……あいつは街を破壊しようなんて意思なんてないし。ASTが攻撃を仕掛けてきたから反撃しているだけじゃないか」

 

「あいつ?」

 

「あっ!……その、とにかく俺は話もしないで攻撃するのが納得できないって言うか……あんな風によってたかって一人を攻撃し続けるなんて見てられないんだよ。……まあ、どうやって助ければいいのかは分からないんだけどな……」

 

「なるほどね……なら士道、私達が手を貸してあげましょうか?」

 

「はぁ?」

 

琴里の思いがけない言葉に俺は目を点にしてしまった。

いやいや……この組織が何を目標にしているか分からないが、なんでそういう事になるんだ。俺個人を応援したところでなんの利益にもならないぞ?

 

「そういえば、まだ私達〈ラタトスク〉の目的を話していなかったわね?丁度いい機会だから教えてあげるわ。私たちはASTとは別のやり方、対話によって空間震を解決するために結成された組織なのよ」

 

そこまで聞いた俺は琴里を見つめながら考えを巡らせる。

対話によって解決を図ろうとする組織……少しだけ胡散臭いが、そう考える人が全く居ないとは言い切れない。だから有ってもおかしくはないのだが……でもそれで俺を手助けする理由にはつながらない。

いくら精霊を助けたいという意志があったとしても、俺は所詮素人だ。

その手の専門家に任せた方が良いとしか思えない。

 

「なんで自分なのかって悩んでる顔ね?」

 

「っ!?」

 

「まあ、簡単に説明すると交渉役は士道にしか務まらないのよ。詳しくは後で説明するとして……士道、あなたはどうするの?私達の手助けを受けて精霊と交渉する?それともたった一人で精霊とASTの間に割って入る?後者は間違いなく死ぬと思うからおすすめしないわよ」

 

「俺は……」

 

はっきり言ってしまうと、俺はまだこのラタトスクと言う組織を信頼することが出来ない。

俺を交渉役に据える理由が未だに不明だし、やはり少し胡散臭い。琴里が嘘を言っているとは思わないが、琴里のさらに上の人が騙している可能性もある。

でも、今まで精霊を助けるための具体的な手段がなかったのも事実だ。もしこれで十香達が助かる可能性があると言うのなら、騙されてみるのも悪くない。騙されていたら、この組織から逃げ出せばいいだけだ。

俺はネプテューヌとプルルートにそっと目くばせをすると、二人ともそっと頷いてくれた。大体は俺の意志は伝わったみたいだ。

 

「分かった……琴里、俺に手をかしてくれ」

 

「分かったわ。それじゃあ、これから軽い説明と訓練を始めて行きたいんだけど……そろそろいいわよね?」

 

「そろそろ?」

 

「あら?物覚えが悪くなったのかしら?私は説明を始める前に言ったじゃない、そこの二人について説明してほしいことが沢山あるって……説明してくれるわよね、おにーちゃん?」

 

なぜだろう?

今日見た中で一番の笑顔で優しい声だったのに、俺は流れる汗を止めることは出来なかった。

ちゃんと説明すれば大丈夫だよな?

 

「えっと……信じてもらえないかもしれないけど……」

 

俺はそれから、半年程前に自分の身に起こった事についての説明を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……つまり、士道は半年程前に異世界に飛ばされて、その二人はそこと、そこに似た世界の女神って呼ばれる存在で、昨日布団の中に居たのは二人が勝手に入って来たからって事よね……とてもじゃないけど、信じられないわ」

 

「ですよね……」

 

あの後、俺は説明出来ない部分を除いて凄く簡単な説明を琴里にしたのだが……疑いの眼差しで俺を見つめている。

まあ、それは仕方がないのかもしれない。いきなりこんな突拍子のないことを言い出したのだ、誰だって疑って当然だろう。俺だって、琴里に言われたのならまだしも、他の人に言われたら絶対に疑ってしまうだろう。

 

「一応言っておくけど、私個人としては士道の言っていることを信じてあげてもいいのよ。でも組織の司令官としては、なんの証拠もなしに信じるなんて部下に示しがつかなくなるから出来ないのよ。そうね……せめて、その異世界特有の物とかがあれば信じてあげられるんだけど……何かないのかしら」

 

この場で見せられる異世界特有の物……

真っ先に思いついたものがたった一つだけある。それなら証拠としては十分なんだろが……問題は誰がやるかだ。

プルルートはやってしまうと取り返しのつかない事になるし、となると消去法でネプテューヌしかいなくなる。

 

「ネプテューヌ……頼めるか?」

 

「えっ!?わたし!?わたしが何を……あっ!なるほど女神化すれば良いんだね。もう、仕方ないな……でもやっぱり主人公たるわたしが初めをきっちりと決めない事には何も始まらないよね。それじゃあいくよ!括目せよ!!」

 

ネプテューヌが声を上げるのと同時に彼女の体は目を覆いたくなるほど眩い光に包まれた。

そしてその光が収まると、そこにはネプテューヌは今までとは違った姿で宙に浮かんでいる。

短かった髪は長く腰に届くまでに伸び、それを二本の三つ編みにして纏め、薄紫だった髪の色も紫へと変わっている。子供と変わりなかった体形も大人のものへと変わり、それに合わせて風格も大人びたものへと変わる。

 

「これで良いのかしら?」

 

「……は?……へぇ?えっと……」

 

琴里がこのすごく困惑している……っていうかコンソールをいじっていたクルーたちもそれを止めて、あんぐりした顔でネプテューヌの事をただただ見つめている。

俺はその反応に苦笑する事しか出来ない。

変身するとほとんどの女神は姿や性格が変わってしまうのだが、その中でもネプテューヌは変身前と変身後のギャップが激しい。と言うか同一人物なのかを疑ってしまうほどだ。

初めてあれを見て驚かなかった人はほとんどいない。

 

「えっと……士道?同一人物なのよね?」

 

「ああ……一応、同一人物だ。たまに俺も自信がなくなるけど……」

 

「ねぷちゃんはねぇ~。変身すると、別人かと思うほど真面目な性格に変わっちゃうんだよぉ~。」

 

「二人とも失礼ね、ちゃんと同一人物よ。ただ変身前のわたしは乗りが良すぎると言うか……まあ、今はそんなことはどうでもいいわね。改めて自己紹介するわ。私はプラネテューヌの女神、パープルハートよ。よろしくね、琴里」

 

「え、ええ。ってか、さっきは自分の事をネプテューヌって言ってなかったかしら」

 

「一応、変身前がネプテューヌで変身後がパープルハートなんだよ。まあ、好きな方で呼んで大丈夫だと思うぞ。大体の人は変身前のネプテューヌで呼んでるけどな」

 

「ふう……これでもう良いよね。毎度のことながら変身すると疲れるんだよね……でもこれで、私が異世界の女神だって証拠になったでしょ。信じてくれるよね」

 

「……そうね。ここまでの証拠を見せられたら信じないわけにはいかないわね……分かったわ、士道の言っていた事を全て信じるわよ」

 

女神化を解いたネプテューヌの問い掛けに、琴里は笑顔を浮かべながら答えてくれた。

下にいるクルーたちは未だに困惑している者いるが、たぶん時間がたてば納得はしてくれるだろう。

これで一段落ついただろうと、ホッと息を吐いた時だった……琴里がとんでもないことを言い出したのは……

 

「そういえば、プルルートも女神なのよね?ってことはネプテューヌみたいに変身できるのかしら?」

 

「もちろんだよぉ~。もしかして琴里ちゃんはぁ、あたしが変身した姿を見てみたいのぉ~?」

 

プルルートが……変身……?

 

その言葉を聞いた瞬間、俺の頭からはさぁっと血の気が引いていくのを実感できた。それ以外にも体はブルブルと震えが止まらなくなるし、身体中からは汗が滝のように流れて止まらなくなった。

無知とは罪……この言葉の意味を実感できた瞬間だった。

 

隣のネプテューヌを見れば、彼女は俺と同じ症状に加え顔が真っ青になっていた。きっと俺もそうなっているんだろうな……などと現実逃避している間にも琴里とプルルートの話は進んでいく。

 

「そりゃ、見たいって言えば見てみたいけど……証拠ならネプテューヌので十分だし、無理に強いたりはしないわよ」

 

「そうなんだぁ~。琴里ちゃんは士道君の妹だし、特別に変身した姿を見せてあげるよ~。行く「「ちょっと待った!!」」ふぇ~!?。士道君にねぷちゃん、一体どうしたのぉ~。急に声をあげられたら、あたし驚いちゃうよ~」

 

「いや、そ、そのプルルートまで変身する必要はないんじゃないか?ほ、ほら、変身すると疲れるだろ?」

 

「でもぉ~、琴里ちゃんがあたしの変身した姿を見たいっていってるし~」

 

「でも、そのね……きょ、強キャラ!!ぷるるんは強キャラなんだよ!!」

 

「強キャラ~?」

 

「そうだよ。ほら物語の終盤で仲間になるキャラってもの凄く強い時があるでしょ。だから、ぷるるんはこんな序盤で変身するんじゃなく、強い敵が出てきた時にわたし達がピンチの時に、颯爽と現れてわたし達と一緒に戦うんだよ」

 

「うわぁ~、なんかそれかっこいいねぇ~……でもやっぱり……」

 

駄目だ、ネプテューヌだけでは説得出来ない。

そう判断した俺は、素早く琴里の近寄ると両肩を掴んで身体を振りながら、琴里にプルルートの女神化を断る意思を伝えろと言おうとする。

琴里はその俺の行動に驚いているが、今はそんな事を気にしている余裕はない。今は一刻を争う事態になっているんだ。

 

「琴里、頼むプルルートに変身するなって言ってくれ!あれが変身すると洒落にならないんだよ!!変身して後悔してからじゃ遅いんだ!だから琴里、お願いっだ!!」

 

「ちょっ!?士道、一体どうしたのよ!!理由くらい「話してる時間もないんだ!」ああっ!!分かったわよ!言うから私の身体を揺するのを止めなさい!!」

 

俺が琴里から両手を放してその場から少し離れると、琴里はプルルートと彼女を説得しようとして話しかけているネプテューヌの方に振り向くと、プルルートに声を掛けた。

 

「プルルート、別の機会に変身でもいいわよ。一回に何人もされるとうちのクルーの頭がパンクしそうだし」

 

「そうなの~。だったら今回は変身するのを諦めるね~。また今度、変身した姿を見せてあげるねぇ~」

 

これでプルルートは変身することがない……そう思った瞬間身体中の力が抜けてその場にへたり込んでしまった。

ネプテューヌを見れば彼女も同じように座り込んでいる。彼女はプルルートの説得もとい時間稼ぎに神経をすり減らしたのだろう。視線でお互いの健闘を称え合う。

それにしても本当に危なかった。もしプルルートが変身をしていたら、この場にいる誰かを生贄として捧げなければいけない事態へとなっていただろう。そして生贄にされた人以外にも精神的なダメージが避けられない。

実際に子供がプルルートのあれを見た際は一生涯に残るトラウマと化したからな。

 

そんな事を思っていると、琴里が小さな声で話しかけてきた。

 

(それで士道……プルルートが変身すると一体何が駄目なのよ?説明してもらえるんでしょうね)

 

(詳細な事に関しては言えない……っていうか思い出したくないから言えないんだが、彼女が変身すると、他人を痛めつける癖があるんだよ)

 

(痛めつける?それぐらいなら問題ないような気がするけど?)

 

(琴里は見たことがないからそんな事が言えるんだよ。これはぷるるんが完全に怒った時の事なんだけど、痛めつけた相手が数年間にわたって精神崩壊したことがあるんだよ)

 

(……一体何をどうすればそんなことが出来るのよ?)

 

(ごめん……本当に思い出したくないんだ)

 

(わたしは今でも夢としてたまにあれを見るよ……悪夢としてだけどね)

 

(俺もだよ……途中から誰もあれを直視することは出来なかったからな)

 

会話の途中で割って入って来たネプテューヌの言葉によってようやくプルルートの変身のやばさに気づいたのか、途中からは琴里は冷や汗を流しながら俺達の話を聞いていた。

これなら、もうプルルートの変身した姿を見たいなんて二度と言いはしないだろう。

 

「あれ~、三人とも小さな声で何を話してるのぉ~。あたしもまぜてよぉ~」

 

「「「なんでもないです(よ)(わよ)」」」

 

「ふぇ~、どうして三人とも教えてくれないのぉ~。あたしを仲間外れにしないでよ~」

 

この後、琴里から詳細な説明は明日する事を聞かされた俺達は、転移装置を使って一瞬でフラクシナスの中から自宅の前まで帰る事となった。

自宅に帰ってからは、異世界への門が俺の机の引き出しであることに琴里に突っ込まれたりもしたが、ネプテューヌとの約束があるため一旦プルルートの世界に行ってからネプテューヌの世界に行くにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「士道、お疲れさま!!ジュースを持ってきたけど……大丈夫かな?」

 

「全然大丈夫じゃない……やっぱりあの姿は精神的に来るものがある……」

 

「もう、士道ったら。そういう時は大丈夫じゃなくても、大丈夫っていうもんなんだよ。約束ってのが分かってないな」

 

「それを言う余裕すらないんだよ……ジュースは隣にでも置いといてくれ」

 

イベントが無事に終わった後、俺は舞台裏で木箱に腰を掛けて精神的な疲れを紛らわそうとしていると、ジュースを二つ持ったネプテューヌがやって来た。

俺がぶっきらぼうに返事を返すと、ネプテューヌはジュースの缶を俺の隣に置き、近くにあった木箱に腰を掛けて話しかけてきた。

 

「いや~、今回は本当に助かったよ。士道がイベントにあの姿で現れるって宣伝すると集客力が一段と上がるからね。もう、デビューでもしてみたら?」

 

「冗談でもやめてくれ……っていうか、そんなに今の状況はやばいのか?」

 

「やっぱり、転換期ってことでどこもシェアが結構下がってるみたい。いーすんの話だと他の国だと対策チームを作ってるみたいだよ」

 

「で、そんな中、お前ひとりがサボってたからシェアがとんでもない数値になって、俺の助けを借りようとしたってわけか?」

 

俺からあからさまに視線をそらすネプテューヌの姿を見ながら、俺は溜息を吐いた。

そりゃ、こんな大変な時期に俺が春休みに入っているからと言って毎日のように遊びに来たらそうなるよな。いくら妹の女神候補生であるネプギアや教祖であるイストワールが頑張った所で女神本人が動かなきゃ限界ってものがあるだろうし。

最近はイストワールが強めの胃薬を使ってるみたいなんだから少しは仕事をやった方がいいと思うぞ。

 

「で、でも、今回のイベントで何とかシェアは巻き返すことができたし……やっぱりわたしが本気を出せば、これくらいは何とでもなるんだよ。なんたってわたしが主人公だからね」

 

「一体その自信はどこからくるんだよ……まあ、無事にシェアが回復したなら何よりだよ」

 

それにしても、俺が主人公みたいだって言われた事をいまだに根に持っているのか?

なんか、何時もよりも自分の事を主人公だと言う機会が多い気がするのだが……俺の気のせいなのだろうか?

別に主人公を奪うつもりはないんだけどな。っていうか、現実の主人公ってどんな人をいうのだろう?物事の中心に居る奴か?それとも皆のリーダーとなっている人か?

今度時間があったらネプテューヌに聞いてみよう。

 

「それじゃ、俺はそろそろ帰らせてもらぞ」

 

「そういえば、士道が家に帰るのには神次元を経由しないといけないんだったね」

 

「神次元?」

 

「あっ!!そういえば士道に伝えてなかったんだけど、この間二つの世界の女神が集まった時に私が居る世界の事を超次元、ぷるるんの世界の事を神次元って呼ぶことにしたんだ。いつまでもあっちとかそっちじゃわかりにくいからね」

 

まあ、確かに言われてみるとそうだな。

それじゃあ、これから超次元と神次元って言葉を使っていく事にしよう。その方が便利だからな。

俺は木箱から立ち上がると帰り道へと歩いていく。明日からは普通に学校があるから早めに帰って疲れを癒したいからな。まあ、肉体的よりも精神的なところが大きいのだが。

本当に二度とやりたくないなと思っていると後ろから声を掛けられた。

 

「帰る前に一つ聞きたいことがあるんだけど、大丈夫かな?」

 

「手短にな」

 

「それじゃあ聞かせてもらうけど、なんでラタトスクに協力することにしたの?わたしが言うのもあれだけどさ、あの組織かなり胡散臭いと思うんだよね。きっと、士道を利用するだけ利用した後に後ろからグサッ……ってパターンだと私は思うんだけど、士道はどんなふうに思ってるかな」

 

「別に完全に信用したわけじゃないって、ただ十香を助けるための手段がないのは事実だからな。一筋の光にすがってみようと思っただけだよ。もし裏切られたのなら……」

 

「その時はわたしにお任せだよ。敵を全員けちょんけちょんにしてあげるんだから」

 

ネプテューヌの頼もしい声を聴きながら「その時は任せるよ」っと返した俺は帰路へとつくことにした。

さて、これから精霊を救うために訓練が始まるらしいが……訓練って一体何をするんだ?まず、どうやって精霊を助けるか具体的な方法すら聞いてないからな。

本当にラタトスクは精霊を救うための手段を持っているのか、若干の不安を抱えながら俺は夜道を歩いていった。

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