やぁみんな、最近地味に将棋を作っているのだけれど馬車じゃないからファンタジー転生みたいにみんなでやれないことに気付いたそもそも文化を持たない見た目のオーク系転生者の俺だよ!
さて、唐突だけど典韋さんの村に着いたよ!
あの後も比較的のんびり穏やかな旅が続いて、個人的には毎回こうなら良いなって思ったよ。まぁ途中で尻尾が蛇のダチョウ?みたいな鳥に遭遇したり、歩き疲れた真桜が、大寸胴鍋を持つ俺に乗せろと言ってきたので、普通に背中に乗せようとしたら何故か下半身裸になって、ウチが抱きつくから支えてな!として入れようとして来たりと大変だった。本人的には俺は歩きながら処理できて、自分は移動しながら気持ちいい、画期的な案やで!みたいな事を言ってて戦慄を禁じ得ない。なんかそんな感じのAVみたことある。流石時代を先取りする技師チート。思考が1800年ほど未来に生きてる。先取りし過ぎだ。
まぁまだ生理中の愛紗と星が規定を理由に止めてたが、そんなこと言われずともやらないので安心してほしい。絵面的にどう考えてもただの変態である。だからちょっとみんなその手があったか!みたいな顔やめてもらえないだろうか。
そんな旅の回想はさておき、何か典韋さんと思われる利発そうな顔のちょっとそれはダメじゃね?と言いたくなるスパッツ履いた女の子が、籠を持って歩いていたので話しかける。明らかに怪しい蛮族なのでめっちゃ警戒されるも、丁寧に季衣ちゃんからの手紙を手渡したら、とりあえず家にご招待いただいた。そして手紙を取り出して読み始め、彼女が固まってから早10分ほど。
何かあっただろうか。え、許褚ちゃんがどうしてるか?あれ、季衣ちゃん手紙に書いてないの?
俺が許褚ちゃんの真名を出したら驚く彼女、何故かと聞くので美味しいご飯のお礼らしいよ、俺もちょっと理由それで良いのか分からないけど。って感じに答える。あ、頭を抱え始めた。何か苦労人の気配がするね。え、何?手紙読めって?良いのね。はいはい。あっ、俺読めない!雛里、読んでおくれ。あ、雛里も固まった。なんて書いてあんの?
流琉(典韋さんの真名)!私すごい人に仕えることになったよ!村には暇が出来たら戻るね!みんなによろしく!あ、手紙持ってくおにーさんにご飯食べさせてあげてね!バイバイ!
・・・お分りいただけるだろうか。これで全文であるらしい。ちょっとこれでは何にも分からないと思うのだが、どうだろうか。当然典韋さんも全く季衣ちゃんの状況とか分からないと思われる。えっと、説明します?
すごい疲れた声でお願いします、と絞り出すように言われた。く、苦労してるね・・・?といったら分りますか?と涙目で返された。べっこう飴をたくさんあげた。甘いものは疲れが取れるから、よかったらお食べ、あまり慰めに何ないかもだけど。
ありがとうございます、とべっこう飴を食べる少女。地味に美味しそうに食べてくれる。古今東西、女の子は甘い物好きだ。傍目には涙目の幼女に飴をあげる大男の図。21世紀なら奥様方が通報するレベルである。
とりあえずそのまま季衣ちゃんの近況を伝える。とはいえ何故曹操さんに仕えることになったとか経緯は知らないので省く。最後に俺たちにご飯を作る話とかもちゃんと説明しておく。典韋さんはその理由に呆れつつも、街に行った彼女が今も自分の料理が1番だと言ってくれたことに喜んでいる様子だった。
説明が終わると、手紙を持ってきてくれたお礼にと、本当に食事を用意してくれるという。良かった、のこのこやってきた俺が言うのも何だが、まさか本当に作ってくれるとは。そう言うと彼女は苦笑いしていたが、わざわざ遠くから自分の料理を食べにきたと言うのは悪い気はしないそうだ。ありがとう。
とはいえ、食材がないので取りに行くと言い出した典韋さん。うちの娘が季衣ちゃん並みだと伝えたせいだ。それには及ばないと、先ほどの尻尾が蛇のダチョウ擬きや、味噌などの調味料、その他野菜や肉などを大量に差し出す。余ったら食べてください。
・・・あれ、何か問題あった?え、このダチョウ擬き?ああ毒は処理してあるから安心して。え、どうやって倒したか?蹴爪も蛇の牙にも猛毒があって、大きくて素早いから罠でないと取れない?いや普通に首絞めてだけど?毒とか効かないし、まず爪も牙も刺さらないし。そう言ったらドン引きされた。
さておき、どうやらこのダチョウ、この辺りでは希少な食材らしく、張り切って作ってくれるそうだ。あと、狭いけど今日はうちに泊まらないかと言われた。親御さんとか良いのだろうか?え、季衣ちゃんと二人暮らし?親いない?ごめんよ、無神経で。つーかその状況で何も言わずに出て行ったのか季衣ちゃん・・・。あ、典韋さんがすごい落ち込んだ。ま、まぁまぁ、全く関係ないけど俺も親いないし、頑張って!
何かそう言ったら少し心を開いてくれた感じがする。仲間だと思ってくれただろうか。なお、この手の話で鈴々は出さない。理由は色々あるが、1番は最近おとーさんがいる!って言ってくれるようになったからだ。あんなに嫌がってた子供扱いも、俺になら許してくれる。ただしお詫びとして抱っことかナデナデを要求されるが。うちの娘が本当に可愛いすぎる。
さて、お言葉に甘えて今日は泊めてもらうことに。みんなにお礼として、薪割りや洗濯などの雑務を担当してもらう。典韋さんは恐縮してたが、当然の対価なので気にしないようにいう。ちなみに俺は典韋さんと一緒に料理番だ。何でも味噌や醤油などの調味料は、典韋さんでも使ったことがないそうで、興味はあるがきちんと味を知ってからにしたいとの事だったので、せっかくだから俺がいくつか使用例を見せようということになった。なお、この家の調理場は典韋さんの城なので、俺の調理場は外に作った。
それでも彼女とはちょいちょいお互いの技術を盗みあい、俺は彼女の豪快かつ繊細な鍋の扱いや、流れるような包丁捌きを、典韋さんは俺のミリ単位で正確な解体技術や、全く同じ見た目で全然違う食感を生み出す抜群の火加減を、お互いに賞賛し合う。あまりの事態に俺と典韋さん2人のお手伝いである凪がオロオロしてた。凪可愛いよ凪。まぁ正直俺たちだけ料理バトル漫画みたいな世界観だったからな。みんなを置き去りにしたことを典韋さんと顔を見合わせてお互いに苦笑い、少し反省する。
なんか既に宿敵と書いて友と呼ぶ仲になりつつある。しかし傍目から見たら幼女と幼女に襲いかかりそうな蛮族である。何故か村人が外にいなくて良かった。
調理中、さらに話をする俺と典韋さん。季衣ちゃんの話を聞いたり、俺の旅の話をしたり。普段は意識して無口キャラなので、こんな連続で会話するのはこないだの華琳さんの時以来だろうか。まさかの展開だが、典韋さんと話が合いすぎる。いつの間に俺は料理人になったのだろう。後ろからきちんと会話できる俺に唖然とする空気が流れているが無視だ。
途中、季衣ちゃんにおにーちゃんと呼ばれている話のおり、彼女がふざけてでは私にとってもお兄様ですね、なんて言ってきたので俺も新しい妹ができたな、なんて返して2人揃って笑う。良く考えたら表情筋が死んでる俺がこんなちゃんと笑うのは久しぶりである。やだこの子本当に良い子や。後ろで笑わない俺が笑った事で戦慄が奔ったようだが、もちろん無視だ。
そのまま調理しながらお互いに真名を交換する。お互いに目線も合わせない。調理が山場だからだ。なお、俺の真名交換までの速度は彼女がぶっちぎりで最速である。まるで調理しながらお互いの時間を高速で埋め合わせているようである。後ろのみんなは最早作業の手を止めて声も出ないようだ。華麗に無視する。
やがて調理が終わると、2人同時に視線を合わせる。数秒見つめ合って、やがてまた同時に手を差し出す。俺と彼女には物凄い身長差があるので、絵面としては酷いものだが、お互い最早そんな事は気にも留めない。目線だけで意思の疎通を済ませ、互いに手を取る。
「見事な腕だ。やるな流琉。」
「こっちの台詞ですよ、お兄様。」
再び、2人同時に笑った。
「いや、なんでやねん!!」
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真桜の見事なツッコミで、意識が追いついたみんなから様々なツッコミや質問などが飛んだが、今の僅かな時間で積み上げた俺と流琉の絆は本物だ。にこやかに笑って流す流琉と、同じく無表情に戻っておざなり流す俺。最早生まれてからずっと一緒に生きてきた兄妹並みの一体感である。夜、体に聞きますと言うみんなに、ここは人の家で、御前達は生理中だと軽く言い返す。すると流琉が私とお兄様の仲じゃない、水くさいよ、と言ってくれたので、笑ってありがとうと返しておく。
またもみんなが愕然とするが、料理が冷めるので早く食べようと促す。しぶしぶながら大人しくみんなは席に着いたが、鈴々だけは無言で俺の膝に乗ってきた。寂しそうな目で見上げてきたので、苦笑いして久しぶりの羌毅さん式ナデナデをお見舞いし、鈴々が楽しそうに笑い出したところで食事が始まった。
ようやく我に返った流琉がなんか恥ずかしそうだったが、初めての味に真剣な顔をして食べ比べたあと、気に入ったらしい。調味料は多めに置いておくから好きに使ってくれ、そう話すと、嬉しそうに笑って頑張ります!って言ってた。非常に可愛い。ちなみに彼女の夢は自分の店を持つ事だそうで、この前世で行った大人気料理店並の技術を考えたらさもありなん、な話なので、絶対通うよって言っておく。すると流琉が嬉しそうに笑って、しかし「一緒にやってはくれないんですか?」って返してきた。それも良いかもしれない。そう言って再度2人で笑ったのだった。
なお、いい加減ブチ切れたみんなのあーん攻撃でようやく空気が元に戻った。ただし星、てめーはダメだ。ワカメ酒なんて初対面のちびっ子の前でやるんじゃねぇ。見ろ、流琉が顔真っ赤にして視線を高速移動させてんじゃねえか。第一お前の色はワカメ色じゃねぇ。
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食後、みんなで後片付けをしていると、なんか感じ悪いおっさんがやってきた。村長らしい。あらやだ、挨拶忘れてた。するとこちらには目もくれない村長さん。流琉に一方的に話して去って言った。なにあれ普通に感じ悪い。なんぞ?
流琉に聞くと物心ついた頃からあんな感じらしい。ちびっ子相手に?正直ちょっと腹立つけど、流琉が困った顔をするので矛を納める。
そしてちょっと行ってきますとデカいヨーヨーみたいなのを背負って完全に陽が沈んだ外に行こうとしたので理由を聞いてみる。すると、驚愕の真実が明らかに。
なんでも、華琳さんが荀彧さんイベントで大幅に削った賊だが、殲滅させる事は出来ず、未だにちょこちょこ村の作物を盗みに来るのだそう。なので夜はこうして流琉がこうして見廻りをしてるらしい。え、子供なのに?1人で?
そう言うと前は季衣もいたんですけどと苦笑い。いや、両方子供じゃん。何言ってんの?え、私達しか戦えるものがいない?・・・へぇ、なるほど。戦う気がないの間違いだろう。
とりあえず流琉が外に行きたそうだったので、みんなを残し俺がついていく。なんかあったら殲滅を許可して置いた。歩きながらさらに詳しく話を聞くと、どうも流琉と季衣ちゃんは戦争孤児で、家は家族が残してくれたものの、当時、と言っても2年ほどだが、子供2人だけで畑のノウハウもほとんどなく、食料など、他の村人の世話になっていたらしい。特に、季衣ちゃんはそんな状況でもわりとノーテンキにやらかして、村長さんに怒られたり、肩身が狭かったとのこと。やがて2人揃って豪腕が発覚したあとは腫れ物扱いされながらも、恩返しの為にこうして乱雑な扱いをされても頑張っているのだそうだ。
そこまで聞いて、ようやく俺は合点がいった。今日初めてあった時、昼を大きく過ぎていたにもかかわらず、彼女がそんな時間に籠を持って畑に向かおうとしていた理由がずっと分からなかったのだ。仕事を始めるには遅すぎるし、一度戻ってきたなら手足に土が付いてない理由がわからないからだ。
そう言うと、彼女は苦笑いして、季衣が居なくなって1人で見廻りをしてるから、どうしても寝るのが遅くなってしまうと言った。明け方近くまでは村の老人も起きないので、賊が来てしまうんだそうだ。
正直に言えば、子供にそんなに夜遅くまで働かせておいて流琉の畑の手伝いもしてないのにはわりと真面目に腹立つが、流琉自身が耐えているのに、俺が怒るわけにもいかない。我慢する。季衣ちゃんが出て行った事を恨んでいるか、と聞くと首を振る流琉。彼女が元気ならそれでいい、そう言って寂しそうに笑う。優しい子だと心底思う。
なんとかしたくなって、つい一緒に来ないか、と聞いた。何なら季衣ちゃんの主人である曹操さんに、店を出す協力をお願いしてもいい。そうも言ったが、賊が居るうちはこの村を見捨てられない、どんな形でも、お世話になった村だからと、彼女は俺に謝って、そして礼を言った。
夢はどうするんだ?賊が完全に居なくなるのは難しいぞ。自分の店を持ちたいんだろう?
「大丈夫です。確かにだいぶ先になってしまうかもしれませんが、諦めないで、いつか大人になって叶えます!」
健気に笑う彼女。その顔を見て決意する俺。厨二も厭わないよ!
よし、じゃあ要するに村がもう賊に襲われなければ良いんだな!任せろ。そう言って彼女にはもう戻るように言う。みんなに伝言お願い、なるべく早く戻るって伝えてくれ。突然の事に困惑する流琉。良いから良いから、あと俺やっとくからお戻り!子供は寝る時間です。そう言って無理矢理帰らせる。
彼女が困惑しながらも帰って行ったのを確認すると、完全変身した。何気全力出すのは初めてだが、早めに終わらせたい。賊のみなさんには覚悟して貰おう。鼻の機能全開で匂いを嗅ぎ、目当てのものを見つけた。
思いっきり、跳ぶ。一瞬で村が小さくなった。
さぁ、義理の妹の為にお兄ちゃん、頑張っちゃうよ!
・・・その夜、村付近一帯の山で轟音が鳴り響いた。
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・・・
オラよ。そう言って無造作にそれを投げ渡す。
流琉を叱りつけていた村長が悲鳴をあげた。どうも昨日の見廻りをサボった事についてのようだ。誤解なので、証拠品を投げてあげた。
見ていた流琉や村人たちも息を飲む。ウチのみんなは何か我慢していたらしい。流琉が耐えていたからだろう。
何だこれは!そう叫ぶ村長に、一言で返す。
「このあたり一帯の賊、全ての首だ。」
その数約200。意外と残っていたが、隠れ家自体は3つほどだった。元々大きくかたまっていた名残だろう。地味に首を残す力加減大変だったから、褒めていいぞ。もうちょいいたが、残念ながら頭が消し飛んでしまったので割愛する。
ともかく、これで賊の心配はないし、流琉が街に行っても問題あるまい。
あっ、と短く驚く流琉。驚愕の表情で俺を見る。まさか、一晩で・・・?と呟くが、その通りですが何か。
で、文句ないよな村長。お兄ちゃんとしては妹の夢を応援したいんだけど。あとこの村の環境にはお兄ちゃんとして大いに不満があります。
何か怯えながらも今までの養育費がどうとかほざく村長に、こないだ賊退治の報酬として華琳さんに貰ったぶんを丸々投げ渡す。正直要らないって言ったのにかなり多めに手渡されて困ってたんだよね。街での生活でも1家族が一年持つ金額だ。小さな農村では子供二人分だとしても充分に足りるだろ。まぁ、流琉を金で買うみたいで気分は良くないが。
呆然と金と俺を交互にみて、やがて金を奪うように拾って好きにしろ、と去っていく村長。困惑した顔で流琉が言った。
「どうして、そこまで・・・?」
嫌だったか?首を振る彼女。ならばいい。だから俺も一言だけ返す。
「お兄ちゃん、だからな。」
彼女の目から、涙がこぼれた。
その直後、俺は説明もなしに飛び出したことをみんなに死ぬほど説教された。
・・・上手くいかないもんである。
続く!
警察官「この辺で見知らぬ少女を妹扱いする変質者が出たってきいたけど。」