今回も捻くれ要素なしです。
代わりに、音葉ちゃんの恋愛視点があります。
では、本編どうぞ!
家に帰宅して、俺はある物を見つめていた。それは、ラッコのストラップだ。これは、別れ際に小鳥遊から貰った物だ。曰く、「同じ物を持っていたい」だそうだ。驚いた。俺も同じことを考えていたのだから。それと同時に、俺もイルカのぬいぐるみを渡した。その時に、「柊君がぬいぐるみって、なんか可愛いね!」と笑顔で言われた。何度も言うが、俺は小鳥遊がそう言うのが可愛いと思うのだ。
それで、俺は今どうしようか悩んでいる。このストラップとぬいぐるみについて。これらをどうしようか、と。個人的には付けていきたい気分だ。どれに付けようか。……あ、通学用バッグ。それだ、それに付けていこうそうしよう。
少しだけ意気揚々になりながら、ストラップとぬいぐるみをバッグに付けにいこうとして、スマホに電話がかかってきた。はいはい吹雪ですね。
「もしもし、どうした吹雪」
「どうだい? デートは上手くいったかい?」
上手くいったか、と言われれば、上手くいっただろう。あのDQN三人組はノーカウントだろ。一方的に被害を
「言わずもがなだよ」
「え、失敗したの? 一体何したのさ」
「おい。何で成功の選択肢が消えてんだよ。俺が失敗するのが当たり前って言いたいのか?」
そう言ったのはいいものの、自分でも出発前は失敗するとしか考えてなかったな。今回のデートで、俺の女性に対するコミュニケーション能力が昇華したとも言えるだろう。そう、俺は最底辺にいるから、後は上がるだけなのだ。
「ごめんごめん。正直に言うと、失敗するかもとは思ったよ」
「そこは正直になるなよ。お世辞でも言ってくれ」
「誠には逆効果でしょ。すぐに捻くれた考えになるんだもの」
それもそうですね。
「はいはい。そうですよ。で、何が言いたい?」
「お疲れ様ってだけ。上手くいったようだし、おめでとう。それじゃ」
そう言って、吹雪が電話を切った。あいつは、いまいち考えていることが読めない。的外れだったり、早計なことを考えているように見えて、
あれこれ考えても、結局のところはわからない。不思議なやつ、という認識で十分なのだろう。そう結論付けて、ストラップとぬいぐるみを通学用バッグにくくりつける。
……月曜日、小鳥遊も同じことをして、とうとうクラスメートから声が上がったのは、言うまでもない。
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今日は、柊君とより仲良くなれた気がする。それに、ストラップとぬいぐるみの交換みたいなこともできたし。考えることが、同じなのかな? 取り敢えず、これらは通学用バッグに付けることは確定している。それほど、嬉しかった。
それに……彼から、手を繋ごうとしてくれた。少し戸惑ったけれど、それ以上に嬉しかった。前も、あんな風に手を差し伸べてくれたものだ。もしかしたら、覚えているんじゃないだろうか。そう思うけれど、どうにもその様子が見られない。
自分の手を見つめていると、まだ手に彼の暖かさが残っているように感じて、頬が緩んでしまう。最後は、ちょっと腕を組んでみたけれど、嫌がられなかった。それも、ちょっと嬉しかった。そして、焦っているのを隠そうとしようにも、バレバレだったのは可愛かった。つい思い出して、くすりと笑ってしまう。
「早く、月曜日にならないかなぁ……」
そうすれば、昼休みに彼に会えるのに。意外と、あの時間が心地よかったりする。吹雪君と茜ちゃんも呼んでみようかな? 柊君の友達の吹雪君も、面白そう。
いつもの彼からは、あまり見られない一面も見られた。最後に、私が男の人に手を引かれた時。彼が飛んできてくれた。目はとても怖かったけれど、私のために怒っているんだと思うと、やっぱり嬉しかった。でも、自分が身代わりになろうとするところは、少し嫌い。自己犠牲って言うのかな?
柊君が傷付くと、私も同じくらい心が傷付く。電車の中では、彼に怒ってしまいそうになった。そしたら、いきなり私が無事でよかった、なんて言い出した。さらには、笑顔まで浮かべて……ちょっと、それはズルいと思う。
「そんなことをされたら、もっと柊君のことを――」
―*―*―*―*―*―*―
もう合宿まで、あと一日。つまり、前日。その間に、実行委員やら係やらなんやらを決めた。ちなみに、俺と小鳥遊はキャンプファイヤーの準備の係に入った。彼女が実行委員に入らなかったのが少し意外だったが、彼女曰く、「まだ慣れてないから」だそうだ。ま、そらそうだ。
キャンプファイヤーは、二泊三日の日程の内、二日目に行われる行事だ。
で、問題はそのキャンプファイヤー準備係を決める時だった。片岡先生も困り果てていた。
「はい、じゃあもう一人、男子のキャンプファイヤー係、やりたい奴は手を――」
「「「はぁぁぁぁぁあああああいい!」」」
恐らく、ほぼ全男子が手を挙げただろう。椅子を倒して、立ち上がっている者までいる。教室に反響する大声。それに驚愕するのは、俺、吹雪、片岡先生、そして全女子。勿論、小鳥遊も。小鳥遊からしてみれば、一種の恐怖にもなるんじゃなかろうか。……ま、一応俺も静かに手を挙げるけどさ。キャンプファイヤー係、楽そうなんだよね。
「お、おう……この中から決めるのか……小鳥遊、お前がやりやすそうな相手は誰だ?」
「柊君です」
ですよね~。こうなると思ってた。しかも即答。
「「「くそぉぉぉおおおおお! あぁぁぁあぁあ!」」」
……こうなるとも思ってた。そして突き刺さる、俺への嫉妬。ま、まぁ見方を変えれば、それだけ俺が恵まれてるってことだ、うん。そして、こんな女子の囁き声が聞こえてきたのだ。
「ねえ知ってる? 小鳥遊と柊、もう付き合ってるらしいよ」
「そうそう、キスもして、家まで連れ込んだって話も聞いたよ!」
おい、そこの豆しば系女子よ。根も葉もない噂が独り歩きしてますようですねぇ? 二つ目のやつは本当に問題になりかねないからやめろ。連れ込んだって言い方に悪意しか感じない。小鳥遊は小鳥遊で、苦笑いしかできていない。
で、俺が見逃すと思ったかい、吹雪。俺が手を挙げたこと、面白がって笑ってるんだろ? 肩が震えてるぞ、おい。そんなことで笑えるなんて、どんだけおめでたいんだよ。
と、いうことがあった。今はそのキャンプファイヤー係で集まって、会議中。ちなみに、この時間が終われば放課後。これほど楽なことはない。のだが……。
「じゃあ、キャンプファイヤーは、フォークダンスをするってことでいいかな?」
司会進行が、今回の会議で決定したことを述べた。キャンプファイヤー自体あまり会議する題目もないのだが、このフォークダンス。これが難関なのだ。どうやって乗り越えよう。小鳥遊と踊る可能性も考えた。いや、考えてもいいと思うのだ。けど、さすがに学校の皆が見ている中、手を繋いで密着なんてしないだろう。
幸いなことに、フォークダンスは相手を自分から探せる制度だ。なので、隅の方で静かにしているだけでいい。一番良いのは、フォークダンス自体の喪失。けれど、それを推すいい案がない。無策に反論しても、『反論がないならこのままでいいよね?』と返されて終わり。残念ながら、それはできなかった。
フォークダンス実施が決定した直後、チャイムが鳴って、会議は解散となった。このチャイムの音、ちゃんとした名前があるらしい。『ウェストミンスターの鐘』だった気がする。それも、イギリスのビッグベンの鐘の。なんで日本でポピュラーに使われてるんだろうな。イギリスなのに。
「あぁ~……どうするかな~」
俺は帰宅して一人、頭を抱えていた。降旗と愛原に、どうしても仕返しがしたい。こっちだけやられっぱなし、なんて
一日目 長崎にバスで移動して、その間はレクリエーション。到着後は平和学習を行うため、被爆体験者のお話を聞き、その感想を書いて、昼食。それが終わったら、被爆・戦争関係の展示館に行って、レポートまとめ。最後に、ホテルに行って次の日の打ち合わせなどの会議の後、夕食。この中で班行動なのは、展示館を回る時のみ。
二日目 観光を目的として、動物園・水族館・美術館や博物館など、班で決めた好きなところを回る活動。昼食は各班で好きな場所で好きなものを取る。その後、龍踊りの体験をして、ホテルに戻り、会議の後夕食。そして、外に出てキャンプファイヤー。フォークダンスだけでなく、レクリエーションもある。班行動は、観光のみ。しかしその時間が長い。
三日目 長崎バイオパークに行って、動物を見るなり、遊園地で遊ぶなり、足湯に浸かるなりして、昼食の後、福岡に帰ってくる。バイオパークでは、班行動というよりも、自由行動が主だ。一人もよし、複数もよし、班のままもよし。
「……はぁ~」
簡単に言えばこんな感じだが、殆ど無理ゲーだ。班行動が少なすぎる。いや、そう言うと語弊があるか。班行動の中でも、あの二人が
逆に、あの二人がボロを出さないのはどういう時かと言うと、周りの目が少ない時。これに限る。被害者面をするために、周りの目がある場所では、到底ボロは出さないだろう。俺から仕掛けても、あいつらを叩きのめせる自信がない。圧倒的優位に立って、相手に正論であることを受け入れさせる。
できれば、あいつらは泣かせたいな。同じことをしてもらおう。追い詰めて、追い詰めて。心の余裕をなくしたところを、崩す。躱させず、脆い盾を出せれば、こちらの勝ち。それを破るなんて、俺には楽勝すぎる。
あいつらには、適当に最低なことを言い続ければ大丈夫。ただ、タイミングが重要になる。ボロを出すかつ、
隠密作戦だ。たった一人で、孤独のミッション。孤独に関しては、俺はプロフェッショナルだ。これくらいできなければ、真のぼっちとは言えない。俺の名誉にも関わる。
――それに、これで彼女が救われるなら――。
「……夕食、作るか」
小鳥の
手早く準備を終え、玄関を出る。小鳥遊を待って、学校へ。
「今日は合宿だね~。……楽しくなりそうだね?」
「あぁ、ホントだな。あの班じゃなければな」
「あ~……だから、もういいんだって。私は」
いや、小鳥遊がよくても俺にとってはよくないんだが。腹立たしい。一矢報いるどころか、矢を持ってる分全部突き刺してやりたい。俺は、一人静かに水面下で怒っているのだ。報復については、俺のみが知っているからな。静かに怒る。
学校に着いて、皆が校庭に整列を始めている。今日は教室には上がらないので、遅れたわけではない。俺と小鳥遊も列に並ぶ。実行委員がそれぞれのクラスの点呼をする。うちのクラスの実行委員は、案の定というか、黒宮。爽やかな点呼だなー。
点呼も終了し、注意事項や他諸々の話が終わった後、バスに乗り込む。クーラーが効いていて、少し蒸し暑い空気を吹き飛ばす。涼しさに気持ちよさを感じながら、予め決めておいた座席にならって座っていく。班ごとにある程度固まっていて、横の人は必ず異性になるようになっている。
まぁ……当然かの如く、俺の隣は小鳥遊。皆からの視線は軽くいなす。この技を習得した俺に、もう敵はないな。でも、小鳥遊は強敵。バスの席って、意外に左右が近いんだよね。それより、吹雪のコミュニケーション能力に驚き。降旗の方と隣なのだが、普通に会話している。なんだ、強くあたるのは俺にだけか。おいこら。
全員が着席してから、車窓から見える外の風景がスクロールし始める。バスの微弱な揺れを感じながら、頭を回転させる。さぁ、合宿の始まりだ。
ありがとうございました!
合宿では、二人の視点を交互に書きたいです。
けれども、どうしても誠君視点が増えてしまう。
取り敢えず、この話で第1章は終了にしようと思います。
合宿編からは、第2章ということで。
なんとか第12話から合宿編スタートできそうです。
ではでは!