ト或ル歌劇ノ迷狗達   作:星落

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バイト先の人手が足りなさすぎて七連勤キメました。始めたばっかなのに。
紆余曲折あって久しぶりの更新になってしまいすみません。




同日。PM11:57

 

膨らみ始めた月が、歪な形のまま宵闇の空に坐している。時折通る車のヘットライトが尾を引いて流れ、消えて行く。

真夜中と云うのもあるのだろうが、殺人事件が起きた通りをこんな時間に歩く人間は二人を於いて他に居ない。

 

丑三つ時。良くないモノが蔓延る時間。

 

敦は国木田と共に、首切り事件の現場である表通りで犯人の出現を待っていた。尤も、現れるかは敦にも検討はつかない。かと云って犯人探しと称して二手に分かれた為に、片方が襲撃されると云う事態は避けなければならない。

 

「被害者の死亡推定時刻は午前零時前後。………そろそろだな」

国木田が腕時計を見つつ云った。

敦は全神経を集中させて、隠れて自分達に近付く者が居ないかを探る。

敦の異能は『白虎に変化できる』というもので、その異能の一部を使えば超人的な───謂わば獣に近い嗅覚、聴覚、視覚を得ることが出来る。索敵にはうってつけの能力とも云える。

 

「どうだ敦。何か感じるか」

時計から顔を上げた国木田の問いに、敦は答えない。ただ、怪訝そうに眉を寄せる。

 

「………?」

 

何かが居る。

 

正確に何かは解らないが、敦の勘はそう告げていた。喩えるならばそう、太陽を隠さない、空に浮いているだけの雲のように、そこにあるのに誰も意識しない、ないのと同義にされるような何か。それでいて、ふとした瞬間にその存在を知覚するような、形の無い、微かな────

 

既に二分が経っている。日付が変わるまでもう三十秒も無い。

 

十秒。

 

五秒。

 

四、三、二。

 

 

「────」

 

一。

 

 

「国木田さんッ!」

 

考えるより先に、敦は叫んでいた。が、国木田の行動はそれよりも一拍速い。

伊達に探偵社の調査員をしている訳では無い。反射でその場所から飛び退き、命を落とす事は避けたが、国木田の喉には薄く真一文字に朱線が走り、血が流れ出していた。

 

「何だ、これ………」

 

呆然と敦は呟く。

 

街灯に照らされた襲撃者は『影』だった。

辛うじて人の形を保っているものの、『それ』の輪郭は酷く不安定に揺れ、細かく震えている。右手には細長い刃めいた『影』を携えていた。

顔に当たる部分には目も口も鼻もない。それなのに、その視線は紛れも無く敦と国木田を標的として捉えていた。

 

敦の背に薄ら寒い物が這う。

 

「く、国木田さん、あれ、何でしょう……」

「知らん、俺が訊きたいわそんな物は!」

国木田は些か面食らったような顔で、しかし影から目を離さずに銃の遊底を引いた。既に臨戦態勢に入っている。

「だが、此奴が今回の殺人事件の犯人と見て間違いないだろうな」

その考えには賛成だった。だが、コレは人では無い。なら、常識的に考えて、これは

 

「何かの……異能?」

 

なら、この影を遠隔で操作する誰かが居る筈だ。なら、誰が────

影は目の無い貌で二人を見ていた。何方を狩るか、決めあぐねているように見える。それは敦と国木田も同じで、どのタイミングで影を攻撃するかを決め兼ねていた。

 

ふと、敦の虎眼の隅に、もう一つの影が映る。だが、今度は黒い影ではない。

 

夜陰に交わらぬ、黄金の影を認識した瞬間、敦は影と対峙しているその状況も忘れて駆け出していた。

 

「おい、敦!?」

 

狼狽した国木田の声が遠ざかる。

何故かは解らない。だが、敦の本能が確かに訴えたのだ。行け、と。

 

その黄金の影は動かない。視野の広い敦の虎眼を以てしても片隅に捉えた程度の姿だ。そう遠く離れてはいないが、国木田の視界では間違いなく死角になっていただろう。

 

広い表通りの死角。すなわち建物と建物の間の路地だ。敦は引き寄せられるように、『彼』の元へと走った。




本当ならこの話の中で敦君と獣殿の邂逅も書きたかったのですが、文章量のバランスを考えて削りました。

大方考えてあるので、次はネタを忘れない内に早目に更新したいと思っています。

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