「さて、今日から本格的な授業に入るぞ」
私はそう言って彼らを見渡す。ここは予科1年A組の教室だ。彼らにとって風見鶏学園に入って初めての授業。私にとっても教えるという意味で初めての授業。
「私の取り扱うのは基礎的なものだ。基礎が出来てないやつが魔法を扱うと大変だからな。心して受けてくれ」
「私たち魔法使いは無に有を生み出すものだ。一見便利なものに聞こえるが、意外とこれがしんどい。理由として魔法は私たちの精神エネルギーを通して作り出される。さて、問題だ。君たちに取って魔法とはなんだ?」
意地悪な質問だこれは。だが、どの魔法使いも最初はこれを尋ねられる。これに対して答えられるものはほぼいないだろう。何故か それは答えなど存在しないからだ。十人十色という言葉が私の出身国にあるが、その言葉通りだ。魔法も人と同じようで同じものは存在しない。勿論、魔法使い育成学校では基礎を教えるため、全員が同じ魔法を教えられる。簡単なものだから同じなのだ。巨大な魔法、それこそ世界を変えるレベルとなると教えることが出来ない。その理論自体が本人しか理解できないからだ。
「では……君だ。そこの人形の隣の君」
今年の新入生には日本から留学してきた者たちがいる。日本は海外と比べると魔法使いは少ない。理由として様々なものがあげられるが、一番の理由は魔法に馴染みがないからだろう。
祈祷や占術が存在していたので、必要がなかったのだ。そして今年は日本の名門の一つ、江戸川家の長男がやってきた。同郷の者だし彼に聞いてみよう。
「お、俺っすか。えっと……凄い物、ですかね」
「凄い物か。ふむ、ではそこの君」
江戸川家の長男の後ろに座っていた、同じく日本人の彼に聞く。
「便利な……もの?」
「便利なもの、確かに魔法は便利なものだ。さて、いま二人に聞いた通り魔法は凄くて便利なものだ。便利ゆえに基礎が出来れば扱える。凄い物ゆえに誰もが驚く。つまり、今の質問には答えが存在しない。この質問に対する答えはこれから君たちは見つけて行けばいい。私にとって魔法とは思いだ」
「思い……ですか」
教室のどこからか聞こえてくる。どうやら誰かが反芻して呟いたようだ。
「そう、思いだ。先ほど精神エネルギーを消費するといったが、それだけでは魔法は生まれない。そこに人の想像、つまり思いが合わさり初めて生まれる。想像し創造する それが魔法。そう私は思っている」
さて、次の話だが……
授業終了のチャイムが鳴るまで私は講義を続けた。
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