避けたりとかそういうのはしない。   作:銀座

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今回まで日常回。

いつもと同じです。


30話 甘い焼きトウモロコシ生活

 

やぁみんな、桃は菓子にしたりするより丸齧りが1番だと思うオーク系転生者の俺だよ!

 

 

 

陳留に着いてから2週間が過ぎた。

 

なんだかんだ言いながら、結局俺たちも劉備さん達と一緒に再び曹操さんの下で働いています。路銀の関係ですね!ちなみに今回は長くいない予定の為、凪と一緒に警邏隊だ。凪を言葉巧みに騙くらかして、凪とサボろうとすると、何故か星が嗅ぎつけてくるので、大変だ。

 

とはいえ、流琉と黄蓋さんは周瑜さんの看病の為に残している。

 

周瑜さんは着いたその日に治療を受けてからも、しばらく華佗に診てもらっていたが、最近になって後は完全に養生するだけ、と言われたようだ。栄養たっぷりとって軽い運動をしろ、と言われたので、俺がいない時でも流琉が張り切って薬膳料理を作っている。

 

周瑜さんの運動にと、日々陳留を散歩しているのだが、何故か黄蓋さんがいるのに俺も付き合わされている。基本は財布役だが、時々荷物持ちだ。

 

 

また、前と同じ場所を借りて住んでいる。何か完全に俺たち専用になっているらしく、同じ階層には兵が1人もいない。なので真桜が壁を壊して広くしてしまい、俺が荀彧さんに怒られた。解せぬ。

 

ちなみに、下の階には周瑜さんに黄蓋さん、それと劉備さんと一刀くんがいるが、俺たちと同じ階は愚か部屋の下にも皆入ろうとしなかった。自覚はあるので感謝しておく。

 

 

最近は一刀くんが俺がアドバイスした組織とかシステムなんかを見て、どうしてこれを?とか聞いてくるが、フィーリングとか言ってテキトーに誤魔化しておく。俺と違ってちゃんとした知識がある彼は、俺のアイディアを穴埋めしてちゃんとした形にするので、曹操さん達も結構気に入って来てるようだ。良きかな良きかな。

 

まぁそれで勧誘された一刀くんが劉備さんに泣かれたりして非常に面白いんだがね!劉備さんは劉備さんで勧誘されてたけど、きっぱり断ったみたいだ。とりあえずいつもニヤニヤしながら見ている。

 

 

「貴方がウチに来てくれれば、北郷を諦めても良いのだけれど。」

「華琳様、私はどちらも反対ですっ!男なんて要りません!」

「む、むぅ。道玄なら考えなくもない。」

「おにーちゃんと流琉は良いけど張飛が要らないっ!」

「だそうだが、いつ正式に仕えるんだ?」

 

予定は未定ですね。後秋蘭、お前そろそろ全裸で朝に布団の中に忍びこむのやめろ。いい加減寒くなって来たし、風邪引くぞ。毎度毎度愛紗に怒られる身にもなれ。つーかどうやって隣で寝てる愛紗に気付かれず侵入してるんだ?

 

「お前が暖かいから平気だ。あと、愛の力に不可能は無い。」

 

ニヤケ面で言わなきゃ喜べるのに。春蘭が秋蘭!って泣きそうだが、もうめんどくさいので、本人達に解決して貰おう。長居すると疲れそうなので、頼まれていた俺と流琉特製のカステラケーキを渡して、彼女達のお茶会を後にした。最近俺の調理スキルがプロ級になっててわろた。

 

 

 

・・

・・・

 

 

「こんな感じでどーやろ?」

 

そう言って真桜に見せられたのは、円形のベンチだ。水に浮かないタイプの木材で作ってもらったもので、風呂代わりにされる、大寸胴鍋や、つい最近完成した風呂専用大石釜の中に沈めて使うもので、これはその風呂専用大石釜用に作ってもらった。うむ、完璧である。流石だな。

 

「にひひ、ほな報酬の方、忘れんといてや!」

 

了解だ。そっちも頼むぞ?

 

そう言うと、真桜は皆には内密にやな?任せとき!と笑った。実は今回、俺のとっておきの場所、周りからは見えない様に木の生えたとある山の頂上で、満月を見ながら風呂に入って月見酒と洒落込むつもりなのだ。しかも、相方は愛紗だけ、という皆にバレたら最低でも朝までコース確定案件である。

 

何故愛紗かと言うと、ここ最近彼女と一緒の時間が取れず、彼女の不満が溜まりつつあるからである。

 

というのも、陳留での日々の生活では、夜以外は何かと愛紗と俺が被らないのだ。俺は基本警邏隊だが、警邏隊の仕事として軍師組の警護として華琳さん達の視察なんかに引っ付いて行ったりするので、自然と凪、稟、風、朱里、雛里、は仕事中にもよく会う。流琉とは周瑜さんの看病の為に休憩時間にほぼ毎回会うし、鈴々と沙和は非番が重なりやすいので良く一緒に出掛ける。真桜とは良く昼食を一緒に取り、星はよく書類仕事をサボって街にいるので、警邏隊の仕事中、一緒になったりする。

 

その他にも曹操さん達の誰かや、黄蓋さんや周瑜さんと一緒にいる事が多い最近では、ひたすら愛紗だけが一緒にいる時間が少ない。まぁ、あくまで昼の話で夜は皆一緒に寝てるんだけどね!とはいえローテーションがあるから愛紗を抱かない日もある。昼間会えないのに夜も、となると、鈴々よりヤキモチ焼きな愛紗が不満を貯めるのも仕方ないのかもしれないな。

 

 

そんな訳だから、今回こんな危険を冒して、真桜には口止め料を積み、何とか手筈を整えているのである。とはいえ、これが最後のピースなので、明日の満月の日に愛紗を誘って行けば完璧である。まぁ雲が出ないことを祈ろう。

 

「にしても、にいさんはほんまに愛紗に甘いなぁ。」

 

羨ましいなぁ、とこちらを見る真桜。物欲しそうな顔をしている。報酬の上乗せ希望だろうか?

 

と、思ったが違う様だ。何となく何を求めているのかが分かったので、ベンチを周りから見えないように四次元袋にしまうと、真桜を抱き寄せる。真桜が顔を上げて目を瞑ったのに合わせて、唇を重ねる。地味に身長差のせいでやり難いが、幼女達と比べたらどうということはない。途中から舌を絡ませて、濃厚な接吻を交わす。

 

 

やがてお互いの唇から糸を引きながら顔を離す。真桜の顔がとろける様に赤い。満足か?

 

「んー、このまま最後までねっとり愛してくれたら満足するかもしれへん・・・。」

 

そんなことを言いながらしなだれかかる真桜。しかしそれは無理だな。なんでや、ってお前ここ何処だか忘れたのか?お前の仕事場だぞ。

 

ハッと周りを見渡す真桜。余裕で周りから見られてる事に今気付いたらしい。さっきとは別の意味で顔が赤くなった。キスしてた時なんて砂糖吐きそうな顔で睨まれたからな。今はまだマシな方だ。嫉妬隊を一度叩いてから、この状況でも文句言う奴は居ない。良いことである。

 

とにかく、報酬忘れんといてや!と、先ほどまでかかっていた仕事に走って行った真桜。うむ、可愛い。星なら見られてる方が、とか言い出すからな。後でたっぷり続きをしよう。そう考えて、工房を後にした。

 

 

 

 

 

・・

・・・

 

 

真桜の工房を後にした俺は、その足でそのまま愛紗を誘いに行く。ちょうど今日の調練が終わって、兵達が帰ってくるのが見えたからだ。

 

そのまま兵の流れを城壁の上から見て、鈴々や星と話しながら戻る愛紗を発見。ぬぬ、星はマズイな。あいつのこういう時の勘は妙に強い。本人は女の勘です、とか言ってたが、あんな強力な勘を女性全員が持ってたら、浮気する男はとっくに絶滅している。

 

さて、どうしたものかと見ると、星が秋蘭に話しかけられてそのまま何処かに行った。よし、今がチャンス!行くぞー、とう!エリア移動ジャンプ!

 

遥かに高いところまで飛び上がり、そのまま移動中の愛紗と鈴々の前辺りを狙ってラージャン着地する。俺、参上!

 

「あ、おとーさんなのだ!」

「道玄!?貴方はもう、何処から現れているんですか。」

 

何、ちょっと高い所から急降下しただけさ!とか笑って誤魔化しつつ、抱きついてくる鈴々を抱っこしてあやす。うちの娘本当に可愛い。なんか周りを歩いていた兵が俺の登場を見て一気に距離をとったが、好都合なのでそのまま愛紗と鈴々を連れて兵の流れから出る。

 

 

何か用が?と尋ねる愛紗に、軽く顔を寄せてひそひそと内緒話をする。その間、鈴々は耳を抑えながら髪をわしゃわしゃして誤魔化す。にゃはは!と笑って楽しそうにしているので聞いてないだろう、たぶん。

 

 

話終わった瞬間、本当ですか!?と声を上げそうな愛紗の口を塞ぐ。周りを見てから、指一本口に当てて、シー、とバレてはならない事を強調する。愛紗も直ぐに理由に思い当たったのだろう。直ぐに自分の口を抑えて視線だけ動かして周囲を確認した後、コクン、と頷いた。

 

なお、その間は何かの遊びだと思ったのか、俺と同じ様にシー!とやってる。俺の娘本当に可愛い!あんまりに可愛いのでそのまま肩車してやる。おー!と声を上げる鈴々マジ可愛い。

 

それはともかく、では明日な、と言って愛紗から離れる。愛紗もはい、と答えて兵の流れに混じる。顔が若干赤いが、まぁ何とか誤魔化すだろう。周りに勘付かれる訳には行かないので、あえてここは離れたのだ。

 

よし、じゃあ鈴々飯食うか。こないだ流琉と開発した豚骨醤油ラーメン、鈴々盛りで作っちゃる!

 

「本当なのだ!?直ぐ行くのだー!!」

 

わーいわーいとはしゃぐ俺の娘本当に可愛い。そんな娘に手を出している事を思い出して思わず死にたくなったが、今は鈴々が優先なので、何とか頭から振り払って、俺たちの兵舎まで歩いて行った。

 

 

 

・・

・・・

 

兵舎にて、鈴々にたっぷりのラーメンを作って、美味しそうに食べる鈴々を見たあと、鈴々は流琉と用事があったらしく、周瑜さんの食事を終えた流琉と2人で出かけて行った。この後は鈴々に仕事はないそうなので、街にでも出掛けたのだろう。

 

俺はどうするかと食器や鍋を片付けて、考えていたら、周瑜さんと黄蓋さんが歩いてきた。日課の散歩だろう。もう少ししたら武器を持って戦闘鍛錬も始めるらしい。それがある程度済んだら送って行く予定である。

 

「道玄ではないか。何をしておるのじゃ、こんな所で。」

 

そうこうしてたら黄蓋さんに声を掛けられた。気付いていたらしい。鈴々と遅い昼飯が終わったところだ、と返し、遅れてきた周瑜さんに挨拶をする。向こうも朗らかに挨拶をするかと思いきや、笑って距離を詰めてきた。

 

「こんにちは、道玄殿(・・・)。」

 

なんかやたらと名前を強調される。なんぞ?よく見たら顔が笑顔で固定されてる。あれ、なんか不機嫌だな。

 

すると黄蓋さんもくすりと笑って俺の腕を取ると、今は儂等だけじゃぞ?とイタズラっぽく言った。いちいち仕草が蠱惑的で困るが、それで漸く理解した。前にもこんな事あったな。

 

「すまない。こんにちは、冥琳、祭。」

 

そう言うと漸く許してくれたのか、周瑜さんも笑ってああ、と言った。

 

2人を普段真名で呼ばないのは、2人が俺以外とは真名を交換していないからだ。真名は神聖なものなので、知ってる人しか居ない場所でない限り、人前ではあまり出さないのか俺ルールである。

 

にも関わらず、うちの女性陣や華琳さん達を真名で呼ぶのは、それが彼女達の要望だからである。何でも嫉妬隊の一件から、俺との仲を他人にアピールしよう、との事である。それまでは心の中ではともかく、人前では基本的に真名を使わないようにしていたのだ。

 

なお、一刀くんとは真名を交換済みだが、劉備さんとはしていない。劉備さん自身が、俺に認められたらにしたい、と言い出したからだ。なんか俺が凄い奴扱い過ぎて笑いそうだが、本人が満足するまではそれに付き合おうと思っている。ちなみに一刀くんが俺の真名を呼ばないのは、劉備さんが認められてないなら、俺もまだまだだ、と自重する方向らしい。2人だけで酒飲む時はたまに漏らすけど。

 

 

「今から散歩に行くんだが、一緒に行かないか?」

 

 

そう問いかけてくる周瑜さん。んー、嬉しい誘いだが、少し前まで周瑜さんや黄蓋さんとの接触が多過ぎて、愛紗達が容赦なく夜に荒れ狂う為、ここ最近は看病時以外は自重している。なので申し訳ないが断ろう、そう思って声を掛けようとして、しかし強引に腕を引っ張られた。意外な事に周瑜さんだ。

 

珍しい、と言うか何故?と思ったが、周瑜さんが良いから行くぞ、と歩き出す。またなんかちょっと不満げである。

 

ちょっと困惑気味に歩いていると、黄蓋さんが反対の腕に絡みつくとカラカラ笑いながら言った。

 

「お主が最近朝と夜の少ししか逢いに来ないから、ずっと文句を言うておったぞ?ま、男の甲斐性だと思って付き合ってやるんじゃな。」

 

文句は言ってない!と周瑜さん。しかし確かに露骨だったかと反省する。如何な理由があれど、真名を交わすほど信頼してもらえたのだ、配慮が足りなかったな。そう思って謝罪する。

 

すると腕の締め付けを強くする周瑜さん。これからできる限り散歩に付き合う事で許すと言うので、了承しておく。黄蓋さんが儂はなるべく酒に付き合ってくれれば良いぞ、と楽しそうに言う。いや、あんたの酒に付き合ってたら肝臓が死ぬよ。毎日じゃん。そういうと儂の誘いを断るのか!と怒られた。

 

するとそのやりとりを見て周瑜さんが笑い、黄蓋さんも笑った。両手に花の状態だが、そのまま歩いて行く。考えてみたら、今はあれだが、いずれは敵対する相手の縄張りに味方が2人だけというのは結構プレッシャーなのかもしれない。これからはなるべく気を遣わねば、と思った。

 

 

・・・とりあえず今はこの状態をウチの女性陣に見られないように祈っておこう。

 

 

 

 

 

 

 

余裕で見つかって、夜酷い目にあいました☆

 

まさかの速度アップ要求とは・・・orz

 

 

 

・・

・・・

 

次の日の夜。

 

すでに秘密の場所の準備は完了し、後は愛紗を連れて行くだけだ。なので俺は皆にかつて仲良くなった兵達と飲んでくると言って抜け出し、今は待ち合わせ場所の城壁の上で愛紗を待っているところだ。

 

しばらくすると息を切らした愛紗が、周囲を警戒しながらやってきた。

 

「すいません、遅れました。風に勘付かれまして・・・。」

 

誤魔化して逃げてきた、と言う愛紗。珍しく白いワンピースの様な服を着ている。相変わらずこの世界の服飾職人は生きる時代を間違えていると思うが、よく似合っているので褒めておく。でも上着は着て来いよと思う。

 

ありがとうございます、と頬を染めて嬉しそうに言う愛紗。相変わらずこういうやりとりは照れるが、まあ喜んでいるから良いとしよう。

 

「それにしても、道玄がこんな風に誘ってくれるなんて珍しいですね。」

 

いつも他の誰かと一緒なのに、とジト目で見る愛紗。心当たりが多過ぎるので、視線を逸らしておく。着替えは持って着たか?あからさまに話を逸らした俺に溜息を吐いて、諦めた様にええ、と答える愛紗。今日はその分頑張ったんで多めに見てください。

 

 

「そう言えば、言われるままに着替えを持って着ましたが、こんな時間にどうするんですか?」

 

 

そう言って周りを見る愛紗。まぁ、夜だしな。とりあえずちょっと寒いだろうと、珍しく着ていた上着を愛紗に渡して着てもらい、そのまま抱き上げる。無論お姫様抱っこである。

 

「きゃっ、どうしたんですか道玄、急にって・・・完全変身?」

 

今からとっときの場所に案内するから、よくしがみついてくれ。あ、舌噛まない様に気をつけろよ。

 

困惑しながらも、とりあえず俺にしがみつく愛紗。離さないようにしっかりと抱きしめると、足に力を込めて一気に跳んだ。

 

「ちょ、道玄!?」

 

一瞬で小さくなる街の灯りに、愛紗が声を上げるが、無視する。距離的にもう2回くらいかな。

 

 

 

・・

・・・

 

 

 

「ここは・・・?」

 

 

仕込みを済ませたとある山の頂上、そこに愛紗を連れて着た。

 

周りには俺が新しく作った新型の風呂専用石釜と、普段俺達が使うテント、そして朝から必死こいて作りまくった愛紗の好物と、この日の為に手に入れておいた酒を並べてある。そして、上には。

 

 

「・・・綺麗。」

 

 

大きく輝く満月が。

 

正直満月を狙ったがここまで綺麗な日になったのは運だ。嬉しい誤算である。雲も雅な程度に残っている。素晴らしいね。

 

街でも見えない訳ではないが、街の灯りの中では感動は半減だろう。と、いう訳で、ここが俺のとっておきだ。連れて着たのは愛紗が初だぞ。

 

「嬉しいです・・・。こんな、素敵な場所だなんて思いませんでした。」

 

 

でもちょっと似合いませんね、と笑う愛紗。うるせいやい。

 

それよりも寒いし、早速だが風呂に入ろうじゃないか。見よ!この力作新型風呂専用大石釜、湯ったり君だ。見てわかる通り、風呂に入りながら酒や食事が楽しめる、超特大の羽板付きだぞ!見所はお湯が溢れても決して料理スペースには行かないこの構造と、お湯を沸かしたり鍋を温めたりできる別離式火鉢がついてるところだ!

 

この日の為に無駄に力込めて作った!あ、風呂入りながら食事は行儀悪い、とか無しな。なるべくツマミ系に収めたので、ゆっくり月見酒しながら露天風呂といきましょう!

 

 

「道玄・・・。ひょっとして、ここ最近コソコソやってたのはこれですか?確かに凄い作りですが。」

 

 

バレたか!元々この場所に愛紗連れてこようと思ってたのさ。だってほら、いつだったか2人だけの時、こうして満月見ただろ?もう随分前の事だけど、あの頃は2人だけだったが、なんか懐かしくなってな。また2人だけで月が見たくなったのさ。

 

 

「道、玄・・・。」

 

 

ぎゅ、と抱きつく愛紗。喜んでくれたようである。うむうむ、頑張った甲斐があったな。そのまま暫く抱き合っていたが、やがて寒くなってきたのか、愛紗が少し震えたので、軽いキスをして離れ、風呂に入ることにした。

 

 

お互いに服を脱いで、軽く掛け湯をして風呂に入る。なんとこの風呂専用石釜、階段付きです。俺の無駄なやる気が滲み出ています。そうして2人で風呂に浸かり、杯を取って月を見上げながら乾杯する。

 

 

「美味しい・・・!これはまた、随分良いライチ酒ですね。」

 

これまたとっておきだ。恋姫世界でもこの時代は薄いどぶろくが基本だが、何故か焼酎やワインなどもある為、こうした果実酒も存在する。中でもこれは旅してる間に仲良くなったとあるじっさまが作る秘蔵のライチ酒で、あまりの美味さに酒好きの星にも飲ませたことの無い、鈴々が初めておとーさんと呼んでくれた時とか、そういう本当に良いことがあった時にしか飲まないスーパー秘蔵酒である。

 

今回は特別に愛紗の思い出に残す為に出してみた。愛紗が実はライチ酒が結構好きなのも関係している。星ならガブ飲みするから出して無いのもあるがな。

 

「そこまで本気で・・・?何かここまでくると逆にちょっと疑わしいですね。何か隠しごとがあったりしませんか?」

 

それはちょっと失礼だぞ!確かに自分でもここまで力込めたの初めてだけど!・・・まぁいいや、とりあえずツマミも勧める。基本は愛紗の好きな味噌味のものだが、この場所と風呂の都合上、冷めて美味しいものがメインだ。唯一の例外は愛紗の大好物であるモツ煮込みだろうか。こちらは別離式火鉢の上で保温するくらいの温度で火にかけてある。あったかいまま食べられる様にだ。

 

なお、最新料理はこのきゅうりだ。梅干しは無いので、塩でつけた杏を代わりに叩いて、ゴマと和え、カチ割りにしたきゅうりと混ぜてある。梅じゃないがカチ割り梅きゅうりである。すっぱしょっぱい、ではなく、甘酸っぱい感じだが、返って濃いめの味付けの口直しにちょうどいい感じである。このサッパリ感を出すのに非常に苦労したのだ。

 

「凄い、どれも美味しいです!・・・初めて会った時から今まで、道玄の料理はいつも美味しいですけど、今日は何だか格別ですね。」

 

ちょっと悔しいですけど、と笑って言う愛紗。愛紗が作ると食材か食材でなくなるからな、と言ってからかうと、むぅ!とむくれる愛紗。可愛い。

 

しかし、何度見ても綺麗な身体である。そしてその豊満な胸を見て傷が残らなくて本当に良かったと思う。いや、結果的に一刀くんではなく俺がもらってしまったが、例え傷があっても一切気にしたりはしない自信がある。だが、やはりこの綺麗な身体には傷がつかなくて良かったと思ってしまう。

 

そうして想いに耽っていると、不意に愛紗がこちらに身体を預けてきた。その動きで体に当たる、長湯できる様にあえてぬるめにしたお湯が気持ちいい。が、愛紗の身体の温もりと柔らかさには勝てんな、と苦笑する。

 

「もう、人の身体をジッと見たと思ったら急に黙って・・・何を考えていたんですか?」

 

いつも見てるでしょう?と微笑む彼女に、先程感じた事をそのまま話す。すると、貴方の愛のおかげですよ、と嬉しい事を言ってくれる。正直その頃は下心でしたと言ったら怒られそうなので、黙って抱きしめる。更にそのまま唇を重ねてより有耶無耶にする。

 

「・・・道玄。」

 

艶っぽい瞳でこちらを見る愛紗を、しかしまだ流石に早いのでもう少し月見酒を楽しもう、と笑って身体を離す。

 

案の定むっ!とむくれる愛紗だが、その次の瞬間にはため息を吐いて、身体を再び預けてくる。そのまま仕方ありませんね、と杯を持ったので、ならいいかと俺も片手で彼女を抱く様に支え、もう片方の手で杯を持つ。

 

2人でそうしてしばらく月を見ながらゆっくりと酒を楽しんだ。

 

 

 

 

 

 

・・

・・・

 

その後、酒やツマミが一通りなくなるくらい時間が経ってから、湯の中で軽く一回愛し合った。

 

 

しかし流石に冷えるので、俺はともかく愛紗が風邪を引く。続きはテントの中で、という事になり、今は2人して身体を拭いている。ああそうだ愛紗!

 

「はい?どうしました、道玄。」

 

どうせならこれを使ってくれないか?そう言って髪留めを渡す。これもプレゼントだ。

 

「これは・・・?」.

 

お前達がいつも肌身離さず付けてくれている、ミサンガと同じく俺のお手製の髪留めだ。流石に多少真桜に協力して貰ったが、俺の完全変身時の髪を使って作った紐と、純銀を使って作ったんだ。いつも同じ髪留め使ってるから、良ければどうかな。

 

「えっ・・・。」

 

たぶんこれで挑戦者あたりが発動する、などとふざけた事を考えつつ、見ると何か髪留めを両手で胸に抱く様にして涙目の愛紗。

 

・・・あれ。何かもっとこう、嬉しい!ありがとう!的な反応を期待していたんだが、好みじゃなかったかな?やっちまった系ですか、これ。

 

と思ったら愛紗が抱きついてきた。しかもこれはあれだ、寂しい時の抱き付き方だ。なんでや、と思いつつ、まだ裸なので風邪引くぞ、とバスローブもどきをかけてやる。どったの?嫌だった?すると頭を、擦り付けるように首を振る。あれ、じゃあなんで?

 

 

「道玄・・・また、私を置いて何処かへ行こうとしてませんか?」

 

 

・・・ほぇ?あまりに予想外な質問である。予想外過ぎてまるで一瞬固まってしまった。なんでそんな考えに至ったのか。そもそも考えた事が無いわけではないが、今まで愛紗を置いて何処かへ行くとかした事はない。計画しても途中で露見したし、俺は女性陣には隠しごとは無理だと諦めている。

 

理解出来なかったので聞いて見ると、あまりにも今日の俺は優し過ぎるので、急に不安になったとのこと。・・・なんじゃそりゃ。普通に杞憂なので安心してくれ、との頭を撫でる。本当ですか、と涙目で見上げてくる愛紗。少なくとも今望まれない限りは離れるつもりはない。

 

「本当は、いつも不安なんです。目を離してしまえば、貴方が何処かへ行ってしまう気がして。流琉の為に一晩帰って来なかった時も、公孫瓚の下で、別々の部隊だった時も・・・。」

 

その気になれば、簡単に私から離れていける貴方だから。

 

そう言ってより強く俺を抱きしめる愛紗。その身体が震えているのは、寒さのせいだけではないのだろう。

 

・・・正直に言えば、ここまで想ってもらえるとは思っていなかった。彼女と身体を重ねるまで、何処かゲーム感覚であったのも確かだ。だが、この想いに言い訳は出来ないと思った。

 

「愛紗、聞きたい事がある。」

「・・・?なんでしょうか。」

 

お前や星は、他者の為にその武を振るいたいと言ったな。他者の役に立ちたいと。だがその武を振るえなくなっても、俺とともにいたいと、そう思ってくれるか。俺と一緒に、生きてくれるか。

 

どういう事ですか、と愛紗が問うてくる。俺は少しだけ迷って、でもちゃんと答える事にした。

 

「恐らく、俺はやがて山に帰らなければならなくなる。」

 

抱きしめる力が更に強くなり、しかし何か言おうとする彼女より先に言葉を放つ。

 

やがて禍いがくる。この中華全土を襲う、放っておけば全てを喰らい尽くす、黒く大きな禍いだ。

 

驚く愛紗を置いて、話を続ける。最初はどうでも良かったこと、黒い禍いでは自分は死なないこと、禍いの前に争う人々を遠くから見ているだけのつもりだったこと。

 

だが、愛紗達を愛してしまった。だから、愛紗達のいる中華を守ろう決めたこと。

 

「黒い禍いの前では、誰が1番とか、そんな小競り合いをしている場合ではない。どんな結果になった所で、全て台無しになる。」

 

 

そして、俺が全力を出しても、薙ぎ払える数には限りがある。横をすり抜けるものは自分達で対処してもらわねばならぬ。だからその時、恐らく俺はこの本性を晒して戦うだろう。

 

 

お前達は俺の本性を知った上で好きだと言ってくれるが、それでも俺は人理の外れた場所に生きる(ケダモノ)だ。全力を振るう俺は畏れられる。それは、人の世に生きられなくなるという事だ。

 

過ぎたる力は個人が持つべきではない。それが人であるなら余計にだ。核ミサイルを好きなように打てる個人、が居たとしたら普通は怖いだろう。何かの拍子に打たれてしまったら目も当てられない。それが故意かどうかなんて些細な問題だ。打てるかどうかが重要なのだ。

 

 

実態のある脅威として認識されれば、やがては排斥される。一緒にいる彼女達も巻き込んで。そんな事で俺は死なないだろうが、人間である彼女達は別だ。どんなに強くともやがては力尽きる。そうなれば俺はこの国全てを破壊する悪鬼になる。それは駄目だ。それでは意味がない。

 

 

今だってそうなってないのは、たくさんの人間がいる大規模戦闘では一時的に皮膚の色が変わる程度の、簡易変身までに抑えて、その上で敵を全滅させているからだ。

 

俺はお前達が好きだ。だからお前達が生きるこの大地を護る。だが、お前達を護るには、やがて人から離れなければならないと思う。

 

だから、その時が来れば俺はきっと山に帰る。そして人が知らぬ場所で、やがて静かに死のうと思う。

 

 

「それでもお前達は着いてくるか?人の為に磨いた武を捨てて、俺とともに人の居ない場所に来るか?」

 

 

そう言って彼女を見る。なんと言っていいかわからない顔だ。当たり前である。いきなりこんな事言われても訳わからん筈だ。そもそもこの世界で、五胡襲来があるかどうかも微妙なので、現時点ではただの厨二である。

 

まぁ、断られたら三日三晩落ちこもう。うん。

 

すると、散々悩んで居たような愛紗がおずおずと切り出した。

 

「ええと、色々何を言うべきか悩みますが・・・とりあえず1つだけ。そこはお前達ではなくお前は、でしょうが!!」

 

バシィン!

 

そう思いっきり頰を叩かれる。そこかよ!?と驚愕する俺を無視して、叩いた手をヒラヒラ振る。どうやら逆にダメージがいったらしい。なんかゴメン。

 

「全くもう、ここまで御膳立てしておいて、最後の最後で梯子を外すんですから!せっかく幸せだったのに・・・!」

 

ぷりぷり怒る愛紗。いや、あーた結構不安そうだったり色々してたよ。怒られるから言わないがな!

 

 

大きくため息をつく愛紗、あ、これ呆れた時の奴だ。そう考えた瞬間愛紗が飛びついて来た。俺の首を抱えるように抱きついて、唇を重ねる。舌は入れない。そのままでたっぷり10秒は重ねて、離れる。

 

「・・・前からずっと言っているでしょう。貴方は私のものです。何があっても絶対に離してあげません。」

 

そう言って笑う愛紗。月の光が柔らかに彼女を照らす。

 

・・・駄目だこりゃ。敵いっこねぇ。

 

嗚呼、俺は本気でこいつにヤラれてんな。そう心底理解してしまった。なぁ愛紗。

 

「?なんですか。」

「愛している。」

 

そう言って彼女を抱きしめ、熱いキスをした。

 

 

 

 

 

 

 

・・

・・・

 

 

熱いキスをした後、流石にずっと裸で抱き合っていたのですっかり湯冷めしてしまい、これはいかんともう一度風呂に入って温まってからテントに入ることにした。

 

詳しい話は今度する、と約束させられたが、愛紗もとにかく今は身体を重ねたいのだろう。珍しく俺もだいぶヤル気なので、さぁしっぽりやろう、そうテントを開いたところで、

 

 

「遅かったですな、我が主人。」

「全くだ。待ちくたびれたぞ、道玄。」

 

何故か全裸の星と秋蘭が居た。・・・ファッ!?

 

馬鹿なっ!?どうやってここが・・・。いや、それ以前にどうやってこの計画を察知した。真桜がバラす筈はない。何故なら次は彼女の番だからだ。

 

「・・・どういうことですか、道玄?」

 

一気に不機嫌になる愛紗。待て、落ち着け!確かに俺は愛紗と2人のつもりで準備した!!というか、そうでなくても星はともかく秋蘭は呼ばないわ!お前仕事どうしたんだよ!

 

「・・・確かに。どういうことだ、2人とも。」

 

そう言って怒気を溢れさせる愛紗。これは俺でも怖い。しかし星は鼻で笑って、武器もないのに強がっても無駄だと切り捨てる。秋蘭は珍しく春蘭に仕事を投げたらしい。あ、春蘭これは死んだな。普段春蘭の分まで秋蘭が仕事してるからな。今頃真っ白になっているだろう。

 

「いや何、昨日主人が愛紗とコソコソしているのを目撃しましてな。最初は昼食の誘いかと思ったのだが、わざわざ誘いに来た割にはそのまま別れていったのでこれは怪しいと思ったのですよ。」

 

「城壁から愛紗を見る道玄を見つけてな。どうも様子がおかしいから星を呼んで聞いてみようと思ったら、見計らったように降りて来たからこれは何かあると踏んでいたんだ。」

 

 

なん・・だと・・!あの瞬間から気付かれていた?い、いやそうだとしてもどうやってこの場所を!

 

 

「朝方太陽が出てすぐ抜け出した主人の後ろをこっそり追いかけました。」

 

「大変だったぞ。匂いで気付かれないように、常に風下に回りながら離れて追いかけてたのに、街の外に出たら一気に跳んで行ってしまうから。まあ幸い目的地付近までは目で追えたから助かったが。」

 

 

とはいえ、離れた山の頂上だから来るのに苦労したがな、とニヤニヤ話す秋蘭。星もニヤニヤしながら主人が必死に料理したり、私も知らない風呂釜を出しているときは思わず今すぐ出て台無しにしてやろうかと思いました、などと言う。

 

「しかしまぁ、愛紗がここ最近割を食っているのも事実。なので、流石に邪魔をするわけにはいかない。だから1番良いところは愛紗に譲ろうと、溢れる嫉妬を抑えて我慢し、最後だけ混ぜて貰おうと思ったのですよ。」

 

「私はどさくさに紛れて今日こそ最後まで出来ないかな、と。」

 

そこで今日は引こう、とならない辺りが流石である。というか、なんか凄い不機嫌だな。あ、秋蘭、お前は帰れ。

 

「べっつにー?我が主人は愛紗だけ特別扱いだな、とか、愛紗には普段しない話もするんだな、とか、愛紗には素敵な贈り物があるんだな、とか不満に思ってたり、怒ってもないでありまするよー?」

 

「断る。華琳様にもしばし時間を貰ったし、人数が少ない今日が好機。逃す気はない!」

 

いかん、珍しく星がマジ切れである。目が全然笑ってない。メンマを誰かに横取りされてもここまで怒らなかったのに。キャラが変わるレベルでキレてる。秋蘭は本当にどうして良いか分からない。どうしてこんなになるまで放っておいたんだ!

 

「いい加減にしろ、星!珍しく道玄が私のためにここまでしてくれたのだ。今日は最後まで道玄は私のものだ!絶対に譲らない!分かったら帰れ!」

「断固拒否する。もう十分楽しんだだろう?ここからは私が我が主人を独占させてもらう。」

 

そう言うが早いか、星は愛紗を突き飛ばして俺に飛び掛かってくる。そのまま唇を奪われ、寝台に引き倒される。愛紗がなぁッ!と叫ぶのが横目に見えた。

 

そのまま舌を絡ませて、太い糸が引くほど唾液を交換したあと、情欲と嫉妬に燃える瞳でこちらの目を見つめながら、俺の上にまたがる星。

 

「我が主人の愛紗贔屓には困ったものです・・・。こうなったら愛紗よりも私の身体が良いと認めるまで、許してあげませぬ。覚悟してもらいましょう。」

 

ちょっと展開について行けないんですが。思わずボケっと流されてしまった。あ、裸でのまま愛紗が返せと星にしがみついた。2人が争っているあいだに、素知らぬ顔で秋蘭がやって来て、俺の唇を奪う。あの時と違って今回は舌の動きが滑らかだ。上手く主導権を取れない。やがて糸を引きながら唇を離すと、艶やかに笑って言う。

 

「ふふ、相変わらず愛されてるな。妬けてくる。・・・ところで道玄、覚えているか?前回別れる前に言ったことを。」

 

今までふざけていた彼女の目が、急に獲物を狙う蛇のように鋭く、深い情愛が込められた瞳に変わった。しまった、ここまで全て演技か!?

 

「さあ、もう逃がさないぞ?・・・強制的に私のものにしてやる。」

 

 

いつの間にか力が入らない!?まさかこれ、あの時のお香?!マズっーッ!

 

 

逃げないと、そう思った瞬間、身体押さえつけられる。誰だ!

 

 

「何処に行こうと言うのですかな、我が主人?今日という今日は許さないと、そう言ったではありませんか。」

「駄目ですよ、道玄。こうなったらここで改めて私だけを選んでもらいます。いえ、それ以外選ばせません。」

 

 

さぁ、覚悟して下さい、と3人の声が重なる。あっ、これなんかアレ、思い出したくない記憶が蘇って来たぞ!待って待ってやめてちょっと乗らないでストップストップ!!あ、ちょ

 

 

・・・アッー!

 




彼女達の速度アップ理論。

「何日もやってる時間はない?なら速度を上げて回数と密度をこくすればいいのよ!」

男は死ぬ。
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