シルバーウィング   作:破壊神クルル

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16話

束からの用があると言われ、楯無に束の秘密研究所へと連れて来てもらったイヴ。

そこで、イヴは束から専用機なるイヴだけのISを貰った。

そしてISの他にも専用のISスーツも貰った。

通常のISスーツとは異なるコスプレ衣装の様なISスーツに疑問を感じた楯無であったが、束の説明とイヴの体の事を踏まえると納得した。

そして、いよいよ専用機に‥‥ISに乗る時が来て、束の指示通りイヴが自身の専用機、リンドヴルムに手を触れる。

すると、イヴの脳内には数多くの情報が流れ、眩い光が辺りを包み、光が収まると、リンドヴルムを纏ったイヴの姿がそこにあった。

 

「こ、これは‥‥」

 

イヴはISを纏った自身の体を見渡す。

 

「どう?いっちゃん?体に何か違和感とかない?」

 

「ううん‥‥大丈夫‥‥体にしっくりくる‥‥」

 

「じゃあまずは歩いてみて、普通に歩行する感じで‥‥」

 

「う、うん」

 

束の指示に従い、イヴは恐る恐る歩き出す。

 

「そうそう、上手い、上手い。それじゃあ、次は飛んでみようか?」

 

束がスイッチを押すと、天井が開き、青空が広がる。

 

「飛ぶ?」

 

「うん、ISは飛行能力も有しているからね。まずは翼を広げる事をイメージして」

 

「う、うん」

 

イヴは以前、タッカーの研究所で飛んで行った時の事を思い出し、束の指示通り、まずは翼を広げる事をイメージする。

すると、背中のウィングユニットが開く、

 

「‥‥飛べ」

 

イヴが一言呟くとリンドヴルムは空へと舞い上がった。

双眼鏡で空へ飛んだイヴの様子を確認する束と楯無。

 

「流石、いっちゃん。初めての飛行も手慣れているね」

 

「ええ、初めてISで飛行する場合、ISの動きについて行けずに大きく動きがぶれたり、その後で墜落するケースが多いのですが、鳥の様に自由に飛んでいますね」

 

空を飛ぶことに慣れているイヴだからこそ、出来る芸当なのだろう。

束も楯無も感心したように呟く。

 

「次は武装チェックね」

 

インカムでイヴに指示を送る束。

 

「この子の武装は‥えっと‥ドラグーン・システム?」

 

束からの指示でリンドヴルムに搭載されている武器を調べると、まず最初に出てきたのが、分離式統合制御高速機動兵装群ネットワーク・システム、通称ドラグーン・システムと呼ばれる武装だった。

全く聞き慣れない武装なのにイヴの脳内にその武装の原理が入って来る。

 

(この子がまるで私に教えてくれているみたい‥‥)

 

「いくよ‥‥リンドヴルム‥‥」

 

イヴがドラグーン・システムを発動させると、ウィングユニットについているアーチ状の突起物が分離する。

 

「あれって、イギリスで最近開発されたブルーティアーズ?」

 

リンドヴルムの周りを飛ぶドラグーンを見て楯無が思わず声を出す。

 

「そうだよ、あのリンドヴルムには、各国が開発中の武装や開発したばかりの武装が搭載されているんだよ。いっちゃんの体の問題上、様々な武装を施して少しでも誤魔化しがきくようにしておかないとね。ああ、ついでに言うと青髪、お前のISのデータも参考にさせてもらっているから」

 

「え“っ!?」

 

自分の愛機のデータが知らぬ間に流用されている事にギョッとする楯無。

 

「い、いつの間に!?データを!?」

 

「お前のISを修理した時」

 

「‥‥」

 

束はシレッとミステリアス・レイディのデータを取った時の事を言う。

そんな束に楯無はジト目で見るが、束はそんな事お構いなしに双眼鏡で空のイヴの様子を見ている。

イヴはドラグーンをピュン、ピュン飛ばしながら空を飛んでいる。

 

「いっちゃん、これから的を表示するからドラグーンで撃ってみて」

 

「うん」

 

イヴの前には多数の的が表示される。

すると、イヴは的に向かってドラグーンを飛ばし、的の中心を射抜いていく。

 

「上手いな、もうドラグーンを使いこなしている」

 

「あれって確か空間認識能力とそうとう意識を集中しないと使いこなせない筈よね?」

 

平然とドラグーン・システムを使いこなしているイヴに顔を引き攣らせる楯無。

一基や二基は兎も角イヴは左右五基、計十基のドラグーンを使いこなしている。

しかも‥‥

 

(あっちの的は‥‥)

 

イヴは離れた場所の的を左肩に装備されているレール・ガン、スターライト・ゼロで撃ち抜いた。

 

「ちょっ、今、イヴちゃんドラグーンを使いながら、別の武器も使ったんだけど‥‥」

 

「いっちゃんなら、それぐらいできるさ」

 

(いやいや、ドラグーン十基を平然と使用しているだけでも凄いのに、ドラグーンを使用中に別の武装を使用できるなんて‥‥しかも平然と動いているし‥‥)

 

今現在、ブルーティアーズを使用しているイギリスの候補生でさえ、ティアーズを扱うのが一杯一杯でティアーズの使用中は動けないし、ましてや他の武装を使用するなんてことは出来ていない中、イヴはそれを易々乗り越えている。

それはつまり、現時点でイヴは代表候補生以上の実力を有していると言う事を証明していた。

的を全て撃ったイヴはドラグーンを呼び戻す。

 

「えっと‥‥次は‥‥近接戦闘武装、バルニフィカス?」

 

「おっ?いっちゃん、次はバルニフィカスを出したね。いっちゃん、いっちゃん」

 

双眼鏡でイヴが近接武器を取り出したのを確認すると、束はイヴに通信を入れる。

 

「たばちゃん?」

 

「いっちゃん、そのバルニフィカスは近接用の武器で、それ一本で、大鎌(ハーケンフォーム)、戦斧(アサルトフォーム)、グレートソード(ザンバーフォーム)の三つの機能を兼ね揃えているんだよ」

 

「「三つも!?」」

 

束の説明を聞き、バルニフィカスの機能に驚くイヴと楯無。

 

「大丈夫、大丈夫、いっちゃんなら使いこなせるから」

 

束の根拠のない説明に「大丈夫か?」と思いつつ、イヴはバルニフィカスを使う。

実際使いこなせるのかと思ったイヴであったが、いざ使ってみるとリンドヴルムが使い方を教えてくれるかのようにイヴはバルニフィカスを使う。

演武をするかのようにバルニフィカスを振り、そして状況によっての武装形態の切り替えは、楯無でさえも見とれてしまう程のモノだった。

 

「青髪」

 

「なんでしょう?」

 

「いっちゃんと戦ってみる?」

 

「えっ!?」

 

束からの誘いに戸惑う楯無。

強者の実力を知りたい、戦いと言う欲求は武人として当然の欲求である。

でも、相手は恐らく世界最強の生物兵器が乗るIS‥‥

苦戦は必至である。

 

「今回はリンドヴルムの試運転だからガチでやらなくてもいいよ」

 

「わ、わかりました。やらせてもらいます」

 

楯無はイヴと模擬戦をすることを決め、ミステリアス・レイディを纏う。

ミステリアス・レイディを纏った楯無はイヴが待つ空へと上がった。

 

「いっちゃん、これからそこの青髪と模擬戦をしてくれるかな?」

 

「たっちゃんと?」

 

「う、うん」

 

イヴが楯無の愛称を呼ぶことに少々抵抗のある束。

 

「わかった」

 

「ただ、今回はリンドヴルムの試運転が目的だからガチでやらないようにOK?」

 

「OK」

 

「ええ、いいわよ」

 

「では、試合開始!!」

 

束が試合開始の合図を出す。

試合が始まっても両者は動かず、向き合ったままの状態。

 

「こうしてイヴちゃんと戦うのはロシアの時以来ね‥‥」

 

楯無は蒼流旋を出現させ、構える。

 

「私はあの頃の事は映画やテレビを見ていた様な感覚だったので、実際にたっちゃんとこうして戦うのは、今の私にとっては初めてです」

 

そう言ってバルニフィカスをまずは、戦斧(アサルトフォーム)で構える。

バルニフィカスを構えるイヴと蒼流旋を構える楯無が対峙する。

そして、両者の目がカッと見開くと同時に二人は動き、楯無の蒼流旋とイヴのバルニフィカスはぶつかり合う。

両者のぶつかり合いはイヴが制し、楯無を上空へと押し上げる。

 

「なかなかやるわね!!イヴちゃん!!」

 

楯無はさらに上方へと飛び上がり、蒼流旋に装備されている4門のガトリングを連射した。

 

「くっ」

 

イヴが右手をかざすと、蒼流旋から放たれたガトリングガンの弾がイヴの前で静止する。

まるで、イヴの前に透明な壁があり、その壁にめり込む様な形で‥‥

 

「ちょっと、それってまさか、AIC!?」

 

まさか、ドイツで研究中の技術までもが搭載されていたとは思わなかった楯無はガトリングを撃つのをやめる。

楯無の銃撃が止むと同時にイヴは楯無の懐へと飛び込む。

再び楯無の蒼流旋とバルニフィカスがぶつかり合う。

 

「バルニフィカス、モードチェンジ、大鎌(ハーケンフォーム)!!」

 

イヴがオーダーを下すと、バルニフィカスは戦斧から大鎌へとシフトチェンジする。

 

「はぁあっ!」

 

大鎌の横薙ぎの一撃を楯無はバク転して躱す。

そして、体勢を立て直すと、再びイヴに向けガトリングガンを放つ。

 

「くっ」

 

イヴはまたAICを発動させながら、楯無に左手を向ける。

すると、楯無のISに衝撃が走る。

 

「うっ‥‥くっ‥‥今のは、衝撃砲!?」

 

リンドヴルムの手の掌には小口径だが、衝撃砲の発射口があった。

 

(全身武装しすぎでしょう!!)

 

衝撃砲を食らい体勢が崩れた楯無にイヴはバルニフィカスを大剣に変えて斬り込む。

そして、バルニフィカスが楯無の体を斬ると、

 

パシャッ

 

水音を立てて楯無の体が四散した。

 

「っ!?」

 

(しまった!?今のは、水で作った分身!!)

 

「そういつまでもやられるお姉さんじゃないわよ!!」

 

蒼流旋に水を螺旋状に纏わせてイヴの側面を突く。

 

「くっ‥‥」

 

イヴは大剣モードのバルニフィカスの刀身でそれを受け止める。

 

「まだまだ、いくわよ!!」

 

楯無がパチンと指を鳴らすと、イヴの至近距離で水蒸気爆発が起きた。

先程の水の分身を使って楯無は清き熱情(クリア・パッション)を発動させた。

 

「これで、決まったかしら?」

 

爆煙がおさまると、其処にはウィングユニット折り畳み、清き熱情(クリア・パッション)を防いだイヴの姿があった。

ISだが、まさにロシアの時と同じ方法で清き熱情(クリア・パッション)を防いだ。

ウィングユニットを再び広げてバルニフィカスを構えるイヴ。

楯無もすぐさま、蒼流旋を構える。

両者がそれぞれの獲物を手に向き合っていると、

 

「両者そこまで!!」

 

「「えっ!?」」

 

束が試合を強制的に終了させた。

 

「ど、どうして!?」

 

「そうですよ、良い所だったのに‥‥」

 

イヴも楯無も完全に不完全燃焼で不満そうに呟く。

 

「熱くなるのはいいけど、これはあくまで、リンドヴルムの試運転だってことをわすれないでね、あのままだと二人ともガチで続けそうだったし」

 

「「‥‥」」

 

「データも其れなりに取れたから二人とも戻って来て」

 

「ふぅ~まぁ、篠ノ之博士の言う通りね」

 

「そうですね。それに私もISを貰いましたから、機会があれば、この続きはいつでもできますものね」

 

「ふふ、そうね」

 

楯無は嬉しそうに微笑み、二人は空から格納庫へと戻った。

 

「お疲れ~二人とも~」

 

「お疲れ様です」

 

「それで、どうだった?初めてのISは?」

 

「楽しかった!!血沸き肉躍る感じで!!」

 

「そ、そう‥‥」

 

イヴは無垢な子供の様に初めてのISに満足した様子。

 

「お二方、汗をかきましたでしょう?シャワーの用意が出来ていますので、汗を流してきてはどうでしょうか?」

 

クロエがイヴと楯無の二人にシャワーを勧める。

 

「そうね」

 

そう言って楯無はミステリアス・レイディを待機モードの扇子へと変える。

 

「おおお‥‥」

 

イヴは初めてISを待機モードに変える光景を見て、思わず声を出す。

 

「‥‥あれ?私のリンドヴルムはどうやって小さくするの?」

 

しかし、イヴは待機モードへの移行を知らず、束にどうやったら、待機モードになるのかを尋ねる。

 

「それは、私がやっておくから、いっちゃんはシャワーを浴びてきなよ」

 

「う、うん」

 

イヴは束にリンドヴルムを任せて楯無と共にシャワールームへと向かおうとした。

その時、

 

「おい、青髪」

 

束は楯無を呼び止めた。

 

「ん?何でしょう?」

 

チョイ、チョイ

 

楯無を呼び止めた束は彼女を手招きする。

 

「お前、いっちゃんとシャワー入れるからっていっちゃんに変な事をするなよ」

 

「いやだなぁ~私はこれまで、イヴちゃんと寝食を一緒にして来た仲ですよ。その中で私達には何も関係はなかったし、なにより私とイヴちゃんは同性ですよ、篠ノ之博士が思うようなことはないですよ」

 

楯無は「嫌だな~そんなことある訳ないじゃない」と気軽そうに言う。

 

(本当かな?)

 

そんな楯無に束は懐疑的な視線を送る。

 

(ハッ!?そう言えば私、イヴちゃんがお風呂に入っている所見た事がなかった‥‥ヤバッ、意識したら、ちょっと興奮してきちゃった‥‥これって、もしかしてチャンス!?)

 

ただ、楯無は束に言われてイヴとのシャワーを意識してしまい興奮し始めた。

 

「おい、青髪、なんか邪な事を考えていないか?」

 

束は目を細めて楯無を睨む。

 

「いやだなぁ、気のせいですよ、気・の・せ・い。それじゃあ、私もシャワー浴びてきまーす!!」

 

楯無はそんな束の視線をスルーしてスキップでシャワールームへと向かった。

 

「‥‥」

 

スキップでシャワールームへと向かう楯無を相変わらずジト目で見る束であった。

 

 

「さてと、イヴちゃんはっと‥‥」

 

楯無がシャワールームに着くと、イヴは既にシャワーを浴びている様子だった。

脱衣所の篭にはイヴが先程まで来ていた飛行服(ISスーツ)があり、中からは水がしたたり落ちる音がする。

楯無は興奮する自分を理性で押さえてISスーツを脱ぎ、シャワールームへと入る。

 

「お邪魔します~」

 

そして、イヴが居る隣のシャワーを使う。

 

「~♪~♪」

 

イヴはシャワーを浴びながら鼻歌を歌っており、楯無が入って来たのに気付いていない。

楯無がついたての間と間からこっそりと中の様子を見てみると、

 

(や、やっぱり、イヴちゃん、可愛い~!!肌も白いし、胸もいい形だし、ボリュームもなかなか‥‥それにお尻の形もなかなかいいじゃない~)

 

(そして何より‥‥)

 

(シャンプーハットを使っている所がギャップを感じさせるわ!!)

 

ちょっと大人びた体なのに、シャンプーハットを使って髪を洗っている子供っぽいイヴにギャップ萌えを感じる楯無。

 

(イヴちゃん、お風呂には黄色いアヒルを浮かべているんじゃないかしら?)

 

そんな事を思いつつ、楯無は、イヴに声をかけた。

 

「イ~ヴ~ちゃ~ん」

 

「た、たっちゃん!?何時の間に!?」

 

「ついさっきよ。ねぇ、イヴちゃん」

 

「何でしょう?」

 

「背中、洗いっこしない?」

 

「えっ?」

 

「一人だと隅々まで洗えないでしょう?」

 

「はぁ~まぁ、いいですよ」

 

イヴは楯無の提案を受け入れた。

 

「それじゃあ、まずは私が洗ってあげるわね」

 

「ありがとうございます」

 

イヴはその長い髪を一束にして肩越しに前にやる。

楯無の眼前には無防備なイヴの背中がある。

 

「ゴクッ‥‥そ、それじゃあ、洗うわね」

 

「はい。お願いします」

 

楯無はスポンジにボディーソープを着け、泡立て生唾を一飲みした後、イヴの背中を洗う。

イヴは楯無の事を信頼しているのか、ジッと動かない。

 

(そう言えば、昔はよく簪ちゃんとこうして背中を洗いっこしたわね‥‥)

 

イヴの背中を洗っていると、楯無は昔、妹の簪とよくお風呂に入って背中を流し合った事を思い出した。

 

「たっちゃん?」

 

昔の事を思い出している内に楯無の手は無意識の内に止まっていた。

突然手を止めた楯無に何かを感じ取ったのか、イヴが振り向く。

 

「あっ、な、なんでもないわ」

 

楯無は慌てて取り繕うとイヴの背中を再び洗い始める。

そして、次にイヴが楯無の背中を洗う。

 

「‥‥ねぇ、たっちゃん」

 

「何かしら?イヴちゃん」

 

楯無の背中を洗いながらイヴが楯無に話しかける。

 

「‥‥何か、悩んでいるなら遠慮なく言ってね‥その‥‥私、たっちゃんの事‥好き‥だから‥‥」

 

(す、好き!?)

 

イヴの言葉に物凄い反応を示す楯無。

そして、イヴは楯無に自らの胸を押し付けつつ彼女を背中から抱きしめる。

 

「い、イヴちゃん!?」

 

「‥たっちゃんやたばちゃんが本当のお姉ちゃんだったらよかったのに‥‥」

 

イヴはなんだが悔しそうに呟いた。

一方、楯無の方は軽いパニック状態となる。

背中にはイヴの胸の感触、脳内にはイヴが言った「好き」と言う言葉と束の部分を除く自分が姉だったらよかったと言う言葉が何度もリピートされ、

 

「きゅ、きゅぅ~」

 

伸びてしまった。

 

「えっ!?たっちゃん?たっちゃん?たっちゃん?たっちゃーん!!」

 

急にのぼせてしまった楯無にあたふたするイヴ。

そして、シャワールームに楯無を呼ぶイヴの声が響いた。


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