軽度のグロがあること、及びオリジナルのプロデューサーがいること、キャラ改変の可能性があります。ご注意ください。
その日、プロデューサーの家には白坂小梅が泊まりに来ていた。
しかしプロデューサーが帰宅すると不穏な空気が流れていた。
今日は家に白坂小梅が泊まりに来ているはずなのに、俺が帰っても物置一つ聞こえなかった。俺は小梅を探したが、なかなか見当たらない。
小梅は一体どこへ行ってしまったのだろう。危険なことに巻き込まれていなければいいのだが。
不意に、甘い香りがした。腐った花のような香りだ。そう、死体からこぼれ落ちる血液のような独特の匂いだ。
不自然な匂いは洗面所へと続いていた。俺は息をひそめ、何も聞こえないことを確認し、洗面所に突入した。誰もいない。
浴室の扉の向こうから、確かに輝く灯りと、むせかえるほどの匂いが漏れている。俺は緊張しながら扉をゆっくり開けた。
浴室の照明はきらきら光り輝き、その下の無残な光景を照らす。そこに白坂小梅の身体は存在した。
真っ赤な液体にまみれた浴槽に、真っ白な顔で微笑む小梅が浮いている。
小梅の手首には、鮮やかな赤が横切っていて。
綺麗な死体だ、と俺は思ってしまった。
小梅の左目が、ゆらりと開く。
「……入浴剤で死体ごっこ。えへへ……」
梅の香りに包まれた白坂小梅は、生き返ったゾンビのようにへらりと笑った。
ちゃんと生きていた小梅を、俺は愛おしく思うと同時に、殺したいと、願ってしまった。
例えば小梅の折れそうに細い首筋を、醜くつぶすように、締めてしまう、とか。
きっと世にも美しい花が咲くに違いなかった。
しかしそう思う一方で、白坂小梅に申し訳ない気持ちがわく。アイドルの未来を絶つプロデューサーなんて、命まで奪うプロデューサーなんて、そんなの人間ですらない。クズ以下の何かだ。
小梅は俺の表情の七変化を見つめていて、やがて妖艶に笑った。
「ふふ……。プロデューサーさんになら殺されてもいいよって、あの子も言ってる。
でもね、できるなら、今はやめて欲しいかな。輝子ちゃんや幸子ちゃん、涼さん、他にもたくさんの友達やアイドル仲間、ファンのみんなと仲良くしてたいから……。
もし、私がアイドルとして売れなくなって、誰からも見捨てられて、私とあの子とプロデューサーさんだけになったら、プロデューサーさんすら離れる前に私の身体を殺めて。
私、幽霊になって、みんなを見守りたい……」
小梅は長文を吐き出した後、少し苦しそうな呼吸をしながら、それでも満面の笑みを咲かせた。
「プロデューサーさん、指切り、しよ。嘘ついたら、本当に、針を千本飲ませちゃうかも……ふふ……」
物騒なことを言う小梅は、本当に愛しくてかわいかった。