やぁみんな、傍目から見たら暴力で押さえつけた女の子を攫って餌付けする犯罪者なオーク系転生者の俺だよ!
コトコト。
女性陣が交代で風呂に入る中、俺、流琉、凪の3人は絶賛料理中である。
天幕前には合計10になる鍋と焚き火、これ全てウチの天幕内で消費されるとは思うまい。今だって女性陣が風呂に入っているから、今まで使った事のなかったネタアイテム、大寸胴鍋パート2を四次元袋から引っ張りだして使っているのだ。この大寸胴鍋、高さにして約2m、直径にして6mのアホみたいな巨大鍋なのだが、今はそれに満タンにちゃんこを作っている。出しは2日前に狩った野生のダチョウのガラと、少し前からせっせと作り貯めしておいた各種キノコの乾物だ。ダチョウのガラだけで100キロ近い量があるが、鍋に使う食材の量を考えれば可愛いものだ。
今だって大寸胴鍋を調理に使っても、ここまで満タンに作った事はない。一般人なら100人分以上作れるからな。流石に使いにくすぎて半分くらいの高さの鍋を作ったくらいだし。
しかし今回は2次創作に名高い超絶大食いの呂布さんがいる。まだ来てないが、どうせいつも通り華琳さんと一緒に季衣ちゃんもくるだろう。そうなれば恋姫世界の三大食いしん坊が全員揃う事になる。いつもの量よりちょっと多く、で足りるはずもない。なので珍しく鍋調理を俺がしている。デカすぎて俺じゃないとこの鍋使いにくいというだけだが。鍋かき混ぜるだけで結構な重労働だからな、これ。
凪には地味に難しい米の炊き込みを全部任せた。給食センターにありそうな巨大釜を2つ炊いてもらっている。火加減間違えると釜1つ台無しになる予断の許されない大事な作業だ。最近上手くコメを炊けるようになって来たので、今回も任せてみた。
流琉は今日1番ハードだ。その他の料理を全てぶん投げた。いつもなら俺も手伝うのだが、今回は彼女1人だ。その上でとても楽しそうなので、いつか彼女に店をもたせてあげたいと思う。今だってこっそり貯金してるしな。エンゲル係数のクソ高いウチではなかなか大変なのだ。稼ぎが稼ぎなのであとちょっとではあるが。
そうこうしていると、孫策達と白蓮がやって来た。またかよお前ら、いい加減自軍で食えよ。食費請求するぞ?孫策が間髪入れずにツケで、とほざき、黄蓋さんが身体で払うと笑い、白蓮が今度持ってくる、と真面目に返す。白蓮にだけ繋ぎの金平糖をあげることにした。何気に新作タイプである。
ぶーたれる孫策は周瑜さんにぶん投げ、黄蓋さんにはいう通り早速身体で払ってもらう。ほぅ?と楽しそうにする黄蓋さんに、ギラリと俺を睨む2人だが、誤解はすぐに溶けるから無視だ。流琉、必要な作業黄蓋さんに割り振って。食材切らせても皿洗いさせてもいいよ。他国の武将?気にすんな、本人が言ったから良いんだよ。
なっ!と驚く黄蓋さんだが、頑張れば特別に二合付けよう、というとやる気を出した。さらに私にはー?とほざく孫策を、孫権さんにぶん投げて、調理続行である。
すると華琳さんたちもやって来た。特に戦ってないはずなのに、荀彧さん達が疲れているが、たぶん俺のせいなので、最新作のチョコレートを渡して労う。何故かカカオが売ってたから、前世知識を頼りに作ってみたのだ。単純なミルクチョコだが、牛乳の質がそこまで良くないので、前世で一般的な板チョコまでは及ばない出来だ。今は流琉と品質向上研究中である。
とりあえずまだ時間がかかるので、風呂に入ってこい、と指示すると、何故か春蘭と孫策が複雑な目で見てくる。なんだよ?
「べっつにー?私があれだけやっても勝てなかった呂布に、あっさり貴方は勝っちゃうんだって思っただけよ。不満とかあるわけじゃないわ。」
「ぬぅ、私では服さえ傷1つつかなかったのに・・・!」
あれを勝ったと言っていいのかは疑問だが、2人は呂布と俺の戦いに不満があるらしい。むしろ相手が疲れて負けを認めただけなので、ボクシングの試合なら俺の反則負けな気がする。まぁ知ったことではないので、頑張れとテキトーに返して、2人を風呂に追い払う。
あ、やっぱ待った春蘭。なんだ?と振り向く春蘭の頭を両手で挟むように持ち上げて、顔を近付ける。こんな事しなくても分かっていたがノリだ。なっ!と赤くなる春蘭を無視して、彼女の目を見る。やはりちゃんとついている。確か本来張遼と虎牢関での一騎打ち中に片目を失う筈だから、俺が汜水関で張遼を捕らえてしまったから無事だったのだろう。
無意識というか完全な偶然だが、例え本人が気にしないとしても、潰れないで良かったと思う。ファン的には大事なトレードマークなのかもだが、俺にとっては馬鹿だが大事な友人だ。一生ものの傷は負わない方がいい。とりあえず確認はすんだので頭を撫でて、もういいぞ、と風呂に追いやる。なんだ貴様!と春蘭が喚くが無視だ。
さて、料理再開と振り向く。メッチャジト目の流琉と凪。ヤベッ、忘れてた。案の定、どういう事ですかと2人に問われるが、まさかこの戦で本来片目を失う筈だった、とか言えるはずも無い。どうにか誤魔化し(最終的に2人と一緒に風呂に入る、と言う条件を飲んだ。地味に最近だと愛紗以外一緒に入ってない。)、調理の仕上げに取り掛かる。
調理が完成したところで、風呂上がりの女性陣が卓や食器なども並べてくれたので、盛り付けて準備は完了である。いつもはだいたい俺の隣に愛紗と鈴々が陣取るが、鈴々の代わりに湯上りでちょっと髪がまだ湿ってる呂布ちんと陳宮さんが座る。尚別に鈴々は離れたところに座ってはいない。さらにズレて俺の膝の上に来ただけだ。普段は行儀悪いから愛紗が許さないが、今日はフル人数にプラス2人なので、ちょっと狭い。なので特別だ。鈴々が俺を見上げてニパーッと笑う。うちの娘マジ天使。
後から来た華琳さんや孫策達も席に着いたので、号令をかけて食べる。今ではいただきますとごちそうさまがちゃんと根付いている。良きかな良きかな。ちなみに使い始めたのは一刀くん、ということにしてある。その前から使ってたけど、何も問題はないな。
鈴々や季衣ちゃんはいつものこととして、最近加わった華雄や張遼も、結構食べる。流石に鈴々達程ではないが。2人も孫権さん達も、俺たちの味付け(忘れがちだが味噌や醤油はまだない設定。)に早くも慣れたようで、美味しそうに食べている。うむうむ、と大家族のお父さん的立ち位置で見ていると、陳宮さんと呂布さんが手をつけてない。どした?毒は入ってないぞ。
「・・・食べていいの?」
ここに座らせて食器まで用意してあるのに駄目だという筈ないやん。食え食え。ちゃんとたくさん用意してある。好きなだけ食べなさい。あ、陳宮さんは好き嫌いしちゃ駄目だよ!
「ねねは子供じゃないですぞ!」
はは、そうだねー。子供はみんなそういうけどそうだねー。適当に流して頭を撫でる。やめるのですぞ!とわちゃわちゃする陳宮さんは可愛い。その隣では呂布さんが霞と華雄に大丈夫だから食え!と勧めている。うむうむ、もう大丈夫だろう。
やがてゆっくりと箸を持った呂布さんは、一口食べたと思ったら、そのまま一度も止まらず食べ始めた。もぐもぐ、みまみまと常に頬袋がパンパンのまま次々と料理を口に入れていく。すごいなアレ、どんな原理だろうか。
その圧倒的食事量は見るものも圧倒する。季衣ちゃんと鈴々で慣れてる流琉でさえ驚いているが、俺はたくさん食べてくれるので大喜びである。美味いか?
「みまみま。」コクン
ならいい、あそこの大鍋の中にあるちゃんこと、あっちの釜のご飯はお代わり自由だ。好きなだけ食べなさい。ほら、陳宮さんもお食べ。おっきくなれないよ!
ねねは子供じゃないですぞ!と再びプンプンな陳宮さんだが、呂布さんがちんきゅー、これ美味しい、とあーんしてからちゃんと食べ始めた。なんだかんだお腹空いてたらしい陳宮さんもよく食べる。よかよか。おや、呂布さんいい食べっぷり。ウチの鈴々や季衣ちゃんより食べるんじゃね?
「むっ!負けないのだー!」
「僕だってまだまだ食べられるよ!」
なんか2人の闘争心に火がついたようで、2人も食べる速度がアップした。流琉が2人に溢さずゆっくり食べて!と言うがまるで聞いていない。良いじゃないか流琉、美味しそうに食べてくれてるし。
「はぁ、兄さまがそうやって甘やかすから2人の行儀がよくならないんですよぅ。」
おっと、薮蛇だった。笑って誤魔化しておこう。ははは、あれ、流琉が呆れ顔だ。
「ちょっと、なんで祭だけお酒ついてるのよ!私には?」
孫策が黄蓋さんを指差して愚痴ると星もそうだそうだと言い出した。うっさい黙れ、黄蓋さんは調理手伝ったから良いんだよ。俺は調理を手伝うもの以外の要求は聞かん。それ以外は完全に俺と流琉の独断と偏見でだします。あ、もちろん凪と流琉は好きなこと言って良いからね。
調理しない連中が一斉にぶーたれるが無視だ。凪と流琉だけ苦笑いでありがとうございます、と返す。あ、ごめん前言撤回。愛紗、お前だけは材料次第で聞くから料理に手を出すなよ。どうしても作りたいときは俺と流琉と凪、三人の厳正な監視の元で頼む。
「それはどういう意味ですか、道玄。」
そのままの意味だ。お前が作った自称ホイコーローと自称麻婆豆腐という2つの暗黒物質を忘れたとは言わせん。あれのせいで俺と一刀くんは丸一日寝込んだからな。キングコブラを毒腺ごと食って無傷な俺がだぞ。あれで散々鈴々に泣かれたんだぞ俺。
「ぐっ!・・・」
「あの時はおとーさんが死ぬかと思ったのだ!食べ残しを捨てたらその時だけ野良犬が生ゴミに寄ってこなかったのだ!」
うう、と愛紗が落ち込むが、この時ばかりは俺たちも慰めない。最近入った霞と華雄、孫策達は知らないだろうが、他のメンバーは愛紗の料理の威力を知ってるからな。ぶっちゃけ俺を寝込ませた事実を鑑みるに、呂布さんの全力より攻撃力が高い。それすなわち食らったら終わりということである。
そんな風に和気藹々としてたら、先ほどからモジモジしてる孫権さん。トイレかしらと気にしないようにしてたら、それに気付いた孫策が、どうしたの蓮華?と聞く。ああ、デリカシーない奴、と思ったら俺が間違っていたらしい、唐突に羌毅殿!と声をかけられる。おう?なんぞ?
「ちょ、調理を手伝ったら、本当に好きな料理をお願いしても良いのだろうか?」
その言葉に甘寧さんがなっ!と驚く。なんか騒がれる前に構わないと言う。その時の材料次第だがね。なんか気に入ったのあった?チャーハンの上にふわふわの卵とエビの入った白いタレがかかったやつ?んん?あー、思い出した。エビマヨソースのチャーハンオムライスか。3日前にノリと気分で作ったやつな。美味しいもの3つ合わせたら最強、とか流琉と2人で作ったなそんなの。あれならまだ材料あるし良いよ。
孫権さんが本当かっ!と喜び、甘寧さんが孫権様いけません!と止めるが、甘寧さん以外が全員賛成に回った。というか黄蓋さんがそれならお主も手伝え、と笑って言い、孫策と周瑜さんが正式に命令したので断れなくなったらしい。ガクリ、と肩を落とす甘寧さん。御愁傷様です。
クイクイ、とズボンを引っ張られたので見てみると、呂布さんがこちらを見ている。ん?どしたん?
「・・・それ、恋も食べたい。」
良いよ。その時は一緒に作ってあげよう。そう言うと、彼女は嬉しそうに微笑んだ。表情の変化こそ僅かだが、俺には分かる。彼女に尻尾があればとても勢いよく振られていた筈である。うむ、実に可愛い。
あ、愛紗、あくまで小動物的意味なんで、気にしないで。愛紗の方がもちろん可愛いよ。
「貴方も懲りないわねぇ・・・。」
懲りないんじゃない、学習出来てないだけだ!と胸を張って華琳さんに返すと余計に呆れられた。ふふふ、もうその程度のジト目じゃ落ち込まないぜ荀彧さん。
「・・・お前は、ねね達を殺さないのです?」
ほぇ?食事中にいきなりなに陳宮さん。孫策といいそんなに殺されたいの?え、違う?ならいいじゃん。俺も約束破る気はないよ。え、なに孫権さん、孫策がどうしたって?なんだ皆言ってないの?そいつ初対面で会話もしないうちから味方のはずの俺にいきなり斬りかかってきたんだぜ。そんで失敗したら殺せ!って喚いてたんだ。後で理由聞いたら勘とか言ってさー。
ちょ、なんでバラすのよ!と慌てる孫策に、姉様・・・?と俺を叱る時の流琉みたいなオーラで詰め寄る孫権さん。いいぞー!やれやれー!ん、なに陳宮さん。約束?いや呂布さんとしたじゃん。皆に手を出さないって。砦にいた全員と君ら含めて手を出さない、ってことじゃろ?嘘はつくけど約束は守る男よわっちは。ちゃんと砦の兵も華琳さんや白蓮が引き受けてくれたっぽいし、安心しなさいな。
「お前・・・!さては分かっててなにも言わず逃げたな!?めちゃくちゃ大変だったんだぞあの後!!」
良いじゃないか、人手足りなかったんだろ白蓮。華琳さんも董卓軍の精強な涼州騎兵が欲しいって言ってたし。ちょっと事後処理ぶん投げただけじゃないか。元々俺にそう言う処理できないしまた桜鍋作ってあげるから許しておくんなまし。
「え、ホントか・・・って止めろ!お前の料理のせいで騎兵の馬が食べ物に思えちゃうようになったんだぞ!?」
ははは、知ったことか。ああでもかの有名な白馬義従?だっけ?それが壊滅した理由が美味しかったから、だったら爆笑だな。色んな意味で後世に残るぞ?挑戦してみないか白蓮 笑
するわけないだろ!と怒る白蓮を馬肉のたたきを差し出しつつ宥める。みんなもそれぞれ楽しそうに会話している。うむうむ、和やかで良い雰囲気だ。どこか呆然とする陳宮さんの頭を撫でて、そのうち慣れるよ、と笑う。
だから今は分からなくても大丈夫、安心してお食べ。そう言うと彼女は俯いて、また食ベ始めた。うむうむ、ちびっ子は深く考えなくても良いのだ。ん?なに白蓮。ああそれうまいっしょ。ポン酢も良いけど、ごま油と塩で食べてもうまいぞ。え、何の肉かって馬肉だけど。
「うがー!またやられたぁぁあ!!」
はは、わろす。
⬛️
夜。
華琳さん達や孫策さん達が帰り、粗方の処理が終わった諸侯も、僅かな寝ずの番を置いて、全ての天幕が、静まりかえっている。
当然の様にやってきた秋蘭は、少し前に一対一で相手してもう返した。他のみんなには我慢させる形になるので、街に着いたら頑張ることを約束させられた。うう、自業自得とはいえ厳しいなぁ。
「団長も大変やなぁ。あ、ウチは愛紗と一緒の時だけでええで。」
「大丈夫か?私には何もできんが、無理をするなよ。」
霞、慰めるふりして更に追い討ちかけるの止めろ。あとしないぞ。今の面子だって愛紗妬いちゃうからな。お前と一緒とか何されるかわからん。というか別に強制じゃないし参加しなくて良いです。華雄、ありがと。お前本当に良いやつだな。
何やてー!と憤慨する霞を黙らせて、そのまま抱えて大寸胴鍋に入れる。中には既に呂布さんがステンバーイしていて、華雄さんも乗り込んだ。ちゃんとその縄で身体固定しとけ、落ちたら洒落にならんからな。
「道玄、やはり私も・・・。」
愛紗が俺の腕を掴んで言うが、すまんと謝る。流石に道案内の武将3人(武器持ち)と、救出予定の2人のスペースを考えたらこれ以上は乗せられない。我慢してくれ。
「本当に行くのですか、主人。いえ、主人を信じてない訳ではないのですが・・・。」
「流石にいきなり董卓さんが善人だから助ける、と言われても・・・。」
まぁ信じられんのも分かるがね。さっきも言ったがたぶん間違ってないよ。事実洛陽からくる商人は全員、袁紹さんの言う暴政なんてことを知らなかったし、霞や華雄もデタラメだ、と言っている。更に他の諸侯が内通しようとしたら全員に突っぱねられたって話だし、本当に暴政悪政の犯罪者なら董卓軍のあの忠誠の強さはあり得ない。何より、袁紹さんが胡散臭い。
「?それはどういう・・・?」
たぶん、袁紹さんがこの戦を起こした理由というか、きっかけは分かる。あの単細胞っぷりと、目立ちたがりな性格を考えると、帝の関心を得て、自分より民に人気のある董卓さんが妬ましかったとかそんなんだろう。普通にクソな理由だが、そんな彼女だからこそ彼女が反董卓連合なんて考えつくとは思えん。名家である自分の血筋と権力を誇りに思う彼女なら、こんなわざわざ他人を巻き込んで功績を奪う機会を与えないはずだ。
実際のところはともかく、袁紹軍が全軍を出せばそれだけで董卓軍と張り合える人数が集まるはずだし、こんな丁寧に各諸侯を集めたのもおかしい。嫌いな筈の曹操さんや、端っこの方の白蓮さえ巻きこんでいる。いくら何でも細かすぎだ。彼女にできる芸当じゃない。
というか、董卓さんが帝を助け出して匿いだしたのはここ2ヶ月も経ってない筈だぞ。しかも反董卓連合の連絡が来たのは董卓さんが帝を助け出してから三週間くらいのはずだ。何故もう悪政の噂が流れる?政はそんなに直ぐに結果が出るほど楽じゃないぞ。1ヶ月かそこらで民が反発起こすような悪政なら、もっと噂が聞こえて来てもおかしくないのに、悪政の噂は流れて来ても、その中身は流れてこない。何を持って悪政とした?
「確かに、言われてみれば不自然な点だらけですが・・・。では結局、誰が董卓殿を悪だと言ったのですか?理由も不明です。」
だからそれが黒幕だろう。わざわざ袁紹さんに入れ知恵してまで他の諸侯に董卓さんを討たせたかった・・・。それはつまり、自分では董卓に勝てず、それでいて董卓が帝を擁護していると都合が悪い人物・・・誰だか分かるか。
「まさか、十常時・・・!?」
たぶんな。誰だかは知らんし、どうやったのかも知らんが、そもそも帝の権力を使われて困るのは、元々使ってた連中だけだ。その理由で行くと十常時以外には帝本人と何進くらいしかいないはず。その何進は十常時との争いでもう居ないとなれば、後は十常時だけだろう。帝本人に董卓を討つ為の力が用意できるくらい自由があるなら、董卓さんが無茶な悪政働くくらい好き勝手できるとは思えんし。
そこまで話したところで、周りが静かな事に気付いた。見ると全員がこちらを呆然と見ている。先ほどからあまり口を挟まなかった軍師組や、あえて黙ってた張遼さん達もだ。
・・・あれ、なんだ?どうかしたか?
「ああいえ、分かっては居るのですが・・・。」
「おにーさんがまともな考察すると違和感ありますー。」
「はー、団長意外に頭も回るんやなぁ。」
「兄さま、ちゃんと考えてたんですね。」
・・・ひさびさに受けたなこの扱い。もういいけどさ。
いいやもう。説明めんどくさい。行くぞ。あ、呂布さん、君の家族である動物達は曹操さん達に頼んだから、すまんがもう少し待ってくれ。街に着いたら曹操さんがそれとなく保護してくれる筈だ。流石に数が多いから今回は無理だが、必ず全員連れ出すから。
「・・・大丈夫。今はゆえとえいが優先。」
「にしても、どうやって街に入るのだ?私達をこの鍋に入れて運ぶのは分かったが、街の検問で見つかるぞ?無理矢理突破するのか?」
「それに、賈詡っち達が素直に街にいるかなー?もう逃げ出してるかも知れへんで?」
大丈夫大丈夫。跳んで行くから。もし董卓さん達が見つからない場合は、彼女達の私物を探してくれ。それから匂いを辿る。
何言ってんだこいつ、という顔をする2人の前で完全変身、月明かりを俺の長い金髪が反射して、俺の周りを薄く照らす。陳宮さんが大声を出しそうになって、鈴々が口を押さえた。驚いて声も出ない3人に手を上げて、内緒な?と頼む。
さて、じゃあ3人共縄に掴まれ。武器の固定は忘れてないな。よし、行くぞー?
「道玄。」
ん、なに愛紗。そう返す前に口付けされる。お前な、嬉しいけど完全変身時は止めろ。牙が危ないだろ。
「道玄になら平気です。・・・ちゃんと帰って来てくださいね。」
安心しろ、朝までには帰るよ。あ、他のみんな、続きは帰ってからな。じゃ、行ってくるわ。
そう行って3人が乗った大寸胴鍋を背負い、虎牢関の方へ走り出す。あ、そうだ3人共。
「なんや!」
「なんだ?」
「なに?」
舌噛むから口閉じてろよ!そう言って地面を蹴る。一瞬で虎牢関を遥か飛び越え、少し先の街の明かりが見えた。
「「「〜〜〜ッッ!!」」」
3人が驚愕するのが分かるが、気合いで武器を放してないようなので良しとしよう。この分ならちょっと助走すれば後二回で何とかなるな。
よっしゃ、張り切っていきましょうかね!
・
・・
・・・
なるべく人気のない暗い裏道に、今日は両手も使えるのでラージャン着地!!これなら音もあんまり出ない。周りの住宅の人間が不思議に思うかもだが、そのまま止まらずに走って離れたので大丈夫だろう。完全変身を解いて、大寸胴鍋を下ろす。着いたぞ、3人共。
「・・・驚き過ぎて、死ぬかと思うた。」
「まさか本当に外壁を跳び越えて入るとは・・・。」
「・・・ちょっと楽しかった。」
2人に比べると呂布さんは元気だ。うむ、流石は万夫不当。やりおる!
そんな事考えてたら、その呂布さんがジッと見てくる。なんぞ?
「・・・やっぱり、あの時本気じゃなかった。」
あれま、分かった?じゃない、一応本気だったよ?全力じゃないだけで。
「嘘。あの時ずっと当てる気無かった・・・。」
ぬぅ、流石は万夫不当。渾身の演技がバレてしまった。ん?なに華雄?何のためか?・・・さてね。大した理由じゃない事だけは確かさ。いいから行くぞ、ほら案内頼むよ。多分城にまだいる筈だし。
無理矢理ぶった切って促す。まだ何か聞きたそうだが、状況を理解してる3人は、走り出した。黙ってついて行く。
流石に慣れている3人は、夜にも関わらず人気のない道を選んで進み、直ぐに城の裏門へとたどり着いた。
「・・・流石に、見張りがいるか。」
「あれ、うちの兵士とちゃうな。装備が違う。張譲の兵やろか。」
「・・・塀、越える?」
というか張譲さんて誰?え、董卓さんを疎ましく思ってる十常時の人?多分反董卓連合の黒幕?知ってたんなら教えてよ・・・。
とりあえず見つからないようにさっくり城壁を飛び越える。で、董卓さんと賈詡さんの部屋は?
「部屋はあそこや。あの光があるところ。」
ふむ、なら外から行くか。3人共掴まれ。それで理解した3人が大寸胴鍋に乗ったところで、足だけ弱変身。音を立てないように、優しく跳ぶ。下を見ると見回りの兵が気付いた様子はない。そのまま音を立てないように静か部屋の近くまで跳び、近くまで来たら壁を登る。なぁにラージャンの身体能力があれば余裕です。
そのままヤモリのように壁を登ると、部屋の明かりのを、そっと覗き込む。ちょうど女性2人と、よくわからんおっさんが話してた。
あ、これ大寸胴鍋入らんな。よし、3人共、俺を伝って中に入れ。1人知らないおっさんが居るけど、対処任せた!そう言って窓枠にぶら下がり、彼女らに俺の体を登ってもらう。
「分かった。」
そういうが早いか、2人を置き去りに呂布さんがしゅぱっと侵入、2秒後にはぐえっと喘ぐ声が聞こえて、女性2人の声がきこえた。
「恋さん!!」
「恋!無事だったのね!」
喜ぶ2人に助けに来た、と言う呂布さん。やだ、この子ヒーローじゃない。と感動する俺を乗り越え、華雄と霞も部屋へ入る。
「華雄、霞まで!汜水関で捕まったって・・・!」
「運が良くてな、助けられたのだ。陳宮も無事だぞ。」
「陳宮も!?良かった・・・って待って、誰によ?」
「んー、うちらもよくわからんのやけど、とりあえず団長やな。」
団長、ですか?と不思議そうな董卓さんに、呼ばれた気がしたのでレッツ☆侵入!周りに人居ないからゆっくり入れば大丈夫、窓は崩れるけど大きな音は立たないさ!とゆーわけで、私が、窓を壊して来た!
「なっ・・・!あんた誰よ!」
不本意ながらそこの2人の団長さ!知らない内に傭兵団の団長にされた可哀想な蛮族の羌毅と申す。宜しく、月一で超絶不幸な眼鏡っ娘よ!
「何であんたがそれを知って・・?あんた達が?」
「えっ、いやウチは教えてへんで!華雄、お前は?」
「私も言ってないぞ。恋、どうだ?」
「恋も、言ってない・・・。」フルフル
そりゃ聞いてないもの。知っていただけさ!それはさておき、始めまして董卓殿。君が悲観する未来を壊しに蛮族が来たよ!安心してくれ、君の意見は聞いてない!もし悲観とかして無かったら普通に壊しに来たよごめんね!
「えっ・・・えっ!?」
慌てる董卓さんを無視して、大寸胴鍋鍋を下ろすと、3人に大寸胴鍋に入るように言い、董卓さんを脇から掴んで大寸胴鍋に入れ・・・入れようとしたがちょっと服が長くてヒラヒラ鬱陶しい。なんかもっと簡素なのないの?
「ちょっと!あんたいきなりなにすんのよ!?月に何かしたら許さないわよ!」
ああはいはい、分かったから騒ぐな。ちょっと静かに。人が来ちゃうでしょ。見つかったら面倒だし黙って乗りなさい。董卓さん助けたくないの?ってああ、君董卓さんの代わりに疑心暗鬼になってるとかそんな話なんだっけ?まぁいいや、俺を信じろとは言わないから3人を信じて乗りな。心配しなくても、君らの首が必要ならわざわざこんな真似はしないよ。というかそれなら1人で乗り込む。
ついていけない賈詡さんは服装的に問題ないので普通に大寸胴鍋に放り込む。董卓さんの服は?いいや諦めた。はいはい乗って乗って。
「ま、待ってください。私は責任を取らないと、私が」
皆目知らぬ。言ったはずだ、君の意見は聞いてない。反省も後悔も何もかも後にしろ。俺はただの蛮族なので、見つけた可愛い女の子2人を攫うだけです。3人共、乗ったな?よし、城出たらさっくり跳ぶから、2人を宜しく。・・・霞、華雄、なにか?
「団長、それがあかんのやと思うで。」
「不本意だが、霞に同意見だ。」
・・・わっつ?ジト目で文句を言われたので見てみると、何だか顔を赤くする3人。んんー?あっ!え、あの程度で駄目なの?ナンパ耐性低すぎだろ!?っていうか呂布さんは何故って、そういや戦場から攫ったわ。まぁ可愛いのは事実だし、訂正は面倒だからいいや。
結果的に大人しくなったから無視していっきまーす。舌噛むなよー?
レッツ!アイキャンフラーイ!!
その後、洛陽に金色の髪の鬼が少女2人を空を飛んで連れ去ったとか何とか、そんな噂が流れたらしい。
続く?