私は教授じゃないよ。大袈裟だよ   作:西の家

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視点が変わるのでご了承ください


夏だ!海だ!海水浴?⓶

森戸海水浴場ーー神奈川県三浦郡葉山町にある遠浅の波穏やかなビーチで、沖合いの名島や灯台を望む景観がすばらしい。シーズン中の賑わいは葉山町でもトップレベル。また名島沖に沈む夕日の美しさでも知られる。

 

森戸海岸パーキングエリアにて

 

「あっという間に到着したぜ!」

 

「まあ、武藤の運転だからな。けどよ公道で飛ばし過ぎだろ?途中でパトカーのサイレンが聞こえたぞ」

 

そうなのである。

武高校門前で武藤君を待っていると、ブロロロと車のエンジン音らしきものが聞こえてきたので、音のした方を向くと武藤君がいた。HUMMER H14ドアワゴンに乗って......

驚く私達を乗せ、武藤君はそのまま出発した。

白雪さんを乗せているから安全運転と思ったら、とんでもない!

途中ーー東京国際空港から公道16号線に乗ってからがヤバかった......どうしたのか......スイッチが入ったように暴走し出したのだ!乗っている私達の制止も無視して飛ばすわ。

パトカーのサイレンが聞こえたがあれは気のせいだよね......

 

「まあまあ、金次君。武藤君がここまで運転してくれたのだから、細かいことは言わない」

 

「そうだよキンちゃん。気にしない気にしない」

 

「......なんか変わったな白雪」

 

現在私は金次君、武藤君、白雪さん達と一緒にこの森戸海水浴場に来ていた。

空には燦々と太陽が輝いており、砂浜と海を照らす。まさに海水浴にはもってこいの日だ。

海水浴場エリアにそって9軒の海の家がある。

ここで更衣や浮き輪、パラソル、ボートのレンタルが可能で、シャワー室もある。

遊泳区域とは別に貸しボート専用の航路もあり、ここでボートを使用できる。

早くも武藤君が目を爛々と光らせている。どうやらボートに乗る気満々のようだ。さすが乗り物なら何でも乗りこなす車輌科。

 

「浜辺でのバーベキューが楽しみだぜ。この日の為に松坂牛の肉を買ってきたんだからな」

 

H14のトランクを開け、バーベキューセットを取り出す。

グリル・コンロ

鉄板・プレート・網・鉄串

トング(肉用、魚用、野菜用、炭用にわけてある)

炭・着火剤・軍手

紙皿・紙コップ・箸

レジャーシート・テーブル・イス

など一通りの道具が揃っている。

そして、最後にクーラーボックスには切り分けたお肉と調味料まで入ってる。本格的だ。

おそらく、白雪さんが来るから気合を入れたね。

松坂牛......かなりの出費だと思うけど、ここはありがたく頂きましょう。感謝するよ武藤君!

 

「おお、すげぇな武藤」

 

「焼肉なんて私、初めてだよ」

 

「大丈夫ですよ白雪さん!俺がちゃんと白雪さんの分を焼きますから!」

 

「あっ、あれ見てよ。どうやらここではバーベキュー禁止みたいだよ」

 

「なんだってえぇ⁉︎」

 

ただ残念な事に遊泳区域周辺では火気の使用ーーバーベキューなどをすることが禁止されている。

武藤君はバーベキューがやりたがっていたが、禁止の看板を見て、できないと知って残念そうだ。

頭を抱え、地面に伏せている。うん、見ていて可哀想だ。

 

「まあまあ、別に浜辺である必要はないよ。昼食時間になったら移動するとかしてさ」

 

「けどわざわざ移動する必要があるか?海の家があるんだし、そこで済ませばいいだろう」

 

「でもキンちゃん。せっかく武藤君が用意してくれたんだよ?それじゃ悪いよ」

 

「し、白雪さん......!」

 

武藤君が泣いているよ。あれは感激の涙かな?白雪さんに心配してもらって感謝の極みだね。

 

「なら昼食は海の家で済ませて、夕食は別の場所に移動ーーそこでバーベキューにしようよ。武藤君もそれでいいかな?」

 

「そうだな!よし、それでいこう」

 

私が提案すると、武藤君は立ち上がった。

うわー、立ち直るの早いわ。白雪さんエールが効いてるなこれは。

 

「なら腹が減るまで泳ぐとするか......」

 

「それじゃあ水着に着替えないとね」

 

「ならあの海の家で着替えよう白雪さん」

 

私はすぐ目の前にある海の家ーー『はまの屋』に白雪さんと一緒に向かった。

 

「私、海なんて初めてだよ零さん」

 

「白雪さんの実家ーー青森は寒いから泳いだりはしないのかな」

 

「違うよ。学校以外で神社の敷地から出たことがないの。だから海は初めて」

 

そうなんだ。かなり閉鎖的な環境で育ったんだね。

私だったら耐えられないかな。

来る前に聞いたが、白雪さんの実家は学校と神社以外の外出を禁止しているそうだ。

なので今回、海に行くのを断っていたが、金次君が行くと聞いて「私も行きます!」と答えた。いいのかい⁉︎

行くのはいいが、白雪さんは海水浴用の水着を持っていないと言ったので、この前ーー海水浴2日前に新宿の水着専門店で一緒に水着を購入してきた。

どれがいいか迷ったよ。

 

「なるほどね。じゃあ、これを機に海を満喫しようか白雪さん!」

 

私の一言に白雪さんは「うん!」と答えた。海に関しては素人か......ならば私が色々と教えてあげないとね。

中に入ると利用料金は海の家自体ーー更衣室の使用料金とシャワー室の利用料金は別々だった。

お金を払い、更衣室で水着に着替える。

 

 

キンジ視点ーー

零と白雪が更衣室に行っている間に残った俺と武藤はパーキングエリアで着替えた。

着替えたと言っても、ズボンの下にあらかじめ水着を履いておいたからな、これならわざわざ更衣室に行かなくてもいい。

 

「なんかワクワクしないかキンジ」

 

「何がだよ......?」

 

着替え終わり、白雪と零を待っている時、武藤がそんな事を言ってきた。

海で泳ぐのにワクワクって、明日の遠足が楽しみで眠れない小学生かよお前は。

 

「そんなことはないな」

 

「お前は馬鹿か⁉︎男なら誰でもワクワクして当然だろうが!」

 

「はぁ?なんでだよ」

 

「だってよ白雪さんと零の水着姿だぜ!学校では見れない違った姿......俺は今日という日にマジで感謝してるぜ」

 

握り拳を作り、空に向かって嬉しそうに号泣してやがる。

まさかそれが見たいが為に海に行くのを提案したのか?妙だと思ったぜ、夏はドライブばかりしているコイツが海に誘ってきたのはこれの為かよ。

 

「ごめ〜ん、待たせちゃったかな?」

 

海の家の方角から零の声が聞こえてきた。

振り返ってみるとそこには頭にサングラスをかけ、真っ赤なビキニを着た零がいた。

なんて格好だよ⁉︎それ本当に水着なのか?

イギリス人の血が入っている為かーー肌は日本人より白いが不健康ではない証拠に程よい赤みを帯びている。

すらりとした身体の曲線は整い過ぎていて、まるで人形のようだ。

 

「おお、すげぇ水着だな零」

 

「新宿で見つけて買っちゃった」

 

新宿ーー車の中で言っていたが、白雪と一緒に水着を買いに行ったらしいな。コイツの性格からし白雪に変な水着を勧めなかっただろうな?白雪は疑わず真に受けるから心配だ。

 

「待ってよ零さーん」

 

零に続いて白雪がやって来た。

頭に麦わら帽子を被り、黒のビキニ姿だ。おい⁉︎胸が納まりきれてないぞ!

白雪の胸は大きいーービキニでは隠しきれていない。あれは一種の肉食獣の牙や爪だ。

おまけに黒のビキニが真っ白い肌を強調している。

 

「白雪さん凄く似合ってますよ!最高です」

 

「そ、そうかな?零さんが勧めてくれた水着だから......」

 

おい、零。白雪に勧めるなら、もっと生地の多い水着にしろよ。これじゃまるで下着だぞ。

 

「おや?金次君。白雪さんの水着姿を見て嬉しくはないのかね?」

 

零が俺の腕に抱きついてきた。

こら!胸を当ててくるな⁉︎白雪ほどではないが零の胸も大きい。

理子から零はボクシングをやっていると聞いていたが、腕と胸周りの筋肉は程よく絞り上げてある。

強襲科の俺から見てもしっかりと鍛えてあるのがわかるぞ。

 

「あっ!零さん抜け駆けはいけませーん!」

 

白雪まで抱きついてくるな⁉︎なんでお前まで胸を当ててくる?

俺は白雪と零から挟まれる形で抱きつかれた。

後ろで武藤が「くそがぁ!」と叫んで泣いているが何故だ?

とりあえず早く浜辺に行こう。

 

 

零視点ーー

 

「ほら、金次君。早く浜辺に移動しようよ」

 

「わかったから急かすな」

 

クフフ、上がってるね金次君。そんなに水着姿がよかったかな?

大胆すぎる水着姿を見るとドキッとするという男子は多いと聞く。

おまけに白雪さんも水着姿だからね。

 

「白雪さん金次君に付いてあげなよ」

 

「えっ?ちょっと零さん!」

 

金次君を白雪さんに任せて私は後ろを歩いている武藤君の隣に移動した。

パラソルやマットを持っている。完全に荷物持ちだね。

 

「白雪さんじゃなくてガッカリした?」

 

「いや、そんな事はないぜ......」

 

いや絶対にガッカリしているでしょう君?

あまりにも可哀想だからせめて隣を歩いてあげよう。

6月とはいえ浜辺には先客がいるね。泳いでいる人もいれば、浜辺で日焼けしている人もいる。

武藤君は貸しボートをレンタルしにいった。

日焼けは嫌だなー。日焼け止めを塗らないとね。私は日焼けしやすいのだ。

 

「白雪さん、金次君に日焼け止めを塗ってもらいなよ」

 

私は日焼け止めの容器を白雪さんに渡す。

白雪さんの肌も白いーーこれは早めに塗らないとまずいぞ。

 

「キンちゃんに⁉︎でも私は......その......えーっと」

 

「いいから、ほら!金次君。白雪さんの身体に塗ってあげなよ。日焼けしたら大変だからね」

 

「おい⁉︎何で俺がしないといけないんだよ?零が塗ってやれよ」

 

君は実に鈍いなー。遅いぞ金次!じゃなくて、なぜ彼はここまで白雪さんの事を......

 

「まったく......君は実に馬鹿だな〜」

 

思わず私は首を横に振る。

 

「やめろ。妙に様になっているから、なんか見ていて腹が立つ」

 

仕方ない。鈍感君に代わってここは私が白雪さんの体に塗ってあげよう。

 

「ほら、白雪さん。まずはシートにうつ伏せになって」

 

私の指示に白雪さん「こ、こう?」と戸惑いながらも従ってくれた。

うん、素直でよろしい。

 

「零さん。何だか冷んやりしているよ......」

 

「はい、我慢しましょうね」

 

そのまま全身に塗っていく。

おお、背中がまるで一枚の真白なキャンバスのようだ。手に塗ったクリームが満遍なく届くぞ。

そーれ。ここも......

 

「くすぐったい......よう⁉︎」

 

そのまま思わず胸まで塗り込んでしまった。白雪さんが声を上げる。

何だろう?白雪さんの反応を見ているとイタズラしたくなる......

 

「それじゃあ、今度は脚を塗っていくよ〜」

「まだやるの?」

 

まだまだ行きますとも。

太ももから足の裏まで塗り込んでいく。意外と足が長いね。

ほーれ、ここはどうかな?

 

「ひぅ!そこはダメだよ......!」

 

足の指の間をくすぐるように塗っていく。

そんな顔してもダメだよ白雪さん。もう何もかも手遅れなのさ!

ははは、私を止めることは誰にもできん!

 

「おい、零。もういいだろう」

 

金次君が私の肩を掴んで止めた。

私の邪魔をするとは......覚悟はできているのか貴様!なんちゃって♪

 

「横になれよ零。俺が塗ってやるよ」

 

ほう、珍しくね。金次君がそんな事を言ってくるとは......

いいでしょう!お手並み拝見といこうか。

私はそのままシートに寝っ転がり、

 

「それじゃお願いしますよ」

 

金次君に日焼け止めクリームを背中に塗ってもらう。

おっ、意外と上手だね。力もあるし整体師さんになれるのでは?いやこれは整体師さんの才能があるぞ。

 

「気持ちいい〜、このまま寝てもいいかい?」

 

私が尋ねると金次君は「勝手にしろ」と言ってきた。ならば、遠慮なく......はぁー、いいきも......ち......だ。

うん?なんか痛いぞ⁉︎足の裏が痛い!

異変に気付き脚の方を見てみると金次君が私の足の裏を思い切り押していた。

これは足つぼマッサージか⁉︎

 

「痛い!ちょー痛いよ!本当に痛いから......!」

 

「ここが痛いのですかなお客様」

 

あまりの痛さにジタバタするも脚を固定され逃げられない。

金次君は暴れる私を抑えつけて尚、足つぼマッサージを継続する。

ぐわー!足がおかしくなる!指先をプレスするな!グリグリしないで⁉︎

 

「白雪に何か言うことは?」

 

「ごめんなさい!調子に乗りました!」

 

私の謝罪を受けとめると、金次君は解放してくれた。

不覚だった......!まさか金次君がこんな特技いや、凶器を持っていたとは⁉︎

 

「君って、女の子にこういった事をすると興奮するタイプだったの?」

 

私は若干涙目で尋ねた。まだ足つぼの余波が残っている。

 

「......ッ......!誰が興奮するか!」

 

隠そうとしなくてもいいんだよ?顔が赤いね〜私の方を極力見ないようにしているのが、何よりの証拠だよ。

この借りはキッチリと返させてもらいましょうか。

 

「おーい!貸しボート持ってきたぜ」

 

どう仕返ししようか考えていると武藤君がボートを抱えて戻ってきた。

チッ!タイミングが悪い!すごく悪いぞ。

いや......これはいいぞ。

 

「ねぇ、武藤君。誰とボートに乗るのか決めてあるのかい?」

 

私が尋ねると武藤君は「いや、まだだぜ」と返してきた。

このボートは二人乗りーーこれは使える。

まあ、武藤君としては白雪さんと一緒に乗りたいだろうけど......

 

「なら誰と乗るか、決めないとねーーここはジャンケンで決めようか」

 

ふふふ、金次君。とびきりの仕返しをしてあげよう......

 

「それじゃ、金次君と白雪さんも加わって......」

 

「待てよ。何で俺も乗る前提なんだよ?」

 

「おや?せっかく武藤君が借りてきたのに無下にするのかな?」

 

「いや、男2人で乗るのはな......」

 

「まあまあ、そんな事を言わずに友達なんでしょう?なら一緒に乗るのは何の問題はない。それにジャンケンで決まるんだから乗るとは限らないよ」

 

「まあ、それなら......」

 

「白雪さんもそれでいいよね」

 

「うん、いいよ」

 

「なら''勝った人が乗る''でいいね」

 

3人で輪を作る方でジャンケンをする。武藤君は遠目から眺めながら「白雪さん来い!白雪さん来い!」と言っているが、残念だがそんな未来は来ないよ。

 

「それじゃ、ジャンケンーーポン!」

 

私の掛け声で一斉に出す。結果は3人ともグーのあいこだった。

まあ、最初は当然か。

人は緊張した状態でジャンケンすると、手に力が入りグッと、握りたくなる。これは緊張感を和らげる為にする行動だ。

続いて「あいこでーーしょ!」で私と白雪さんはパーを金次君はチョッキを出した。

 

「ゲェ⁉︎負けた......!」

 

「武藤君とのボートツアーは金次君に決定しました」

 

「神は死ンダァァァァァ」

 

武藤君がこの世の終わりのような叫び声を上げた。

両手で頭を抱えて膝をつき天を仰ぐとは......そこまでショックを受けなくてもーーなんか目から血の涙が出てるよ?

まあ、私は''負けた人が乗る''とは一言も言っていないからね。

こういった勝負では最初が肝心なのさ。おまけに相手の了解を得ればもう最高だ。

 

「さあ、白雪さん。私たちはあっち行こうか?金次君は武藤君とボートに乗るからさ」

 

「ちょっ......!零さん⁉︎そんなに引っ張らないでよ。こけちゃうよ」

 

白雪さんの手を取り場所を移動する。

私たち部外者は邪魔をしてはいけないからね。

それじゃ!金次君。武藤君との楽しいボートツアーを満喫したまえ!

 

 

 

 

 

「キンちゃん達、大丈夫かな?」

 

「大丈夫、大丈夫。ほら見てよ。あんなに楽しそうにボートに乗ってるよ」

 

金次君と武藤君はボートで沖まで出ていた。遠目からだけどーーうん!楽しそうで安心したよ。なんか2人で立ち上がって話し合いまでしてる。本当に仲がいいね。

まあ、私がそうなるように仕向けたんだけどね。

ジャンケンの時、私は白雪さんの指の筋肉の動きを観察し、同じ手を出したのだ。そうすればいずれは金次君が負けるからね。でも、まさか初め辺りから負けるとは......意外だったな。

 

「まあ、金次君たちのことは置いて、これに集中しようか?」

 

私と白雪さんは浜辺でポンポンと砂の城を作っていた。

白雪さんが作ってみたいと言ったのだ。でも作るなら本格的なものを作らないとね。

砂の耐久性とバランス、質量も計算してと......この土台部分ーー黄金比が素晴らしい!我ながら傑作だ。

 

「ねぇ、白雪さんは金次君と幼馴染だよね」

 

「そ、そうだよ。どうしたの突然?」

 

「好きなんでしょう?金次君の事がさ」

 

「ふぇあ!」

 

白雪さんが城にダイブした。あー、傑作が壊れたよ。まあ、形あるものは壊れるからしょうがないか。

 

「す、す、す、好きだよ。でも何でそんな事を.......」

 

前にも言ったことだけど、殆ど変わってないな。

 

「うーん、何となくかな?でね、もしも金次君が他の人ーー女の子と付き合ったらどうする?あ、私は除外してね」

 

「成敗します」

 

さっきまでの態度とは裏腹にキリッと人が変わった。

おお、怖い怖い。彼女を敵に回したくはないね。

これは行けるところまで行くタイプーー止める人がいなければ暴走する人間の鑑だね。

 

「白雪さん。金次君も男の子。これからの学校生活で多くの人、中には女性とも出会うかもしれない」

 

「......」

 

「でね、もしかしたら恋人ができるかも」

 

「そんなの私が許しません!成敗、いや天誅!」

 

立ち上がる白雪さんを「座って座って」と促し、落ち着かせる。

 

「想像してご覧よ。もしその恋人が白雪さんより強かったらどうするのさ?天誅もなにもないよね」

 

「だったら星伽直伝の呪術で......」

 

なるほど呪い殺すパターンか。でも『人を呪えば穴二つ』と言うよ?白雪さんにも何か悪いものーー不幸が降り注ぐかも......いや、彼女ならそれでも構わないだろう。

私なら呪いよりも闇討ち、毒殺や誰かをけしかける事をオススメするけどね。

 

「私が言いたいのはね。このまま幼馴染の立場で満足なのかい?という事だよ」

 

「それは.....」

 

「白雪さん。いつまでも幼馴染のままではいけないよ。君が恋人にならないとさ」

 

「私がキンちゃんの恋人......でも自信がないよ」

 

顔を曇らせている。何か不安な事があるようだね。

実家の事が関係しているのか、それとも自分の事かな?

私は白雪さんの手を取り、

 

「大丈夫だよ。金次君と白雪さんはお似合いのカップルだと思うよ。私が保証してあげる。それに男女の恋仲なんて不安で当たり前なんだから」

 

「不安で当たり前?それじゃ恋人とは言わないのじゃないの?本当の恋人なら不安な事なんてないものじゃない?」

 

「恋人だからこそだよ。不安を安心に変えてこそ2人の絆が試される。不安は寧ろ男女の絆を高める試練のようなものだよ」

 

「不安は試練......零さんって、変わった感性の持ち主だね」

 

少し安心したのか笑ってくれた。うん、白雪さんはやっぱり笑顔が一番だね。安心したよ。

 

「だって私は私立相談役だからさ」

 

「もう、それじゃ答えになってないよ」

 

「それはそうだね」

 

いつの間にか2人で笑っていた。待ってよ?何で私はいきなり白雪さんの恋心について尋ねたんだろう?

疑問に思っていると金次君と武藤君が帰ってきた。

 

「あっ、2人とも楽しかったかい?」

 

「「楽しくねぇよ‼︎」」

 

何をそんなに怒っているのだよ?それと武藤君、なぜ私と白雪さんの方をブルブルと震えて見ているのだね?

 

「なあ、白雪さんと零はそういった関係じゃないよな」

 

そういった関係?あー、なるほど想像力があるね君は。

 

「違うよ。お友達だよ。ねぇ、白雪さん」

 

「うん、零さん」

 

2人で手を取り合って見つめ合う。

武藤君ーーけして私たちはそういった関係ではないからね。

誤解しないように。

それにしてお腹が減ってきたなー。

 

「そろそろお昼にしない?」

 

もちろん、金次君と武藤君の奢りでね♪

 




次回は夏祭りか実家訪問の同時進行になるかも......

段ボールの中はいい。ここなら安全かもしれない。

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