捻くれた俺の彼女は超絶美少女   作:狼々

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どうも、狼々です!

突然ですが、私がこのサイト、ハーメルンで小説を書き始めたのは、同じくこのサイトのある方の書いた小説を見て、感銘を受けたからなんですよ。
それで、この小説の前に処女作を書き始め、これを書き始め、もう一つ書き始め、今に至ります。

それで、最近わかったのですが、私が尊敬している方が、この作品を見てくださっているのです。
…………。
ビックリですよ。ほんっとうに。
ここ最近で一番ビックリして、嬉しかったのです。
もうそろそろ死ぬんじゃないかな……。

では、本編どうぞ!


第3章 感情を押し付けて、何が『好き』だ。
第19話 助けて


 自宅に帰って、ずっと考えていた。……四ヶ月後。今は七月の初め。そうなると、その指し示す時は十一月の初め。どれだけ記憶を遡行させようとも、見当もつかない。人の名前の次は出来事。俺は忘れすぎにもほどがあるだろうに。

 

 どれだけ嘆いても、どれだけ後悔しようとも、霧は掴むことができない。向こう側をいくら望んだところで、自分の意志で霧を晴らすしかない。その方法を忘れている以上、ずっと霧に身を包ませることになる。自身の周囲で(うごめ)くナニカが、俺の意志の進行を抑制する。諦めろと突き放される。

 

 ――俺は。俺は、俺は。

 

 

 

 

 

 

 合宿から数日後。もう少しで夏休みということで、教室の雰囲気はや話題は、それに持ちきりとなっている。そんなに休みを求める割には、お前らは仲間と話しているんだな。えぇ? 学校休みたい、と懇願するくせに、その休みたい学校で楽しく笑い合うとは。これいかに。人間誰しもこうだ。矛盾をテーマに生きるような生物。

 

 都合の悪いことからは目を背け、「臭いものには蓋」を掲げる。一時しのぎであることを知らず、問題は先延ばし。継続性の欠片もない、どこまでも愚かで劣悪な生物。

 

 こうやって、夏の暑さを思わせる(せみ)方が、よっぽど真っ直ぐだ。一週間だけの命で、外に出てただ鳴き続ける。自分の最期まで、鳴き続ける。継続性の塊、と言っても過言ではないだろう。畢竟、バカな人間は蝉以下なのである。……まぁ、土の中では結構な年数生きているのだが。人間に比べると、ね?

 

 照り付ける夏の日差しを、屋上の日陰で凌ぐ今日このごろ。いつもの如く、小鳥遊と昼食。

 

 ……なのだが、どうにも俺の言動が機械的だ。変に意識してしまう。

 

 ――あの日。小鳥遊を恋愛対象であることを、認識したあの日。あの日から、俺は狂わされた。ことあるごとに小鳥遊を意識し、ついつい目の端で一瞥してしまう。話しかけられる度に心臓は踊り、頭は回らなくなる。おかしな話だ。恋愛とは、それぞれの自己満足だろうに。

 

 だから、こういうほんの少し、些細な違いに気付いてしまうのだ。

 

「……なぁ、最近小鳥遊、疲れてないか?」

「……え? い、いや、そんなことはないよ?」

 

 言葉が詰まっている。嘘であることは明確。そんな嘘さえも、夏の日差しに溶けていく。ジリジリと熱気は高まり、お互いの視線を熱くする。そこに存在するものは、一体何なのだろうか。それさえも、不明確。目の前が分からず、霧の向こう側が解るはずがない。そんなことを考える自分に、心の中で皮肉る。

 

 ――そんな自分に、嫌気が差す。

 

「そうか」

 

 それだけ言って、短かったようで長かった昼休みが終わる。清掃に遅れないためにも、今から二人で移動を始める。屋上の扉を開けてすぐに。

 

「ひ、柊君」

「ん? どうした?」

「あ、あの、えっとね……いや、ごめん。やっぱり何でもない」

 

 悲しそうな、踏み出しきれない表情。俺は知っている。この表情は、何かを隠していることを。俺は知っている。この表情の裏に隠された、知ってほしいの裏返しを。

 

 

 

 ――俺は、知っている。知ってほしいと同時に、同じくらい()()()()()()()感情が渦巻いていることも。

 

 

 

 

 

 SHRを終え、下校の時間になる。今日も、それぞれの学校生活の日常は(つつが)無く過ごされた。ここからは、それぞれの放課後の日常へと回帰していく。俺も俺自身の放課後を迎えるため、小鳥遊を待つ。暫く待った後、小鳥遊が俺のところへやってくる。が、カバンを持っていないあたり、何かあるのだろう。

 

「あ、その……ごめんね。今日は一緒に帰れない。用事ができちゃって、さ。先に帰ってて?」

 

 陰りが差した彼女の笑顔は、どこか寂しくも、焦っているようにも見えた。俺はその言葉に、待っている、と声をかけようとして、押し留める。用事ができた、と曖昧にすることの意味を、受け取った。聞かないでほしい、と言われているような気がしたから。

 

「あぁ、わかった。帰り、気を付けろよ?」

「うん……」

 

 いつもだったら、「子供じゃないから、大丈夫だよ」、とでも言っているのだろうか。『だったら』だとか、『であれば』とか、たらればを垂れ流しても、それは架空の話。別の平行線上を辿っている。だから、そんなことを考えること自体、意味がないというのは、わかっている。

 

 しかし、返ってきた言葉は、俺の求める言葉でも、予想した言葉でもなく。ただ、悲しさを携えた感動詞だけだった。

 

 皆はとっくに教室を出ていて、廊下を歩くのは、俺一人。コツコツと廊下に響く足音が木霊(こだま)し、静寂の重苦しさを思い知らされる。

 

 ……一人でいるのは、こんなにも辛く、寂しいことだったのだろうか?

 

 

 

 自分の気持ちと、ゆっくりと動く景色にズレを感じながら、自宅へ戻る。謎めいた感情に突き動かされつつ、今日一日を終える。まだ夜があるのだが、俺にはただ時間が有り余るだけ。

 

「……ただいま」

 

 当然、返ってくる言葉はない。ただ、俺が言いたかっただけ。言ったところで、何が変わるというのだろう。

 

 通学用カバンを放り投げ、ソファにぐったりと横たわる。視界の端で捉えたのは、テーブルの上の棒状の機械二つ。結局、合宿で使わなかったこのボイスレコーダー。吹雪に返そうとしたら、俺にくれるとのこと。まだ家にストックがあるから、と言われた。一体お前は何がしたいんだよ。

 

 

 

 ……本当に、何がしたいんだろうな。

 

 

 

 

 

 夕食を食べ終え、外はすっかり闇に包まれた。かといって完全に闇かと言うとそうでもなく、荘厳に月が夜空に浮かんでいた。その月に呼び出されるように、俺は普段取らないような行動に走る。

 

「……外、散歩してくるか」

 

 こんな時間に、散歩なんてしたこともないし、思ったこともない。適当な服装で外に出ると、ひんやりとした微風が頬を撫でる。夜はまだまだ寒いようだ。行く宛もなく歩き続け、ひっそりとした少し遠くの公園に辿り着く。ベンチに座って、思考を巡らせる。

 

 

 

 人間、これ見よがしの態度をとるほど、自分に自信がないケースが多い。

 

 自分よりも大きな像を、虚栄心を元にした巨影として映し出す。表面に巨影を張り出し、内面に臆病さを隠す。自信のなさを露呈させないようにする。さらには、同じ虚栄心を持つ者同士で意気投合させ、衆愚を成り立たせる。

 

 それはひどく痛々しい。仮初さえも炯眼ではなく、自分自身さえも偽る、自己欺瞞。つい目を逸らしたくなる。

 

 しかし、残念なことにその虚栄心に、巨影に騙される愚か者がいる。瓦解以前に存在しないその幻想に縋り、レゾンデートルを持つことができない者を、崇める。燦然(さんぜん)と輝くわけでもなく、偽物の光に眩しさを覚え、目標とする。それにひどく吐き気を催す。

 

 自慢ではないが、俺は慧眼だと思っている。人の心を正確に読み、その場で当たり障りのない判断をする。それに鍛えられた。そんな俺からすれば、そんな巨影はないも同然なのだ。透けて見える。

 

 種が割れているマジックを見るのは、退屈でしかない。見透かす側としては、飽き飽きする。同じような手段で、同じような行動ばかり取り、同じような人間を集める。類は友を呼ぶと言うが、全くもってその通りだ。

 

 彼ら彼女らには沽券など、最初から存在しないのだろう。自分を隠すことに必死になっている以上、それ以上の結果は望めない。無駄で、無意味で、無感動。足掻けばなんとかなる、なんてものは言い伝えでしかない。それでなんとかなるならば、最初から問題視することもないから。

 

 頭隠して尻隠さず、などという言葉もあるが、俺から見れば、頭すら隠せていない。そんな紛い物は、想像以上に伝播が早い。根を潰しても、周りに既に繁殖してしまっている。結局のところ、臆病者はどこまでも臆病者で、変わることが殆どない。さらには、周りを感染させるウイルスでもある。

 

 本当に変わりたいと思うならば、まずはその透けまくりの、ハリボテ巨影を失くすところからだ。

 

 

 

 本当に、バカだな、俺は。いつものようであると振る舞っておいて、何が本物だ。

 

 夜空を仰ぎ、空に浮かぶ月を眺める。どこまでも孤独であるそれは、顕然。自分のレゾンデートルが証明できているのだろう。それに比べ、俺はどうなんだろうか。

 

 自分の行動理由を埋葬し、亡き物として目を背ける。それは正に、逃げ。逃げに徹する者は、決して強くはない。遠くから眺める俺も、一種の逃げ。

 

 どこまでも逃げて、現状の把握を拒絶する。それは、巨影とも言えるのではないか。そう、考える。

 

 邯鄲(かんたん)の夢のようだ。栄枯盛衰の儚さは、逃げのそれと酷似しているように思える。しかし、そんな大層なものでもない。虚構で固めただけ。

 

 ただ、俺は幾分かはマシだろう。ぼっちである以上、集まる友がいない。そうやって皮肉ることで、さらなる逃げを呼んでいるとわかっているのに。どうしても、考えてしまう。

 

「……帰るか」

 

 一人呟いて、家に帰る。吹き抜けていく風が、一層寒く感じた。

 

 

 

 

 照明が消されている中、差し込んでくる月光のみが、この部屋の灯り。青白い光に呑まれそうになるが、すぐに電気を点ける。人口の光が、瞬時に月光を塗り潰す。外の冷気を帯びた体も、もう暖かくなっていた。

 

 それが意味もなく嫌になり、すぐさま灯りを消して人口の光をなくす。月光が再び息を吹き返し、部屋を静かに照らす。

 

 頭を空っぽにしようと、無理矢理にベッドに入り、目を閉じる。

 

 

 ――月光が厚い黒雲に阻まれ、部屋に差す光がなくなった。

 

 ―*―*―*―*―*―*―

 

 本当のところは、柊君と笑って帰りたかった。けれど、呼び出された。昼休みの前、紙に書いて手渡されて。

 

 『今日の放課後、昼休みに音葉がいつもいるところで待っているよ。』

 

 名前も知らない、クラスも違う男の子に。不審に思うどころか、背筋が凍った。私は相手のことを何も知らないのに、相手は私のことを『音葉』と。怖かった。助けを借りたかった。

 

 そんなとき、柊君に聞かれた。疲れていないか、と。理由は明確だった。あの手紙。寒気すら覚える手紙。そのことを口にしようとして、思い留まった。これは、私のこと。柊君に迷惑はかけられない、と。

 

 私も何故呼び出されるかは想像がついていた。廊下を歩き、階段を上り、扉を開ける。寒々しい風が吹き抜ける中、一人の男の子――手紙を渡してきた男の子が、立っていた。

 

 緑色の髪で、黒の優しそうな瞳を持った好青年。背も高く顔もいいし、性格もよさそう。

 

「あぁ、来てくれたんだね。やっぱり音葉は……いや、それよりも、来てくれてありがとう」

「え、えと、うん……ごめんね、私、貴方のことを殆ど知らなくて……」

「あぁ、それもそうだよね。違うクラスだし。僕は、草薙(くさなぎ) 楓弥(ふうや)。よろしくね?」

 

 彼の浮かべた笑顔は、とても優しそうだった。けれど、どこまでも闇が深くて、鳥肌が立ってしまいそうになる。

 

「で、単刀直入に言うよ。僕は、君のことが――音葉のことが、好きなんだ。付き合って……くれるよね?」

 

 やはり、か。告白は何度もされて、その度にフッてきた。今回も、同じ言葉でフろう。

 

「ごめんなさい。私には、ずっと前から好きな人が――」

 

 好きな人がいるので。そう言おうとして。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁあぁぁああ! あいつか! あいつだな! 柊 誠! あいつが、あいつが邪魔なんだ!」

 

 

「ひぃっ……!」

「……あぁ、ごめんね。怖かったよね。心配しないで、大丈夫。あの柊に、弱みを握られていたり、都合の悪いことがあるんだよね?」

 

 ……え? 一瞬、耳を疑った。今、この草薙、という男の子は何を―― 

 

「僕が助けてあげるからね? すぐに楽になれるよ。そしたら、すぐに僕と付き合ってくれるさ……はははっ」

「え、っと……」

「あぁ、今日はこの辺にしようか。いっぺんに話をしても、良いことなんてないよね。あいつがいなくなったら、またここに呼ぶよ。でも夏休みを挟むから、その間会えないね。ごめんね、我慢してて。それじゃあね? ……っと、その前に」

 

 そう言って草薙君は――私の体を抱こうとした。

 

「……! い、いやっ!」

 

 危険を察知した私は、すぐさま草薙君の手を躱し、払った。そして、自分は失敗した、と思った。この男の子は、何をするかわからない。そう確信している以上、拒絶の対応は取らない方がいいと思ったから。

 

「……っ! あぁ、まぁ、それもそうか。まだ知り合ったばっかりだもんね。僕の方はすごく、すご~く知ってるけど、音葉は僕のこと、何も知らないもんね。行き過ぎたかな? まぁ、それもすぐに慣れるよ。じゃあ、今度こそじゃあね? 次に会う日が楽しみだよ」

 

 そう言って、草薙君は扉から出ていった。

 

 ガタン、と扉が閉まる音が鳴ってからすぐ、私はぺたりとその場に座り込んでしまった。腰が抜けてしまって、暫くの間立てなかった。柊君と一緒にいる時とは真逆の意味で、心臓が忙しなく動く。息もとぎれとぎれとなり、苦しくなる。

 

 

 

 こわい、こわい、こわい、こわい、こわい。

 

 

 

 あんなに怖いと思ったのは、初めてだった。そして、彼に迷惑はかけられない。だから、頼りたくても頼れない。かと言って、自分で何かできるわけでもない。

 

 さっきの反応を見る限りでは、何をしても無駄なのだろう。勝手に好印象で解釈して、勝手に物事を進めていく。表面は優しそうなのに、内面は途轍もなく怖かった。あの差に、恐怖を覚えずにはいられなかった。

 

 あの温もりが、優しさが恋しい。柊君なら、なんとかしてくれるかもしれない。けれど、迷惑をかけたくない。

 

 私は、自然と涙を流していた。屋上のコンクリートに、ぽつりぽつりと、涙がこぼれ落ちる。それは堰を切ったように流れて止まない。そして、頼っちゃいけない。そうわかっているのに、彼がこの場にいないことをいいことに、呟いてしまった。弱さを口にしてしまった。

 

 

 

 

「こわい……こわいよ……! たす、けて……柊君……!」




ありがとうございました!

キーボードを打つ手が震えるんですよね。
緊張ですよ……!

さて、これからは敵となるキャラがたちますので。
恐らく、草薙君との争いで、第3章が終わるかと。
人によっては、気持ちが悪いと感じる展開が続きますが、ご了承ください。

人を引き込めるような展開を、いつか書けるといいな。

ではでは!
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