リアルが大変すぎてやばい。
そして張勲さんと袁術さんのコンビは結構好き。
やぁみんな、最近出会った頃みたいに皆が誤魔化されてくれなくて辛いオーク系転生者の俺だよ!
酷い目にあった。
こう言うのもう何回目だろうか。最初の頃色々我慢しながら愛紗達と旅していた時代が遠い昔のように感じる。あの頃はまだ星がただの残念な処女だったのに、今やどうしようもない変態痴女や。
というか毎度毎度どうして寝てる俺に悪戯しようって話に乗る奴がいるんだ。俺だぞ?忘れがちだけど見た目獅子目言彦系蛮族の俺だぞ!?今まで言及するの忘れてたけど、虎牢関で史上最強シリーズを失ってから、服装まで獅子目言彦みたいになってきてる殆ど完全な蛮族の俺だぞ。一刀くんならともかく。
華琳さん達はまだ分かる。最悪悪ふざけだったとしても、華琳さんがやれって言えばなんだかんだ言いながら桂花も春蘭も参加するだろう。だが、そんけ、じゃない蓮華や思春、穏は何故だ。程普みたいに妬みや欲求不満じゃないだろ?ましてや白蓮みたいな理由でも無いはずだ。
理解できなかったのでそう聞いてみたら、最初は純粋なそういう行為への興味とか、知的好奇心とか、酔った勢いとか・・・まぁ、殆ど悪ノリみたいなものだったらしい。一応冥琳や雪蓮の俺を何とか誘惑して取り込んじゃおうぜ計画(本当にあったのかそれ)のこともあったようだが、話を聞く限りはオマケ程度の要素だ。
それが星に唆されて、実際にやってみたり飲んでみたりしたら、止められなくなった?病みつきになった?身体が疼く?・・・何それ俺の体液麻薬成分でも入ってんの?改めて自分の身体が未知の機能を持っているということを知った。正直我が事ながら戦慄を禁じ得ない。まさか変なフェロモンとか出てたりしないよね?
兎にも角にも、またしても流されて更にたくさんの人と関係をもってしまった。今回は作戦の都合上、2日程で済んだ(参加者が増え過ぎて軍の編成や準備に時間が掛かりそうだったので、一日短縮されました。セーフ!)ので、比較的穏便に終わったが、初体験の4人の為に長く時間が取れたからの奇跡でもある。真面目に気を付けないと俺が死ぬ。いや、女性陣の殆どが戦国の世に生きる武将だからか、割と簡単にスピードアップ理論を実践できるんだ。故に1人1人に時間を掛けて逃げ切るのも難しい。
ちなみにスピードアップ理論の正式名称は心体速度加速理論って言って、いつだったか軍師組が考案したものだ。物理的に速度を無茶苦茶上げて、同時に脳の認識処理速度もあげれば早く、かつ、たくさん出来るじゃない!って言うどう考えてもニューロリンカー無しで加速世界には入れって言ってるような頭膿んでるとしか思えない理論だ。ぶっちゃけ不可能だと思ってたんだが、言い出しっぺの軍師組の一部を除いて全員出来た。俺も何故か出来た。出来てしまった。この世界はもう駄目かも分からんね。
しかしそんな無茶な事を一日中してたので、何だかまた何かを忘れてしまった気がするが、思い出せない。大事な事だった気がするんだけどなぁ。
まぁ、とりあえず今は行軍中だというのに、完全に幌を閉じた馬車の中で襲ってきている蓮華と思春のお相手を真面目にしなければ。早く終わらせないと後がつっかえている。2人とも真面目なタイプだからハマってしまってからは酷いんだ。おまけに仲が良いから、どっちかがきたらもう片方も必ずくる。おかげで愛紗が嫉妬して夜あんまり寝かせてくれないのだ。正直これから戦だと言うのに寝不足で辛い。
だから蓮華と思春が終わったら一旦終了じゃダメかな、皆。流石にこれ以上はキツイんですが。というかもう寝かせてください。昨日どころか行軍始まってからずっとなんです。
「・・・駄目。」
「駄目じゃ。」
「駄目だな。」
「駄目です。」
「駄目よ。」
「駄目ね。」
中で順番待ちしてる恋や冥琳達どころか、馬車を動かしてる詠や月にまで拒否された。何でや!どう考えてもこの状態はあかんやろ!俺呉を出発してからずっと太陽見てないんだけど!って言うか雪蓮や祭は軍ちゃんと率いてこいよ!何でここにいるんだよ!
「大丈夫よ。ちゃんと貴方の団員に任せてきたから。」
「そうじゃ。だから早うせい。」
何でもないように、ていうか当然のように言う2人。全く悪びれない姿に冥琳が呆れているが、お前もだからな?・・・ん?ていうか今うちの団員って言わなかった!?
・・・誰に任せた?華雄か?霞か?真桜?それとも沙和?鈴々?まさかと思うが・・・。
「愛紗と星よ。大丈夫、流石にうちの将も付けたから!」
「うむ、霞と華雄には左右の部隊を任せておるから、儂等の中央と最前衛を愛紗達任せたのじゃ。あの2人なら信用出来るからのぅ。ああ、凪達はそれぞれ軍師達に付けておいたぞ。」
・・・えっ。その配置まさか俺の所に行く為とは言ってないよね?あ、言ったの?・・・ハハッ、俺終了のお知らせ。よりによって1番嫉妬深い3人にバレとる。
これはもう駄目だ、と落ち込んでいると急に視界が遮られた。柔らかい感触。この感触は思春だな。胸に抱きしめらているのは分かるが息がしにくい。幸せな感触だけど。
「いい加減にしろ。今は私と蓮華様だ・・・んっ。」
「その通りよ、道玄。余所見なんて・・・酷いわよ。」
どうやら2人を怒らせてしまったらしい。肌を重ねてからだいぶ口調が砕けてきた蓮華と、同じく態度がやたら軟化した思春の2人に激しく責める様に求められる。正直な話色々とそれどころじゃないのだが、どちらにしてももう手遅れなのは確かだ。仕方ない、こうなりゃヤケだ、全力出してささっと終わらせてやる!
この後めちゃくちゃ床上手無双した!やり過ぎて普通に声が漏れて、愛紗達の容赦が完全にゼロになったよ!序でに兵達の士気がダダ下がりした!
⬛️
呉を出発してから一週間が過ぎた。
途中袁術さんの一部部隊(僅か200。)が援護という名目で合流したが、全員騎馬のくせにやたらと軽装な明らかに監視部隊だった。たぶん何かあったら助けるのではなく袁術さんの所か、近くの斥候部隊に駆け込む為の人員なのだろう。まず人数からしてふざけ過ぎであるし。こちらから周りに密偵を放って斥候部隊がいない事が分かると、雪蓮が指示してさっくり殺された。
その時一部馬も殺されているのだが、勿体無いので殺した馬は全部もらってお肉にした。相変わらず白蓮がちょっとゴネたが、より力を込めて俺と流琉が作った渾身の料理を出したら沈黙した。呉のみんなにも好評で、ウチの食事に参加したことのなかった呂蒙さんが、馬を見る目が変わりそうです、と驚愕しながら美味しいと言ってくれて個人的には流琉と2人でガッツポーズしたくらい嬉しかったのだが、ウチの持ち馬達に何時もより怯えられてしまった。何故か俺だけ。理不尽だ。
そのまま本来攻めなければならぬルートを無視して、袁術さんの一部部隊が通って来たであろう道を進み、漸く袁術さんの布陣する砦に到着した。何でこんな所に、と思ったら、どうもここは元々袁紹さんの持っていた砦らしく、わざわざ今回の隙をついて奪ったものだそうだ。ここに布陣することでちょうど袁紹さんと華琳さん達の戦場の真横に出れるらしい。ここ1番で横から殴りつけて、漁夫の利を掻っ攫う目的なのだろう。
うーむ、少佐があの子、やれば出来る子だったのじゃあないか、とか言いそうな狙いである。是非蝶のように舞い、蜂のように死ね!と言って欲しい所だ。正直俺は割と嫌いじゃないが、雪蓮達やウチの女性陣はそういうやり方は嫌いらしい。まぁ、雪蓮達もそうだが、ウチの女性陣は殆どが豪傑と呼ばれるほどの人物であり、気高い精神を持っている。仕方ないな。理解を示してくれる真桜とだけ死んだら終わりやんなー?と仲良く話しておく。
さて、流石に相手も仲良く話しをしに来たわけではない事に気付いているだろう。呉の皆さんやる気満々だし。案の定城壁の上に兵が集まり始めた。それに合わせて雪蓮が号令を出し、冥琳が各部隊に伝令を飛ばして、こちらも陣形を作る。
やがて双方に牙門旗が立ち上がり、雪蓮が冥琳と祭を伴って前へと進みでる。向こうの城門に並ぶ旗には、当然の如く袁の文字と、厳と黄の・・・んんん?誰だ?
そう思うと同時、門の上に3人の女性が・・・ってあああー!思い出した!
「何の用だ孫伯符!!お前が向かうべき戦場はここじゃないぞ!」
「悪いけど火急の用があるの。袁術様の下へ通してもらえないかしら!」
通してくれないなら押し通るわよ!などと敵将と言い合う雪蓮を尻目に、俺は門の上の3人の武将に目を奪われていた。
1人は銀の髪を肩まで伸ばし、たわわな胸と細い腕には不釣り合いな巨大な拳銃にこれまた巨大な刃を付けたような銃剣?もはや砲剣擬きを携える女性。
1人は黒髪に一房の白髪が混じり、勝気な瞳と元気な声。そしてこれまた細い腕には腕には巨大かつ無骨な鋼鉄の鈍器を持つ少女。
そしてもう1人は、鮮やかな薄紫色の長い髪と、これまたたわわな胸を持ち、瞳に悲壮な決意と覚悟を秘めた、白く美麗な長弓を持つ女性!
・・・どう見ても厳顔、魏延、黄忠の3人です。本当にありがとうございます。
ああああああああ!!ヤバいヤバいヤバい!完全に、完ッッッ全に忘れてた!何でここにあの3人が居るとかそういうのはもういいけど、ちびっ子!璃々ちゃんの事はヤバい、洒落にならん!何たる失態!!
い、急いで助けないと・・いや、待てよ?もしかしたらここに居るということは、別に人質とかそういう訳ではないのかも知れない。ホラ、劉備さんとか反董卓連合参加しないとかバタフライエフェクト激し過ぎたし、ここにその影響がある可能性も・・・!
僅かながらの期待を込めてもう一度黄忠さんを見る。明らかに悲しそうな顔をしながら、決意を固めた顔で、雪蓮の降伏勧告を退ける黄忠さん。
「どんな理由があろうと、私は貴女方を通すことは出来ません。」
そう言って矢を放つ黄忠さん。矢は雪蓮の爪先ギリギリに突き刺さる。当然狙ったのだろう黄蓋さん並みの腕前だ。流石だな、と思うと同時に、同姓同名かつ見た目がそっくりさんの別人、という可能性が完全に消えてしまった。あんな腕前の武将のそっくりさんがそこらへんにいてたまるか。というかあの発言と顔が完全に嫌な予感を掻き立てる。
仕方ない、まずは確認だ!それ次第で今からでも公式天使を助けないと!
「ちょ、ちょっとアンタ!どこ行くのよ?あんたの出番はもうちょっと先よ!?」
「少し急用が出来た。」
馬車を安全な所まで下げて、万が一何かあったら逃げろ、と流琉、月、詠の3人に指示し、念の為三羽烏を呼び戻し、護衛に付ける。馬車が下がったのを確認し、そのまま舌戦中の雪蓮達の下へ歩いて行く。
俺が動き出したのを見て、蓮華達の部隊や愛紗達が僅かに動揺したのに気付いたが、今は完全に無視だ。ザッザッザッと、少し早歩きで雪蓮達の下へ辿り着く。俺が来たことに気付いた門の上の3人や兵達が怪訝な顔をし、雪蓮達が驚いて固まった。
「ちょっと道玄、出てくるのが早すぎるわよ。」
「珍しいな。どうかしたのか?」
「何にせよ、今舌戦中じゃ。後にしてくれぬか、道玄?」
俺が来た予定外の行動をした事を怒らず、軽く咎める程度にしてくれる3人の優しさに感謝しつつ、更に予定外な事を今からするので申し訳なくも思う。とりあえずまずは謝っておこう。
すまん。ちょっと急用が出来た。今から少し出てくる。
「はぁっ!?ちょ、ちょっとどういう事よ!」
気にするな、野暮用だ。確認して問題なければすぐ戻る。ただちょっと開戦は待ってくれ。ああでも出来れば袁術さん達が逃げられない様に包囲しておいてくれると助かる。見て分かると思うがあの髪の長い弓使いは祭並みの腕だ。距離は十分にとれよ。
「おい、どういう事じゃ道玄、ちゃんと説明せんか!」
「そうだぞ道玄。流石に急にそんな事言われても困る・・・って待て!」
どう説明しても許可は貰えなさそうだし、そもそもちびっ子が捕まっている確証も無いので、無視して走り出す。後ろからああー!とか待ちなさい!とか聞こえるが振り返らない。絶対後で怒られるけど、泣いてるかもしれないちびっ子が優先だ。後がめっちゃ怖いけど!
走りながら全身の色がうっすら変わる程度に超弱変身。更に気を練って圧縮しながら、全身に行き渡らせる。
どうも彼女達は俺を知らないらしい。1人で向かってくる俺を不思議そうに見てくるが、1人では何も出来ないと思っているのか、何も妨害は来なかった。袁術さんの軍なら知ってる奴もいるだろうが、自軍の兵を温存するつもりなのか、見える所には居ない。
好都合なので気にせず突っ込み、門の前で両足揃えて踏み込む。一瞬だけ両足の筋肉が膨れ上がり、それが元に戻る瞬間には俺の身体は黄忠さん達3人が居る城壁の上に跳び上がっていた。
このくらいならエリア移動式ラージャンジャンプは必要ない。そして今回はちょっと用があるのでまだ門は壊せない。壊すと門が破られたと勘違いして袁術さん達が逃げちゃうからな。まだ包囲が完成してないし、それは不味い。
驚愕を通り越して呆気にとられる3人を見下ろしながら、落ちる。思いっきり着地して門を粉砕することもできるが、今回は優しく着地しようと、地面についた瞬間の衝撃をしゃがみこむ様に両手両足をついて関節をクッションにして吸収する。ちょうど真ん中に居た魏延さんの目の前に着地した。
それと同時にコメカミに矢が直撃。黄忠さんだ。もう正気に戻ったらしい。狙いも流石だな、と思いながら、カン、と軽い音を立てて矢が弾かれる。おっと、弾かれた矢が魏延さんに当たりそう。キャッチキャッチ。
「!?」
黄忠さんの驚愕が聞こえると同時に頭に大きな金棒が振り下ろされる。魏延さんだ。直撃し、鈍く大きな音が立つが無視して身体ごと頭を持ち上げる。当然無傷だ。個人的にはふわっふわの食パンで叩かれたらこんな感じかな、くらいの衝撃である。あり得ない、という顔の魏延さんを無視して、黄忠さんの方を向く。
「どけぇ、魏延!!」
同時に厳顔さんがその巨大な銃剣で後ろから斬りかかってくるが、効くわけもないので振り向かない。案の定高い音を立てて弾かれる。
「?!ーーっ、ならこれでどうだっ!」
ドゴンッッッ!!
轟音と同時に衝撃が背中に叩きつけられる。流石はロマン兵器パイルバンカー、一撃の重さなら恋より少し弱いくらいだな。が、こんなこともあろうかと背中に血液を集めて元祖闘気硬化してある。なので、当然それも無傷だ。
「なんだとっ!?」
流石に無傷とは思わなかったらしい。厳顔さんが今度こそ驚愕で硬直した。
それを無視してあえて何事も無かったかのようにゆっくり一歩前に出る。このままでは話ができないので黄忠さんの目と目を合わせて、あえて威圧しながらとりあえず降伏を勧める。
今ので分かったと思うが、お前達の攻撃は俺に通じない。つまりお前達に勝ち目はないぞ。降伏しないか?
華琳さんさえ息を呑み、動けなくなる俺の威圧だ。今の一瞬の攻防についていけなかった一般兵たちは当然息を飲んで固まり、全身から力が抜けたかの様に尻餅をついた。厳顔さんや魏延さんも戦力差を感じ取ったらしく、冷や汗をかいて大きく後ずさる。
「・・・ッッッ!!」
しかしそれだけの圧力の中で、歯をくいしばって矢を手に取る黄忠さん。どう見ても決死の覚悟を固めた顔である。小さな声で、ごめんね、と誰かに謝ったのが聞こえた。
ひゅう、と風が吹き、それによって運ばれた彼女の匂いを、俺の鼻が捉えて感情を読み取る。そこにあるのはやはり悲しみと、後悔と・・・強い覚悟。
うーわ、完全にちびっ子が人質フラグ。マジで大失態だな俺。っていうかバタフライエフェクト仕事しろ!こういう時こそ働け!なんで毎度毎度事態を悪化させる時だけ仕事するんだ!たまには良い方に転がしてみろ!
そう考えてはみたが、今更言っても仕方がない。彼女が俺が知ってる通りに娘を人質にされているなら、とりあえずまだ生きているはずだ。死んでいたら人質にならないし。まぁ殺しておいて、生きていると嘘をつく場合もあるが、その時は下手人と関与したものすべてを消し去ってやろう。
問題はどこにいるかだよな。この砦に入ればいいが、最悪別の街に捕らえられている可能性もあるんだよなぁ・・・。
はぁ、とため息をついて、砦を見渡す。いきなり視線どころか身体ごと逸らした俺に驚愕する黄忠さん達だが、まあ無視だ。うーむ、どっかにそれらしい場所ないかな。地下とかだとしたら探すのが大変過ぎるし、勘弁して欲しいが、それよりも他の街にいる方が厄介か、と思い直して余計に落ち込む。またしてもため息が漏れる。
やれやれ、正直これは大分面倒なことになったぞ。そう思いつつも目を凝らして砦内部を見下ろす。背後から今だ!とか、余所見とは良い度胸だ!とかのセリフと共に轟音が鳴り、身体に衝撃が奔るが、まぁ特に問題はないので無視だ。下の方から雪蓮がやるなら真面目にやりなさいよ!とか言ってる気がするが、今の俺は大真面目なので違う人に言ってるに違いない。
むむむ、あの正面の本丸みたいな所には恐らく袁術さん達がいるとして、ちびっ子はどこだろなー。ていうかあの子真名以外は何て名前なのか。真名は神聖なものなので、心の中でも勝手に呼ぶのは憚られるのだ。
まるで止まる事なくガンガンドゴンッッッカンと音がするが、これが俺の身体からってんだからどうかしている。きっと恋敵の主人公を機械で脳波弄って無理矢理ハルクにした挙句、好きな女の前でロケットランチャー撃って始末しようとしたら生身の身体にロケラン弾かれて自滅した彼も同じことを思った事だろう。
「ハッ、ハッ・・ツ!なんだこいつは!どうなっている?魏延の鈍砕骨も、儂の豪天砲も生身で弾くとは・・・本当に人間か?」
うーん、どうしよう。本当に一から探さなきゃ駄目かな。ちょっと手間がかかり過ぎるし、もう少し楽な方法無いかなー。あー、場所とか分かる様に千里眼とか使えたら良かったんだがなー。せめて匂いが分かればなー。いやいや、よく考えたら、幼女の匂いを嗅がせて下さいとか言えねぇわ。むしろ言ったら事案不可避。出来ても却下だな。
ん?あれっ。
良く考えたらどうせ袁術さん達抑えなきゃだし、袁術さん達がここのボスな訳だし、砦内のこととか一番把握してるのも多分張勲さんだし・・・袁術さんと張勲さん捕まえればちびっ子の位置もわかるんじゃね?
・・・おおっ!我ながら意外と良いアイディア!これはイケる!
そうと決まれば早速、そう考えて振り返る。すると丁度目の前に黒い塊が降ってきたので、思わず腕を振ってしまった。ガシュ、と軽い音を立てて、降ってきた黒い塊ーー魏延さんの何とか骨が消し飛んだ。
「ええっ!?わ、私の鈍砕骨が!?」
あ、いけね。ついうっかり反撃してしまった。ゴメンゴメン。まぁ、勢いあり過ぎて逆に武器だけ壊せたからいっか。身体に当たってたら魏延さんミンチよりひでぇ!になってたけど、もう少し弱ければそれはそれで武器が砕けず衝撃を丸ごと受け取った魏延さんの体は武器ごとこの高い城壁から紐なしバンジーしてたしな。結果的に良かっただろう多分。
何か流石に青い顔をして下がる魏延さん。あれ、この人あたいったらサイキョーね!的なキャラじゃなかったっけ?元気ないなー。んー、華雄だっけかそれ?何かちょっと意外だわ。とりあえず今、何かしたか?と素知らぬ顔で言って誤魔化す。あ、魏延さん達が更に後ろにあとずさった。
っていうか黄忠さん達がちびっ子の居場所とか知らないかしら。いや、待てよ?普通に聞いたとして・・・?
お前の娘はどこだ?→わ、私の娘が狙い!?何が何でも殺さなきゃ!
・・・うん。まぁ普通にこーなるよな。ましてや今の俺はほぼ完全な蛮族。どうしよう、なんか非常に声をかけにくい。前世で道に迷ってベビーカーを押す若いお母さんに道を尋ねたいけど声掛けられなかった事を思い出す。
「・・・貴様、黙っていればどういう事だ。何故攻撃してこない?馬鹿にしておるのか!」
3人を無視して悩んでいたら厳顔さんに怒られた。失敬失敬、何も害がないから忘れてた。そう言ったら口惜しそうな顔をする厳顔さん達。あ、やべ、うっかり本音が。ごめんよ3人とも。
無意識に3人の武将としてのプライドを傷つけてしまった。反省しなきゃ!でも今はそれどころじゃないので、後にしよう。と言うかもうめんどくさい。疑われてもちびっ子ちゃんと連れてきたら問題あるまい。ついでに袁術さん達も拾ってこよう。うむ、それがいいな!きっと雪蓮達も喜ぶだろうたぶん。よっし黄忠さん!
「・・・何故、私の名を?」
知らん勘だろたぶん。それよりちびっ子は何処に囚われてんの?ささっと助けに行くから教えろ。分かんないならいいよ、諦めて一から探すから。
そう言うと、黄忠さんの気丈な顔が一瞬で真っ青になった。な、何故それを・・・!?と明らかに怯え始めた。ああ、やっぱり誤解されてる雰囲気。厳顔さんは知らない?ああ魏延さんにまで凄い睨まれた。なるほど、3人がここにいるのはちびっ子が原因なのね。そう言うと余計に強硬な態度になった。完全に信用されてない感じ。当たり前だけども。
埒があかないのでもういいや、張勲さんの所に聞きに行こう。そう判断し、足だけ部分変身、さあ跳ぶぞー!と言うところで、何か黄忠さん達の名前を叫ぶおっさんが遠くに登場。何か袁紹さんとかが戦場で乗ってる神輿みたいなアレを大分小さくした1人用?みたいなものに乗ってる。何アレお父さん?もしくは旦那さん?完全に場違いだけど。格好が文官だし。
って聞いたら凄い勢いで厳顔さんに怒られた。全然違うらしい。じゃあ誰かな、と思ったら早く俺を倒せ、とか儂の顔に泥を塗るつもりかー、とか叫び出した。ああこれはアカンですわ。昨今の腐った官僚的なアレですわ。つまり面倒な上司か、と思いつつも、袁術さん 〉おっさん 〉黄忠さんの式を頭の中でメモを取る。まぁいいや、無視して袁術さんの所へ・・・
「きさまぁっ!早くその男を倒さんと、娘がどうなっても知らんぞ!」
・・・・・・ほぉ?
その言葉に遅れて後ろから歯軋りが聞こえてくる。なるほど、アレが主犯か。これはラッキーだ、向こうから馬鹿がのこのこやってきた。
おもむろに城壁の淵に立つ。成り行きを見守る事しか出来なかった兵達が怪訝な顔をする。無視して、倒れる様に宙に身を投げた。
「!?」
息を飲む音が、聞こえた。
僅かな時間、体が落ちて行く。直ぐに壁面を足の指で捉え、壁面に垂直に立つ様な状態になる。間髪入れずにしゃがんで足に力を込め、直ぐに解き放った。
ドンッッ!
その間僅か1秒ほど。ちょっと強く蹴り過ぎただろうか。足場の城壁から大きな音がしたのを聞いた。しかし、それを耳が捉えたのは、俺が地面に足をつけてからだった。
「ぐぎゃっ」
ザッ、と強く風を斬るような音とともに、御輿から地面に落ちたおっさんの口から短く豚のようなの悲鳴が漏れる。無視しておっさんの首を掴み、猫の首を持つようにそのまま顔の目の前まで連れてくる。おい、娘は何処だ?早よ答えろ。わざわざ喋れるように優しく掴んでいるうちにな。
「・・・えっ?・・はっ?い、いやあれ?」
おっさんが答えない。どうにも今の状況が分からず混乱しているらしい。愚図が、無能過ぎるな。下を見ろ。
「・・・?っひぃぃぎゃぁぁ!」
死体くらいでいちいち叫ぶなよ。この時代じゃ珍しくもないだろ。ちょっと俺が王の元に向かうピトーさんみたいな超垂直壁ジャンプしてその勢いでお前の神輿担いでた兵を殺しただけだ。あん?さっきまであそこにいた?馬鹿か、跳んできただろ。単純にお前の目で追えないくらい速度が出てただけだ。
漸く絶対絶命の状況を理解したらしいおっさんが暴れながら儂を誰だと思ってる!とか誰か早くこの男を殺せ、とか喚く。黙れ、質問してるのは俺だ。娘は何処だ?
「ゔるざいっ!ばなせっ、はなざんかっ!儂を誰だと・・・ギャァァァ!!」
あんまりにもうるさいので暴れる腕を片方握り潰す。忘れがちだが今の俺は闘気術と超弱変身により極限ラージャン3.5体分だ。天上天下の過去編に出てきたシスコンにいちゃんよりも圧倒的な力を持つ俺の握力は、簡単に腕を握り潰し、はみ出た手首から先が枯れ枝が折れる様な軽い音とともに落ちた。
喚くおっさんの首を軽く締め、質問しているのは俺だ、と再度状況を理解させてやると、漸く理解したのか、ひゅーひゅーと荒い呼吸を呼吸をしながら目で了解を伝えて来た。おっさんの下半身から色々な匂いがするが、無視してもう一度聞く。娘は何処だ?
すると怯えながら、無事な方の手で場所を指す。どうやら先ほど俺が袁術さん達がいる場所と判断した所にいるらしい。場所は?と聞くと、地下牢と震えながら答えるおっさん。なるほど・・・。
その方向を見ると目の前には震えながら槍を構える兵達。装備的に恐らく厳顔さんの兵だろう。その少し先に広がる、大勢の袁術さんの兵達。なんか頭おかしい奴だ!とか聞こえた。ちらりと見ると、階段を駆け下りて、こちらに向かってくる黄忠さん達。ふむ、厳顔さんの兵を無闇に殺すのは勿体無いな。震えながらでも俺の前で槍を構えていられる精鋭だ。
もう用は無いのでおっさんを投げ捨てる。少し強く投げてしまった。壁に人体が激突した音と、短く汚い悲鳴が聞こえたが、普通にどうでも良いので聞き流す。壁にシミができてしまった事は後で謝ろう。兵達が悍ましいものを見た顔をしている。まぁ汚いよねそのシミ。
とりあえずちびっ子の下へ行かねば、とそのままぐっと脚に力を込めて再度跳躍し、ちょっと邪魔な袁術軍をシカトして本丸っぽい大きな建物に向かう。といっても勢い余って崩してしまったらちびっ子が死んでしまう。久しぶりに飛鳥文化アタックしようと思ったけど自重しておき、素直に穏やかに降りる為、着地の瞬間に風を受けて勢いを軽く殺し、四点式ラージャン着地!!
「あ、頭のおかしいやつがくるぞぉー!」
「退け、退けぇーー!!」
ダンッ、と周囲に強めの震動が伝わる。あんまり穏やかじゃなかったてへぺろ。ギリギリ兵は踏み潰してないが、震動で動けないらしい兵達に向かって着地と同時にバインド・ボイス!!さあ、恐怖するがいい!
「グルァァアアッッッ!!!」
案の定、うわぁぁぁ!と恐慌を起こす兵達。蜘蛛の子を散らした様に逃げ去っていく。やっといて何だが別にバインドボイスをする必要は無かった気もする。まぁ失礼な事言ってたから仕返しって事で!てかどうでもいいけど戦わなくていいのか君ら。あっ、威圧で気絶した兵が踏まれてる!可哀想に・・・俺のせいだけど許してくれ。そして追撃は面倒いので逃げていく兵は無視して城に向かう。といってもわざわざ目の前に跳んだので直ぐそこだ。中々大きな扉に直ぐ辿り着く。
結構大きな扉っぽいところを引っ張ったら、ガギャ、という音と共に扉ごと外れてしまった。しまった引き戸か。後ろから違う、そうじゃない!とか叫び声が聞こえたが誰かがやらかしたんだろう。俺はこの砦に知り合いはいない筈ので俺のことではないのは間違いないな。
とりあえず中に入って気付いた。俺地下牢の場所知らねえや。おっさん連れてくれば良かった。まぁ血まみれのおっさんちびっ子に見せるのもアレか。いいやもう後はノリで何とかなるでしょ!
よっし、待ってろよちびっ子ー!健康オーク系蛮族のおぃちゃんが今助けにいくでぇー!
この後めちゃくちゃ迷子になった!
■
「ゔぇぇぇ〜、ひっく・・・ごわ〝がっだよ〝ぉぉ〜・・・。」
何とかちびっ子は見つかった。
しかも本当にこの暗い地下牢に1人だけで放り込まれた上に、兵たちに殴られたらしい、頰が腫れている。食事などの最低限の対応はあった様だが、こんなちびっ子が暗い地下牢に1人だけで過ごすというだけでも辛い筈なのに、看守は大人の男で、暴力を振るわれたんだ。相当怖かった筈である。
とりあえずロリコンの変態だけは居なかったらしい。不幸中の幸いという奴だ。全然良くないが、まだマシとだけ思っておく。
助けに来た瞬間、とても怯えていた。まぁいきなりこんな見知らぬ蛮族がやって来てたら怖いだろう。敵か味方かも分からないんだから当然だ。怯えるこの子に助けに来た、と言っても信じてもらえなくても何ら不思議ではない。
それなのに、助けに来た、と言っただけでこの子は泣きながらこちらに寄って来た。見ず知らずの人間の言葉を疑う気力もないくらい、不安で苦しかったのだろう。
ギリ、と思わず歯を噛みしめる。
俺は何をしていた。この子が泣いている時、俺は何をしていた!
元々誰かを救いたい、という気持ちを見知らぬ誰かにまで向けられるような立派な人格は持っていない。
世界平和などどうでもいいし、世界中で次々に誰かを襲う不幸をいちいち気にしてたら生きてはいけない。
この子の事もそうだ。あるいは、俺が子の存在を覚えていたとしても。この薄れて来た知識がもっとちゃんとしていて、彼女達のいる街を知っていたとしても。
それでも、俺がいる事で変わってしまったこの世界で、ここにいる事は知らなかっただろうし、ある意味ではだからこそ擦れ違わずここで助けられたのかもしれない。
だが、それでも俺はこの子が泣くかも知れない事を知っていた。
怒りが溢れ出てくる。己への怒りだった。何よりも今、俺は自分が許せない。胸に抱くこの子が今泣いているのは、俺のせいだ。
ざわ、と金色の髪が泣き疲れて眠ってしまったこの子の体を覆う。そのまま髪の毛をこの子の身体に巻き、左腕でしっかりと抱える。完全変身時の俺の髪は特別製だから、これだけ巻けば流れ矢どころか豪天砲でも通らないだろうが、改めてこれ以上の苦しみを与えないと誓う。
身体が怒りに反応してどんどん変化していく。手当たり次第に全てを破壊したくなる。激情が身体を駆け巡り、バケモノに変わっていく身体。薄暗い地下牢がどんどんくっきりと見える様になっていく。
そんな怒りを、抑えこむ。
視界に角が映る。無造作に掴んでへし折った。転生して始めて感じる激痛が奔った。これは俺自身への怒りだ。他者に向けていいものではない。ましてや俺の腕の中で眠るこの子が怯えるといけない。戒めよ、と魂に刻む。
血が流れて直ぐ止まり、痛みがどんどん引いていく。それどころか角まで再生しているらしい。この身体で傷を負ったのは初めてだから知らなかったが、どうにも再生力も尋常じゃ無かったようだ。くだらん発見だな、と思いながら、意志の力で無理矢理先ほどの状態、超弱変身まで抑えこむ。ただ、髪の毛だけはこの子を守るのに必要なので、超部分変身で髪の毛を維持する。
胸の中で眠る幼子の瞳から、残った涙が流れた。もう大丈夫、と安心させたくて、優しく指で涙を拭い、頭を撫でる。少しだけ笑った気がする。
そんな微かな微笑みに笑顔を返し、振り返る。大量の兵がいた。外の兵は軽く威嚇したら逃げていったが、流石に城の中の警護を行う連中は練度が違う様だ。冷や汗をかきながらも剣を構えた。結構やるな、と内心ほめておく。きっと華琳さんでさえ褒めただろう。
だが、そんな事はどうでもいい。
「この子を殴った奴は、この中にいるか?」
俺が地下牢に来た時、兵はどこにも居なかった。俺が内部に侵入した時追いかけられたから、その時にここからも向かったのだろう。つまり、この子を殴った奴がこの中にいるはずだった。
この子が泣いたのは俺のせいだが、それでもこんな小さな子に手を挙げた馬鹿を許すつもりはなかった。俺は子供好きなのだ。父親でも教師でもそれと似たような関係でも無い人間が殴ったのだ。俺ルールでは極刑である。
兵たちは答えない。知らないから答えられないのかもしれないが、それはそれでどうでもいい。決死の覚悟を決めたらしい兵たちに、忠告だけしておく。
「そうか。ならば区別はしてやらん。
・・・・・・死ね。」
あまり激しく動くのはこの子に良くない。空いている右腕だけ部分変身。少し強めに薙ぎ払う。
ズガァンッッッ!
それだけだった。
それだけで発生した膨大な風圧と衝撃の塊は、目の前に並んだ精鋭達を全て飲み込んで、それでも止まらず地下牢から城の入り口までを容易く吹き飛ばしその勢いで城近くにいた総勢千程度の兵が巻き込まれて全滅した。
そして気付いた。
あ、外の確認忘れてた。
・・・・・・・あっ。
・
・・
・・・
やっべ、これ俺やらかした?
理不尽な怒りに任せての一撃だったが、右腕だけとは言え完全変身の攻撃は威力があり過ぎた。やっちまった、と急速に怒りが引いていくのを感じる。
黄忠さんとか巻き込まれてないと良いけど。そんな事を考えながら脱出する。いや迷って走り回ってたから分からなかったけど、どうも地下牢って位置的に城の真ん中付近にあったみたいなんだよね。
城の中央部の地下から半分くらいがごっそり無くなったらどうなる?分かりにくい方はジェンガの一番下三本のうち端から二本抜いたイメージしてくれ。
・・・うん、つまり崩れるんだ。
にぃーげるんだよぉー!!しながらダッシュする。いや城が崩れてきたくらいで俺も俺の腕の中のこの子も死ぬことはないが、確実に目は覚める。そして防護服代わりに巻いた俺の髪で身動き出来ない事に気付いて痴漢呼ばわりされるだろう。
幼女に痴漢呼ばわりされたら俺は死ぬ。社会的に死ぬ。
だから全力・・・は、周りを粉砕してしまうので優しく、一歩一歩を大股で、跳ねる様に走りながら、崩れた足下は砕きながら踏み込んでいく。
そうして漸く外に出たところで上から叫び声が聞こえる。どうやら崩れる城の窓から飛び出てしまったらしい子達を発見。僅か2人なのでジャンプしてキャッチする。片腕埋まっているので大変だが、俺の腕は身長に見合う以上に長いので女の子2人くらい余裕だ。跳びながら舌を噛まない様に指示をする。まぁ出来るかは分からないが、と思ったら大きい女の子の方は出来そうだな。金髪なちびっ子は・・・ってこれ袁術さんだ。てことはこっちのもう1人は張勲さんか。なんか色々予定と違うけどまぁ結果オーライかな。
口を閉じれなそうな袁術さんの方は胸に押し付けて顎を固定する。一際大きな壁片が落ちてきたのでそれを足場に更に跳んだ。
一気に城より遥かに高い上空へと跳び上がる。張勲さんたちが凄い声なき絶叫してる気がするが無視。ちびっ子はこんな状況でも寝てるみたいなのでまあ良いとしよう。眼下では城が崩れて兵達が全力で逃げている。まぁそんなに巻き込まれないだろうしきっと大丈夫。俺が吹き飛ばした奴らはどっちみち城が崩れたら死んでたからセーフセーフ。まぁ俺がやらなきゃそもそも城が崩れることはなかったんだが。
ふと見ると、黄忠さんらしき人が厳顔さんや魏延さんに羽交い締めにされてる。なんか城に向かおうとしてるみたいだ。あ、つまり目的はこの子か。ちょうど良いからそっちに向かおう。
体勢を変えて、風の受け方を調整し、落ちる場所を黄忠さんたちの目の前になるように微調整。城が崩れ落ちると同時に黄忠さんが膝から崩れ落ちた。イカンイカン、これは完全に誤解してるな。はよ連れて行こう。・・・って、あっ。
おーい、周りの人達ー!そこにいると踏み潰すからどいてー!
ギョッとした顔で上を向き、走り出す兵達。
「「「ふざけんなぁっ!!」」」
なんか一斉に文句を言われたが、俺は大真面目なので問題ない。むしろこの状況でふざけているやつとか最低だと思います!とりあえず気にせず着地!!でもちびっ子いるから優しめに!
ダガン、と石畳を粉砕して着地。腕の中のちびっ子には衝撃が伝わらないよう工夫したので問題ない。まぁ空中で捕まえた2人はグェッって乙女が言っちゃいけないようなアレが漏れてたけど怪我とかは無いから大丈夫大丈夫。
「ひ、酷い目にあったのじゃ・・・七乃〜。」
「お嬢さまぁ〜!私達奇跡的に生きてますよぉ!」
うんうん、仲良きことは良き事かな!でも逃げちゃ駄目だよ?逃げたらああなるからねー。
まぁ実際やらんけど、牽制の為に崩れた城を指差しておく。2人は寧ろ自分達を助けたのが敵だと漸く理解したらしい。一瞬ポカンとした顔を浮かべたが、すぐに周りに助けを求めようとして声を上げ・・・そうになって固まる張勲さん。そのまま真っ青になって震えだした。
「な、七乃?どうしたのじゃ?寒いのかや?」
「おおおお嬢さまっ、ぜ、絶対に暴れちゃ駄目ですよっ!こ、こ、ここの人には逆らっちゃ駄目です!良いですかっ!?」
凄い剣幕の張勲さん。よく分からないみたいだが。とりあえず頷いて口を抑える袁術さん。あらやだ意外と素直で可愛い!
どうも張勲さんは黄巾討伐戦とか反董卓連合の時とかの俺を覚えているみたいだ。頭おかしいので絶対に相手を怒らせないでください、と小さな声で袁術さんに教えている。失礼な、俺はちびっ子には優しいぞまじで。
とりあえずお馬鹿可愛い袁術さんの頭を撫でて、2人にべっこう飴を渡す。静かにしてたら食べていいよ、と言っておく。コクコク必死に頷いたので良しとしよう。
2人はこれで良いとして、黄忠さんだな。
未だ全身の力が無くなったかのようにへたり込む黄忠さんの前までゆっくり歩いていく。何故か俺が一歩近付く度に兵たちが一歩ずつ後退って行く。モーセか俺は。
まぁ好都合なので、そのまま黄忠さんの前まで辿り着く・・・ところで厳顔さんと魏延さんが立ちふさがった。険しい顔付きだが、どこか死を覚悟した目をしている。通さない、と2人の全身が物語っていた。
しかし、掠れた声が2人を止めた。黄忠さんだ。
「2人とも・・・、もういいわ。」
「「!?」」
2人が同時に振り向く。そこにはふらふらしながらゆっくりと立ち上がる黄忠さんの姿が。なんか明らかに生きるのに疲れちゃった顔をしている。あらやだ美人はこんな状態でも美人ですね。
俺がくだらない事を考えている間に、3人の間で何を言うか黄忠!とか、諦めちゃ駄目です!3人で力を合わせればきっと!とか、もういいの・・・もういいのよ。とか、なんか凄いラスボスに主人公無しで戦った仲間達みたいなやりとりしてる。ってことはラスボス俺か。じゃあこの後主人公が来て逆転されちゃう前に用事を済ませよう。
「・・・もういいか?」
「ッ!・・・くそっ。」
「・・・ええ、もう大丈夫よ。」
悪態を吐く厳顔さんが悔しそうな顔をして俯き、疲れた顔の黄忠さんが一歩前にでる。魏延さんが絶望した顔をしている。では、と言ったところで黄忠さんから待ったがかかる。なんぞ?
「お願いが、あります。・・・兵や、この2人は私の為に協力してくれただけです。どうか、責は全て私1人に・・・。」
知るか。そういうのは責任者に言え。俺に言われても困る。もう無いな?じゃあはいこれ。今ちょっと気を失ってるけど命に別状は無いから。てか寝てるだけだから。
そう言って髪の部分変身を解く。ズァ、と髪の毛の色が失われていき、同時に縮んで元の長さと色に戻った。すると中からちびっ子が現れた。すやすやと眠っている。いくら精神的にも体力的にも疲れていたとはいえ、結構色々あったんだが・・・凄い子だなぁ、と思いつつ両手で持って幼女を
「残念です・・・って、えっ?」
「きさまぁ!・・・って、えっ?」
「黄忠様っ!・・・って、えぇっ?」
「「「「「「「・・・・・・えっ?」」」」」」」
ん?どした?あれ、もしかしてお母さん違いだった?匂い似てるしそうだと思ったんだけど。・・・あれ、もしかして俺本当にやっちゃった?もしかして他の人子供?!ちょ、ちょっとそれはヤバい!本当のお母さーん!どこだー!
「い、いえ!ちがいま、そうじゃなくて!・・・えっと、とにかく私の娘です!間違ってないです!!」
なんだ、驚かせんなよ。ここに来て記憶違い起こしたかと思ったじゃないか。まぁ合ってるならいいや。じゃあこれはい、塗り薬な。打ち身に効くから腫れてる頰とかに塗ってあげてくれ。あ、効果は高いがちょっとスースーして子供には辛いかも。我慢させてやってくれ。で、これが栄養剤な。粉末で苦いからこっちの梅シロップ・・って言っても分からないか。梅を砂糖で漬けると出来る汁がこの中に入っている。そのままだと甘過ぎるから水で3倍に割って、食後にでも栄養剤と一緒に飲ませてやってくれ。これ単体で飲ませても疲労回復と喉の痛みに効く。ただ、さっきも言ったように元が甘過ぎるから、きっちり水で割らないと太ったり虫歯になったりするから気をつけろよ。ああ、それとそのちびっ子なんだが、地下牢に捕まっていて、更に中で兵達に殴られたみたいだ。殴った理由は分からんが、下手人らしき奴らはたぶんさっき大体俺が殺しちゃったので復讐は難しいかもしれん。そんな訳なのでしばらく大人の男や兵隊、暗がりを怖がるかもしれないから、面倒がらずに一緒に居てやるんだぞ。ああそうだ、これはおまけな。はいべっこう飴。このくらいのちびっ子はだいたい甘いもの好きだし、喜んでくれると思う。たくさんあるからお母さんも食べていいが、子供の分が無くなるまで食べるんじゃないぞ。あとこれな替え「ちょ、ちょっと待たんか!!」何だよもう。時間ないから手短かにね!
「す、すまん。・・・ではないわっ!きさまっ、何が目的だ!?」
それはもう終わった。今はただのアフターケア中だ。それだけか?じゃあこれ念の為予備の塗り薬と栄養剤な。後は・・・え、何?訳がわからない?ああ、アフターケアとか言われても困るか。面倒だな、何がわからないって?目的?だからもう終わったって。そこですやすや眠ってるちびっ子を助けに来ただけだよ。後は?
「あ、あの・・・貴方は、私達と戦争しに来たのでは・・・?」
そうだけど?でもまだ始まってないから戦う必要ないじゃん。俺は傭兵だから、仕事が始まればちゃんと戦うけど、始まってないからまだ戦う必要はないだろ?だからまだ別に敵じゃないぞ、俺。まぁ味方とは言えないが、現状敵ではないのは間違ってない。はず?
「えっ。じゃ、じゃあ何故1人で戦いを挑んで来たんだ!」
・・・?なんか魏延さんが不思議な事を言い出した。戦いなんて挑んだか俺?
「1人でいきなり乗り込んで来ただろ!門を飛び越えて!」
ああ!ちびっ子捕まってたらマズイなと思って侵入した時な!ちょっと話を聞きに来たらいきなり攻撃されたっけ。あれ?でも俺反撃はしてないはずだけど。うっかり武器壊しちゃったけどあれは事故だよ事故。その証拠に魏延さん無傷だし。まぁ話聞いてくれなさそうだったから降伏を勧めはしたけども。交渉しようとしたらそれさえも通らなかったからさー。
「え〝っっ、そ、それってつまり・・・?」
まぁ君らの早とちり?かなー。あ、安心して。紛らわしい行動した自覚もあるし、結局俺に怪我は無いし、おまけに娘さんが人質に取られてたら冷静な判断はできないよね!気にして無いよ!
「・・・・・。」
「・・・・・。」
「わ、私達の決死の覚悟は一体・・・!?」
それは、ほら・・・お疲れ様?
そう言ったら厳顔さん達どころか周囲の兵が全員へたり込んだ。スマンスマン、お騒がせしました。まぁ君らも勘違いした訳だし、おあいこって事で一つたのんます。
あ、尚うっかり吹き飛ばしちゃった兵とか城とかおっさんとかは謝らない。ちびっ子に手をあげる人間はみんな死んだら良いと思うよ!何なら袁術軍今から残りを滅ぼしてもいいと思ってる!
そう言ったら物凄い勢いで袁術さん達と兵が震えだした。安心してくれ、本気だぜ?
まぁこれ以上長居しても仕方ないか。じゃあ俺帰るけど、うっかり拾った2人は連れて行きます。実質大将が居なくなるけど兵はまだまだいるみたいだし降伏とかするのも思い切って戦うのも好きにしたらいいと思うよ!戦う場合は今度はちゃんとやるから安心してね!
そう言ったら何か皆凄い絶望した顔する。あちこちであんなん反則や!チーターや!みたいな会話が聞こえるけど、俺はそんな反則じみた極限ラージャンを何度も1人で倒したし、きっとやってやれない事はないと思うんだ。まぁ俺がラージャン1人で倒せるようになるまで何回死んだかわからないけど。
とりあえずそろそろ帰らないと怒られるので、袁術さんと張勲さんを拾い上げる。ん?どったの袁術さん。ああ、飴気に入った?よしよし、いい子にしてたから大きいのをあげよう。喉に詰まったら大変だから、ゆっくり舐めるんだよ?いいね。
「わかったのじゃ!」
「ああ、たかが飴で簡単に懐柔されるなんてお嬢様ったら流石ですうっ!」
袁術さんは本当に可愛いなー。と思いながら優しく抱えあげる。流石にこれからどこに行くか理解してるらしい張勲さんは青い顔をしながら明るく振舞っている。よしよし、と頭を撫でて、羌毅さん式ナデナデを発動っ!相手はリラーックス!強制的に落ち着かせる。まぁ悲しいけどこれ、戦争なのよね。そう嘯いて張勲さんも抱えあげる。
さて、行こうか。
全身の色がうっすら変わる。今回は帰るだけだし闘気術は要らないだろう。2人にしがみ付く様に言って、歩きだしたところで、躊躇いがちな感じで黄忠さんにあの、と呼び止められた。何ざんしょ?
「色々聞きたい事はありますが、一つだけ。・・・何故、この子を助けてくれたのですか?貴方にとって、敵の子でしょう?」
?じゃあ黄忠さんは敵の子供が悪人に捕まったら見捨てるの?その子が泣いてても?
「・・・それは。」
「そういう事だ。」
ましてや俺は蛮族で傭兵だ。誰もが敵で、誰もが味方になる根無し草だ。何処の誰のどんな子だ、とか心底どうでもいいな。
そう言って話を切る。んじゃ、たぶんすぐ会うだろうからまたな!
そう言って走り出す。これ以上は流石に不味いし、大きなお土産が出来たから急ごう。ふっふっふっ、お土産さえちゃんとしてれば怒られない!これ、前世で妻子持ちの朝帰りの紳士達から教わった技術です!
ついでに鈴々にお父さんがちびっ子を助けた武勇伝を語ってこよう。きっとまた目をキラキラさせておとーさん凄いのだ!って言ってくれるに違いない!娘の尊敬の眼差し!その為に俺は頑張っているのだ!
そんなことを考えながら、俺は城壁を跳び越えたのだった。
■
「もう一度言ってみなさい?」
呉の陣幕にて、戻った俺は何故かみんなから尋問を受けていた。正座をさせられて、逃げられないように鈴々と音音の娘2人が膝の上に乗せられた。
ええ、また?もう3回目だぜー?雪蓮は仕方ないなー、一回で覚えろよなーもー。「道玄様?」あ、はいすいません。真面目にやります。
とはいえ、何度も言ったように大したことはしてないってば。ちょっとちびっ子助けに行ったらうっかり城壊しちゃって、袁術さんと張勲さんが落ちてきたので拾ってきたんだって。
「道玄。あんまりふざけていると怒りますよ?」
ええっ!?こ、これ以上ないくらい真面目な話してるんですが!実際これ以上何もしてないって!本当だって!
必死に弁明してみるが、成果は芳しくないようだ。皆頭痛そうに難しい顔をしている。とは言え、俺は本当にそれ以上何もしてない。だからもうそろそろ正座解いていい?あ、駄目?そっか。
するとずっと笑顔で震えてた孫策が急に叫んだ。
「ふ、ふふふ・・・敵陣の子供を助けに行っただけで何もしてない?ふざけんじゃないわよ!何処の世界に子供助けるついでに城破壊して総大将拾ってくる馬鹿がいるのよ!!見なさいこれ!今日の日の為に散々みんなで頑張って来たのに、アンタ1人で終わらせちゃったからみんなの士気が消し飛んだじゃないの!何のためにここに来たと思ってんのよ!?」
え、いやまだ終わってないよ!確かに総大将を持って来ちゃったし城もうっかり壊しちゃったけど、この2人よりしっかりした武将がいるし、兵はそもそもほとんど残ってるし!だから油断するには早いと思うよ!
「その残りの敵だが、先ほど降伏を申し入れて来たぞ。」
・・・・・・・・・。
えっ・・・と、ホラ、孫呉の武にみんな恐れを抱いたとか?あ、もしくは実は戦いたくないけど戦わされてたとか!それを俺が大将持ってっちゃったから解放・・・されて?あ、やっぱ今のなし。
「自分が原因って分かってんじゃないの。」
い、いや!待て!きっと他にも理由がある!
「道玄、お前だったらあらゆる攻撃が効かず、単身10万を超える敵陣に乗り込んで生身で城を破壊して大将を攫ってこれる敵が、更に自分達以上の数の武将と兵を連れてやってくるとしたらどうする。もちろん、逃げ道はない状態でだ。」
え、当然降伏するよ?何その無理ゲー。考えるまでもないやん。
「ではそういう事だな。」
えっ。・・・あっ。
しまった嵌められた。さ、流石冥琳、恐ろしい策略だ。後世に長く名を残すだけあるぜ・・・!
冥琳の手腕に心底慄いていると、何故か皆してため息ついた。あれっ?何か呆れられてる?
「本人がこれじゃものな。」
「もう全部こいつ1人で良いんじゃないかしら。」
「まぁ、たった1人で戦力過多になる男ですから。」
「我が主人にやる気があれば、とっくに中華統一終わってますからなぁ。」
「はわわ!兵数を維持する努力が無駄な気がして来ました!」
「言うな朱里・・・今までの苦労を思い出して泣きたくなる。」
何か酷い事言われてる!お、俺は無実だ!それと朱里、冥琳、兵だって立派な雇用だぞ。無駄なんて事はないってかここで維持を辞めたら賊が増えちゃうぞ!最悪黄巾の乱再びだ!
そう力説したら更に深いため息を吐く皆。これでこういうことも理解できる知識もあるんだからなぁ。と疲れたように言った。本当に全部こいつのやる気次第なのよねぇ、と雪蓮が言い、全員が頷く。
「まぁ、実際兵の消費を抑えられた上に、大量の投降兵が手に入ったのは確かだ。うまく使えばこれから楽になるだろう。」
「そうね・・・そう考えないとやってられないし、それでいいわ。となると、こっちも決着をつけて、軍の編成を急ぎましょう。」
そう言って剣を抜く雪蓮。唐突に空気が変化する。雪蓮の覇気が、天幕を埋め尽くす。視線の先には張勲さんと袁術さん。
雪蓮の覇気に当てられたのか、単に空気の変化を察したのか・・・2人は剣を抜いた雪蓮に怯えてお互いに抱き合って震えだす。顔が真っ青だ。
「そそそそ孫策!わ、妾はこの狭い天幕で武器を振り回すのは危ないと思うのじゃが・・・!」
「おおおおお嬢さまの言う通りですぅ!ぼ、暴力は良くないと思いますぅ!」
「問題無いわ、すぐ終わるもの。・・・今まで色々やってくれて本当にありがとう。こんな結末になるとは思わなかったけど、せめて痛みを感じないように終わらせてあげる。・・・さようなら。」
本当にすぐ終わらせるつもりらしい。誰も何も口を挟まず、雪蓮と袁術さん、張勲さんから距離を取る。それで流石の2人も逃げられないと悟ったのか、涙を流しながらより強く抱き合った。互いの名を呼びあい、恐怖から逃れるように固く目を瞑る。
雪蓮は万感の思いを込めるように、僅かな間だけ剣を構えて黙祷し、そのまま問答らしいやりとりもなしに、その手の南海覇王が振るわれた!
ガキィン!
袁術さんを斬ったと思った?残念、俺でした!
まぁ当然のごとく俺が防ぎました。ちょっと全力で移動したから見えなかっただろうふーははは!あ、2人が生きてる?って不思議そうな顔をしている。そして下半身がびしょ濡れなので、毛布を掛けてあげたら理解の範疇を超えたらしい、えっ、えっ、えっ?と混乱している。こうして見ると張勲さんも可愛いな!
「・・・・・一応聞いておくわ。何のつもり?」
・・・?俺が目の前でちびっ子殺させるわけないだろ。何言ってんだ?
「そんな理由で邪魔をするの?積年の恨みと、私達の悲願が掛かっているのよ?」
はは、ただの八つ当たりを正当化すんなよ。悲願に至ってはもう既に叶っただろ。この2人は既に立場を無くしてるし。
そう言うと雪蓮の眉が釣り上がり、辺りの呉の人間達から怒気が溢れ出す。うちの女性陣は・・・直ぐに離れて見守る姿勢だ。俺へのフォローとか無いらしい。酷いぞお前ら!まあいいけど。
「百歩譲って2人は立場を無くしたから、と言うのは理解できなくもないけど・・・八つ当たりとはどう言う意味かしら?」
それによっては貴方でも斬るわよ、と雪蓮が言う。斬れるもんなら斬ればいいと思うが?まずその思考が八つ当たりだよな、と指摘しておく。何?お前の気に食わなきゃ斬られなきゃならんのか?大した暴君だな。
「・・・ッ、話を逸らすな!」
逸らしてねぇよ。そもそもそういう考えだから八つ当たりと分からんのだ。指摘してるんだから少しは考えろこのアホ!・・・とはいえ、言わないと理解できなさそうだから説明してやる。よく聞け。
そもそも、袁術さんの庇護下に入ったのはお前達の方から頼んで入ったんだ。そうだろ?
「それはっ!・・・あの時はお母様が亡くなって、私達に力が無かったから仕方なく!」
おお、蓮華、急にどうした。ああ、お前も納得できなかったか。やっぱりお前も雪蓮の妹だなぁ。では聞くが、何故袁術さんを選んだ?他に庇護下に入れそうな勢力はあっただろ。近いところで言えば・・・黄祖?だっけ。忘れたけど。とにかく別に袁術さんじゃ無くても良かった筈だな?つか、聞いたらお前らが袁術さんの庇護下に入った時点でこの子幾つだよ。まともな政治も何もわかる訳ないと知ってた筈だろ?
「黄祖何かの下につけるかっ!奴は孫堅殿の仇と言える男ぞ!」
いや。祭よ、ハッキリ言うが孫文台が関する選択のほとんどはお前らの事情、つまり私情だ。私情で選んだ選択肢はそもそも自分で責任を負うべきだろ。例えるなら軍師の策を無視して1人大軍に突っ込んで犬死しても、それは自業自得だ。違うか?
・・・まぁ、雪蓮は正しくそう言う馬鹿なので、それの尻拭いばかりしてたらその辺曖昧になるのも分からんでもないが。
「それは・・・その通りじゃが。」
「ぐっ、当たり前の様に私を馬鹿にしたわね・・・!」
勝てる気がする、で作戦無視して1人で敵に突っ込んで兵の被害増やす大将など馬鹿でしかないだろ、何言ってんの?というか何のために軍師達が頭悩ませて献策してると思ってんだ馬鹿。
「その通りなんですがー、おにーさんが言いますかー?」
風、俺はむしろ自軍の被害を減らしてるからいいんだよ。ある意味軍師の策より良い結果を出してるので問題ない!・・・たぶん。だからブーイング止めろ!てか今真面目な話してるなら空気壊さないで!
ええっと、何だっけ。そうそう、そもそもお前らが私情で明らかに幼く無能っぽい袁術さんの庇護下に自ら入った。此処まではいいな?正直この時点でもう自業自得としか言いようが無いが、そこで更に重要な話として、なんだかんだお前ら袁術さんに護られてるのよな。正しくはお前らが袁術さん越しに期待した、袁家の威光に、だけれど。違うか。
「それは・・・まぁ、確かにそれで豪族達の反発を抑えられたのは事実だ。しかしな、これまで何度も命懸けの無茶な任務を投げられたのも確かだぞ。」
いや、冥琳。それ他の勢力についてたら無かったと、本気で思ってんの?というか、そもそも庇護下に入らなかったら滅んでたかもしれないんだろ?それが嫌だから自分達でキツくても生き残る道を選んだんだろ。なら結果的に望みは叶えられた以上、文句言うのは筋違いだ。まぁ愚痴を言いたいのも分かるし、殺してやりたいくらいムカつくのも分かるが、それが嫌なら庇護下に入らず自分達だけでやってくべきだった。違うか?
「それは・・・でも!私達には護らなければならない民がいたわ。」
うん。その考えは立派だと思うよ、本当に。こんな国が腐った中でそれだけ民を想えるのは人徳の証だと思う。では、そもそもの問題点になるが・・・何故お前らは自分達だけで、民を守れなかったんだ?
「それはっ!・・・だからお母様が「それだ。」えっ?」
正直俺は孫文台を直接は知らんし、どんな形にあれお前達にとっては大事な人で、大切な拠り所だったろうから今まで言わんかったが・・・お前ら、何でもかんでも孫文台のせいにし過ぎだぞ?
「・・・どういう、こと?」
どういうことも何も。そもそもお前らのケチがつくところ全部孫文台が出てくるだろ。孫文台が死んだから、求心力を失って民を守れなくなった。孫文台が死んだ原因だから、黄祖の下にはつけなかった。孫文台が死んで自分達だけでは豪族を抑えられないから、嫌々袁術さんの庇護下に入って、命懸けの任務をこなす羽目になった・・・。
分かるか?お前らとしては孫文台が如何に偉大だったかを語っているつもりかも知れないが、視点を変えたらそんなもん
「・・・・・っ!!」
孫文台が限りなく偉大で素晴らしい人物だったから甘えんのは分からんでもないが、そもそも国が誰か1人の力で成り立っていた、というのが異常だ。どれだけ個人に負担掛ける気だ?
というか、どんな凄い人物だって人間であるからには病に罹れば傷付いたり疲れたりもする。当然死ぬこともあるだろう。実際孫文台は死んだわけだし。死んだ人間は生き返らないんだから、生きている人間だけで何とかするしかない。違うか?
「・・・それは、そうだけど。」
うん。だからお前達はお前達のできることをして、できない事は嫌な思いしても頭下げて、結果的に自力で立てるところまで復活出来た訳だ。こういう時代だから、下克上してお前らを守ってた袁術さんの立場を奪うのは仕方ないと思うが、どんな形であれお前達が護られたのは事実。その事実を無視してお前のせい、と糾弾するのはただの八つ当たりだ。そうだな?
「・・・むぅ。そうなるわね。」
よし、じゃあ納得したところで積年の恨みを晴らすといいよ!あ、もちろん殺すなよ!ちびっ子だから殴るのもダメな!それ以外なら好きにしなよ!
ズコー、と全員が滑った。おお、古いリアクションだな!いや、時代的には未来のリアクションか?どうした?俺なんか変なこと言った?
「・・・あ、アンタねぇ。今までの話は一体何だったのよ!」
「わ、私達やっぱり助からないんですかー!?」
・・・?何って、お前が袁術さん達を殺すのは八つ当たりだから止めろって話しかしてないだろ?・・・ああ、お前まだ話よくわかってないだろ?頭脳労働を冥琳に任せてばかりいるからそうなるんだ馬鹿め。仕方ないな、分かりやすく商人で例えてやる。
まずこの場合、お前達孫呉は家族で店を経営している小さな商家だ。そして袁術さんはその100倍くらいの規模を持つ大商会だ。此処まではいいか?よし。
ある日お前達の店は、仕入れから何からをほとんど仕切ってた父親が急病で死に、軽い手伝いしかしてなかった残りの家族だけでは生計を立てられなくなった。そこで、店主の性格は最悪だが規模が大きく経営の知識が豊富な大商会の傘下に入り、経営を学ぶと同時に伝手などを広げていく事にした。
しかしながらいくら大商会といえど、働かない奴に食わせる飯はない。だからお前達にも仕事を回すが、そもそも経験も知識も足りないお前達にはキツく難しい仕事ばかりだった。
おまけに店主はやる気がなく、臆病だったので、偉くて気難しく気性の荒い客への対応は全てお前達に投げてくる。そうしてお前達は死にそうな思いで日々働き、やがて機会を得て立場を逆転、ついに大商会を乗っ取り、新たに自分達の店を復活させた。
するとお前達の下には散々無茶なことをさせたにっくき元店主が!良しじゃあ積年の恨みを晴らそうか!
で、はい。此処で見事母店を乗っ取り、店主になって元上司を下に持った雪蓮さん!どんな仕返しをする?
「えっ?・・・えっと、斬る?」
スパン、と雪蓮の頭を軽く叩く。
ドアホ!どこの世界に仕事の恨みで剣持ち出す商人が居るんだよ!それとも何か?お前のところじゃ商人が商人を殺してもいいのか?違うだろ?普通は今までの仕返しとして同じような仕事させたり、いびったり、解雇して路頭に迷わせたりするだろ!何で何でもかんでも相手を殺す方向に持ってくんだ馬鹿!華琳さんもそうだけど、お前ら軍人って気にくわない奴は殺していい事になってんの?処罰も仕返しも斬首一択なの?上に立つ連中がそれやったらただの恐怖政治だろ馬鹿!!
「いっっったーい!もうちょっと手加減しなさいよ!後馬鹿馬鹿言い過ぎよ!だいたいアンタ私が積年の恨みって言った時八つ当たりって言ったじゃないのよ!」
だから、今までの対応にムカついてたからって上司を部下にした途端殺したらただの犯罪で、おまけに理由が上司が殺した訳でもない家族が死んだからなんて言ったら八つ当たりだろ!上司関係ないんだから!それに積年の恨みは否定してない!ただ、無茶な仕事の恨みを返すなら、無茶な仕事をやらせ返すのが筋だって言ってんだよ!だいたいお前毎回命懸けの任務させられたって言うけどな、お前自分の国を満足に護る能力が無くて庇護下に入れてもらってんだぞ!他にどんな方法でその対価を払うつもりだったんだああん?まさかただ飯食わせろって集るつもりだったのか街の居酒屋みたいに!あれ俺がお前のツケ払ってんだぞ!理由はよく一緒に居るから、とかふざけた理由なんだぞ!お前わかるか?愛紗や祭と飲みに行って店に入った瞬間に他の女のツケ払う俺の気持ちが!凄い顔されるんだぞ!今までこれ以上冥琳達の負担を増やすまいと我慢してたがな、太守がツケであちこち飲み歩いてんじゃねぇ!っていうか仕事しろ!
「あーもううるさい!話が長いのよ!だいたいツケくらいでいちいち文句言わないでよ!それに毎回違う女と飲み歩くアンタが悪いんでしょ!私が誘っても来ないくせに!」
それはお前が仕事中に誘ってくるからだ馬鹿め!これでも俺は真面目に仕事してんだよ!真昼間から堂々と仕事抜け出して飲みに行こ!とかほざくお前に付き合ってられるか!その後お前の仕事を肩代わりする冥琳達に愚痴を聞いてんのは俺だぞ!だいたいお前一時期のちゃんと仕事して、酒も飲んでないってわざわざ報告してきたしおらしい態度はどこにいったんだ?
「あれはアンタが良い子にしてないと駄目って言うから・・・!もうっ、分かったわよ!要するに殺さなきゃ良いんでしょ殺さなきゃ!じゃあ追放よ追放!さっきの例えならクビ!これなら文句ないでしょ!?」
うむ。無いな。とゆー訳でやったね2人とも、死刑は免れたよ!
無罪判決を勝ち取ったので裁判は終了です。良かったねー。そう言ったら2人ともよく分かって無いらしい。困惑している。と言うか、よく見たら全員唖然としていた。うん?どした?
「掌返し過ぎです、道玄。貴方にしてはやけに饒舌だなと思ったら・・・。」
「どうりで・・・。例えが迂遠だったのは、単純に話長くして雪蓮を押し切るつもりだったな?少し無理な主張だと思ったんだ。」
「まぁ道玄様ですから。子供を殺させない為の言質を取れれば良かったんでしょう。」
おやまぁ、流石は俺の女。俺の事がよく分かってるね!その通り、ノリと勢いで押し切りました!
そう言ったら漸く言い包められた事に気付いた雪蓮が怒り出すがもう遅い!言質は頂いたぜ孫策ー!てゆうか気付くの遅いぞ?途中から冥琳達は気付いていたから口出ししてこなかっただろ?後ろ見てれば分かっただろうに!まだまだ若いなー雪蓮。ぬははは!
「ぐぬぬぬ・・・!冥琳、気付いてたんなら教えてよ!」
「あれぐらい少し冷静になれば分かるだろう・・・。というか、分かってくれ頼むから。まぁ私も少し業腹だが、道玄のおかげで袁術の持つ兵力がこちらの消耗無しに手に入ったんだ。道玄の話にも一理あるし、多少譲っても問題はないさ。」
気持ちの埋め合わせは道玄自身にしてもらうしな、とニヤリ笑う冥琳。むう、強かやな。
まぁ良かろう。幾らでもしてあげるよ。そういうと即愛紗がでは私も、と言い出し、うちの女性陣全員が次々名乗り出した。ちょ、呉の人ら以外は遠慮して下さい!粋怜、祭、お前らは多少遠慮してね。お前らに付き合ってたら金が無くなる!
途端にわいわい騒がしくなった皆から離れ、未だに流れについて行けてない袁術さんと張勲さんの前に歩いていく。
2人の前にしゃがみ込むと、ビクっと震える2人。思わず苦笑いして、とりあえず2人の頭を撫でながら、追放だってさ、と伝える。
よく分かってない袁術さんに、今から袁術さんと張勲さんの2人だけで街を追い出され、つら〜い根無し草生活が始まる、と軽く説明する。それでも想像がつかないみたいなので、服もご飯も寝る所もなく、一年中外を彷徨いながら、虫にたかられ、野生動物に脅かされ、民に石を投げられ、賊に襲われ、兵には剣を持って追いかけられる。当然蜂蜜水もない。そんな怖くていっときも気の休まらない、辛くて痛くて苦しい毎日になるよ、と脅かしながら教えてあげる。
とりあえず蜂蜜水が無い、だけ理解できたのか、その辺りで顔を真っ青にして張勲さんに泣きつく。張勲さんも命が助かっただけで奇跡的なんですよー、と宥めているが、まぁ色々だいぶ急だったから理解が出来ないのは仕方ないね。
・・・それにしても。
なぁ張勲さんよ。随分上手く育てたな?
「・・・分かりますぅ?お嬢様可愛いですよねぇー?」
そうだな。実に可愛い。あんたの愛情の賜物だ。大したもんだと思うよ?
そう言うと、彼女は照れちゃいますねぇ、と笑った。俺たちの雰囲気の変化を察していつの間にか皆静かになり、袁術さんはそんな皆を見て気付いたのか、気圧されたかのように泣きそうな顔をし始めたので、とりあえずちびっ子大好き猫ちゃん型棒付きべっこう飴を口に放り込んで更に頭を撫でて誤魔化す。
いきなりお猫様!と現れた周泰さんには三つほど纏めてあげて、ついでに2人の着替えを頼んだ。そこで漸く漏らした事を思い出した2人が顔を真っ赤にして恥ずかしがる。特に少しだけ真顔になってるカッコつけてた張勲さんは死にそうな顔をしている。ふ、正直狙いました。
「うぅ・・・穴があったら入りたいって、こういう気持ちなんですねぇ。知りたくなかった・・・!」
はっはっはっ、そのカッコで格好付けるからそうなる!・・・まぁ、権力を無くし、金も大した武力もなく、たった2人の女だけで行くよりはマシな生活を約束しよう。ただし、
そう言うと、意味を察した女性陣が後ろから驚愕の声をあげた。
「ちょ、アンタねぇ!人が妥協して軽く済ませたのを更に軽くすんじゃないわよ!」
「団長、流石にそれは甘やかし過ぎやと思うで?」
「確かに。幾ら子供とはいえ、袁術の悪政は有名だ。幾らなんでも無罪というのは良くない。」
「道玄、また女を増やすつもりですか?」
とりあえず愛紗は落ち着け。誤解です。
それと、甘やかしてるのは否定しないが、無罪という訳でもない。実に厳しく教育してやるつもりだ。もう構わんだろう、張勲?
「・・・良いんですかぁ?これでも私達悪名高いらしいですよぉ?」
何、それを言ったらそもそも俺は危険生物扱いの蛮族だ。今更悪人2人が増えたところで変わりはないさ。
「・・・一応、何故と聞いてもいいですか?」
さて・・・君の優しさと、覚悟と、不断の努力に。何より、その大いなる愛情に敬意を表して。と、いったところでどうだろうか。
そう言うと、張勲さんは少しだけはにかんで、悪い気はしませんね、といった。そして少しだけ考える様に天井を見上げて目を瞑ると、未だ腕の中の袁術さんを抱きしめた。飴を舐めながら七乃?と不思議そうな顔をする袁術さんの頭を撫でて、彼女に笑いかけた。
「お嬢様、七乃はずっとお嬢様の側に居ますからねー?」
「うみゅ?うむ、ずっと一緒なのじゃ!」
そんなやり取りのあと、彼女は此方を向いて、これからよろしくお願いします、と言った。
「教育も、躾も、どんどんお願いしますぅ。
うむ。了解した。
流琉、月、詠。この2人を御前達に付けるから、超一流の侍女になれる様に厳しく叩き込め。特に袁術さんには容赦なくな。あと、朱里、雛里、風、稟。それぞれ交代で空いた時間に学を仕込め。やり方は任せるが甘やかさない様にな。とりあえず、先ずは着替えを頼んだ。
皆色々言いたい事がありそうな顔をしながらも、流琉達ははい、と返事をして2人を連れて行ってくれた。5人が天幕の外に行くと、どういうことですか?と蓮華に尋ねられた。別に怒っていたり、不満な訳ではなく、純粋に疑問に思ったようだ。貴方が意味もなくああいう事をしないと分かってますから、と嬉しい事を言ってくれたので頭を撫でようとしたら、愛紗が間に入って来た。むしろ張勲さん袁術さんと我慢した方なので、ちゃんと撫でて置く。
「いっそ素直で無能な方が、安全な事もある。と、いうことだ。」
今でさえ幼いあの子が、さらに幼い時にろくすっぽ平定されてない領地を与えられれば、付近の豪族は色めき立ったろう。そこで下手に能力があると思われ、成長する前に狙われれば幼いあの子はひとたまりも無かったろうよ。
「それならばいっそ程のいい傀儡になる、と思わせることで利用価値を作り、その身を護った・・・そういう事?」
たぶんな。じゃなきゃ幾ら落ちぶれつつある袁家でも、あの子があそこまで無知な理由がない。袁紹さんですら華琳さんと同じ私塾を出てるんだからな。最も、そんな歳で領主なんて遣らされたのは、内部の別な思惑がありそうだが。
「じゃあ、張勲はその、恐らくは身内の良くない思惑から袁術を護る為に?」
「ならば張勲殿はその頃には、既に袁術殿を人知れず護りながら、1人で身内の敵や外の敵と戦っていたということになりますな。・・・いやはや、大した御仁だ。」
まぁ、味方がいなかったかどうかまでは分からないが。・・・袁術さんは当然だが、張勲さんもまだまだ遊びたい盛りの歳だったろうにな。大したものさ、本当にな。
「・・・お母様が居なくなった時、私達には祭や粋怜みたいなお母様を支えてた頼れる先達や、冥琳達皆が居たけど。あの2人は身内さえ敵だった?」
「更に道玄の話を持ち出すならば、私達はそんな相手に護って下さいと請うた事になるな。しかも護られた挙句反乱起こして追放してしまった。」
なんか2人が落ち込み始めたので、あくまで俺の推測だ、と言って有耶無耶にする。お前達はただ、自分達だけが苦労してきた訳でもなければ、相手にも事情がある、という事だけ理解してればいい。どうせどんな理由があったって、自分達に譲れないものまで譲る必要などない。命が最たる例だな。相手にどんな理由があろうと、殺されてやる謂れはない。死んだら終わりだからな。
「そうじゃの。譲れないものがあるのは皆同じ。戦場では臆した者から死んで行く。大事なのは相手にも事情があると理解した上で、己の意思を曲げない胆力を持つ事じゃ。」
良い感じに祭が締めてくれたので、皆が神妙な顔をしてそれぞれ勝手に納得してくれた。とゆー訳で話は終わりだ。シリアス疲れた。飯食って今日はもう寝よう。凪、料理手伝って。ああ、流琉達いないから今回は朱里と雛里も手伝え。尚、料理に協力した者には銚子が一本付きます。定員3名。
一気に緊張を解き、色々な事を明日に放り投げて飯の準備に入る。調理を手伝ってくれる3人が分かりました、とか了解でしゅ、とか言って付いてくる。その後ろでは酒好きどもが我先にと手伝いを名乗りでて、即睨み合いに発展したが放置する。今日は色々あり過ぎて付き合ってやる体力が残って無いのだ。
真面目な話に飽きて暇してた鈴々が飛びついてきて、すぐ音音が後に続く。音音も最近では恋から少しずつ離れ始めた。成長してるなぁ、と思いつつ、摘み食い目的で付いて来ようとした恋を特大べっこう飴であやす。
そうしていたらふと、何故か前世の家族を思い出した。
少しだけ懐かしくなって笑い、立ち止まる。振り返れば、家族の様な仲間達。
誰一人、死なせる気はない。
迫る宿命の時を前に、もう一度決意した。
続く。
好きなキャラだけ英雄譚からも出馬。なら何故孫堅さんが居ないのか?
この小説で死んだことにしてから英雄譚の存在を知ったからだよ!