捻くれた俺の彼女は超絶美少女   作:狼々

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どうも、狼々です!

今回は解決話ですが、前半だけとなります。
その後は、音葉ちゃんとの行動です。

あと、今回で第2章終了です。

では、本編どうぞ!


第18話 柊誠は、小鳥遊音葉のことが――

「……黒宮。今回、何でこんなことをした?」

 

 

 

 ――引き金を引いたのは、黒宮だ。

 

「え、っと……ごめん誠。『こんなこと』って何?」

「あぁ、すまない。黒宮達三人が小鳥遊の班に()()()入ったことだよ」

「…………」

 

 黒宮は、答えない。何も、黒宮が小鳥遊を好きだとかじゃないだろう。

 

「……ごめん、皆! 先に行っててくれ! 後で追いつくよ!」

 

 後ろに振り向いて、皆に大きな声で呼びかける。全員の背が見えなくなったことを確認して、会話に移る。周囲の動物の鳴き声は弱まり、小さく静寂が訪れる。

 

「まぁ、大体は予想がつく。争いを未然に防ぐためだろ?」

「……自分を守ろうとする、汚い自衛心からだよ」

「ひどく悪く言えば、な」

 

 黒宮の視線は下げられ、あからさまに悲しげになる。俺としては、一切隠そうとしないところに、驚いている。さて、解決への道のりを辿るとするか。

 

「ここからは俺の推測でしかない。違うなら反論してくれ」

 

 黒宮は視線を下げたまま、小さく頷く。

 

「まず、謙遜なしで、だ。黒宮はモテる方だろ?」

「……否定は、しない」

「見た限りでは、黒宮と降旗・愛原……特に、愛原の方には恋愛的に好かれてるだろ?」

「そうだとは、思う。気付かないふりはしているけどね」

 

 乾いた笑いを浮かべる黒宮。その目からは、いつもの爽やかさが欠落している。炯々とは正反対の暗闇を帯びたその瞳は、何を思ってそうなったのだろうか。それは、俺にもわからない。それは、内心のことだから。外見だけで判断する人間である以上、深みへ到達することは叶わない。それが、この世の常。

 

「で、その今ある関係性を悪化させたり、壊したくない。明らかに自分に興味のない女子と組みたかった、と。違うか?」

「……全くもってその通りだよ。結果、争いを生んじゃったけどね」

 

 自嘲気味に笑う黒宮。その本意のところも、闇の中。打診など、到底無理だろう。畢竟、彼の表情の色を、心の色を読む(すべ)は、俺には持ち合わせていない。それこそ、本人のみぞ知ることだ。

 

「その言い方だと、悪気はない。ただの事故だった、と? 俺もその予想なんだが?」

「あぁ、そうだよ。せめてもの償いで、仲介はした。けれど、間接的にだが、小鳥遊さんを泣かせた要因は俺にある。違うかい?」

「…………」

 

 やはり、仲介役は本人か。これに関わり、先生への人望がある人間が説得し、問題ないという判断に至らしめる。そんなことができるのは、黒宮くらいだろうとは思っていた。

 

 俺も沈黙を重ねる。否定できない。黒宮の行動がなければ、そもそもこんなことが起きることはなかったのだから。無意味に、無責任に肯定を連ねることは、俺にはできない。

 

「……黒宮は、塗り絵をしているだけだろ。写真を撮ることを専門とする絵師ほど、馬鹿げたものはないと思うが」

「そう言われると、心が痛いよ。けどね、俺は模写をしているんだ。自分の醜いエゴを晒さないがためにね」

「もはや道具も揃っているのか、怪しいところだな。色調も薄れているぞ」

「残念。パステルカラーは塗ってあるさ。最低限の消しゴムくらいは用意できてるよ」

 

 筆を取らない、絵の具を使わない、キャンパスを使わない。これらが揃った絵は、もはや絵だとは言わない。絵とは別の何かだ。不確かな感情性をキャンパスの裏に隠すことは、愚か者のやることだ。

 

 消しゴムだけを持っていても、本来の役割を果たすことはない。それは、彼もわかっているはずだろうに。

 

「じゃあ、こっちから質問させてもらうよ。……いつから、疑い始めた?」

「ついさっきからだ。黒宮の選択肢を、自動的に排除していただけだ」

 

 正直、自分で気付けたことに驚きだ。何故わかったのかがわからない。二人の首謀者だと焦点を絞り込みすぎた結果、ここまでわからなかったわけだが。どうにも焦りすぎた。焦燥の先に、真実はないのだと深く感じた。

 

 よくよく考えれば、黒宮の平穏至上主義性を頭に入れていれば、もう少し早くに真実にたどり着いたのではないだろうか。

 

「……で、誠はどうするんだ?」

「どうするもなにも、何もしねぇよ。わざとじゃなく、償いもした人間に、俺が攻撃する権利はない」

 

 それに、俺も責められるし。特に愛原から。あの目は怖い。凶暴すぎる。

 

 俺は会話を終えるべく、黒宮よりも先に皆の方へ歩を進め始める。

 

「誠。……ありがとう」

「……大したことはしてね~よ」

 

 それは、何に対しての『ありがとう』なのか。どれだけ考えてもわからない。

 

 相対性の先に、何が見えうるのか。メビウスの輪ような特殊性ある表裏一体に、何を求めるのか。晴れない霧の向こうの景色は、一体何色なのか。それらを考えるのは、野暮というものだ。

 

 後ろから黒宮がついてくることを気配で感じながら、再び歩き出す。一歩踏み出した足が、いつもよりも軽くなっていた。さらには、周りの動物の鳴き声が元の大きさに――いや、もっと大きくなって、各々の鳴き声をけたたましいと思うほど響かせていた。

 

 ―*―*―*―*―*―*―

 

 柊君と黒宮君から離れて歩き、暫くして、私は不信感を抱かずにはいられなかった。

 

「ねぇ、吹雪君。柊君はどうしたの?」

「え? いや、俺にもわかんない。何やってんだろ~な」

 

 吹雪君が、遠い目をして言う。何かの言葉が口から出かったが、喉に詰まって言い出せなかった。自分でも、何を言いたかったのか、わからない。思い出す以前に、記憶が抜き取られたみたいだ。

 

「すまない。戻ってきたわ」

 

 柊君と、後ろについてきて黒宮君が戻ってきた。不思議と、彼らの顔が、爽やかさを帯びていて、やりきった感を漂わせていた。

 

 ―*―*―*―*―*―*―

 

 暫く動物を見て回った。インコやカバ、トラにライオン、オオカミ等など、色々な動物を見て回った。途中で黒宮達はどこかに行ってしまった。人混みに飲まれた。今ここに残っているのは、俺、吹雪、小鳥遊に茜。

 

 小鳥遊はカピバラが、茜はフラミンゴがお気に入りだったらしい。目が光ってた。どっちも可愛かった。けど、どっちかと言うと、小鳥遊が好みだな。黒髪ロングストレートいいよね。何言ってんだこいつ。

 

 動物園の方は意外と早く抜けて、遊園地の方を回っていた。

 

「あ! 柊君! 観覧車乗ろう!」

「ん? あぁ、いいけ――うあ! 引っ張んなよ! 行くから行くから!」

 

 観覧車の前まで来て、小鳥遊に腕を引っ張られて観覧車まで走ることに。二人の方を振り返るが、二人共手を降っている。こんにゃろ……! 嫌なわけではないのだが、昨日のフォークダンスで雰囲気が気まずくなるのは、目に見えているだろうに。

 

 少し……五分もしないほどだけ待って、俺らが一つのゴンドラに乗る。ゆっくりと円を描いて上昇し、手元の景色がどんどんと遠くなっていく。

 

「その……柊君?」

「ん? どうした?」

「えっと……九月の十四日と十五日、どっちが空いてる? 十四が土曜、十五が日曜だよ」

 

 ふむ、土曜日と日曜日……どっちかな~って、迷うこともねぇか。

 

「どっちも空いてるな。基本俺は暇だ」

「あ、あはは、そうなんだ……じゃあ、土曜日、いい?」

「いい? って何を……あ」

 

 な、なるほど……土曜日と日曜日。そういうことか。

 

「ダブルバインドか。なるほどな」

「そうそう。どう? 意外と自然な感じだったでしょ?」

「いや、表情が硬すぎだな。声も震えてる」

「し、仕方がないじゃん! で、デートなんて、誘ったこと……」

 

 小鳥遊が少し俯きながら、恥ずかしげに言う。……ん? デート? ……はぁっ!? い、いやいやいや、二回目? それも、小鳥遊から? おかしい。ちょっと待て。ちょ~っと待とう。思考が追いつかない。取り敢えずで、俺はその場しのぎにも似た返事をする。

 

「あ、あぁ、俺も大丈夫だ、うん」

「ぁ……うん、ありがとう!」

 

 その優しくも嬉しさを前面に出した笑顔は、あの時――十三年前と変わっていなかった。清楚で爽やかな魅力を持った笑顔は、慈愛に満ちている。

 

「ホント、変わらないんだな。十三年前のお前と」

「……ぇ?」

 

 鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしている。好リアクションだ。つい笑みが浮かんでしまう。してやったり、といった顔に。

 

「幼稚園から小学一年生まで、俺達は会ってただろ? 夜に思い出したよ。全く、今更だよな」

「ぁ、あ、あぁ、あぁぁ……!」

「まぁ、なんだ? その――小鳥遊?」

 

 話を展開させていて、小鳥遊の様子の変化に気が付く。見開かれた目からは涙が流れており、俺をただひたすら見つめて、泣いている。声はとぎれとぎれになっていて、単語にもなっていない。その様子を、ゴンドラに差し込む昼の強い日差しが、ガラス越しでさらに強調させる。屈折する光はあらゆる面から反射し、しっかりと俺の目に入り込む。

 

「ぁ、ぅぇ、ぇっぐ……」

「お、おい!? どうした!? 何か俺が――」

「違う、違うの……ずっと、覚えてくれてないと、思ったから……嬉しいの……!」

 

 滴を掬い取りつつ、泣き顔だった表情が笑顔に変わる。泣きながらの笑顔、そして、彼女の嬉しいの言葉が、俺の心臓を狂わせる。強引に握り締められたようにキツくなり、それに対抗するかの如く心拍が激しく、多く。激流となって流れる血液が、頭や全身に高い温度で循環する。

 

「っ……俺としては、小鳥遊が覚えてくれているのが意外だな」

「私は、ずっと忘れてなん、かないよ……ばかぁ……!」

 

 涙に濡れた艶めかしい声色は、俺の心臓を再び刺激するには十分すぎた。ゴンドラのほんの少しの揺れも、今では大きく感じる。釘付けになったように離せなくなる俺の視線は、本能が離したくないと叫んでいて、抵抗の余地もない。

 

「ぁ……その、なんだ。とにかく、ありがとう」

「それはこっちの台詞だよ。私を、思い出してくれるなんて、夢のようだよ……!」

 

 涙を完全に拭き取った小鳥遊は、至高と言わんばかりの笑みで、俺の心をくすぐる。俺も無意識にこうなることを期待していたのだろう。二人で覚えていて、十年越しの感動の再会。フェアリーテイルみたいな、夢物語のような、ハッピーエンド。

 

 よくよく考えなくとも、まだこれはエンディングではない。けれど、ここはエンディングでもあり、通過点――大事なセーブポイントでもあるのだろう。記憶に灼きつけて、忘れるなという自己への訴え。

 

「夢のようってな……で、そんな夢の幼馴染と、どこにデート行くんだよ」

「あ、そうだね……え、っと、その……」

 

 座った状態で体を少しくねらせる。恥ずかしがっているような、踏み切れないような。そんなことを体現している。

 

「まだ決まってないから、さ? 連絡先を……交換したいな~、って」

「……あ、あぁ、あぁ。わかった。後で教えるよ」

 

 異性との連絡先の交換。それは思春期童貞の非モテ男子にとって、一つの掲げる目標だ。それを、小鳥遊と。夢のよう、とはこっちの台詞だ。皆が泣いて嘆いて羨むぞ。

 

 ……人間とは、不思議なものだ。気にしないでおこうと思う程、そのことについて深く意味を模索しようとする。単なるめぐり合わせだったり、無意識の行動だったりせよ、その淡白な行動に意味を見出そうとしてしまう。

 

 小鳥遊が、俺と連絡先を交換したいのは、それなりの理由があるのでは? そう、勝手に解釈してしまう。詭弁に(まみ)れている可能性も考慮から外し、ただそれのみに望みを持つ。馬鹿のように振り回されることがわかっていても、それを止められない。

 

 正直言って、今の俺の頭の中は、小鳥遊のことでいっぱいだった。何を考えようとするにも、連絡先がどうだとか、次のデートがどうだとか、幼馴染だからどうだとか、そんなことを片隅で考えてしまっている。

 

 小鳥遊との会話すらろくに覚えていない中、ゴンドラが一周して元の場所に戻ってきた。そのことに並々ならぬ喪失感と物足りなさを感じる。

 

 外に出ると、炎天下にはそぐわない涼しげな風が吹き抜けていた。蝉の鳴き声でも聞こえてきそうだが、人の声で掻き消される。暑すぎる気温、強すぎる日差しを全身で受け止めているが、不思議と不快感はなかった。むしろ、胸の中で渦巻く何かが取れたような、そんな清々しさが放浪していた。

 

「じゃあ、()()は、今から丁度四ヶ月後だね!」

 

 先をステップで駆けていた小鳥遊が振り向き、心底楽しそうに言う。が、俺には『あれ』がわからない。じゃあ、という言葉から察するに、幼馴染の小鳥遊を思い出すことと、何か関係があるのだろうか。

 

 再び新たな霧が立ち込め、目を背けようと視線を外した先の時計は、もうすぐ集合時間であることを指し示していた。いつの間にかそんな時間になっていて、意外。

 

「あっ、と。そろそろ集合だね。行こっ!」

「あぁ、そうだ――うあっ、だから引っ張んなって!」

 

 小鳥遊に腕を引かれつつ、集合場所へ。近くにいくとさすがに腕は離されたが、彼女の笑顔は離されることはなかった。

 

 

 

 バスに乗り込み、今から福岡へ帰県する。皆は疲れ果てて眠りこけている。炎天下の中を彷徨い歩いた後、バスのクーラーに体を冷やす。まぁ、何とも寝やすい環境だろう。しかし、俺は一人、冴え冴えとした目で目まぐるしくスクロールする外の景色を見ていた。大してはしゃいでいたわけではないからな。悲しいな。

 

 頬杖をつきながら窓の外を眺めていて、隣から静かな寝息が聞こえてくる。……小鳥遊も、寝たか。そう思って間もなく、俺の右肩に重さがかかる。不審に思って右を見ると――

 

「んんぅ……」

 

 ――彼女の顔がすぐ近くにあった。純粋無垢な素の表情に、女の子独特のいい匂いに、ピンクがかった形の整っているナイーブな唇に、意識が刈り取られる。心拍数はこれまでにないくらいに上がり、彼女を含む皆が寝ていて、今なら何をしてもバレないという背徳感に、異常なほどの興奮を覚える。

 

 理性が勢い良く削られ、自制がかなり難しくなっていく。視線は彼女から一切動くことなく、ただ己を忘れて見惚れ、興奮するのみ。意識すればするほど、彼女の存在が妖美で、色っぽいものになっていく。ドキドキが、止まらない。そして、極めつけ。とどめの一撃が。

 

「んぅ……柊、君……えへへぇ……」

 

 俺の名前を不意に呼び、自然な笑いを浮かべた。庇護欲が一周回って全く逆に、今でも襲ってしまいそうなくらいな獣の欲に駆られる。吐息も運動後のように荒く、熱く、激しくなっていることが自分でもわかる。心音の高鳴りが耳障りで、煩い。

 

「はぁ……はぁっ……!」

 

 

 ……もう、自分を誤魔化す、自己欺瞞はできない。

 

 

 

 ……もう、自分の想いには、とっくに気付いている。ただ、それを気付かないフリをしているだけ。

 

 

 

 ……俺は――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――俺は、彼女のことが、好きなんだ。




ありがとうございました!

これにて、第2章終了です!
まさか、合宿編だけでまるまる1章使うことになろうとは。

次回からは、また日常編に回帰します。
捻くれた考えが戻ってきます。

お互いがお互いを意識し始めましたね。
これから、恋愛面でのイベントは多くなると思います。

ではでは!
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