避けたりとかそういうのはしない。   作:銀座

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遅くなりました。

50話までには終わらせたい。


恋愛成分2割り増しです。


43話 カルボナーラよりミートソースが好き。

 

 

やぁみんな、とうとうたった1人で戦力過多と呼ばれる様になったオーク系転生者の俺だよ!

 

 

アレから2週間が過ぎた。

 

孫策軍と俺たち傭兵団は、今だに袁術さんの砦で事後処理している。ぶっちゃけ俺が城を崩壊させたせいだ。どうもウチの軍師組や冥琳達は、もともと勝ってここを使うつもりだった様で、城だけとは言え一から作り直しになったことで、かなり怒られた。何でも此処に一部部隊を残して動かすことで、奇襲に使えるとか。

 

 

幸い無事な区画に城の図面が残っていたのと、俺が粉砕させたのは下の方だけなので、意外と使える石材が残っていたこと、真桜が図面を弄って簡素な城にしたこと、など色々な偶然が重なり、人海戦術の力も相まって、急ピッチで城の再建が進んでいる。

 

 

なお、降伏した兵達のほとんどがそのまま孫策軍に組み込まれ、孫策軍は今や60万を超える大所帯になった。とはいえ、流石に命令系統の構築や、専用部隊などの割り出しには時間がかかり、兵の調練に連日武将組が駆り出されている。かなり忙しい様で、軍議などで夜遅くまでかかる事もある。まぁそれでローテーションに欠番が出ないのは流石と言うべきか何と言うべきか。

 

軍師組は最初は色々な手配に奔走していたが、今は少しだけ余裕が出来たらしい。何でも本国に残してきたひゃわわや張昭さん(ちんまい人。口調がカッコイイ。あんまり絡んだ事はない。)などの返事待ちとか何とか。よく分からんが、まぁ呉に来てから雪蓮のせいで忙しそうにしてたし、休みなのはいい事だ。

 

「まぁ、最近まで忙しかったのは道玄のせいですけどね。」

 

「むしろ予測がつかない分おにーさんの方が対応が大変ですー。」

 

「はわわ、毎回対策が役に立たないです!」

 

「・・・私は軍師として雇われなくて良かったわ。」

 

「あわわ!詠ちゃんずるいです!一緒にやって下さい!」

 

絶対に嫌よ、と詠がきっぱり拒否する。俺どんだけ厄介者扱いなのか。くっそう、今に見てろよ!後で詠の苦手な焦らしプレイでガン泣きさせちゃる!

 

「何で私だけなのよ!あ、あれを引き合いに出すのは卑怯よ・・・。」

 

「あれは辛いですからねー。星ちゃんなんかはあのもどかしい恥辱の後の開放感が堪らないって大喜びですがー。」

 

「えぅ・・・星さんは、凄いです。」

 

「あれは素直に変態と言っていいと思いますが・・・。」

 

まぁ、星は変態だからな。もうどうにもならん。個人的には朱里と雛里があれの影響を受けている方が心配だ。

 

「はわわ、それは秘密でしゅっ!」

「えっ、朱里達何をしたの?」

 

んー、流琉まで影響されたらマズイから内緒にしておこう。そう言って話を打ち切ると、目の前の器からクッキーを一枚取って口に運ぶ。サク、と小気味良い音がなり、口の中に砂糖の優しい甘みが広がり、ビターなチョコチップの苦味が程よく引き締める。噛んだ瞬間までは粉の塊の筈なのに、直ぐに口の中で解ける様にしっとりとした食感に変化した。そのまま唾液と混じって滑らかに喉を滑り落ちる。僅かに残る後味を、砂糖不使用のピーチティーで流せば、桃の香りが華やかに鼻を抜けた。

 

「美味い。」

 

いつの間にか流琉の調理技術がお菓子類まで及び、さらに天限突破しててヤバイ。このクッキーとか前世で一度だけ食べた事のある超高級クッキーより美味い。あっちは缶に入った長期保存可の作り置き、こっちは焼きたての長持ちしないもの、という違いがあってもこの味。どうなってんのこれ。もはやパティシエになれるどころか世界一待ったなし。俺の妹が天才過ぎる件について。っていうかクッキーはともかく紅茶の入れ方までいつの間にか巧みになってる。料理限定とはいえ、1人で何百年未来まで進む気なんだこの子は。とりあえず既に千年は超えた気がする。

 

「兄さまの砂糖のおかげですよぅ。」

 

幾ら使っても無くならないですからねー、と照れた様に苦笑する流琉だが、それだけでここまで技術が上がるなら、前世のパティシエール達は研鑽も修行も要らなかったろう。明らかに尋常ではない。もはや俺などお菓子に関しては何一つ敵うものはないだろう。兄としての誇り的には悲しいが、逆に誇らしくもある。立派になったものだ・・・!

 

とりあえず撫で撫でして褒めまくる。うりうりーとやればきゃっきゃっ喜ぶ流琉。今だに鈴々や音音なんかも大喜びの羌毅さん式撫で撫で!実は少しずつ進化してるのだよ!ふーはははは!

 

そのままキャッキャしてたら唐突に流琉が言った。

 

「でも私、自分で作るお菓子より、兄さまのべっこう飴が一番好きです。」

 

・・・こやつめ、可愛すぎるぞ!ナデナデ追加じゃー!

 

そうして流琉とイチャついていると、朱里や雛里に加え、珍しく風も撫でろと乱入してきたのでしっかり撫で回す。うむうむ、実に可愛い!でも風、俺の膝の上で寝るのは早いよ?まだおやつの時間だよ。

 

「あ、あの〜。出来れば私もおやつとお茶が飲みたいんですけどぉ・・・。」

 

そう悲しそうな声で聞いてきたのは張勲さんだ。あの後うちの侍女組に組み込まれた袁術さんと張勲さんは流琉達の下、一流の侍女としての修行が始まった(袁術さんのみあらゆる科目の勉強もしている。メインは計算)。特に袁術さん、いやさ美羽は本当に何もかも未体験かつドジで根性無しなのでもうびっくりするくらい流琉が厳しく指導している。

 

厳しく、と言ったのは俺なのだが、少し可哀想になるくらい厳しい。何せ一度耐えかねて逃げ出そうとした美羽に電磁葉々を持ちだしたくらいだ。その為、美羽は毎日必ず一回ガン泣きさせられていて、たまに甘やかそうとした張勲・・・七乃も正座で一日中説教されて、美羽と一緒にガチ泣きしてた。まぁあの状態の流琉はおせっかいレベル100、お節介過ぎて物理的に指導しちゃうので、流琉の力でやられたら洒落にならんくらい怖いから気持ちは分かる。あ、二人の真名は二人をうちに引き入れた翌日に交換しました。

 

さておき、音音、美羽の進み具合は?

 

「まだ七割ですぞ!」

「うぅ、くっきー、くっきー食べたいのじゃあ・・!」

 

だってさ。美羽の宿題が終わらなきゃ食べれないよって言ったろ?その為に本来なら自力でとかなくちゃならない宿題なのに、計算の仕方なら七乃も教えていいって言ったわけだし。昨日お前が甘やかさずきちんとやらせてればもう終わってた筈だ。だってあれただの計算ドリルだし。最も、答えだけを教えられないようにウチの軍師組が常に監視してたが。

 

「そ、それはですねぇ、えーと・・・色々と深い理由が。」

 

いい、軍師組にも聞いてないが分かる。どーせ美羽を弄りながら甘やかしてたんだろ。こんな問題も解けないんですかぁー?とか言いながらいちいち1問ずつ蜂蜜水とかあげたりしてて、気付いたら全然進まなかった、といったところか?

 

「ぎくっ!な、何故それを・・.!?」

 

今朝、美羽から蜂蜜の匂いがした。月と詠の侍女教育からも、流琉の料理教育からも日々の合格基準を満たしたとは一度も聞いてない。満たしてないとご褒美のおやつは出さない。満たした所でお前達が来てから蜂蜜を使ったご褒美は俺も流琉も作ってない。ついでに美羽自身に蜂蜜を残しておく、という考えはない。そして軍師組の持ってる甘い物イコール俺か流琉のお菓子だ。つまり持っているにしても美羽にあげられるのはお前だけだ、七乃。

 

「か、完全にバレてる・・・お、お嬢さまぁっ!頑張ってくださいぃ!このままでは私までおやつが!!」

 

どうやら美羽を甘やかして自分にとばっちりが来るとは考えてなかったらしい。今更美羽に泣きついているが美羽自身もおやつが食べたくていっぱいいっぱいだ。七乃に泣きつかれてむしろ美羽がガチ泣きしそうである。ああ七乃、泣き真似するのは構わんが、答え教えたら向こう2週間おやつ無しな。

 

ぎくっ!と七乃の身体が強張った。な、何故?と聞かれたので答えてやる。俺は鼻も良いが、耳も良ければ視力もいい。音音の死角で指で答えを書いていても腕の筋肉の動きでわかるし、美羽にしか聞こえない程度に小さな声で喋ってても分かる。あ、ちなみに連帯責任なので美羽も2週間おやつ抜きになります。

 

そう言ったら途端に美羽が涙目になって七乃をあっちへ行くのじゃ!妾は自分で解くのじゃ!と追い返した。まぁ今の努力が無駄になったら美羽としては絶望するしかないからな。

 

美羽にまで追い返された七乃は涙目でこっちを見るが、当然無視だ。女性陣も誰1人取り合わない。自業自得だ。ん?なんだ?こうなったら身体で?お前おやつに身体かけんなよ馬鹿なの?え、早いか遅いかの違い!?お前の中で俺はどんな鬼畜に・・・いやいい、聞きたくない。というか、星の名が出てきた時点で察した。

 

つか、身体払いは構わんが、目の前の女性陣に許可取ってからにしてくれ。お前ローテーションに入ってないし。まぁおやつの為、では誰一人許可出さないとおもうが。

 

案の定全員に駄目出しくらい七乃が崩れ落ちた。まぁ流琉の作る料理は麻薬成分ゼロだがDCSより中毒になりやすいガチの美味しさを誇る。俺だって朝帰りして流琉を怒らせた時飯抜きにされたら死ぬほど落ち込んだ。気持ちはわかる。だが助けない。何故なら俺も流琉に怒られるからな!

 

 

 

しばらくして、膝を抱えて落ち込む七乃を尻目に、美羽がようやく宿題を終わらせた。頑張ったのじゃ!と胸を張る美羽を褒めながら頭を撫でて、おやつの許可を出し、流琉にピーチティーを入れてもらう。もちろん美羽に付き合って自分も我慢してた音音の分も忘れずに頼み、音音を労いながら美羽と一緒に頭を撫でる。

 

ちちうえー♫とご機嫌な音音。実は撫でて欲しくて頑張って美羽に教えているという事を俺は知っている。別に理由や結果を出さなくても求められれば一日中だって撫でてやるのだが、どうもご褒美だから良いらしい。うちの娘は本当に可愛い。とりあえず二人をそれぞれ膝の上に乗せて撫でながらおやつを好きなだけ食べさせる。余計に七乃が落ち込むがフルスルー。

 

「道玄、今日もですか?」

 

唐突に稟に質問された。今日も武将組と一緒に行かないのか?という意味だが、行かない。俺が行くと兵が怯えて使い物にならないからな。どうもちょっと城を破壊したのがやり過ぎたのか、俺が近くにいる時の元袁術軍の兵達はものっそい怯える。もうそれこそネオに捕食されそうな動物達並みに怯える。だから俺は武将組の手伝いが出来ないのだ。うむうむ、実に仕方ないね!

 

「んなわけなかろうが!!道玄、お主いつまで遊んでる気じゃ!!」

 

いきなり怒られたので見ると、胸の下で腕を組んだ祭がこちらを睨みつけながら仁王立ちしていた。どうでもいいけどそれ威圧感感じるより先に胸に全て視線が行くから、俺の前以外でやるなよ。

 

「ぬっ?ま、まぁお主がそれを求めるならば・・・ではないっ!そうやって誤魔化そうとしても無駄じゃぞ!毎度毎度同じ手に乗るか!」

 

?何を言うか。以前ならともかく、今はもうお前は俺の女だ。自分の女に他の男の視線が集まっても嬉しくない。正直露出を控えさせたいくらいには独占したい。だから無意識でもなんでも他の男を誘惑する様な真似は控えろ。

 

 

「なぁっ!ぬ、ぬぅ・・・心配せずとも、儂が想っているのは道玄だけじゃぞ。な、なんなら確かめてみるか?」

 

「おじちゃ〜〜〜んっ!!」

 

「おとーさん、璃々を連れてきたのだー!」

 

 

おお!璃々、鈴々!待っていたぞー!よく来たなー璃々!よしよし、ほーらお菓子もあるぞー。よく噛んでたくさんお食べー?

鈴々、お迎えご苦労様。良くやったなー、流石お姉ちゃんだ!えらいぞー!よしよしよし!

 

「わーい!流琉おねぇちゃんのお菓子〜!」

 

「鈴々もう子供じゃないのだ!お迎えくらい余裕なのだ!でももっと褒めても良いのだぞ!・・・頭ももっと撫でて欲しいのだ!」

 

 

ぬははは!よーしよしよし、思う存分撫でちゃる!ん?どうした音音?え、自分ももっと撫でろ?なんだー?ヤキモチかぁー?任せろ!ん、どうした美羽。妾も頑張った?仕方ないなー全く、可愛いやつらめ!撫でまくりじゃー!

 

「・・・おい、道玄?」

 

うちの子達本当に可愛い!いやーおとーさん幸せだなぁ!よーしよーし、璃々。今日は何して遊ぼうか?鈴々もおいでおいで!武将としての仕事は他の人達に任せておけば大丈夫!雪蓮あたりが働くよたぶん!

 

「ほぉ・・・。またしても騙されたのか儂は・・・。ふふっ、良い度胸じゃのう。」

 

んん?どした祭、お前仕事は良いのか?駄目だぞ、呉の宿将が遊んでちゃ。雪蓮が調子乗るからな!ほら今日も頑張ってくるといいよ!

 

 

「貴様も行くんじゃど阿呆!!またしても騙されるところじゃったわ!毎度毎度そうやって誤魔化しおって!今日こそ来てもらうぞ!」

 

 

えっ、俺?あー、今日は子供達と遊ぶ系の仕事が忙しいから無理だな。

 

「昨日もそう言っておったじゃろ!いい加減にせんか!」

 

断る。俺は子供達と遊ぶ系の仕事が忙しい。向こう10年は予定でいっぱいだ。

 

「子どもが大人になるまで遊び続ける気か!?えぇい、子どもの為に働くのが大人の仕事じゃろうが!」

 

止めろよー、引っ張るなよー。俺の仕事はこうして子供達と遊びながら成長を促す事なんだ。たった今俺は傭兵から保父さんになったんだ。子供達が将来おとーさんみたいな人と結婚する!って言ってくれるまで甘やかすんだー!

 

「娘が生まれたばかりの父親か!それはもはや洗脳じゃろうが!せめて甘やかすのではなく教育せんか馬鹿者!」

 

そんな事したら嫌われちゃうかも知れないだろ!今の俺はおとーさんの服と私の服一緒に洗濯しないで、とか娘に言われたら死ぬ自信があるぞ!本当だぞ!

 

 

「思春期の娘を持つ父親みたいな事を言い出すな!えぇい、いいから行くぞ!」

 

あ、こら耳を引っ張るな!卑怯だぞ!俺がちびっ子たくさん抱えてて手を離せないからって、防げない所を狙うなんて!ぼ、暴力反対!!

 

 

暴力の権化みたいなお主が何を言うか!と容赦無く攻め立てる祭。膝の上できゃっきゃ楽しそうなちびっ子達。ぬぬぬ、ま、負けぬぞ!今日はみんなで散歩しに行くのだ!そしてデカい獲物取っておとーさん凄いのだ!って娘に尊敬の眼差しを向けられる為なら俺は修羅になる!

 

「必死過ぎでしょう、道玄・・・。」

 

「アンタ、子どもが絡むと本当に馬鹿になるわよね。」

 

「風ちゃんもこれはドン引きですー。」

 

「えぅ、子ども好きは素晴らしいと思いますが、し、仕事はちゃんとしないと駄目ですよ!」

 

 

えぇいうるさい!俺の仕事ハッキリしないからいいんだよ!というか、俺が行くと兵が怯えるって言ってるだろ?むしろそう言って来なくていいって言ったの祭やん!都合が悪くなったら呼び出すの良くないよ!

 

「あれはお主が璃々をおびえさせた、とか言って阿保みたいな殺気をばら撒くからじゃろうが!あれのせいで元袁術兵が動かなくなって大変だったんじゃぞ!?あの場はどう考えても原因のお主を一旦取り除くしかなかろう!お主も他のみんなもわかっておったから何も言わなかった筈じゃ!それをこれ幸いとばかりにそのまま今日までずっと来なくなるやつがあるか!」

 

あーあー、聞こえませーん。誰がなんと言おうと俺はもう武将組の手伝いはしません。安心しろ!その代わり全力で子守するから!将来立派なお嫁さんになるまで悪い虫は例え蚊みたいな小さい虫でも1匹残らず殲滅するから!むしろ嫁に出さない勢いで守るよ!

 

「分かった、話は後で聞いてやる。お主の留まるところを知らない親バカっぷりとかも全部な!だから早う動かんか!」

 

 

軍師組と流琉達の白い目を全力でスルーしながら祭に抵抗する。だが耳は髪と同じでパワーでガードできない部分だ、意外と辛い。だが負けぬ!膝の上の四人のちびっ子の為に!おとーさんは娘のためなら天にも喧嘩を売れる!だから止めるんだ祭!そして俺の代わりに雪蓮をこき使っておいで!つーか今日はしつこいぞ、何なんだ一体!?

 

「やかましい!いいから早くするんじゃ!このままではまた・・・!」

 

また?と疑問に思ったら、祭が気まずそうな顔をした。ふむ?

今日なんかあったっけ?と思いつつも、うちの子達と遊ぶことにしか使われてない俺の脳細胞は、記憶を漁る事さえ諦めている。なので手っ取り早く軍師組に聞いてみるも、軍師組も分からない様だった。なんだなんだ?って考えているとこんにちわ、と声を掛けられる。見ると黄忠さんだった。あっ、おかーさんだ!と元気よく手を振る璃々、あらやだ本当にこの子可愛い。俺も黄忠さんに挨拶をして、璃々を撫でながら、再度思考する。あれ、厳顔さんも来たの?仕事しろよ。え、全部魏延さんに投げてきた?・・・流琉、後で魏延さんにお菓子でも持ってってあげてくれ。

 

「紫苑、でいいと言ってますのに・・・。」

 

「またこんなところで油を売っているのか。暇なら鍛錬に付き合え道玄。」

 

うちの女性陣とはまだ交わしてないんだろ?知ってるやつしかいない時だけにしておくよ、黄忠。厳顔、今ならあの辺りに呂布がいるから行っておいで。俺はちびっ子と遊ぶ仕事で忙しい。

俺の隣に座って、璃々をあやす黄忠さんを横目に、なんだつまらん、と不満気な厳顔さんが酒を取り出したので即座に取り上げる。何をする!と文句を言われるが、昼間っからちびっ子の前で酒を飲むな。璃々とウチの子に悪影響だろ。ただでさえ星たちのせいで酒に興味持ってきてるんだから。というか、酒を出したら孫策や程普といった呑んだくれ共が抜け出してくる。周瑜が可哀想だからやめてやれ。

 

「この親馬鹿め。暇で敵わんのだ、酒ぐらい構わんだろう?それとも道玄が相手をしてくれるのか?」

 

あと桔梗と呼べ、と黄忠さんの反対側からしなだれかかる厳顔さん。暇なら仕事したらいいと思います。面倒なのでスルーしようとしたら、鈴々がなら鈴々が相手になるのだー!と膝から降りて行ってしまった。なぁぁぁあ!?お、おのれ厳顔、俺から鈴々との遊び時間を奪うとはいい度胸だ!良かろう、こうなったらお望み通り俺が相手になってやる。久々にキレちまったよ・・・!え、なに鈴々?鈴々がやりたい?そーかそーか、なら頑張っておいで。おとーさんここで見てるけど、気をつけるんだよ?

 

 

チョロ過ぎか!と叫ぶ厳顔さんをシカトし、頑張るのだ!と元気一杯な鈴々に璃々と一緒に頑張って、と手を振る。璃々によくできたねー、と褒めつつ頭を撫でて、美羽と音音も撫でる。おい、いつまでやってんだ。はよ来い七乃!

 

「っ、良いんですかぁ!?」

 

今回だけな。これに懲りたら美羽をあんまり甘やかすんじゃないぞ。次はないからな?

 

さっきまで膝を抱えて絶望していた七乃が飛び起きる。こいつがここまで執着するとは・・・流琉の手料理恐るべし。現金な奴だな、と苦笑しつつ、まぁ美羽も七乃と一緒に食べれて嬉しそうだからいいかと思うことにする。うむうむ。

 

って言うか祭、さっぱり分からん。今日、なんかあったか?諦めて祭自身に聞いてみた。面倒になったわけではない。

 

・・・あれ?

 

返答がないな、と思って祭を見ると何か俯いて震えている。どうした?すると急に顔をあげてキッ!と俺を睨む祭。お、おお?なんだなんだ?本当にどうした?

 

「うるさいっ!儂はもう知らん!・・・この女誑しめ、ずっとそうしてるがいいわ!」

 

そう怒鳴った後、そのまま踵を返し大股で去って行く祭。うん?訳わからん。

あまりに意味不明だが、とりあえず膝の上のちびっ子をささっと降ろし、立ち上がる。そのまま急ぎ足で去って行く祭を、気配を殺しながら素早く強襲する。祭が片足を出した瞬間に残った軸足を膝裏からかっくんし、後ろに倒れるのに合わせて掬いあげる。一瞬でお姫様抱っこ状態になった祭は何が起きたかわかってないようだ。目を開いて固まっている。

 

「・・・とりあえず、まずは説明しろ。」

 

「・・・?ッ、うるさい!離せっ、離さんか!」

 

ああこら、暴れるな。

 

ジタバタする祭を落とさない様に気を付けながら、どうも意固地になってるみたいで話したくないらしいので、ささっと匂いで感情を読むことにする。くんかくんか。

 

むむ?何か思ってたのと違うな。これは嫉妬と怒りと・・・不安?

 

嫉妬と怒りはまぁいつものこととして、不安ってのは何だ。普通に考えたら戦の事だが、祭は呉の宿将とか呼ばれる程に戦慣れした猛将だ。今更こうなるとは思えんし、実際今までの戦でそんな匂いはしなかった。

 

むむむ、何だろう?と思ってたら、トコトコ歩いてきた風が、ひょっとして厳顔と黄忠が原因じゃないか、と言う。びく、と腕の中の祭が震えた。んん?どういうことだ?まさかまた俺浮気を疑われてんの?っていうか浮気を疑われるのはいつもの事だが、それならいつも嫉妬と怒りで埋め尽くされ・・・あっ。

 

「前にも一度祭さんがこんな風になった時があったはずですー。」

 

そうだな、あったあった。あれは・・・粋怜の時だったか。なるほど。流石だな風、助かったよ。今両腕塞がってるから後で撫で撫でしちゃる。えっ、今日のローテーションの時に他より力を入れろ?お、おう。できたら頑張ります・・・?

 

さて、風と交渉が済んだので腕の中の祭の顔にこちらも顔を近付けて、ちょっとドキリと固まる祭に囁く様に訊ねる。

 

「まさかと思うが・・・祭、俺がお前からあの2人に乗り換えると思ったのか?」

 

「違うわ馬鹿者!・・・ただ、ただこれ以上増えたら、儂の居場所が・・・。」

 

んん?何それ、と思ったら、どうも周りに比べて自分が年上な事を気にしていた様だ。儂の方が先にお主を、とかお主を1番に思っているのは、とかブツブツ言っているが、要するにただでさえ周りに比べて年上なのに、自分と同じくらいの年の2人が入って来たら、自分は相手にされなくなるのでは、と不安になった様だ。特に黄忠さんは娘の璃々を俺が猫可愛がりしてるから、余計に、だろう。粋怜の奴の時の過剰反応はその辺りもあったのね。何というか・・・

 

 

 

このBBA可愛すぎかよ!

 

 

 

何てくだらないこと気にしてんだこいつ!ある訳ないだろそんな事。つーかまず2人と何もないし。ちょっと真名は交換したけど璃々を助けたお礼とかそんな感じだし!急に乙女みたいなこと言いやがってくっそ可愛い!普段綺麗キャラだからギャップが酷いこの熟女!

 

可愛過ぎたのでそのまま祭にキスする。驚愕する彼女を無視して舌を突き出し、唇を割って無理矢理絡ませる。暴れていたのが嘘のように、直ぐに目がトロンとする。後ろからの視線は無視だ!

 

 

たっぷり2分ほど舌を絡めあって、最後に軽いフレンチキスをする。いや、完全に忘れてたけど璃々が後ろに居たんだよね。少し離れてるけど後ろでおかーさん、あれが大人のちゅーなの?って黄忠さんに聞いてるんだよね。なので今更遅いかもだけど、せめて唾液の糸が引く瞬間くらい隠したいな、と思ったんだ。個人的にそれが1番エロいと思うから。まぁ後ろでその辺含めて全部黄忠さんが璃々に解説してるけどな!自分の娘だからってちびっ子に何教えてんだアンタ!

 

 

「んぅ・・・道玄、もっと・・・!」

 

 

こっちはこっちでスイッチが入ってしまった。相変わらずお姫様抱っこ状態の祭だが、さっきまで暴れていたのが嘘のように大人しくなり、腕を俺の首に絡ませて甘えるように強請る彼女。完全に顔が夜の閨での顔だ。これはマズイ、璃々と美羽の教育に良くない。だからちょっと出掛けてくるわ!決して祭が可愛過ぎてムラっとした訳ではない!

 

「駄目です。」

 

「却下だな。」

 

 

足を踏み出したと同時にそんな言葉が聞こえて、次の瞬間には俺の足に絡まる鞭と、目の前に突き出される刃・・・どう見ても青龍偃月刀ですありがとうございます。えっと、何故ここに、というかいつの間に。愛紗、冥琳。

 

「今日こそは私と一緒に来て下さいね、と言ったはずなのにまだ道玄が来ないので、また璃々とでも遊んでいるのだろうと、見に来たのですよ。」

 

「私はお前を連れてくると言った祭殿が戻ってこなくてな。軍議の時間だから探しに来たんだ。まさかまだ道玄と一緒にいるとは思わなかったが。」

 

そう言ってにこり、と笑う2人だが、俺は騙されない。目が全く笑ってないからな!やっぱり無茶苦茶お怒りのご様子。だが狼狽えない!最近の俺は遂にこういった場合の切り抜け方を見出した!あくまでこういった俺の女達誰か1人を優遇した場合限定なので、新しく誰かに手を出したりするとまるで意味は無いが、今はだいじょーぶ!喰らえ、全員が躊躇する魔法の言葉!

 

 

「2人とも、今邪魔をすれば自分の番の時でも邪魔が入るぞ?」

 

「2人とも。すまぬが此処は退いてくれぬか。2人の時は邪魔せぬし、何なら協力もする。だから頼む。」

 

 

おっと、俺の魔法の言葉に更に祭からの援護射撃だ!想定外だがナイスだ。どうやら祭は今回は2人きりがいいらしい。俺はどうせ夜のローテーションは無くならないから今の段階で人数増やしたくないだけだけども、利害は一致してるから問題はない!言ったら祭に怒られるから言わないけど!

 

とにかく、これならば2人も引き退る他あるまい!実際これを破れば俺も乱入者を拒んでやらないからな!最近では星や凪でさえ次は自分だと約束させるだけで去っていくぐらいだ。まぁ凪の場合は相手が沙和や真桜の場合に限り、本人から参加を許されるんだけどな!何故か星は稟や風に許されないけども。そんな事を考えながら、内心勝ち誇って愛紗と冥琳を見る。すると其処には悔しそうにしながらも諦める2人の姿が!

 

 

 

 

 

 

 

 

なかった。むしろさっきの3倍くらい暗い瞳で笑う2人がいた。

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・あれっ。

 

 

 

お、おかしいな。ちょっと想像してたのと違うんだけど。というか、冥琳もヤバイけど愛紗の目がヤバい。強烈に病んでる時の目だアレ。初めて俺を襲った時の目まであと少しって感じ。ど、どうしよう祭、これは無理せずこっちが折れた方が安全な気がする!

 

「嫌じゃ!は、初めてお主から求めてくれたのじゃぞ!今回ばかりは絶対に譲らぬ。2人きりでなければ嫌じゃ!」

 

祭が我儘を言い出した!どんだけ乙女になっているんだ・・・!後ろから突き刺さる軍師組の視線が痛い!これから逃れる為にささっと離れようとしたのにっ!というか、さっきから璃々があれがしゅらば?って無邪気で楽しそうにしてて辛い。横でそうよ!あれが修羅場よ!ってくねくねしながら璃々に教えてる黄忠さんは後で説教だ!あ、鈴々と厳顔さんが組手の手を止めてこっちを見始めた!いかん、どんどん大事になってくる!

 

と、とにかくこの場を離れたいが、足に絡みつく鞭どうしよう。引き千切るのはカンタンだが、此処は建業じゃないので直ぐに作り直すことはできない。軍師や武将の持つ武器は基本的に業物だ、そんな武器をおいそれと破壊して、戦場で冥琳に何かあっても困る。嘗ての春蘭みたいに、補給の当てがあるなら別だが。

 

 

「・・・あの日、お前と再会した時、お前は雪蓮と交わった私を浮気者とし、相手がいなかった祭殿には操を立てたと特別扱いをしたな。」

 

どうしようか迷っているうちに、冥琳が暗い瞳のまま語り出した。あっ、逃げるタイミングを逃した!

 

 

「それがあんまりにも羨ましかったから、私は断腸の思いで雪蓮の誘いを断り続け、お前に愛されたくて頑張った。結果それを認められて私がお前と2人きりでいられる特別な日を迎える迄に、3回。祭殿がお前に特別扱いされた。

その後も、私が雪蓮達の分まで仕事して忙しくする度、いつの間にか他の誰かがいい思いをする。今だってそうだ、私が頑張っているというのに、祭殿がまた道玄を独り占めする・・・私はまだ一度しか特別扱いしてもらってないのに。邪魔が入る?邪魔が入るもなにも、私はそもそも邪魔が入るような2人きりの時間がないぞ?幾ら何でも不公平じゃないか?それとも私では嫌か?」

 

 

い、いやそんな事は全然ないです。むしろ冥琳と2人きりになりたいくらいです!ただちょっと冥琳が忙しいそうだから邪魔しちゃ悪いなー、とか、雪蓮と一緒の方が喜ぶかなー?とか思ってただけで!

 

これはマズイ、良かれと思ってた事が全部裏目だったくさいぞ。まさかあえて冥琳1人と過ごさなかったのが不満だったとは思わなかった。珍しく饒舌に文句が出るくらい怒っている!流石に祭もちょっと及び腰なのか、首に絡めていた腕に力が入る。

 

 

「・・・道玄。」

 

うおっ!

 

冥琳に気を取られていたら愛紗がとうとう口を開いた!ヤバい、名前呼ばれただけなのに思わず身構えるほどの殺気が溢れている!璃々達まで届いて無いから良いけど、これはヤバい!愛紗達の後ろを通りかかった兵が腰を抜かしてへたり込んだくらいだからクッソやばい!

 

 

「・・・道玄、貴方の1番は私です。なのに此処最近、私よりも他の女を優先し過ぎですよ?特にこの3ヶ月・・・私は一度も貴方と2人きりの1日を過ごしてません。それどころかどんどん新しい女を増やして、そっちに構ってばかり・・・。まさか、私よりも他の女を選ぶ気ですか?駄目ですよそんなの。絶対に、絶対に駄目です。許しません。」

 

 

貴方は私のものです。そういう愛紗の目がどんどん暗くなっていく。いかん、こっちは洒落にならん。俺を腹上死させかけた時と同じ顔になってきてる。確かに今までは愛紗ばかり優先してたから、この3ヶ月はなるべく他の皆と2人きりの日を作ってたけど、その分愛紗とはなるべく普段の日々を一緒に過ごせるようにしたんだがなぁ・・・。それでは駄目だったらしい。正直俺でもガクブルなくらい狂気的な目をしている。後ろでヘタってた兵は気絶してしまった。覇王色か!本気でマズイ、今の愛紗は自分以外の女を殺しかねん。ど、どうしよう、いつものノリでいたら終末に突入しかけでござる。

 

 

腕の中の祭は、いつもの剛毅な感じはどこにやったのか、離れとうない、としおらしくとても可憐だ。くっそこれは駄目だ可愛過ぎて離せない!

 

かといって目の前の2人を置いていく、という選択肢は死亡フラグだ。ここで逃げたらそのまま帰ってこないつもりでないといけないだろう。こ、これは・・・進退極まった感じ?

 

そうこうしてたら、急に後ろから肩を叩かれた。すわ救世主かと振り返るとそこには!

 

 

「何をしているのですか、道玄様?」

 

「お前・・・またか?」

 

凪と白蓮がいた。あ、これはヤバい、状況悪化した。白蓮はともかく、凪はアカン。

 

そう思った次の瞬間には腕の中の祭を見て、凪の視線が一瞬で険しくなった。咄嗟に距離を取ろうとしたら腕に違和感、愛紗と冥琳だった。凪に気を取られていた間に距離を詰められたようだ。何気に白蓮がタックルして左足を抑えていやがる!地味に嫌な事を!

 

「逃がしませんよ?道玄。」

 

「流石にもう我慢の限界だ。許してはやらないぞ?」

 

 

詰んだ。すまん祭、なるべく優先的にするから、諦めてくれ。あ、待って愛紗、まだ腕の中に祭がいるから!私にはもっと長くとかキスするの待って!分かった、分かりました!ちゃんとみんなの相手します、だからマジ待ってってあれ?いつの間にか周りに軍師組が!?

 

おい黄忠さんくねってないで璃々連れて離れろ!教育に良くない!違う呼んでない!参加してとか頼んでないくんなくんな!あ、何鈴々、今日は鈴々もする!?そ、そっかあ〜、別の日には・・・しないのね、分かった。後ろでニヤニヤしてる厳顔さんは後日俺と組手です。

 

 

くっ、こうなったらヤケだ全力で相手をしてやる!だから夜になる前に終わらせてくださいお願いします!「あら?道玄、ここにいたのね。皆も一緒で何してるの?」れ、蓮華・・・!?

 

 

 

この後なんだかんだ全員集まってきた!当然の如く朝までコースだったよ!酷い目にあった!

 

 

 

 

 

⬛️

 

 

あれから1週間が過ぎた。

 

うっかりまた死に掛けたけど、ギリギリの、本当にっ、ギリッギリのタイミングでやってきた張昭さん達からの連絡が帰ってきて、孫策達と軍師組が忙しくなったので何とか助かった。例によって愛紗、星、凪の3人は最後まで容赦なかったが。連絡を持ってきてくれた名も知らぬ伝令の彼には感謝してもしきれない。まぁ目的だった女性陣の裸は諦めてもらう他ないが、今度酒でも奢ろうと思う。

 

 

まぁその後黄忠さん達にお盛んでしたねって言われた時は正直そんなレベルじゃねぇって感じだったが、それよりも璃々に笑顔でおじちゃんウマナミなんでしょ?って聞かれた時は心臓が止まるかと思った。もちろん悪ふざけで教えた星はガチ泣きするまでお仕置きしました。あいつ体罰はご褒美になるからマジで厄介すぎる。そして黄忠さんと厳顔さんのニヤニヤが鬱陶しすぎる。璃々が居なかったら正座させて説教してたよ!

 

 

あ、ちなみに美羽と七乃は参加させてません。例によって星の手引きで素知らぬ顔して閨に混じってた事はあったが、その時にいた雪蓮達と俺の反対が重なり、ギリギリ不参加となった。どうにも七乃は俺のお手付きになる事で、安全を確保する狙いがあった様だが・・・ぶっちゃけそんな事せんでも放り出したりする筈もないし、何より大人扱いされたい、とかそんな感じの理由で混ざると決めた美羽が俺のを見て尻込みしてたので、何とか納得して貰った。それでもまだ不安そうだったので、対価と言うか保証として誓約書代わりに俺の真名を預けておいた。

 

 

 

なお、冥琳はその辺を読んだ上で楽はさせん!的な考えだったらしいが、他の奴らは純粋に嫌いな奴と一緒に抱かれたくない、みたいな事を言っていた。まぁ、ある程度相手の事情が分かっても嫌いなものは嫌いだよね。仕方ない。むしろ自分達がしない、という考えが無いのか?あ、ないよね知ってた。うちの女性陣も大概だけど、呉の女性は性欲強すぎだと思うよ。

 

 

蓮華だけは、美羽より先に国で留守番してるシャオを優先したい、とかそんな事を言っていたが、さも当然の様に俺が相手の事に戦慄を禁じ得ない。何としても先に一刀くんに合わせなくては!つか、俺としてはシレッと混じってる粋怜と穏が色々疑問なんだが、それはいいのか?細かい事はいい?あ、はい。粋怜の後ろで人を殺せそうな目の祭は見なかった事にします。

 

 

あと、厳顔さんや黄忠さん達と仲良くなった話をしてなかったので、軽く触れておこう。

 

とはいえ、そう深い話は無い。あの後、大将を失ってしまった彼女達が降伏し、雪蓮達がそれを承諾してから3日後の事だ。

 

その時はまだ俺も真桜と一緒に破壊した城の再建を手伝ったり、武将組と一緒に軍の編成を決める軍議に参加したりと、割と真面目に働いていた。俺を知らない奴らが居るところだと、だいたいナンパされるうちの女性陣も、今回ばかりは全くされなかった。どうも元袁術軍や孫策軍の兵達が、とばっちりを恐れて周知徹底したらしいが、詳しくは知らない。とりあえず俺は頭のおかしい城砕きと呼ばれている事だけ覚えた。何故頭のおかしい、が付くのか。甚だ疑問である。

 

そんなおり、いつもと同じようにウチの女性陣と孫策達軍幹部と共に昼食をとっていると、黄忠さんに連れられて璃々がやってきたのだ。

 

俺が璃々を助け出してからあの子が起きていた時間はかなり短く、正直覚えてないだろうと思ったし、一応気になって目が覚めたらしい翌日には厳顔さんに話を聞いてみたが、やはり大人の男に若干怯えているらしいとの事だったので会う気は無かった。しかし、どうにも璃々の方が覚えていたらしい。後で話を聞いて驚いた。

 

 

それで母親である黄忠さんに俺のことを聞いたそうだ。それを受けた黄忠さんは、俺が渡した薬を信じるか悩んだ末に試しに自分に使ってみたら、効果が確かだったので一応信じてくれたようで、普通に俺の事を話したらしい。

 

 

それを聞いた璃々は良くできた子なので、お礼を言いたいと、まだ怖くて仕方ない兵がそこかしこにいる陣の中を黄忠さんに連れられて、わざわざ俺に会いに来てくれたのだ。

 

 

再会した時の璃々の可愛さときたらもうそれはそれは・・・公式でも天使みたいな子らしいが、これはもうそんなレベルではない。可愛いという概念そのものでは無いかと思ったね。

 

 

何故かって?それはな、再会した時、璃々は黄忠さんの脚にしがみつきながら周りをキョロキョロ見回してはビクビクしていたんだ。恐らく周りを歩く兵が襲ってこないか不安だったんだろうな。

 

 

それなのに俺を見つけたとたんパアッと嬉しそうに笑っておじちゃーん!って黄忠さんから離れて、俺の方に向かって猛ダッシュな訳ですよ。この時点でやだこの子可愛い、と思ってた俺は、急ぎ過ぎた璃々が躓いて転びそうになった時、嘗てない速度でそれを受け止める事に成功したんだ。俺きっとあの瞬間だけはころせんせーより早かったと思う。

 

 

そうやって抱きとめた璃々は、一瞬キョトンとしてたが、目の前に来たのが俺と分かるとまたしてもパアッと花咲くように笑って、おじちゃん、助けてくれてありがとう!って言ったんだ。俺は思ったね。何故この世界に録画技術がまだないのかと。永久保存したいと思うくらい可愛かった。危うくキュン死するレベルだ。

 

 

良く見るとまだちょっと頰は腫れていて、俺が渡した薬が塗られていた。まだ傷も癒えてなければ、兵に対する恐怖も無くなってないだろうに、無理しなくてもと正直思ったが、黄忠さんに先ほどの俺にお礼が言いたくて来た、という話を聞いた時は健気過ぎてそのまま抱き上げてお菓子をあげまくったくらいである。

 

また、スーパー可愛い璃々は更に嬉しい事を言ってくれた。何でも兵は怖いが俺は安心するらしい。嬉し過ぎてべっこう飴を大量にプレゼントしたら、既に黄忠さんに渡されて味を知っていたらしい璃々は、とても嬉しそうに喜びの声をあげたあと、おじちゃん大好き!と抱きついて来た。感動で危うく全力で抱きしめるところだった。いつか俺も娘が欲しいと本気で思った。

 

 

それくらい可愛い璃々は、それでいて他のみんなも虜にするくらい可愛いので、他人の子供を猫可愛がりする俺を見て若干引いていた女性陣も直ぐに俺と一緒に璃々を可愛いがり始めた。

 

 

何時もなら俺がちびっ子を可愛いがるとヤキモチ焼いて割り込んでくる鈴々や、普通に恋や俺を取られまいと身構えた音音も、璃々の鈴々おねーちゃん、音音おねーちゃんであっさり陥落。おねーちゃん振りながらおやつを一緒に食べだした。ウチの娘達が可愛過ぎる・・・!

 

 

俺、ウチの娘達の為ならフロンティア古龍にも単身喧嘩売れるわ。そう確信した頃、すっかり存在を忘れていた黄忠さんに改めてお礼を言われ、軽く流した。いや、璃々が可愛過ぎて他の話とかどうでもよかったんですわ。

 

 

その後の話もだいたい璃々に夢中になって聞き流したが、とりあえず昼間璃々の世話が出来る者がいない、という黄忠さんの言葉に、任せろ!と反射的に言ったのは覚えている。まぁ後になって俺が仕事中の時の璃々の世話を投げた流琉から怒られたのだが、流琉も璃々におねーちゃんと呼ばれてメロメロだったので問題は無かった。璃々、恐ろしい子・・・!

 

 

それから毎日璃々がうちの陣営に来るようになって、流琉や月、詠とも仲良しになり、出来たばかりの妹分を構いたくて仕方ない鈴々や音音がずっと陣に常駐するようになった。懸念していた美羽と七乃だが、どうにも七乃は璃々を使って黄忠さんを従わせている、という策は容認していたが、肝心の璃々に会った事などは無いらしく、何も言わなければ璃々も怯えなかった。どころか、美羽などは鈴々達と同じくおねーちゃんと呼ばれて舞い上がってしまい、璃々に構おうとして仕事をサボり、流琉にガン泣きさせられていた。

 

 

やっぱりあの時俺がうっかり壁のシミにしちゃったおっさんが諸悪の根源だったようだ。もう少し厳しく苦しめるべきだったか。と、反省した。

 

そんな日々が2日続けば、楽しそうな璃々の姿に安心したのか、璃々や黄忠さんを夕食に誘った時、一緒にいた厳顔さんや魏延さんからもお礼を言われた。2人も何とか璃々を取り返そうとしていたらしい。本当に良い人達や。

 

折角なので2人も夕食にご招待し、存分に流琉の料理に舌鼓をうってもらった。

 

そしてなんやかんやと歓談した後、唐突に厳顔さんから真名を預かり、それに次いで魏延さんからも真名を預かった。ほぼ勢いとその場のノリだったが、酒の力もあって俺も彼女達に真名を預けて、楽しく酒を飲んでいた。のだが・・・その頃になって、別の場所で冥琳達と話してた黄忠さんがやって来て、俺が厳顔さんを桔梗と呼んだら何か愕然として膝をついた。

 

 

いきなりなんだ?と思い話を聞いてみると、よく分からんが、黄忠さんも俺に真名を預けるつもりでいたらしい。ただ、雰囲気がどうとか場所がどうとか言ってたので、望みのシチュエーションかなんかがあったのではなかろうか。

 

宮中の儀礼とかに詳しい月や詠によれば、元々真名の交換には正式な儀式があったらしいし。まぁ真名がもっと神聖な扱いをされていたくらい昔の話で、今更そんな事をしたがるのは夢見がちな少女でも珍しいとかなんとか。

 

とはいえ、実際に俺にそんな作法を求められても困るので、これで良かったのだろうと思っている。傷心の黄忠さんには、もうすぐそんな劇的な真名を交わすような人に会えるよ、と予言みたいなこと言って慰めた。ぶっちゃけ一刀くんのことだが、原作では彼女にご主人様と呼ばれていたツワモノなので嘘では無いはず。何故か黄忠さん達全員が唖然としていたが、もう慣れたものだ。たぶん何か俺が変なことを言ったんだろうが、どこが変かも分からないので気にしない。気が付かなかったことにすれば意外とスルーできるんですよ!

 

まぁだいたいそんな感じで真名を交換してからは直ぐに仲良くなった。まぁ魏延さんと仲良くなった真の理由は、やたらと俺と手合わせを望む厳顔さんが、毎度魏延さんに仕事を押し付けてくるので、その慰労にと差し入れを行なっているからの気もする。

 

 

尚、黄忠さんとは正直もはやママ友である。俺父親だけど、同じ娘を持つ親として良くその手の会話が弾む。最近良く話すのが璃々には父親が必要か、という話題で、周りからは新しい父親がいるべきだ!みたいなことを言われるらしい。ただ、言ってくる人はだいたい黄忠さんの体とか強さとかその辺目当ての男ばかりらしく、なかなか決めかねているのだとか。

 

俺としては今の璃々は健やかに元気一杯で天真爛漫スーパー可愛く育っているので、居なくても問題ないと思う。だから胸を張って女で一つで育てています!って言うべきだ。

 

とかまぁそんな感じに黄忠さんの素晴らしい母親っぷりを褒めたのだが、肝心の黄忠さんには残念な感じの顔をされた。何故だ?個人的にはなかなか良い感じのことを言えたと思うんだが。桔梗、どうしてだと思う?

 

 

「違う、そうじゃない!」

 

 

・・・良く分からないけど、愛紗達には褒められたから良しとしよう。

 

 

 

 

 

 

・・

・・・

 

 

 

ゴトゴトと震動がやや鬱陶しい。

 

うちの馬車は真桜の手によって快適に改造されているが、それでもこういった道そのものが悪路である場合はどうしようもない。21世紀の車の震動が少ないのは、道が整備されているからなのだな、と思い知る。

 

まぁ、なるべく尻などが痛くならないように沙和お手製のクッションや、俺が積んだ束にした藁を敷き詰めてるので、震動による乗り物酔い以外に問題はないのだが。うちの女性陣で乗り物酔いする奴1人もいないし。現代人と違って地力が違うんだなたぶん。初めて会った時の朱里や雛里も、盗賊どもから逃げ出して何キロもほぼ全力で走り続けて俺たちの元へ来たわけだし。

 

 

そんなわけで現在、城の再建に目処が立ったので、残りの作業を行う工作兵と、再編成した半分ほどの軍を残して砦を出発しました。ちなみに残ったのは粋怜、つまり程普だ。あれで仕事は出来るし武力もある凄い奴なので、こういった大役も任せられるらしい。まぁ本来なら祭も残すか、むしろ祭を残すのだが、これから向かう先で祭は居る必要があるらしい。祭自身が反発したのもあるが。まぁチラチラこちらを見てたので理由は分かる、愛い奴である。

 

 

てか呉に帰って何かあるのか、と思ったらそもそも帰るのではなく、とある場所に向かっているのだとか。こないだの軍議で話があったらしいが、例のごとく璃々と何して遊ぶか考えてた俺は聞き流したので知らない。そう言ったらまた軍師組に怒られたけど、とりあえずこの後の中華の歴史を定める重要な場所らしい。どこだよそれ。赤壁?には早いよな確か?

 

 

まあ何でもいいか。ぼちぼち孫策との契約期間も終わりだし、そろそろ俺の目的もみんなと共有しておかないと。

 

「おじちゃん!みてみて、さっき恋おねーちゃんたちとつくったのー!」

 

「・・・作った。」

 

「ねねも頑張ったのですぞ、ちちうえ!」

 

呼びかけられたので、声の聞こえた馬車の外を見てみると、恋の馬に乗った璃々と音音、そして騎手である恋の頭には花で作った冠が載っている。もうそんな時期か。とりあえず体を乗り出して3人の頭を撫で、可愛いと褒めておく。実際無茶苦茶可愛い。何こいつら天使かよ。あ、可愛いの化身だった。つまり正義。

 

 

何時もは璃々の代わりに乗っているセキトは、今回は俺の膝の上にお留守番だ。今は俺と同じように身を乗り出して主人であり友達である恋の花冠姿を褒めるように吠えている。セキトにとっても可愛く見えるぐらい可愛いのだなー、と思いつつ、落ちないようにセキトの体を抑えておく。するとセキトの分、といって璃々がセキトの頭に小さい花冠を載せた。あらやだ可愛らしい!良かったな、セキト。

 

 

わふ!とセキトも大喜びだ。するとどうやら音音は鈴々の分も作ったらしく、先頭にいる鈴々に渡してくる、といって3人を乗せた馬が緩やかに馬車を追い抜いていった。

 

「すいません、皆さんでうちの娘の相手をさせてしまって。」

 

ん?ああ、気にするな。皆も璃々の事が好きだからああして構いたくて仕方ないだけだ。むしろこっちが璃々を連れ回してばかりですまないな、黄忠。

 

「とんでもありません、璃々のあの喜びよう・・・むしろお礼を言わせてください。」

 

喜んでもらえているなら良かった。あのくらいの子供は楽しく遊びまわるくらいでないとな。なら、お互い気にしないって事で。

 

「ふふ、そうですね。」

 

「わふ!」

 

セキトもそう思うか?そーかそーか。おおそうだ、最近固いもの食べてなくて不満げだったセキトにはこれをやろう、熊の腕の骨だ。良く噛んでお食べ!

 

途端にガルル、と唸りながら骨に齧り付くセキト。うむうむ、お前も忘れがちなだけで野生なんだな。よしよし。すると隣に座っていた黄忠さんが可愛いですね、と左肩に、というか腕に頭を預けて来た。あ、それはまず、

 

「近すぎです。離れて下さい。」

 

「あんたも何当然のようにジッとしてんの。離しなさい。」

 

「兄さま、こっちに来てください。早く。」

 

「えう、ご主人様・・・怒りますよ?」

 

あっハイ、すいませんごめんなさい。ほら俺が怒られた気をつけてよ黄忠さん。ただでさえウチの女性陣厳しいんだから。いやごめんなさいって言いながらあーた、顔がテヘペロなんですけど。美人がやっても可愛くなるだけで、誤魔化されたりはしないよ?うちの女性陣はね。俺はともかく。

 

とりあえず怒られたので流琉の横に移動する。即座にセキトを抱えた流琉が膝に座り、詠が左側、愛紗が右側を占拠する。馬車内での良くある陣形だ。尚、詠と月は交代制、愛紗は愛馬を七乃と美羽に預けている。ちなみに、愛紗の愛馬は七乃と美羽が入る前は馬車に追加で繋がれていました。

 

 

さて、当然の様に璃々がいた時点でお気付きだと思うが、そう。黄忠さん親子が付いて来た。厳顔さんと魏延さんは程普と一緒に砦にお留守番です。厳顔さんは無茶苦茶付いて来たがったが、程普だけより、あの砦に慣れてる武将がいた方がいい、という建前のもと残された。

 

厳顔さんが残された本当の理由は、いつの間にか仲良くなったらしい程普の奴に無理矢理引き止められたようだ。どうも程普、黄忠、黄蓋、厳顔の4人は熟女だから気が合うのか、仲が良い。それで今回の様に祭と黄忠・・・もういいか、紫苑が俺に付いてくる事になったので、粋怜としては自分も行きたいのに自分以外の3人が行くのが悔しかったんだろう。本来なら自分の代わりに祭が残る筈だった訳だしな。

 

 

まぁ紫苑が付いて来てるのは俺のせいでもある。いや、本来は紫苑も残る筈だったんだが・・・。実は、出発直前になって璃々が俺たちが居なくなる事を寂しがって泣き出したのだ。

 

 

皆はなんだかんだといい感じの事を言って璃々と別れの挨拶を済ませて居たが、璃々の涙に感化されもとい、どうせ戻って来るなら璃々と一緒に居たかった俺は普通に在留を決意。何気なく送る側に混じって皆に手を振っていたら激怒した皆が速攻戻ってきて無茶苦茶怒られた。特に愛紗の激怒ッぷりは半端なく、最近では懐かしのひっつき虫になってずっと離してくれなかった程だ。

 

 

何を考えてるんだ馬鹿!と皆に言われ、思い切っていやや!ワイは璃々と離れとうない!と駄々をこねてみた。結果として、璃々とは

おじちゃん!璃々!とまるでドラマの様なワンシーンを演じたが、ウチの女性陣からは正座でマジトーンの説教を2時間、他の娘たちから「私達より璃々を選ぶの?」という様な寂しげな顔で2時間見つめられるという過酷な刑を執行された。

 

精神的にボコボコにされ、いたたまれなくなった俺は、なら傭兵団全員で残る、という提案をしたのだが、遅れてやって来た雪蓮達に却下された。特に祭は「お主が来ねば儂が行く意味無かろうが!」とマジ切れし、そんなに粋怜が良いのか?それとも紫苑か?桔梗なのか?とあらぬ言い掛かりを付け始め、それがひっつき虫になっていた愛紗にとっての起爆剤となり、危うく衆人環視の中で愛紗と子作りせねばならないところだった。

 

 

そんなこんなでバタバタした後、璃々がこんなに懐いているからと、兵を厳顔さんに預けて黄忠さんと璃々が付いてくることになった。厳顔さんも付いて来ようとしたが先の理由で断念し、必ず戻る事を約束させられてから、漸く出発する事になったのだ。

 

となると、当然璃々は俺たち傭兵団と一緒に移動するので母親で付き添いの黄忠さんも一緒に来るのだが・・・この黄忠さん、娘がいる未亡人だからか、隙が多いというか、脇が甘いというか。

ぶっちゃけスキンシップが多い。ただでさえ美人で俺お気に入りの子供を持つ未亡人、という事でウチの女性陣に警戒されている。愛紗がこうして馬車の中にいるのもその為だ。もはや俺に信用なさすぎて笑うしかない。

 

 

まぁ、だからもうちょい意識して、さっきみたいな事は控えてほしい。後で俺が大変な事になる。

 

「あらあら、ごめんなさい。次は気をつけますね。」

 

うふふ、と柔らかく微笑む彼女。完全に反省してないので次もやるなこれは。なんか楽しんでるっぽい。

 

右腕に絡み付く愛紗が腕に爪を立てて無言の圧力をかけて来る。痛くはないが、最近ひっつき虫になったばかりなので、些細な事にも大きな反応をしてくる。こういう時の愛紗はこちらも多少大げさに対応しないと夜に返ってくるので、絡み付く愛紗を一旦剥がし、自由になった腕で胸に抱き寄せる。この時、一緒に頭を撫でておけばとりあえずは問題ない。

 

左側の詠にも愛紗と同じ様にし、膝の上の流琉は腕が使えないので、体を曲げて流琉の頭の上に顎を置く(何故かちびっ子皆喜ぶ)。これでとりあえずは大丈夫。御者をしてる月は後で詠と代わった時にしよう。

 

 

なだめる為にそのまま軽くいちゃつく。目の前の紫苑が仲がよろしいですね、と笑う。まぁな、と短く返しつつ、少し視線を逸らす。なんか紫苑の視線が気まずい。まぁ自分1人残されて目の前でいちゃつかれたら苛立つよね。すまん紫苑。だが挑発したの自分だから許せ。

 

 

そんなこんなで若干気まずい空気のまま行軍は進み、璃々を乗せた恋の馬が帰ってくるまでは精神的に大変な思いをする俺だった。

 

 

 

 

⬛️

 

 

 

砦を出て1週間。

 

 

どうやらそろそろ目的地に着くらしい。

 

なんか美羽と七乃をイビリに来た雪蓮に教えられた。そっか。と一言だけ返し、じゃあ契約期間も本当に終わりだな、と考える。何気に結構長く居たのでちょっと感慨深い。

 

しかし隣に座る冥琳や、その向こうの蓮華と思春には不満げな顔をされた。反応が軽すぎて別れを惜しんでないように見えたらしい。誤解なので少しだけ弁明しておく。実際たくさん関係を結んだ女性がいるので、後ろ髪引かれるのだが、俺もやることがある。仕方ないな。

 

 

おい雪蓮、美羽と七乃をいびるのは構わんが、流石に雇用主のお前に言われても解雇はしないぞ。っていうか2人には流琉の手料理禁止とかの方が効果あるぞ。

 

「それは分かってるわよ。っていうか流琉の手料理禁止とか、私でもそこまで酷いこと言わないわ。」

 

「よ、余計な事を言うでない!本当に禁止にされたらどうするのじゃ!」

 

「あ、お嬢さま、ご主人様にその口調は駄目ですよぉ!流琉さん達にに聞かれたら・・・あっ。」

 

クビより流琉の手料理禁止の方が鬼畜なのか。流琉の手料理はどういう扱いになっているのだろう。ああ、流琉。俺は気にしてないから、説教は程々にな。でも口調は侍女の基本なのでせめて詠のように切り替えが出来るようでないとならん。月、これ今日の夜、美羽達のデザートだったアップルパイな。口調一回間違えるたびに12分の1ずつみんなに分けていいから。

 

「あはは、分かりました。」

 

ぎにゃぁぁぁ!と崩れ落ちる美羽と、とばっちり食らって絶望する七乃を見て、逆に気の毒になったらしい雪蓮が慰めていた。まぁ間違えなきゃ良いだけさ。頑張れ。そういうと、そうじゃな、まだ始まっておらぬ!と素早い立ち直りも見せる美羽。こういう時袁紹さんと似てるなぁと感じる。まぁその立ち直り発言自体をワンミスとカウントされて早速一切れを雪蓮に目の前で食べられてしまい、すぐ沈んでたが。

 

 

現在、昨日の昼から今日の朝まで朝まで降り続けた、突然の豪雨のせいで軍の出発が少々遅れている。その為、荷物が少なく、あってもだいたい4次元袋に放り込めてしまう俺たちは、朝食後に少し時間を持て余したのでそれぞれ時間を潰している最中だ。

 

と言っても武将組はいつもと変わらず全員で鍛錬をしていて、璃々は紫苑と共に、それを離れて見学している。がんばれーと応援する姿が非常に可愛い。さっきまで俺も璃々に応援されたくて、珍しくあっちに混ざっていたのだが、カッコイイところを見せようと少し本気出して5人くらい秒で制圧したら誰も相手にしてくれなくなった。戦闘狂の霞や雪蓮さえもだ。それどころか本気出しすぎて璃々には見えなかったらしく、卑怯な事をしたと思われたのか、おじちゃんズルい!と怒られてしまった。璃々に褒められるどころか怒られてしまった俺は悲しくなったので、すごすごと軍師組に合流したのだ。

 

 

残りは軍師組やその他のみんなでお茶しながら歓談したり、読書をしたりしている。先ほど穏の奴が朱里に未読の本を借りていきなり発情し始めた時は危うく全員参加になりかけ、大惨事になるところだった。出発が遅れるとか説得しなかったら危なかった。っていうかお前は何故今読んだし。まぁ、僅か二発でだいたい満足してくれたし良いけどさ。

 

え、今なら大丈夫だと思った?どういう意味だ?・・・んん?

 

待てよ?良く考えたらお前普段本読んだ後どうやって・・・おかげで最近は助かってます?好きな時に発散できる?

 

ちょっ、お前もしかしてやろうと思えば我慢できるんじゃ!?まさか暇潰しに読書したんじゃなくてこっち目的で読書したのか?!おい、どこ見てんだ!目を合わせろ、おい!

 

 

分かってんのかお前、後であの木の陰からすごい顔で見てる愛紗達の相手するの俺なんだぞ!?

 

 

ちょ、こっち見ろやコラァーッ!!

 

 

 

 

・・

・・・

 

「見えてきたわ。」

 

そう言った雪蓮の後に付いて最前列まで移動すると、それが見えた。

 

まだかなり距離があるのにここまで響いてくる怒号と、戦闘音。たなびく牙門旗が何本も立ち並び・・・まぁ、ぶっちゃけ戦争だ。旗を見るともうほぼ壊滅状態の方が袁紹さんで、追いかけてるのが華琳さん達と劉備さんか。目的地ってあれか。なんだ、やっぱり漁夫の利狙いやんのか?

 

そう隣の雪蓮に聞くと、あんた本当に軍議聞いてなかったのね、と呆れながら違うわよ、と否定された。戦闘が終わってなかったのは偶々らしい。華琳さんと話があったからきたのだそうだ。

 

そうか、と返しつつ戦場を見ると、すごい勢いで袁紹さんの軍を引き裂いて一直線に大将神輿(袁紹さんの乗ってるアレ)に進む部隊が見える。あの動きは春蘭か。って事はそろそろ秋蘭の部隊から援護がくるな。

 

予想通り、慌てて体勢を整えようとした袁紹さんの部隊が矢の雨で足止めされた。更に追い討ちをかけるように別の部隊が・・・あ、あれ一刀くんじゃん。馬に乗りながら見事に矛を操り、的確に敵の部隊を崩している。流石はうちの女性陣が鍛えただけあるな。そう言うと、いつの間にか集まっていた女性陣がまだまだだな、とか、少しは様になってきたな、とか言って笑った。なんだかんだ教え子の成長が嬉しいようだ。

 

 

にしても何だあれ。劉備さんの指揮する部隊がすごいな、アホみたいな士気の高さが離れてても分かるぞ。明らかに華琳さんの兵より気合いが入ってる。何が起きたんだアレ。

 

そうこうしているうちに、袁紹さんの乗ってる大将神輿が急速に撤退を始めた。まぁあれだけの勢いで春蘭の部隊が詰めてきたら逃げるしかないよな。季衣ちゃんの部隊も回り込んできてるし。まあ大分前から実質完全敗北確定してたけど。むしろ今頃逃げ出すとか大丈夫か。

 

あ、親衛隊と思しき部隊が大将神輿から離れて行き始めた。まぁ袁紹さんも大部分の部下見捨てて逃げてるから、仕方ないっちゃ仕方ないな。

 

・・・あ、袁紹さんが大将神輿から落とされた。慌てて顔良と文醜の乗る馬に拾われたが、あれはもう無理かな。お、あれはまぁちか。おお、焦ってる焦ってる。遠目で見てもわちゃわちゃしてんな。んん?手に持ってる何か持って・・・

 

 

そう思うが早いか、次の瞬間にはパァン、と音がなり、空から緑色の煙が降ってきた。あー・・・あいつ、目敏く俺に気付きやがったのか?まぁ孫策軍は見えてるだろうしなぁ。

 

 

ぬぅ、ちょっと気が進まないな。そう考えていると、行かないの?と雪蓮に問われた。まぁ雪蓮と冥琳はあの場に居たからな。とりあえず少し離れたところで、静かに戦場を見下ろしていた白蓮を近くに呼ぶ。

 

 

「どうした、道玄。何かあったか?」

 

あー、俺は基本的に約束した事は守る男だが、それよりも優先したいことがあればそっちを取ることもある。俺の大事な女とか娘とかが最たる例だ。

 

「い、いきなり何だ!?ま、まさか告白か?い、いや愛紗達を差し置いてなんて・・・お、お前がそれを望むなら。」

 

アホ、話は最後まで聞け。ていうか愛紗達の前でそれを言うな。死ぬぞ?冗談抜きで。ほら、後ろにいる愛紗の顔を見てみろ。

 

「へ?うわっ!」

 

白蓮が振り返るとそこには暗い瞳の愛紗がぴったりと背中に付いて青龍偃月刀を片手に立っていた。僅かに口の端に引っかかる髪の毛がポイントだ。むっちゃ怖い。白蓮は即ガチビビリしてダッシュで俺に抱きついた。まぁあれは怖いよな。ホラー映画とか観た後で暗闇であれやられたら心臓弱い奴はショック死する。間違いない。

 

だから言ったろうに。あー、愛紗、ついでに星と凪、いつもの白蓮の勘違いだ。落ち着け、武器下ろせ。まだ話があるから待ってくれ。

 

そう言うと、密かに迫っていた2人と愛紗が、割とあっさり武器を下ろして離れる。まぁ今回はただの警告だろうしな。それでこれだから俺の女達が修羅場すぎて困る。ああ白蓮ビビるのは分かるが後にしろ。話の続きだ続き。

 

 

とにかく、俺は今回はお前の意思を優先する。ここまではいいな?よし、じゃあ続けるが、実はなお前がうちに合流する前、俺は袁紹さんのとこの軍師、田豊と、ある約定を交わした。

 

「ある約定?なんだそれ。それがどうしたんだ?」

 

「・・・約定の内容は、袁紹達の身に危険が迫った場合、一切の条件無し、無償でこれを救うことだ。」

 

「っ!?」

 

ちなみに、今さっき上がった緑煙がその要請信号だ。真桜が作った奴だな。

 

だが、あくまでこれはお前がうちに合流する前に結んだもので、正直お前があいつらを助けて欲しくないと言うなら俺は約定を破るつもりだ。どうしたい、白蓮?いつかのお前はあいつらに恨みは無いと言っていたが、本当のところはどうだ?

 

白蓮に袁紹さん達の生殺与奪を投げたようでちょっと気分は良くないが、白蓮の気持ちを優先したいのは本心だ。あんまり悩むようならさきに助けてその後沙汰を・・・そこまで考えたところで白蓮が剣で俺を叩いた。見るとものすごい怒っている。

 

「馬鹿かお前は!それなら早く行ってやれよ!何やってんだ!」

 

決断早っ、それで良いのかお前は。

 

「良いも何も、私はあいつらを恨んでない!前に言ったろ。二言はないし撤回もしない!何より、例えこんな方法で恨み晴らせても、私を守って死んでいったあいつらに顔向け出来ない!」

 

教えてくれたのはお前だろ、とプンスカ起こる白蓮。やれやれ、本当にお前は良い奴だな。後悔すんなよ?俺は一度助けたら殺させないぞ?

 

 

「するか馬鹿。良いから行け。本当は早く行きたいんだろ?・・・知ってるんだぞ?私はそんなお前に惚れたんだ。」

 

 

・・・ははっ。

 

白蓮、お前って時々、どうしようもないほど良い女になるよな。

 

 

ぬかせ、と笑う白蓮に、俺も笑って返す。

 

 

じゃあ雪蓮、行ってくるわ。愛紗、星、ちょっとこっち頼む。

 

「お任せを、我が主人。」

 

「行ってらっしゃい、道玄。」

 

「早く済ませて来なさいよ。」

 

 

あいよ。

 

そう答えて、そのまま走り出す。

 

走りながら全身うっすら色が変わる程度に超弱変身、ズボンで見えない足だけ部分変身。念の為闘気術で全身を強化する。

 

 

戦場を見ると、もう袁紹さんに春蘭が追いつくところだった。あ、袁紹さん達の馬が転けた。たぶん秋蘭だ。急がねばならんな。そう思い、部分的に完全変身した足で思いっきり、跳んだ。

 

 

視界が一瞬で流れていく。毎度の事だが気持ち悪いなこれ。

 

 

きっと今の俺は流星みたいに見えていることだろう。その気になればガチでそれくらいの威力は出せると思うが、たぶん袁紹さん達も巻き込まれて死ぬので自重しよう。

 

 

さて、今すぐいくけど後悔すんなよまぁち!俺の助け方はちょっと荒っぽいぞ!

 

 

 

くらえっ、超上空での〜〜〜っ!

 

 

カッコイイポーズ!!(特に意味はない。)

 

 

か、ら、の〜〜〜っっ!必っっ・・・殺ッッッ!!

 

 

メ テ オ ス タ ン プ !!!

 

 

 

説明しよう!必殺!メテオスタンプとは?

 

腕を組んでただ立ったまま着地するだけ!お手軽だぞ!ちなみに当てる気は無いので誰も死なないぜっ!

 

 

ダガンッッッ

 

 

ちょうど目論見通り、転けた袁紹さん達の間に着地!!ちょっとその際に地面粉砕したけどまぁ構うまい!後ろから悲鳴が聞こえたけど、精々破片が文醜に当たっただけだ。あいつ名前に猪がつくから。名は体を表すから。猪はあれくらいじゃ無傷だから大丈夫大丈夫。鈴々の親友基準だけど。

 

そのまま飛んできた袁紹さん狙いの秋蘭の矢を腕で払い、馬に乗ったままやってきた春蘭の剣を元祖闘気硬化で弾く。ガギン、と鈍い音がなる。地味に馬の体重が載ってて重い一撃だ。

 

 

カカンッ

 

「キサマッ、道玄っ!!いきなり何のつもりだっ!」

 

カカカンッ

 

あー、約束でね。一応後ろの人らを守らねばならんのだ。というわけで急だがここで止まらないと俺が相手だぞ。あ、華琳さんは知ってるからちょっと確認とってくれ。無駄にお前らの兵を減らしたくない。というか、状況的にもうお前らの完全勝利で袁家の滅亡確定だし終わりにしないか?

 

 

カカカカカカカカカッッッ

 

「ほう、相変わらず大した自信だな。いきなり出て来てお前1人でこの数の兵から奴らを守り抜くという訳か?舐めてくれる・・・!」

 

カカカカカカカカカカカカカカカカカカッッッ

 

 

さて、守り抜けるかどうかはやってみないと分からないが、少なくともお前達に甚大な被害が出るのは確実だな。試してみるか?

 

カカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカッッッ

 

「抜かしたな?吐いた唾は飲めんぞ、道玄!ここで会ったが千年目!今日こそこの七星餓狼の カカカカカカカカカカカカカカカカカカッッれるっ!」

 

カカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカッッッ

 

その言い回しは一刀くんだな?千年目って間違ってるところが春蘭らし カカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカッッッ・・えっと、や、やってみろこらー!

 

 

「なっ、間違ってない!千年の方が凄いだ カカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカッッッ ・・・あの、秋蘭?」

 

カカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカッッッ

 

ちょ、ちょっと秋蘭!?まだお前の姉がカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカッッッう、うち過ぎじゃないっすかね?流石に無視出来なくなってきた!

 

 

「しゅっ、秋蘭!?おーい、しゅーらーん!?」

 

カカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカッッッ

 

「・・・なんだ、姉さん。」

 

カカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカッッッ

 

「あ、あのまだお姉ちゃんが話してる途中だからちょっと止め「姉さん、すまないが私は今忙しい。後にしてくれ。」ひゃっ、ひゃい!」

 

 

そう言って真顔で矢を射続ける秋蘭。真顔だが鬼気迫るような勢いで矢が放たれ、まともに話も出来ない。周りの兵もあまりの状況に唖然として思わず動きを止めてしまっている。それでも止まない矢の豪雨。周りの兵が次々と矢筒ごと渡す矢が一瞬で消費され、それでも僅か一本足りとも外れる事なく全部俺に命中する。

 

俺の体に最低30本は同時に着弾し、それが地面に落ちるまでに更に3セットは放たれている。ちょっと意味が分からない勢いだ。マシンガンもかくや、である。これ普通の兵なら剣山どころかもはや穴だらけどころか肉片さえ残ってないだろう。なんだこれ・・・なんだこれ!!

 

 

幸いな事に守らなければならない袁紹さん達には一本も向かってないが、どうもこの状況について行けずに固まっているようだ。いや逃げろよ、と言いたいところだが口を開いたら一瞬で口いっぱいに矢がご馳走されるだろう。俺なら多分無機物も食えなくは無いが別に進んで食べたくも無い。マジどうしようこれ。下手に動いたら全部袁紹さん達に行くから動くこともできん。

 

 

矢が尽きるか、袁紹さん達が正気に戻って逃げるの待つしか無いかな。つかいい加減弾かれた矢で周囲が埋まってきてるんですけど!

 

 

そんな事を考えてたら、少しずつ秋蘭が近付いて来てる事に気付いた。無論矢の勢いはかけらも落ちてない。何あいつアレで動けんの?どうなってんだマジで。矢筒を差し出しながらついていく兵が化け物を見る目をしている。

 

「・・・何人だ?」

 

えっ、何が?なんの話!?

 

「私を置いて行った挙句、何ヶ月も放置しておきながら、 新たに手を出した女は何人だ?」

 

ファッ!?ちょ、えっ!?まさかこれ嫉妬的なヤツ!?ま、待て秋蘭、俺の話を「5人だ。」あれっ?

 

「私が知っているだけでも5人・・・!私はその間お前をずっと待っていたにも関わらず、お前達は私だけ除け者にして、ずっと・・・ずっと!!」

 

あれっ、質問しておいて聞いてないパターン!?ちょ、春蘭、秋蘭を止め、ああ矢が鬱陶しいってああっ、春蘭何逃げてんだテメー!戦略的撤退?おまっ、曹魏の大剣が逃げて良いのかこらー!

 

「うるさいっ!お前は知らないからそんな事言えるんだっ!秋蘭はなぁ、怒ると物凄く怖いんだぞ!?」

 

知ってるよ!むしろ現在進行系で味わってるよ!!何だよこれ本当に1人で射ってるの?!雨なんですけど!矢の雨なんですけど!!しかも超豪雨!!弓兵100人居てもここまで酷くないぞ!

 

 

「知ってるか、道玄。」

 

へっ!?な、何が?ていうか喋りにくいから矢を止め、あ、はいすいません。

 

「今、私達はお前がやたら買っていた劉備達と同盟している。」

 

あ、ああ。それは知っている。さっきもちょっと上から見てたが、やるようになったもんだ。

 

「そう、確かにお前が気にかけるだけあって大したものだ。特に北郷は、お前にこそ及ばないものの、華琳様でさえ一目置いている。大した男だ。」

 

お、矢の勢いこそ変わらないが、少しずつ会話が成立してきてる!いいぞ、この調子だ!そうだな、彼は本当に「だがな。」えっ?

 

「優れた男とは皆お前や北郷の様なのか?いつもいつも場所を選ばず其処彼処で・・・!お前を待つ私に対して喧嘩を売るかのようにッッッ!」

 

ちょ、一刀くん華琳さんのとこでも場所を選ばず盛ってんの!?俺にとばっちりくるじゃんやめてよ!何処からか冤罪だ!とか聞こえたけど後で俺の代わりに此処に立たせてやる!覚悟「そして風から送られてくるお前達の近況には、誰がどこでどんな風に、お前に抱かれたかこと細かく書かれている。」しと、け・・・?

 

 

えっと、な、何のことだか私にはさっぱり・・・。あ、嘘ですごめんなさい。うう、風よ、何でそんなことわざわざ書いちゃったんだチミは。

 

 

気がつくと既に矢の豪雨は止んでいて、目の前には秋蘭。そして周囲には230センチの俺が何も見えない程に積み上げられた矢の山。

 

「捕まえたぞ。これでお前は暴れられない。」

 

そう言って矢を払いのけ、俺にしがみつく秋蘭。確かに俺はこうなったら秋蘭を傷付けてしまうので、全力は出せない。というか華琳さん達と戦わない約束もしたから、当然秋蘭達と戦うつもりはないし。春蘭?ハッタリって大切だよね!

 

しかし何とまあ、あの鬼気迫る矢の豪雨はこの為か。凄い使い方するなぁ。

 

あ、いかん。この隙に袁紹さん達狙われたらまずい。とりあえず軽く矢の壁を薙ぎ払う。良かった、袁紹さん達も周りも固まったままだ。

 

すると、秋蘭が両腕を伸ばし、俺の耳を引っ張り無理矢理顔を自分に向けさせた。ちょ、痛いんですが!

 

 

「余所見するな!・・・何ヶ月も他の女ばかり見てたんだ。しばらく私以外、見るんじゃない。」

 

 

そう悲しそうに言う秋蘭。何これ胸が痛い・・・ってちげえよ!一応まだ戦闘中ですけど!?周りを見ると先ほどまでの空気が嘘のように完全に白けている。俺をよく知る曹操軍の兵達にいたってはまたお前かよ爆発しろ!とばかりに舌打ちし唾を吐き捨てる。あれっ、俺のせいかこれ!

 

 

「うるさい。袁紹などどうでもいいだろう!今は私だ!もう逃がさないからな・・・今日は覚悟しろ。」

 

 

え、いやあれ?何これさっきから秋蘭が可愛いんだけどどういうこと?一応俺、大規模戦闘に割り込んだよね?なんか普通にただの痴話喧嘩みたいになってない!?っていうか悪ふざけやらなにやらをしてない秋蘭に違和感が酷い!いやめちゃくちゃ可愛いけど。でも俺の知ってる秋蘭じゃない!

 

・・・あれっ。俺ひょっとして今違う世界線来てる!?

 

 

 

「馬鹿ね、何慌てているの。・・・貴方の帰りが遅いからでしょう?」

 

 

そう言われ、声の方を見ると呆れた顔の華琳さんが桂花と逃げてった筈の春蘭を側に控えてやってきた。いや、そう言われても困るんですが。こっちも仕事だし。っていうかもっと早く来てよ。

 

 

「嫌よ。私も秋蘭と同じ気持ちだもの。もっと困るが良いわ。」

 

えぇ・・・。まぁ色々言いたい事はあるがとりあえず置いておく。戦闘になっても困るので対話をしてみた。

 

 

とりあえず華琳さんに後ろの人達の命は俺が預かる!でも袁紹さんの負けとかその辺は任せるよ!という的な話をして、同時にやたらしおらしい秋蘭を抱き締め、撫でておく。これで多少落ち着くだろう。愛紗達から何してるか見えない事を祈ろう。見なくても何故か分かるから無理だと思うけど。

 

話が終わると、華琳さんが覚えているわ、と溜息を吐く。

 

「華琳様!よろしいのですか?」

 

「構わないわ春蘭。道玄が田豊と約定を交わした時、私もそこに居たから覚えている。というより、覚えていたから()()()()()()()()。雨が降らなければ昨日で終わっていたのだけれど・・・。」

 

 

ああ、昨日の急な奴な。確かに酷い雨だった。っていうか急いでたのか。さっき着いたばかりだから知らんかったわー。

 

「さっき着いたばかりで良くもまぁここまで戦場の空気を破壊できるわね、アンタ。士気を上げる為に力を尽くした私達の時間返しなさいよ。」

 

その辺は腕の中にいる秋蘭に言ってくれ、桂花。まさか俺を逃さない為だけにあんな絶技をしてくるとは思わなかった。矢の無駄遣い甚だしいが。

 

 

「何言ってるの?貴方を条件付きとはいえ一時的に動けなくしたのよ?安いものだわ。ああそれと、命は取らないけど拘束はさせて貰うわよ?後の処理があるからね。」

 

 

良いんでない?俺がまぁちに頼まれたのはあいつらの身の安全であって袁家の存続とかではないし。拷問とかもされないだろうから、それぐらいは仕方ないよね。で、問題はないか?田豊。

 

「もう一つ、捕虜となる兵達の事でお願いが・・・。」

 

「抵抗しない限り、身の安全と食事は保証しましょう。私としても無意味な殺生は望まない。」

 

「お心遣い、感謝致します。・・・本当は私が言うことではありませんが、代わりに。・・・降伏致します。後の事は、どうぞよしなに。」

 

 

田豊が未だに騒いでる袁紹さん(顔良と文醜に流石に無理だから!と抑え込まれている。)の代わりにそう宣言すると、妹にビビって逃げてったとは思えない顔した春蘭が勝鬨を上げ、兵が歓声を上げる。ちょっと皆やる気ないけど、俺のせいなので気にしないことにする。

 

すると側に来たまぁちに礼を言われた。本当に来てくれるとは思わなかった、と言われる。正直、公孫瓚の事があるから悩んだんだがな。いやはや、大した読みだよ。まさかあの条件の後で即公孫瓚を攻めるとは思わなかった。

 

 

「へっ!?い、いや誤解です!わ、私が帰った時には既に姫様達は出陣してですね!?」

 

はっはっはっ、謙遜するなよ。あれがなければ正直行き倒れてたあいつを拾った時点で俺が君ら滅ぼしてた。冗談抜きで。いやー、嵌められたと気付いた時はハラワタ煮えくり返るかと思ったよ!

 

「ひぃっ!何か凄い悪人みたいに思われてる!?ほ、本当に誤解なんです。と、斗詩、貴女からも説明を!」

 

「あ、あの真値さんの言ってること本当です!姫様がいきなりーーってこれじゃ姫様が悪いみたいに!いや姫様が悪いんだけどえっと、違うんです!」

 

何でも構わんよ。俺としちゃ怒り心頭だったが、元親友で今は俺の女である公孫瓚本人が、お前らを恨んでないらしいし。だから俺も助けに来たんだし。今のはただの嫌味だ気にすんな。約束は守るから安心しろ。

 

そう言ってまぁちの頭を撫でて、未だこの私があの貧相な娘にぃぃ!と騒がしい袁紹さんに口いっぱいの巨大なべっこう飴を突っ込んで黙らせ、頑張って抑えてた2人にも飴を渡す。その辺りで首にぶら下がるようにしがみついてた秋蘭にまた怒られたので宥める。

 

辺りでは春蘭と桂花が指示を飛ばして、早速後処理が始まった。ついで、離れたところから劉備さんと一刀くんが部隊を連れてきたのが見える。やれやれ、白蓮と話してた時まではシリアスだった筈なんだが、その後ほぼギャグだったから調子狂うな。間違えてシリアスを忘れてきたか。

 

そんな時、不意に華琳さんから話しかけられた。

 

「ところて道玄、貴方がここにいるという事は、孫策の下での仕事は終わったと言うこと?」

 

んん?どったの急に。まぁ一応契約はここに来るまでだったな。俺しか来てないけど。

 

まぁ終わった事は何となくわかっただろうし、もうすぐ来るだろ。雪蓮も目的は華琳さんらしいし。

 

「そう・・・。ならようやく帰ってきたのね。お帰りなさい。」

 

相変わらず俺が華琳さんに仕えてるみたいな会話だが、その言葉を放った華琳さんがいつになく慈愛に満ちた眼差しだったので、思わず苦笑いしながら、ただいま。と返した。

 

その瞬間。周りの空気がガラリと変わり、辺りに指示を出してた筈の春蘭がいつの間にか俺の右腕にしがみついた。思わず顔が真っ赤だな、なんて呑気な事を考えてしまった時、首にしがみついてた秋蘭は左腕に位置を変え、急に首に別の衝撃が走った。みると桂花がこれまた顔を真っ赤にしてしがみついている。

 

何だ急に、と思った時には遅かった。華琳さんが俺に近付いてきたと思ったら正面から抱きついて来た。身長的にギリギリ腹筋辺りだがちょっとまずい見た目だ。

 

 

そして、爆弾が落とされた。

 

 

「お帰りなさい。待っていたわ・・・我が伴侶よ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・なんて?

 

 

 

 

続く!





次は更に遅くなるかもしれません。申し訳ないです。
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