シルバーウィング   作:破壊神クルル

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17話

束の秘密研究所へと行き、そこでイヴは自らの専用機を貰い、試運転と共に楯無を相手に模擬戦を行った。

決着はつかなかったが、互いに専用機持ちと言う事でこの先、戦う機会は幾度もあるだろう。

戦って汗を掻いた二人はシャワーを浴びに行った。

その際、楯無は束にくれぐれもイヴに変な事をするなと釘を刺された。

そして、やってきましたシャワールーム。

楯無がシャワーを浴びているイヴを覗き見ると、シャンプーハットを使っているイヴにギャップを感じ、その後、互いに背中を洗いっこした。

イヴに背中を洗ってもらっている中、イヴの胸と言葉に楯無はノックアウトされてしまった。

突然倒れてしまった楯無にイヴはオロオロする。

でも、何時までも倒れた楯無をこの場に放置するわけにはいかないので、イヴは倒れた楯無を担いで、脱衣所に向かった。

 

 

「~♪~♪」

 

歌声が聞こえる‥‥

その歌声に導かれるように楯無の意識が覚醒していく‥‥

 

「うっ‥‥うん‥‥?」

 

楯無が目を開けると、其処には子守唄を歌いながら、楯無の髪を撫でているイヴの姿があった。

彼女は今、イヴに膝枕をしてもらっている状態だった。

 

「~♪‥‥あっ、気がつきました?」

 

楯無が目を開けたのに気付いたイヴは歌うのを止め、彼女に声をかける。

 

「イヴちゃん?‥‥私‥‥」

 

「湯あたりしたみたいですね、大丈夫?たっちゃん」

 

「う、うん‥でも‥‥」

 

「ん?」

 

「もうちょっとこのままでいさせて」

 

「あっ、うん‥いいよ」

 

イヴに甘える様な仕草でもう少しイヴの膝枕を堪能したいと言う楯無。

 

(うふふ‥‥イヴちゃんの太もも、サイコー!!)

 

心の中で感想を絶叫する楯無。

 

「フフ、いつもとは逆だね、たっちゃん」

 

普段は楯無に膝枕をしてもらっているイヴにとっては何だか新鮮味を感じる。

イヴの太もも‥もとい、膝枕をある程度堪能した楯無は膝枕をされた状態のままポツリと呟く。

 

「ねぇ、イヴちゃん‥‥」

 

「なんでしょう?」

 

「さっき、私が本当のお姉ちゃんなら良かったって言っていたけど、『隣の芝生は青く見える』って言葉通り、私の妹になると色々苦労するし、きっと私の事を嫌いになるわよ」

 

「えっ?」

 

「以前、私に妹が居るってイヴちゃんに言ったわよね?」

 

「ええ」

 

「‥‥実は、私達姉妹‥‥あまり、仲が良くないのよ」

 

「えっ?」

 

楯無は妹の簪との仲が不仲である事実をイヴに告白した。

そして、そのきっかけをイヴに言う。

更識家が暗部に関わる家柄であり、自分は17代目の当主で楯無と言う名前は代々受け継がれている名前で本当の名前でない事、

自身の本当の名前は更識刀奈であると言う事、

かつて妹に「無能のままでいい、私が全部してあげる」と言って暗部と言う危険な世界に妹を連れ込まない様にしたのだが、上手くその言葉の意図が伝わらず、その言葉が決定的となり、自分達姉妹は、姉妹なのに赤の他人の様な関係となってしまった。

暗部と言う事で手の内を他人に悟らせない様に捻った言葉が不味かった。

だが、幼いときからその様な英才教育を施されて来た楯無にとって他の人の様に素直に直接伝えるという器用なマネが上手くできなかった。

昔は仲の良かった姉妹であったが、時が経つにつれ、次第に妹は自分の後を追いかけ始め、自分に変な対抗心を抱くようになっていった。

楯無本人としてはそんな事を望んでおらず、妹には妹個人として個性を抱いて生きて欲しかった。

今、妹がやっているのは自分のコピー行為‥‥

そんな事をしても出来上がるのは出来損ないの楯無モドキと言う名の劣化・模造品。

このままでは自分のせいで妹の人生を台無しにしてしまう。

だから、自分は更識家の当主となったあの日、妹にあの言葉を言って自分の後を追う事を諦めさせようとした。

でも、妹は反対にますます、自分の後を追う事に関して積極的になり始めた。

日本の代表候補生になったのも妹本来の意志ではなく、自分がロシアの国家代表だからと言う対抗心からだろう。

 

「だから、私の妹になるときっと私の事を今の様に見る事は出来ないわよ」

 

「‥‥でも、それは、たっちゃんの優しさからの誤解だと思います。‥‥そう考えると貴女は私の本当の義姉とは違ってやっぱり、優しい人です‥‥」

 

「‥‥ありがとう‥イヴちゃん」

 

流石に織斑千冬と同レベルにされるのは嫌であるが、イヴは本気で楯無か束が姉だったらよかったと言う願望を持っていた。

 

「たっちゃん‥‥」

 

「ん?」

 

「妹さんとの関係‥掛け違えたボタンは直す事は出来る筈です。たっちゃんと妹さんとの関係は私と違ってまだ完全に壊れていないと思いますよ」

 

「ん?なんで?そんな事が言えるのかしら?」

 

「少なくとも妹さんはまだ、たっちゃんを見ていると思うからです」

 

「本当にそうかしら?」

 

「ねぇ、たっちゃん。『好き』の反対語は何だと思いますか?」

 

「えっ?」

 

イヴは突然、楯無に国語の様な問題を尋ねる。

 

「‥『嫌い』じゃない?」

 

「ええ、文章的には『嫌い』ですが、人と人との繋がりおいて『好き』の反対語は『無関心』だと私はそう思っています」

 

「無関心‥‥」

 

「はい。妹さん、たっちゃんの後を追って日本の代表候補生になったんですよね?それなら、妹さんは少なくともまだたっちゃんの事を見ているって事ですよ。妹さんは今でもたっちゃんの後ろを必死に追いかけている‥それなら、たっちゃんが立ち止まり、振り返って手を差し伸べる事も出来る筈ですよ」

 

イヴは微笑みながら楯無にまだ妹との関係修復のチャンスはあると言う。

 

「ありがとう、イヴちゃん」

 

イヴの言葉に楯無は目を潤ませて礼を言った。

 

(私の場合は、『嫌い』『無関心』を通り越して、『憎悪』『復讐心』なのかもしれないけど‥‥)

 

イヴはかつて自分の家族である、織斑千冬、織斑百秋についての印象を心の中で自分なりに解釈をしてみた。

 

「たっちゃん」

 

「ん?」

 

「涙で顔、濡れちゃっていますよ、もう一回、シャワー、浴びましょう。ねっ?」

 

「う、うん」

 

イヴはかつての家族の事を忘れ、楯無と共にもう一度シャワーを浴びるため、楯無の手を引いてシャワールームへと戻った。

そして二度目のシャワーを浴びている時、

 

「そういえば‥‥」

 

楯無が思い出す様な口調でイヴに話しかけてきた。

 

「さっきの模擬戦でイヴちゃん、ドラグーン・システムを使わなかったでしょう?なんで?」

 

「えっ?‥うーん、たっちゃんとの模擬戦はなんか近接武器で、たっちゃんと近い位置で直にぶつかり合う‥そんな戦いをやりたかった‥からかな?」

 

「‥‥」

 

「えっと‥‥なんか変‥かな?」

 

「ううん、変じゃないよ。それこそ、スポーツマンシップ精神だよ。イヴちゃん。その精神、これからも大事にしなさい」

 

「はい」

 

IS操縦者の先輩として楯無はイヴにスポーツマンシップ精神を忘れない様にと促す。

シャワールームを出て再び束の待つ格納庫へと戻った二人。

 

「シャワーを浴びるにしては随分と遅かったね」

 

格納庫へ戻ると束がちょっと不機嫌そうな様子で待っていた。

だが、リンドヴルムの姿は消えていた。

 

「青髪、まさかいっちゃんに変な事をしたんじゃないだろうな?」

 

ジト目で楯無を睨む束。

 

「な、なんで私がした事前提になっているんですか!?」

 

「私のいっちゃんがお前を襲うなんてありえないからだ!!」

 

束はクワッと目を見開いて断言する。

 

「たばちゃん、落ち着いて。何もされていないから‥たっちゃんがちょっと湯あたりしちゃったんだよ」

 

「湯あたり?」

 

「うん。たっちゃんと背中を洗いっこしてたいら、たっちゃんが湯あたりしちゃって‥‥」

 

「洗いっこ!?いっちゃんと青髪が背中を洗いっこ!?わ、私だってそんなことしたことないのに!!」

 

イヴの説明に束はガーンとショックを受けた。

姿勢も床に両手をついてorzの姿勢をとっている。

 

「えっと‥‥大丈夫?たばちゃん?」

 

「いっちゃん!!」

 

イヴがorz姿勢の束に声をかけると束は、ガバっと起き上がり、イヴに詰め寄る。

 

「は、はい」

 

「今日、此処に泊まっていって!!」

 

そして、イヴに今日は泊まってくれと言う。

 

「えっ?」

 

「それで、一緒にお風呂に入ろう!!私がいっちゃんの体を隅々まで洗ってあげるよ!!」

 

「‥‥」

 

束の高テンションにドン引きの楯無と『どうしよう~』とちょっと戸惑い気味のイヴ。

 

「えっと‥‥」

 

「だめ?」

 

束は潤んだ目でイヴに頼み込む。

 

「わ、分かったよ。たばちゃん」

 

こうしてイヴは今日、束の秘密研究所に泊まる事になった。

 

「あっ、青髪、お前は帰っていいぞ。明日は学校なんだし、遅刻や欠席はまずいでしょう?なんたって学園には怖い怖い世界最恐のブリュンヒルデ様が居るんだし‥‥」

 

ニヤッと束は勝ったと言わんばかりの笑みを楯無に浮かべ、シッシッとまるで犬を追い払う様な仕草をとる。

すると、楯無もちょっとムッとした顔をして、

 

「ご心配なく、ミステリアス・レイディの速さならば、朝一で出れば間に合いますし、それにイヴちゃんも私が居た方がいいわよね?」

 

「えっ?あ、うん‥‥」

 

楯無はイヴを味方につけようとする。

 

「いっちゃん!?いっちゃんは私よりもその青髪がいいの!?」

 

「えっと‥そう言う訳じゃないよ‥ただ、たばちゃん、此処にくーちゃんと二人っきりでしょう?だったら、みんなで過ごした方が楽しいかな?っと思って‥‥」

 

束はクロエと二人っきりなので、イヴはイヴなりに束は普段寂しい生活を送っていると思って一人よりも二人‥自分と楯無が居た方が楽しいのではないかと思い楯無も泊めてあげたら?と思ったのだ。

 

「うぅ~」

 

純粋に束の為と思うイヴの心に流石の束も無下にすることは出来ず、

 

「‥‥青髪、今日は特別だからな!!でも、いっちゃんの所有権は今日一日私のものだからな!!忘れるなよ!!」

 

やむを得ず、楯無の泊りを許したが、イヴと一緒に過ごすのは自分が中心だと宣言した。

 

「束様、最初の話から随分と離れてしまったようにも思えるのですが‥‥」

 

此処で空気になりかけていたクロエが束に話しかける。

 

「あっ、そうだったね」

 

束も最初の要件を思い出し、

 

「いっちゃん。はい、コレ」

 

イヴに装飾が施された化粧箱を差し出す。

 

「これは?」

 

「開けてみて」

 

「う、うん」

 

イヴが化粧箱を開けてみると中には銀の懐中時計が入っていた。

 

「これは‥‥昔、私がたばちゃんにあげた‥‥」

 

その懐中時計は以前、イヴが束にあげたものとそっくりだった。

 

「確かにそれは昔、いっちゃんが私にくれた懐中時計に似ているけど、あの時計は今でも私の大切な宝物だから、それは私からの贈り物‥‥その時計こそがリンドヴルムの待機モードなんだよ」

 

「えっ?」

 

束がくれた懐中時計こそが、イヴの専用機、リンドヴルムだと束は言う。

その証拠に束はポケットから昔、イヴが束にあげた懐中時計を見せて、その懐中時計が別物だと証明する。

 

「‥‥これ、どういう原理なの?」

 

あのISが懐中時計になるなんてちょっと信じられない。大きさ、質量を考えてもありえない。イヴは束にどういう原理なのかを尋ねる。

 

「うーん‥ちょっと難しいし、説明するだけで日が暮れちゃうからやめておいた方がいいよ。一番手っ取り早い方法は、もう一度呼び出してみると良いよ」

 

言葉の説明よりも実際に呼び出した方が早いと言うので、イヴは試してみる事にした。

だが‥‥

 

「‥‥えっと‥‥どうやって呼び出すの?」

 

イヴは待機モードのISを呼び出すのも今回が初めてなので、イヴの質問に束と楯無はズッコケた。

 

「集中してISに心の中で語り掛けると言うか‥‥」

 

「イメージと言うか‥‥」

 

「ありがとう、やってみる」

 

束と楯無の話を聞いて早速実践してみるイヴ。

すると、懐中時計が光り、イヴはリンドヴルムを再び纏った。

 

「おおお‥‥」

 

再びISを纏った事にイヴは感嘆の声を漏らす。

 

「それで、どうやって小さくするの?」

 

次にイヴはどうやって待機モードにするのかを尋ねる。

 

「次も最初と同じ、『戻れ』って意識を送りつつ待機モードの形状を意識するんだよ」

 

「わかった」

 

イヴは目を閉じて、以前、父から貰った御守であり、束(友達)に託した懐中時計を思い浮かべる。

すると、リンドヴルムはまた光を放つと銀色の懐中時計に戻る。

 

「元に戻った‥‥でも、これやっぱり原理が凄い気になる‥‥」

 

懐中時計になったリンドヴルムを見ながらイヴはそう呟いた。

 

 

その後、ゲームをしたりして時間を潰したイヴと楯無は、折角泊めてもらうのだからと言う事で、夕食を振舞うことにした。

食材は冷蔵庫に沢山有ったので、材料には困ることなかった。

イヴと楯無が料理を作っている中、クロエはそれを観察するかのように見ていた。

 

(盲目なのに見ていて意味があるのかしら?)

 

楯無は目を閉じていながらも自分達を観察する様な仕草のクロエに首を傾げた。

そして、始まった夕食。

束は久しぶりにまともな食事を摂ったのか物凄い勢いでかっこんでいく。

普段はクロエが作った黒焦げ料理を食べている束にとって今日の夕食は久しぶりに人間らしい食事だった。

そんな普段の束の食生活を知らない二人は、

 

((普段、何を食べているんだろう?))

 

と、束の食生活が気になるイヴと楯無だった。

そして、束にとってはお待ちかねのお風呂タイム。

 

(おお~やっぱり、いっちゃんの体は綺麗だ~ 最初に会った時もお人形さんみたいに可愛かったけど、成長したいっちゃんもやっぱりいい身体つきだ~)

 

脱衣所で服を脱いだイヴの体を見て目を輝かせる束。

 

「それじゃあ、いっちゃん。背中を洗うから向こうを向いて」

 

「うん」

 

浴室へと入り、束はイヴの背中を洗い始めた。

だが、イヴの体を洗っていると何だかムラムラ来た束は‥‥

 

ムニッ

 

「ひゃん、た、たばちゃん?」

 

イヴの胸を揉みだした。

 

「う~ん、やっぱり、私の見立てどおり、いっちゃん、良い胸をしているねぇ~」

 

「ちょっ、たばちゃん‥や、やめっ‥‥」

 

「ムフフフ‥‥よいではないか~よいではないか~」

 

束がイヴの声を聞いて悪乗りをしていると‥‥

 

「束様、シャンプーを詰め替えておきまし‥‥」

 

浴室にシャンプーボトルを持ったクロエが入って来た。

 

「「‥‥」」

 

束は突然の乱入者に言葉を失い、クロエはまさか束が風呂の中でイヴにセクハラ行為していたとは思わず、言葉を失う。

 

「く、くーちゃん‥これは‥‥」

 

「束様、セクハラは犯罪ですよ。それに同性同士では非生産的なのではないでしょうか?」

 

「非生産的とか生々しい表現は止めて!!」

 

「それでは、私はこれ以上お二人の邪魔をするわけにはいきませんので‥‥」

 

クロエは用を済ますと一礼して浴室を出て行った。

 

「ちょっ!!くーちゃん!!」

 

束がクロエを呼び止める為に隙が出来、

 

「たーばーちゃーん」

 

「っ!?」

 

束が恐る恐る後ろ振り向くと、其処には顔を赤くして頬を膨らませているイヴの姿があった。

 

「やったらやり返す‥倍返しだ!!たばちゃん!!覚悟しろ!!」

 

イヴは髪の毛で束の四肢を拘束し、束の胸を揉みだした。

 

「にゃはははは‥‥ちょっ、いっちゃん、やめ‥にゃははははは‥‥」

 

「私だって恥ずかしかったんだからね!!」

 

と、二人でふざけ合った。

 

それから暫くして‥‥

 

「あれ?イヴちゃんと篠ノ之博士は?まだお風呂?」

 

楯無はクロエにイヴと束がまだ風呂から上がっていないのかと尋ねる。

 

「そう言えば、遅いですね‥ちょっと見てきますか‥‥」

 

クロエは再び浴室へと行くと、

 

「束様!!イヴ様!!」

 

浴室を見てクロエは大声を上げる。

 

「どうしたの!?」

 

クロエの大声を聞いて楯無が浴室へと来てみると‥‥

 

「イヴちゃん!?篠ノ之博士!?」

 

楯無もクロエ同様、声を上げた。

 

「「きゅ~」」

 

二人は浴室でのぼせていた。

そこで、楯無とクロエが慌てて二人を浴室から出した。


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