「天龍さん!貴方って人は―――!!」
なぜ、こうなってしまったんでしょうか。目の前には壊れた壁、散らばる食材、飛び散ったお菓子、怒られている艦娘と怒っている艦娘一人に妖精さんたくさん!ただし、がっかり。
そう、あれは目の前で鬼のように怒る鳳翔さんに正座されている天龍さんが私の後ろから殴りかかってきたとき―――。
「あっ、靴紐が…。」
私が靴紐が解けているのに気づき身を屈めた瞬間、天龍さんは
「うわっ!」
振りかぶった拳が宙を切り、その勢いのまま厨房に向かって倒れこんでしまいこうなってしまったのです。
その時、艦娘用に用意されているアイスや羊羹がバラバラになり今の大惨事となってしまったのです。
「はぁー」「おかしー…」「どんよりー…」「まるくなってしにたい…」「むごいむごい…」
あぁー、妖精さんの頭の上に鬱の雲ができてしまっているじゃないですか。というか、いつから居たんですかね。やっぱりお菓子さえあれば妖精さんを召喚できるわけですか。今日から私はサモナーと名乗ってもいいかもしれませんね。ていうか、違う違う。
「あっ、あの…。鳳翔さん、もうそれぐらいで…。」
ちなみにそれが起こったのは30分ぐらい前なのです。それからずっと鳳翔さんは天龍さんに怒っているのでさすがにもういいのではと思い声を掛けてみる。
「―――はぁ。わかりました。いいですか、天龍さん次からはしっかりと状況を見極めてから行動してください。」
「す、すみません…。」
天龍さんがすごい疲れた顔を見ると何故かいつも妖精さんに振り回されている私の姿と重なりますね。
「しかし、提督に危害を加えようとしたのは宜しくありません。後でそれ相応の罰を受けてもらいます。」
「なッ!やっぱりお前もあいつらと同じ―――!」
罰。と言ってもそれはここに所属する妖精さんを紹介してくださいというものですがね。え?それは罰と言わないんじゃ?いいですか、もうここには鳳翔さんの怒鳴り声を聞きつけていろんな艦娘たちがこちらを見ているんです。そして、何があったのかも知っていると思います。そうなれば鎮守府という区画において部下が上司に暴力を加えようとしたそれは本来到底許されるものではありません。しかし、ここで何も罰を与えなかったら身の上上あまりよろしくないのです。つまり、体裁上で罰を与えなければいけないのです。なんとせちがらいことか。
「はいはい。では、明日のゼロハチマルマルに提督室に来てくださいね。」
そして、わたしはこちらを野次馬の如く見ている艦娘に身を向けて宣言する。
「お集りの皆さん。提督から重大なお知らせがあります。」
「じゅ、重大なお知らせですか?」
「明日から三日間休みに入ってください。」
…、あれ?なんかわたしがそう言った瞬間みんな黙り込んだんですが。何かまずいことでも言ったはずでもないですし。おっ、艦娘の一人がやってきました。先ほど提督室にも来た旗艦だった伊58さんですね。
「提督…、本当に休みが貰えるでちか?」
提督と呼び捨てにした瞬間事を知らない艦娘たちがざわつくが事前に通達されている艦娘に説明を受けて最初は驚くが納得のいった顔つきになる。
この伊58に限らず、ここに所属する艦娘で一番待遇が悪いのは潜水艦であるのは知っています。疲労を無視した出撃を何度も繰り返す通称オリョクルやバシクルというのが行われていたらしいのですがわたしはそういうのはあまり好みません。働きにはそれ相応の報酬をっていう信条を持っていますからね。あれ、もしかして、わたし、上司に向いてる!?
「はい。この場にいない艦娘もいると思うのでそこは誰かが教えといてください。」
「やったね!でっち!」
「でっちって言うなし!」
本当に休みが貰えると知って艦娘たちが大きく、特に潜水艦の子たちが喜びの声を上げた。すると、U-511…面倒くださいのでユーさんと呼びますが、その子がゴーヤさんに近寄り横から抱き着いた。
わたしはその光景を眺めながら小さく笑みを浮かべて提督室へ歩を向けた。
*
「ふむ、確かに適度な出撃ですね。助手さん、ありがとうございます。」
助手さんが作ってくれたスケジュール表に目を通し概要を確認すると一息つく。
「はぁ…。しかし、初日でこの疲労は予想外でした。明日は、この鎮守府で居るであろう妖精さんとの接触ですね。天龍さんが快く受けてくれるかどうか…。---そういえば、秘書艦について考えたらあの子がいいかもしれないですね。加賀さんでもよかったんですか、あの記録を見る限り今は放っといたほうが得策ですね。」
助手さんもそう思いますか。
「そうですね、もう夜も遅いですし寝ますか。というか、ベッドが一つしかないので一緒になってしまうんですが大丈夫ですか?助手さん。」
おっ、沈黙での頷きですね。ていうか、これ添い寝みたいですね、私は一向に気にしませんが。
「ベッドたりなくて?」
「あっ、妖精さんちょうどいいところに!ベッドすぐに作ってもらえませんか?報酬は弾みますので」
いつの間にか机の上に妖精さんがいたので頼んでみます。一緒でも大丈夫なんですが誰からに見られたら誤解を生みかねません。
「三日あればできるかと」
「5分でお願いします。」
その日、わたしと助手さんは妖精さんの素晴らしいベッドで夜を過ごしました。なんか、ごめんなさい。冗談のつもりだったんですが何故か鎮守府に来てから妖精さんたちが活発になっているので少し試してみたんですけどまさか本当に5分で作ってしまうとは…。
「しっかし、不思議なものですね艦娘というのは。あのような可愛らしい見た目とは裏腹にあの凄まじい攻撃力。あれで深海棲艦という奴らを倒せるのにも納得が行きます。妖精さんたちも今日は本当に助かりました。」
「はぁ…」「べっどのくおりてぃさいあくすぎでは?」「むのうすぎひん…」「そんざいかちなし…」「きえてなくなりたい…」
「いえいえ、5分でこのクオリティは流石の一言に尽きます。これは報酬のお菓子詰め合わせです。」
「わーい!」「そんざいかちあった!」「ゆーとぴあはここにあり!」「「「「「きゃっきゃっ!」」」」」
はぁ、ほんと妖精さんはチョロかわいいなぁ。
私は瞼を閉じて深い眠りについた。
*
「さて、天龍さん。罰と言ってもお願いなんですが」
朝、告げた時間通りに来てくれた天龍さんに聞いてみる。ちなみに私はつい10分ぐらい前におきました。すごく焦りました。
「はァ?それは罰じゃねェだろ。」
「そうです。けど、あの場で罰を与えなければ身の上上あまりよくないので。」
「ったく。んで、何だ、お願いってのは?」
「ここにいると思われる妖精さんに合わせてくれませんか?」
そういうと天龍さんは何を言っているんだお前はといった顔でこちらを見てくる。
「確か、妖精さんと話が出来るんだったか?確かにそれぐらいなら別にいいんだが…。ほらよっ。」
そう言って掌を見せてきた天龍さん。はて、どういうことでしょうか?
「あの、何もないんですけど…。」
「はァ!?妖精見せろって言われたから見せたのに何言ってんだよ!!」
まっ!何ということでしょうか…。もしかしたら私はとてつもない大きな見落としを、それこそ地底深くまで届くような大きな穴に落っこちるような罠に引っかかっていたのかもしれません。
「鎮守府にいる妖精さんと私が知っている妖精さんとはナニかが違うのでしょうか?」
私が知る妖精さんはわたしには見えて艦娘にも見える。しかし、艦娘が知る妖精さんは私には見えなくて艦娘には見える。謎が深まるばかりです。
「えっと、妖精さん?あなた方には見えますか?」
「みえていますとも」「しかし」「まけてられない」「とうそうほんのうはっき!」「ごーさいんだしてー!」
なんとまぁ。つまり、ここに来てからの妖精さんが張り切った様子というのはここにいる妖精さんに負けたくないという一心でのものだったんですね。この件はしっかりとお爺さんに問い詰めなければなりません。
「はぁ…。わかりました、ありがとうございます天龍さん。では、最後にもう一つお願い事を。」
「なんだよ」
「ある艦娘を一人呼んできてほしいのです。放送でもいいんですが休みですし敵襲かと思わせるような真似はやめておきたいので。」
「わかったよ。んで、誰を呼べばいい。」
「はい。その艦娘の名前は―――」
*
「ㇰシュン!」
「大丈夫かい、朝潮?」
「はい、大丈夫です。心配してくれてありがとうございます。響さん。」
誰か、私の噂でもしていうんでしょうか?
朝潮のこの考えは数分後に来た天龍さんによって肯定された。
「おいっ、朝潮。提督がお前のことを呼んでたぞ?」
「…、提督が?なぜ、わたしを。」
「なんか、やってもらいたいことがあるんだってよ。」
私はその時何をやらせるか想像も尽きませんでした。しかし、まさか私のような駆逐艦があのようなとっても大事な仕事である秘書艦を任されるとは今の私はまったくもって考え着きませんよね。
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